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むしマガ Vol.395【クマムシの橋本聖子仮説その1】
2017-07-31 23:54220ptこんばんは。今月最後のむしマガをお送りします。えー、今月はいつもよりもボリュームが少なめで申し訳ありません。ただ、次号では久しぶりとなる対談記事をお送りします。あ、対談というよりも、インタビューか。
まあ、どちらでも良いのですが、インタビューをした方は、ここでもたびたび名前の出てくる人物です。これについては、またのちほど・・・。
・国内初のヒアリ被害
ヒアリの報告がが止まりません。先日は、コンテナで作業をしていた作業員の方がヒアリに刺される事故が、ついに発生しました。
作業員、ヒアリに刺される 全国初、健康被害なし 博多
今のところはヒアリ定着の確認はなく、水際で食い止められている状況ですが、内陸部のどこかに成長中のコロニーがあってもおかしくありません。
ところで、こういう外来種の話が出ると「アリには罪がない、一番悪いのは人間だ」という声が聞こえてくるようになります。
それはその通りなんです。なにせ、どの生きものを保護し、どの生きものを駆除するかは、人間が決めていることですから。
よく、生態系や在来種の保全は生物多様性を維持するためにしなければならない、といいますが、これも突き詰めれば人間のエゴです。誤解を恐れずに言えば、保全生態学は純粋な科学というよりは政策、つまりエゴといえる。
エゴが発端になっているものを「地球の病気を治すため」とかいい出すものだから、変な誤解をされるわけです。これは研究者やエバンジェリストにもちょっとは責任があるな、と。
この辺りのテーマはなかなか深いので、少し時間が経ってから、まとまった論考を書こうと思います。
・師匠と弟子
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むしマガ Vol.394【VALUは真の評価経済社会をもたらすか】
2017-07-29 08:45220ptこんばんは。まただいぶ間が空いてしまいました。27日から鶴岡の慶應大先端生命研で開かれている「高校生バイオサミット」に審査員として参加しています。・高校生バイオサミット 「高校生バイオサミット」は、高校生が個人やグループで生物学の研究成果や研究計画を発表する場です。高校生バイオサミット 最近は子どもの頃から専門的な研究に取り組む子どもも増えているようで、今回も5歳くらいから研究を継続しているツワモノ高校生が参加するようです。甲子園の怪物ならぬ、バイオサミットの怪物といったところでしょうか。 ぶっちゃけて言えば、このようなコンペで入賞するとAO入試でも有利になるなど、実質的なメリットもあるにはあるのですが、実際にこういう研究活動をしている高校生はモチベーションが高いし、それはそれで良いと思うのです。スポーツを頑張って大学に入る人もたくさんいるわけだし、いろんなルートがあっても別にいいよね。と。 ただ、あまりにも中学生や高校生の頃からこの手のコンペに出まくって賞をたくさんとっていると、大学に入ったあとにアイデンティティ・クライシスを迎えることもあるから要注意です。 島国限定の中学や高校の「枠」の中でいくらチヤホヤされても、それは所詮、すごく狭いアマチュアの中でもてはやされているだけ。一方で、研究は世界が舞台で、しかも無差別級。学生だろうがなんだろうが、それで下駄を履かせてくれることはありません。 中学高校時代に評価された子は、どうしても「日本国内」の「学生」の中で評価されたい、という意識が強い傾向が見られ、「世界」の壁にちょっとぶつかると意気消沈しやすい。 だから、小さい頃から賞をもらうために頑張る、というモチベーションを否定はしないけれど、研究者を目指すのであれば、あまり同世代を意識せずに、ノーベル賞級の研究者をライバルにするくらいの意気込みでよい。これを見ている中高生はあまりいないだろうけど。 というわけで、各発表者の発表には遠慮せずにビシビシとツッコミを浴びせてきました。頭に何かが乗っかっている審査員がやって来たとたん、半笑いになる高校生たち。そして、その5分後には顔面蒼白、涙目になっている高校生たち。 いろんな意味で忘れられない経験になったのではないでしょうか。★むしコラム「VALUは真の評価経済社会をもたらすか」 むしマガVol.390でもちょっと触れた、VALUというウェブサービス。個人が上場して株ならぬ「VA」とよばれる単位を売買することができる仕組みが実装されています。VALU VAは日本円で買うことはできず、仮想通貨のビットコインに紐づけられています。日本円で売買すると法的にアウトなので、ビットコインを仲介させているのでしょう。 -
むしマガ Vol.393【「ヒアリに刺されて年間100人死亡説」を検証する】
2017-07-09 23:39ヒアリ Solenopsis invicta. 撮影:松本吏樹郎(大阪市立自然史博物館) (CC BY 4.0)
こんばんは。九州の大雨被害はひどかったですね。むしマガの読者には福岡や大分の方もいらっしゃると思うのですが、大丈夫でしょうか。
・東京でヒアリ
ついに東京でもヒアリが発見されました。
東京 大井ふ頭で「ヒアリ」見つかる
コンテナの中からヒアリが見つかったということですが、このコンテナは中国から運ばれてきた後に日本国内のどこかの送り主に運ばれ、コンテナ内の荷物を降ろした後にまた大井に戻された後で、そこからヒアリが見つかったというものです。
このようなケースは全国各地であるでしょうから、もう港だけでなく、内陸部にもヒアリが人知れずコロニーを作っている可能性もそれなりにありそうです。
さて、前回の『ヒアリの生物学』の紹介の中で、「アメリカ国内でのヒアリによる年間死亡者数は100」とい -
むしマガ Vol.392【ヒアリの生物学】
2017-07-04 18:17
Image: Insects Unlocked (Creative Commons CC0 1.0 Universal Public Domain Dedication)
2017年5月、神戸港で国内では初となるヒアリが発見された。さらに同年6月には名古屋港と大阪港でもヒアリが確認された。ヒアリは原産地の南米からアメリカ、オーストラリア、そしてアジア諸国へと侵入、定着しており、その分布域を拡大している。
ヒアリは針をもち毒を打ち込んで攻撃し、場合によっては人間を死に至らしめるともある。このことから、国内のメディアでも「殺人アリ」ヒアリについて大きく取り上げるようになってきたが、この侵略的外来種が実際にどの程度脅威となりうるのかについて、正確かつ詳細な情報源が限られているのが現状だ。
この生物について国内で入手できる情報源のうち、もっとも豊富な情報を提供してくれるのが書籍『ヒアリの生物学』
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