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記事 4件
  • むしマガ Vol.391【クマムシの乾眠に樽状態形成は必須か】

    2017-06-30 21:19  
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     こんばんは。今月最後のむしマガをお届けします。梅雨さんはまだまだ元気ですね。
    ・Make Tokyo Great Again
     僕は東京都民なので、こんどの東京都議選は興味のあるところです。それにしても小池さん、やりますね。揉めに揉めていた築地移転問題、結局築地も残して豊洲にもつくる。科研費の年間予算が2000億円ちょっとなのですが、いったい科研費いくつぶんの予算が今回の問題に使われるのだろう、なんて研究者心理として考えてしまいます。
     これがフランスなら、発炎筒やフランスパンがそこかしこで乱れ飛ぶ暴動に発展していてもおかしくないレベルです。こんなことなら、舛添さんがそのまま続投してたらよかったんや。と心底思ってしまいました。
     でも小池さんの参謀、ある意味でとても優秀だと感心してしまいます。今回の選挙活動ではトランプ陣営のやっていたことをほぼ模倣。トランプは「Make America Great Again」と連呼していましたが、小池さんが方にかけてあるタオルには「Make Tokyo Great Again」と書かれています。
     
     トランプが発していた「Make America Great Again」は少なくない人に嘲笑されていたわけですが、それでもこのわかりやすいメッセージは別の層にはちゃんと響いて、大統領に選ばれました。このスローガンの滑稽さは頭の良い小池さんも当然認識しているはずですが、これが受ける層に向けてあえてこのメッセージを発し続けているのだと思われます。
     そしてここで、小池さんが作った政党「都民ファースト」もトランプの「America First」を真似たものだったことに気づきます。緑色を基調とした政党カラーを統一したりと、とにかくわかりやすさにこだわっている。
     
  • むしマガ Vol.390【エピジェネティクスで犯罪者予備軍を予測できるか】

    2017-06-19 14:30  
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     こんばんは。月曜日のむしマガをお届けします。ようやく本来の発行スケジュールに追いついてきました。
    ・ヒアリ再発見
     攻撃的な外来種アリが日本で初確認されたことを前号で触れましたが、初確認された神戸港にてさらに100匹ほどが路上で確認されたとのこと。
    神戸で強毒「ヒアリ」=コンテナヤードに100匹
     これ、やっぱり初発見されたところから逃げ出たやつなんでしょうかね。神戸あたりにすでに定着しているようだと、そこから一気に本州に広まる可能性もあります。東北以北は寒いから定着しないかもしれないけれど。
     ヒアリが日本にとっても脅威となりつつあり、ちょっと本でも読んでみようかなーとチェックしたら、『ヒアリの生物学』というドンピシャな書籍を発見。
    『ヒアリの生物学』
     しかし売切れていて、本来の定価が2800円に対して中古本が5000円、新品だと10000円という
    プレミアムがついている。なんてこった。
     しかしそれ以上に驚いたのは、著者が東正剛さんということ。僕の大学院時代の恩師です。9年も前に、ヒアリの侵入防御について問題意識をテーマにした本を書いていたとは。これを出した出版社もえらい。けれどもっとアマゾンに在庫を入れるべきでは。もっとガツガツしてもよいのでは。
     ということで出版社に直接問い合わせて購入することにしました。もし興味のある方がいれば、出版社のメールアドレス kaiyusha@cup.ocn.ne.jp に 連絡してみてください。不当にプレミアムのついた本を買わずに済みます。
    ・個人を株式会社のように
     ちょっと前にリリースされたValuというサービスが面白い。個人を株式会社に見立てて、擬似的な株式発行や投資ができるというもの。
    株式のように自分の価値を取引できる「VALU」、購入にはビットコインを利用
     個人の価値をSNSのフォロワー数などで数値化し、それが時価総額としてビットコインの額に反映されるというもの。評価経済ここに極まれり、という面白い試みではある。
     登録している個人は自分の株式ならぬ「Valu」を売り出すことで収益を上げることができる。Valuの価格は時間によって変動するため、買った方は儲かったり損したりする。
     しかし株式会社と違い、Valuを発行する個人は株主に対してとくに見返りをする義務はない。つまり、発行者には損はなく得しかない。実際に、Valuを売り出して1000万円を獲得した発行者もいる。
     ただ、出来高(Valuの流動性)はそんなに高くないと思われるので、Valuを買った人は売ることができずに損にしかならないかもしれない。なので、損をした人からの恨みが渦巻くネガティブなサービスになりかねない危険性も大きい。
     いずれにしても思い切った試みではあるので、失敗しても次に繋がりそうなサービスだと思いました。自分も一応登録してみたけれど、Valuの発行はとりあえずしないつもり。
     さて、今号のコラムでは人間の問題行動をエピジェネティクスから予想できるかを検証した研究について紹介します。
    ★むしコラム「エピジェネティクスで犯罪者予備軍を予測できるか」
     犯罪者は、被害者や被害者の関係者に肉体的および精神的な苦痛を与えるだけでなく、刑務所や警察のリソースを消費したり、経済活動が阻害されるなど、社会全体がコストを払う。犯罪者が多くなるほどこのコストがかさむため、犯罪の防止は重要かつ恒久的なテーマの一つだ。
     小さい頃から問題行動(けんかや窃盗)を起こす子どもは、大人になってから薬物使用などを含む反社会的な行動を繰り返し起こしたり、精神疾患にかかるリスクが高まることが知られている。そして、そのような子どもは、出生前に母親がアルコール摂取や喫煙をしていたり、ストレスを受けていたり、精神疾患にかかっていた傾向にある。
     そのような子どもを問題行動を起こす前に特定できれば、特別な教育プログラムなど何かしらの介入によって犯罪率を抑制することができるかもしれない。ただし、これは差別にもつながりかねなく倫理的にやや問題を孕む考え方だが、いずれにしてこの傾向を生物学的に検証することは長期的なメリットがあるだろう。
     
