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 それを聞くやいなや、朋美は生徒会室を飛び出して行った。そのため、ぼくらも慌てて彼女の後を追った。
 廊下を走りながら、ぼくは並んで走るエミ子にそっと耳打ちした。
「彼女も――」
「え?」
「彼女も、たぶんヲキだよ」
「ええっ!」
 とエミ子は、思わず立ち止まってぼくを振り返った。それでぼくも立ち止まり、周囲に聞かれないよう小声で言った。
「――ただ、彼女はおそらく、それを知らない」
「えっ? そんなことあるの?」
「『あるの?』っていうか、きみもそうだったじゃないか」
「あ! ……確かに」
「……ぼくも、あの後ちょっと調べたんだけど、ヲキであることがちゃんと伝承されていない家というのも、二一世紀に入ってから少なからずあるらしいんだ。おそらく、彼女もその一人かと」
「どうして分かったの?」
「さっきの演説さ。きみも聞いたろ?」
「うん! 確かに、みんな夢中になって聞いていた」
「あの