小説『百年の孤独』はこのような書き出しで始まる。

「長い歳月がすぎて銃殺隊の前に立つはめになったとき、おそらくアウレリャーノ・ブエンディーア大佐は、父親に連れられて初めて氷を見にいった、遠い昔のあの午後を思い出したにちがいない」

この一文の中に、ぼくが一見して興味を引かれた語句が二つある。
一つは「銃殺隊」、もう一つは「氷」である。

「銃殺隊」というのは、実に含蓄のある言葉だ。意味は、文字通り「銃で人を殺す人たち」のことである。だから、「銃殺隊の前に立つはめになった」というのは、簡単にいうと「死刑になった」ということなのだ。

この「死刑」というのは、単に「殺される」よりも興味深い。まず、大佐は以前に「死刑になるほど悪いことをした」ということになる。そうなると、「それは一体何なのか?」という疑問がまずふくらむ。あるいは、「なぜ捕まったのか?」や「どうして死刑を宣告されたのか?」ということなど、あれこれ