     今回、イギリスのキングス・カレッジ・ロンドンの研究グループは、将来に問題行動を起こすかどうかを、幼少期のDNA上の修飾、つまりエピジェネティックな変化で説明できるか検証した。
     エピジェネティクスとはDNAの塩基配列の変化によらない、遺伝子の発現をコントロールする仕組みを研究する分野のことだ。
     たとえばある遺伝子について、AさんとBさんともに塩基配列が同じだったとする。しかし、DNAの修飾のされ方はAさんとBさんで異なり、Aさんではこの遺伝子が発現して目的のタンパク質が作られるのに対し、Bさんでは作られないこともある。同じ本でも持ち主によって読まれたり読まれなかったりするのと同じ。かもしれない。
     いずれにしても、これが、エピジェネティックな違いである。具体的には、DNAの特定の部分、たとえば塩基配列がCGとなっているような場所にはメチル化が起きていることが多く、メチル化のある近傍の遺伝子は発現が抑制されたりする。
     今回の研究では 
  • むしマガ Vol.389号 2017/6/17【習慣の力】

    2017-06-17 17:35  
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     こんばんは。土曜日のむしマガをお送りします。今週の後半はグッドな陽気が続く東京。今週は4日間、多摩川沿いをサイクリングしています。これについては、またのちほど。・ヒアリ、国内で初発見 先月に特定外来生物のヒアリが日本国内で初めて見つかった、という発表が環境省からリリースされました。ヒアリ(Solenopsis invicta)の国内初確認について:環境省 ヒアリは南米原産で、世界各地にその生息範囲を広げている。攻撃性が強く、毒針で刺されると死に至ることもある危険な生物です。今回は中国経由で貨物として神戸に入ってきたところを発見され、駆除されました。でも、日本に定着するのも時間の問題かもしれません。 ヒアリについては、ヒアリに刺されまくっている専門家の村上さんの記事がおすすめ。小さな侵入者”ヒアリ”を退治せよ! この記事の中でとくに興味深いのがレイチェル・カーソンの『沈黙の春』の影響がヒアリ駆除にマイナスに働いたのではないか、という指摘。保全生態学者の多くに尊敬されているレイチェル・カーソンを批判的な文脈で引用しづらかったりするので、けっこう勇気をもってこの記事を書かれたのでは、と思います。 ちなみに、村上さんは北海道大学の研究室の先輩。今度会った時に、ヒアリについていろいろと聞いてみよう。・従順さからの解放 小さい頃から真面目に先生の言うことを聞いていたのに、社会に出たらあまり役に立たなかったよ、という記事を読みました。「真面目さ」なんて社会で1ミリも役に立たないと早く気付くべきだった どうでもいいけど、この記事を書いた方、プロフィール見たら理系院卒、バイオ系企業研究職の方だった。 ここでいう「真面目さ」というのは「従順さ」ということだ。上に従うこと、そして、仲間にも従うこと。公立学校は(たぶんほとんどの私立学校も)個人が未来の社会で成功するように教育してくれる場所ではない。組織や国が管理しやすく、ルーチーンワークを文句言わずにこなす人材を育成する場所が、学校なわけで。 
  • むしマガ Vol.388号 2017/6/14【特別寄稿「天から降ってきた男(ある日の夜のミステリー)」】

    2017-06-14 18:29  
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     こんばんは。梅雨です。毎日雨ばかりが続くとげんなりする・・・と感じるときに、いつも思い出すことがあります。アメリカでルームシェアをしていたとき、同居人だったマレーシア出身のアイーンの言葉です。 「雨がいやだって言うけれど、私が子供のときは雨が降らなければ生活用水を使えなかった。だから、雨が降ったら感謝しないと」 彼女が子供時代に過ごしたボルネオの山中は、当時はインフラも本当に貧弱だったらしい。僕もそこに一度遊びに行ったことがあるのですが、たしかに電気系統なども不安定な感じでした。なぜかイヌとネコだらけで、ついでにカワウソも飼われていたりして、けっこう癒されるところではありましたが。飼われていたカワウソ とまあ、そんな風に、雨が続く日にはボルネオのことを思い出します。また行きたいなあ。・気の毒すぎる男性 世の中には漫画よりも漫画なストーリーが、現実に起こっていることがあります。今週見たニュースも、にわかには信じられないようなモノでした。Kansas City man finds his doppelganger, freeing him from prison 強盗の罪で刑務所に17年もの間服役していたリチャード・ジョーンズさんが、今月釈放されました。リチャードさんは逮捕されてからずっと自分が無実だと主張していました。そして最近になって、リチャードさんにそっくりの「ドッペルゲンガー」が同じ刑務所に服役していることが判明。 リチャードさんが実際の犯人であるとは言えなくなったと裁判所が判断し、釈放されたというわけです。下の写真の右がリチャードさんで、左がそっくりさん。ご覧のように、髪型とヒゲまでそっくりです。【画像】リチャードさん(右)とドッペルゲンガー(左) 話がやや単純化してしまいましたが、実際のストーリーを詳しく知るほど、奇怪な事実が浮き彫りになってきます。