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[無料記事]エンタメの世界で生き残る道を考えていたら、3200万円も使うことになった話(2,363字)
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[無料記事]エンタメの世界で生き残る道を考えていたら、3200万円も使うことになった話(2,363字)

2014-05-26 06:00
  • 17
「もしドラ」がヒットして、ぼくはこれからも本を書くことで生きていこうと思った。
ところが、本がなかなか売れない時代になった。もともと、生きていくために本を書いていくつもりだったから、本が売れないと、書くことの意味も少なくなる。
それで、新しい道を模索する必要が出てきた。ぼくには、エンターテインメントのコンテンツを作るという仕事には変わりないが、本とは違う、何か新しい分野に足を踏み出す必要があったのだ。

しかし、どの分野に踏み出せばいいかというのは、なかなか難しかった。
今、コンテンツ業界は変革期の中にある。激動の時代だ。これまでのプラットホームが崩壊し、新しいプラットホームが胎動している。だから、その胎動している新しいプラットホームの中から、何が育つのかを見極めて、そこに賭ける必要がある。そこで、リスクを取って、挑戦する必要がある。

いろいろと思い悩んだ末に、ぼくは2つのプラットホームに狙いを定めた。それは、アニメとYouTubeだ。この2つが、これからの時代のプラットホームになるだろうと思った。これから伸びる分野だろうと思った。だから、そこへ向けてコンテンツを作ろうと思ったのだ。

ただし、そこで1つの壁があった。
それは、アニメもYouTubeも、いずれも一人では作れないこと。
もちろん、本も厳密には一人では作れないものの、しかし少なくとも最終形にするところまでは一人ででもできる。
しかしアニメやYouTubeは、ほとんど形にすることができない。いや、形にしている人もいるけれど、ぼくが目指すのはそういうものではなかった。一人で作るアニメやYouTubeではなく、共同作業で作るアニメやYouTubeである必要があった。なぜなら、共同作業で作るコンテンツこそ、これから伸びていく分野だと思ったからだ。

2013年、ぼくが最も熱中したコンテンツがあった。
それは、スタジオジブリのドキュメンタリーだ。
2013年、スタジオジブリは2つの映画を公開した。「風立ちぬ」と「かぐや姫の物語」だ。
それに合わせ、3つのドキュメンタリーが公開された。一つは、宮崎駿監督を追ったNHKのドキュメンタリー、二つは、高畑勲監督を追ったWOWOWのドキュメンタリー。三つは、スタジオジブリそのものを追いかけた、ドワンゴが制作した映画だ。

この3つを、ぼくは食い入るように見た。興味があったからだ。面白かった。
なぜそこまで興味があったのか?
最初は分からなかったが、やがて徐々に分かってきた。
それは、「共同作業でコンテンツを作る」ということに興味があったのだ。それも、長い時間をかけて制作するということに興味があった。会社のような経営の仕方で、大勢の人が何年もかけて一つのコンテンツを作るという、その在り方に興味があったのだ。

それが分かって、ぼくの腹は決まった。
会社を作ろう――
ぼくはこれまで、いちクリエイターとして、個人で制作してきた。共同作業をすることもあったが、それは依頼者の発注にただ応えるというだけの、個人事業主の枠を出るものではなかった。だから、会社を作って共同作業をするというのは、ぼくにとっては初めての経験だったのだ。

そうして、会社を作って人を雇い、経営を始めた。何をする会社かといえば、コンテンツを作る会社だ。スタジオジブリのように、何人もの人間が長い歳月をかけて、一つのコンテンツをこつこつと作っていく会社である。

ただ、会社を作ってはたと気づいたことがあった。それは、この会社の経営は、大きな賭けにならざるをえない――ということだ。

今、ぼくが作っているコンテンツは2つある。
一つは、「台獣物語」というアニメの原作。これは、2015年の3月を目標に、形にしていく予定である。
もう一つは、YouTubeチャンネルの「HuckleTV」。これはすでに配信を始めているが、今はまだなかなか視聴数が伸びない。どうすれば人気を得られるのか、暗中模索の状態が続いている。これも、気長にやっていくしかないと考えている。

