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再開するRIZIN2連戦、朝倉海とのバンタム級王座決定戦でオオトリを飾る扇久保博正インタビュー!


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――
大晦日の石渡伸太郎戦を制してRIZINバンタム級王座挑戦権を得ましたが、新型コロナウイルスの影響でここまで興行が開催されてきませんでした。ケガをして試合から遠ざかるのとは、ちょっと事情が違いますよね。

扇久保 深く考えないタイプなので「どうせやるんだろうな」みたいな感じでした。しょうがないなと思ってましたね。楽しい思い出かなって、一度きりの人生で(笑)。

――
なかなか経験できることじゃないという。コロナで生活も変わりましたか?

扇久保
 緊急事態宣言が出たあたりからジムも休みになって、対人練習をしなくなったくらいですかね。だからストレスは…… ああ、収入がなくなったことのストレスはありました(笑)。

――
そこは切実です!

扇久保
 夜になると不安になりますよ。「ヤバイ、ヤバイ……」みたいな。そこの不安は大きかったですね(苦笑)。大晦日が終わってからジムのインストラクターの仕事は、ほぼ抜けさせてもらってるので。

――
人間って寝るときになると余計なこと考えちゃいますもんねぇ。

扇久保
 そうです(笑)。でも、試合がないことの不安はあまり……4月の横浜アリーナ大会もギリギリまでやるって聞いてたので。そこでマネル・ケイプとやる話だったから。

――
ああ、なるほど。試合がある前提がずっと続いていたってことですね。 富士山でやるとか東京タワーでやるとかという計画もあったり。

扇久保
 ありましたね。4月にある前提で練習してて、6月末にもあるという前提で練習をしてて……今年はずっと追い込んでるんですよ。収入ゼロでずっと追い込んでる(笑)。

――
ハハハハハ。UFCでトニー・ファーガソンがヌルマゴ戦が中止になったあとも、幻の試合日まで減量を続けて、その2週間後にジャスティン・ゲイジーとやることになって結局負けちゃいましたけど。減量を短期間で繰り返すことは続身体に凄く悪そうですよね。

扇久保
 ああ、その感覚と似てるかもしれないですね。精神的にも肉体的にもきます。疲労が溜まってるからケガもしやすい。減量してると筋肉が落ちるじゃないですか。 

――
本来戦うはずだったマネル・ケイプのUFC移籍の話はビックリされたんじゃないんですか?

扇久保
 それはもうビックリしましたよね(笑)。「はい?」って。「そんなのありなのかな?チャンピオンなのに??」って。

――
ケイプは寝技に難ありということで自信はあったそうですけど。

扇久保 そうですね。全然イケると思ってました。寝技はそこまでじゃないと思いますし……まあ、やってみなきゃわからないですけどね。

――
ケイプ離脱で空位となったバンタム級王座を朝倉海選手と争うことになり、RIZINは興行を再開しますは、同時にRIZIN代表の榊原信行さんは経営の現状について苦しい胸の内を明かしましたよね。

扇久保
 そこは本当にヤバイんだろうなと思うんですけど…… でも、僕自身は試合で盛り上げるしかないなと強く思います。

――自分のできることは試合で戦うこと。

扇久保
 はい、それしかないじゃないですか。 ……SNSで朝倉海の雑コラを作ったほうがいいですか?(笑)。

――
ハハハハハハ、もうひとつのやれることは雑コラ(笑)。

扇久保
 不安ですけどね。「 大丈夫なのかな」っていう。 

――
いままで「格闘技を続けられるかどうかわからなくなった不安」って抱えたことはありますか?

