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■スタート告知
今週の金曜日(2016年4月5日)から、『台獣物語』の連載がスタートします。
思えば、企画は2013年からスタートしていたので、丸3年が経過していますね。
その間、イラストレーターさんを募集したり、実際に働いてもらったり、そのイラストレーターさんが働くための事務所を作ったり、描いてもらうための機材を揃えたりで、けっこうなお金と時間がかかっています。
そんなふうに、お金と時間をかけてぼくが何をしていたかといえば、「インスピレーションが湧く」のを待っていました。それも、生半可ではない、自分の奥底から湧いてくるイメージが集積するのを待っていたのです。
巨大ヒットを生み出したアニメ監督は、3年くらいかけて一つの作品を作ったりします。ぼくも、そういうことがしてみたかったんですね。お金と時間とをかけた作品を作ってみたかった。
いや、もっと端的にいいましょう。ぼくは「テレビアニメシリーズ」が作ってみたかったんです。『未来少年コナン』や『新世紀エヴァンゲリオン』のようなものに憧れていた。だから、そういう作品を自分でも作ってみたいと思いました。
ただし、もちろんぼくはアニメ作家ではありません。イラストすら満足に描けない。だから、例えば新海誠さんのように、ぼく個人でアニメを作るということは、おそらく一生不可能でしょう。
でも、そのシリーズ構成というか、原作ならなんとか作れるのではないか――と思いました。物語なら、どうにか紡ぐことができるのではないだろうか。
それで、テレビアニメシリーズの原作となる物語を作ってみようと思ったんです。
だから、長さもテレビアニメに合わせて、ちょうど13章で完結するようなものとしました。それでシーズン1が完結するような作りにしたんです。
その原作小説を(実はまだ書いている途中なのですが、構成はほぼ固まりつつあるので)、このメルマガで発表してきたいと思います。
発表の形式は、ちょっと変則的ですが、以下のようにいたします。
まず、この作品は全13章から構成されています。
そして、各章はそれぞれ4つの「話」から構成されています。
そして、各章はそれぞれ4つの「話」から構成されています。
この1話ずつを、毎週金曜日と土曜日に連載していきます。
つまり、毎週2話ずつ、2週間で1章掲載――という形になります。
全13章が完結するのは、26週間後ということですね。約半年後です。
これを、今週の金曜日(2016年4月5日)からスタートします。
この連載は、前述したように構成はほぼ固まっているのですが、まだ書き終わってはいません。ですので、連載しているうちに内容がどうなるか、ちょっと分からないところがあるので、上記の計画はあくまでも「予定」ということにさせてください。
また、この連載は『ハックルベリーに会いに行く』始まって以来初の「小説」ということになります。ですので、どうなるか未確定の部分も多いですし、みなさまのご感想も気になりますので、できればご意見などいただけると幸いです。
それでは早速、今回は【プロローグ】を掲載したいと思います。
第1章第1話は、4月5日の金曜日からスタートします。
翌4月6日には、すぐに第2話を掲載します。
このメルマガは、通常は月曜日から金曜日までの平日配信ですが、『台獣物語』の連載期間だけ、特別に土曜日も配信いたします。それ以外の曜日はこれまでと同じ内容です。
それでは、よろしくお願いいたします!
■プロローグ
ここは鳥取県の米子というところ。物語はここから始まる。
といっても、昔の米子とは大違い。なぜなら、今は街のすぐ脇を獣道が通っているから。獣道には、毎年二五頭ほどの台獣が通り過ぎる。
獣道は、政府によって厳重に管理されている。中世ヨーロッパの城壁のような高く頑丈な塀が張り巡らされ、立ち入りが厳しく制限されている。台獣もそこから出てくることはないから、ここ数年は死者が出ていない。至って穏やかなものだ。
それどころか、米子は今では格好の台獣見学スポットとなり、世界中から観光客が押し寄せてくる。おかげで、全く別の形で発展を遂げた。今や、日本有数の観光都市だ。かつて鳥取が「田舎の象徴」とされていた頃からは見違えるようだ。
そんな大都会米子を、今日も一人の女子中学生が学校に通う。
彼女の名は大宮エミ子。
エミ子というのは本名で、カタカタと漢字が混ざっている。ずいぶん珍しい名前だけど、昔はよくあったそうだ。エミ子は、彼女のお母さんも、そのまたお母さんも名前にカタカタと漢字が混ざっていて、伝統が引き継がれているのだという。
エミ子の通う米子西中は、米子駅の西側にある小高い丘の上に立っている。だから、登校するときはなだらかな坂道を登っていくことになるのだが、おかげでとても見晴らしが良い。東には、遠くに中国地方の富士山と呼ばれる大山を見通すことができる。その稜線は、ちょうど獣道にもなっているから、台獣が通るときにはやっぱりよく見通すことができる。
といっても、米子西中に通う生徒たちとって台獣は生まれたときから見慣れているものだから、よっぽど珍しいタイプでない限り立ち止まって見入ったりしない。それよりも、みんな友人とのお喋りだったり、遅刻しないよう駆けたりするので大忙しだ。
エミ子も、登校中に台獣をまじまじと眺めたりしない。たいてい、ちょっと俯きながら学校への坂道を登っている。詳しくは後で書くけど、彼女は引っ込み思案なところがあって、学校では目立たないようにしている。だから、そうやって歩くのは彼女のクセの一つなのだ。
そんなふうに、たとえ台獣が獣道を通っていても、その日はエミ子にとって何ということのない一日のはずだった。しかしそれは、ある出来事によって崩される。朝礼のとき、一人の転校生がやってきたのだ。その転校生が、彼女の運命を大きく変えることとなる。
そのエミ子の運命を変えることになる転校生こそ、榊圭輔――つまりぼくである。これから三ヶ月の間、エミ子は、ぼくと出会ったことによってその生き方を大きく変化させた。
――といっても、それはぼくが影響を与えたというより、あらかじめ決まっていた運命のようなものだ。運命というか、ぼくと彼女は生まれたときからこうなる宿命を担わされていたのだ。
だから、ぼくが転校してきたのも単なる偶然ではない。それは、ぼくの両親の計画によって為されたものだ。
目的は、もちろんある。それはおいおい話すことになると思うが、ここで重要なのは、ぼくは初めからエミ子の運命を変えることが目的で転校してきた――ということだ。
そのことは、ぼくも分かっていた。しかし正直、ここまで大きく変わるとは思っていなかった。それは、エミ子もそうだが、ぼくのもだ。ぼくの運命も、エミ子と出会ったことによって大きく変わった。だから、変わるということは想定されていたけれども、その変わり方は全然想定外だったのである。
転校してきた日、担任の先生はもちろんそんなことを知る由もなく、ぼくを普通に紹介した。おかげで、ぼくはきわめて普通の転校生として米子西中に入ることができた。名目は、親が転居してきたとかなんとかだ。
この頃の米子は、ちょうど観光都市として急発展の途上にあったので、他県から転校してくる生徒は珍しくなかった。おかげでぼくは、ほとんど誰の注目も浴びなかった――もちろん、転校生特有の好奇心を持った眼差しで見つめられはしたけれど、それ以上のことはなかった。
自慢ではないが、ぼくは外見も性格も至って普通――というか、後で話す生まれ持った能力以外は、特にこれといった特徴もない。だから、何の注目を浴びることもなかったのだ。
(つづく)
(つづく)
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