このように、これらはいずれも何らかの形になるまで時間がかかるのである。少なくとも2年はかかると考えている。
そうしてその間、収入はないのだ。つまり2年間、ただ制作費だけが流れ出していくという会社なのである。

現在、会社には4人の社員がいる。彼らの賃金だけでも、年間1200万円かかる。その他もろもろの経費がかかるので、だいたい1年で1600万はかかる。それが2年だと3200万円だ。その間、収入は全くない。2年で、3200万円が消えていく。

コンテンツで3200万円を稼ぐというのは、かなりのヒットを出すということだ。けっして珍しい数字ではないが、しかしおいそれと出るような数字でもない。
例えば、YouTubeで3200万円を稼ごうと思ったら、再生回数が3億2000万を数えなければならない。ラノベで3200万円稼ごうと思ったら、定価640円の本を50万部売り上げなければならない。
これらは、なかなか大変な数字なのである。

そういう大変な事業を、ぼくは始めてしまった。「どうすればコンテンツの制作で生きていけるか?」ということをぎりぎりまで考えていたら、返ってくる保証が一つもないお金を、2年で3200万円も使うことになったのである。

そういう世界に、ぼくは足を踏み出した。だから、それが失敗したときのことを思うと、ちょっとぞっとする。
しかし一方では、その「ぞっとする」ということに、ちょっとホッとしている自分もいる。

それは、人間はそういうぞっとした感覚の中で生きないとダメだ、と思うからだ。失敗をするかもしれないという恐怖の中に足を踏み込んでいかないと、何も得ることはできない。虎穴に入らずんば虎児を得ずだ。

コンテンツは、そういうぎりぎりの状態で作らないと、いいものは生まれない。もちろん、ぎりぎりの状態でもいいものが生まれるとは限らないのだが、しかし、すでに賽は投げられた。後は、この道を全力で進むのみである。

そのことに迷いはない。
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ハックルベリーに会いに行く
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他7件のコメントを表示
userPhoto 岩崎夏海(著者)

>>7
読みにくいからこそ、読んだときの価値が高まるし、やりがいもあると感じています。

No.9 127ヶ月前

「帰ってくる保証がない」って言うけど、大抵失敗する場合は未払い等で他人に迷惑かけるわけだからね。
3200万払いきって失敗するなら良いけど、そんなん偉そうに言ってもね・・・。

No.10 127ヶ月前

応援しています、頑張ってください。あなたのような人が、きっと今の日本には必要だから。

No.11 127ヶ月前

もしドラの後継が出せないのを「時代のせい」の一言で片付けてしまったのですか
少なくとも私は、魅力ある小説、文章を書かれる方の著書ならば、世間の評判はどうあれ好んで買い続けますが
一発屋の金儲けのお手伝いは御免ですね

No.12 127ヶ月前

まぁ無駄に終わるでしょ
それで、また元の文無しに戻るだけでしょ
どうせ、このコメントも削除するんでしょn

No.13 127ヶ月前

もしドラの前から本は売れない時代だから、その1つだけでも十分にグレートなわけで。
ただ、凄くて当たり前の業界で魑魅魍魎ぞろいの人達を出し抜いてヒット作を出すなんて、一般人からすれば想像するだけでタマヒュンする

つか、日本で一番金稼いでるPに師事してて独立支援のひとつもしてもらってないのか…?

No.14 127ヶ月前

エンターテインメントというのは基本儲からないものだと思います。
しかし、ハングリー精神を失わないことは素晴らしいことだと思います。
誠心誠意がんばってください!

No.15 127ヶ月前

>>13
こんな何の中身も無い頭の悪い煽り文を削除した所であなたが何か文句を言える身分だと思っているのですか?

No.16 127ヶ月前

媚を売る。

No.17 127ヶ月前

この動きの結末には非常に興味があります。
やりようによっては魅力的な投資コンテンツになりそうな気もしますね。
具体的なアプローチの方法は思いつきませんが。

No.18 127ヶ月前
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