扇久保
 それは、それこそ離別したときですね。それぐらいじゃないですかね(笑)。

――
ああ、UFCのTUFフライ級トーナメント準優勝後に帰国して離婚されたとき。

扇久保
 あのときは「これからなんのために戦えばいいんだろう……」って 。

――
それは……人間は何かしらの戦う動機や原動力が必要ってことですね。

扇久保
 いや、もうそうです。ただ格闘技が好きなだけではやれないですね。

――
新人の頃ならともかく、格闘技が好きな理由だけでは戦えない。

扇久保
 そう思います。年齢もありますね。まだ33歳なんですけど、歳を重ねるごとに考え方も変わってきますし、「いい試合をしなきゃな」って思いは強いですよね。昔は先まで見てたんですよ、5年先とか。でも、いまは「次の試合で終わるかもしれない」という気持ちのほうが大きいかもしれない。年齢のこともあるし、大ケガをするかもしれない。いつ終わってもおかしくないから、1試合1試合、記憶に残る試合がしてみたいなっていう。そういう気持ちが凄く大きいです、最近は。 

――
いつぐらいからそういう意識に変わっていったんですか?

扇久保
 いつだろう。たぶん……TUFから帰ってきてからですね。それぐらいからメンタルが変わりましたね。向こうで勉強になったというか、 外国人たちに教えてもらったというか。それまではどこかアマチュア感覚でやっていたんでしょうね。勝てばいい、勝つことが100%だと思ってたんですよ。 やっぱりお客さんは試合の勝敗だけじゃなくて、リング上の選手の表情や仕草まで見てるじゃないですか。勝つことだけを目指すのもそれはそれで美しいんですけど、勝敗だけがすべてじゃないなって。それをアメリカで気づかされましたね。

――
準優勝してもUFCと契約できなかったことも、考え方が変わった理由にありますか? 通常のTUFは準優勝者も契約できますが……。

扇久保
 ああ、それもあるかもしれないです。 UFC に対する憎しみというか(笑)。

――
憎しみ!

扇久保
 UFCに対して「ナメんじゃねえぞ、ふざけるな!!」っていう気持ちは、いまだに強いですよ。だからRIZINでああいう試合をしてるってのもありますね。 

――
扇久保さん、命を削るような試合をしてますよね。

扇久保
 UFCにハッキリと言われましたから。「試合がつまらない」と。

――
それはファイターにとって屈辱的ですねぇ……。

扇久保
 なんすかね、なんだろうなあ……なんて言ったらいいのかわからないけど、リングで死にたいですよね。いや、「死にたい」というか、なんだろうなあ……。あとで自分の試合を見返したときに…… あとで試合を見るってことは、それはまあ死んでないんですけど(苦笑)。

――
ハハハハハハハハ。

扇久保
 自分の試合を見て腹抱えて笑いたいですよね 。「なんでいかないんだよ!?」って悔しい試合はしたくない。「いってるな!」って笑って見られる試合をしたい。

――
いかに自分を出すか……という意味では、対戦相手が関係ないところってあったりします?

扇久保
 それはありますね。相手関係ないです。いや、関係あるか。マネル・ケイプより朝倉海のほうが知名度もあるから、おいしいなっていう。 最高じゃないですか。こんないい相手いないですよ。 それは朝倉海をナメてるとか、簡単に勝てるとかいう意味じゃないですよ。知名度があるから、おいしいというか。 

――
実績や経験は扇久保さんのほうが上ですけど、「知名度があるからおいしい」という年下に対して嫉妬的な感情はないんですか。

扇久保
 嫉妬もありますね。ボクは岩手からカバンひとつでこっちに出てきて、 もの凄いボロいアパートに住んで。柏で2万6000円、おじいさんの家の一室でしたからね(笑)。

――
居候じゃないですか!(笑)。

扇久保
 そうなんですよ。おじいさんが急に部屋に入ってきたりしますね(笑)。そんなところに5年ぐらい住んで、アマチュアからやってきたので……弁護士の人にいろいろと面倒見てもらってきた選手には負けられないですよ。

――
「修斗vsアウトサイダー」という構図はエリートvs不良に見られがちですが、じつは違うと。

扇久保 違うと思いますね。ボクはエリートではないですよ。



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