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記事 4件
  • むしマガ Vol.383号 2017/4/30【「光る植物プロジェクト」の終焉と、DIYバイオの存在意義】

    2017-04-30 23:11  
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     こんばんは。先週から鶴岡に来ています。こちらは涼しくてなかなかいい気候。相変わらず風は強いですが。 アカデミストで開催中のクマムシ研究クラウドファンディング、残り20日間を切りましたが、おかげさまで支援額が250万円を突破しました。最強生物クマムシの耐性の謎をゲノム編集で解明する!: アカデミスト そして今回のクラウドファンディングの目玉リターンのひとつ、オリジナル限定「かんみんシロクマムシちゃんぬいぐるみS」のサンプル1号が出来上がりました。ついでにぬいぐるみにつけるタグのデザインも完成。リターンの準備もこのように着々と進んでいます。【画像】かんみんシロクマムシちゃんぬいぐるみとタグ これまでに200名以上の支援者の方が、かんみんシロクマムシちゃんぬいぐるみSが入ったリターンを申し込んでいます。発注数が少ないとぬいぐるみの製作単価が跳ね上がるので、もし数十個しかオーダーが入らなければ大変なことになるところでした。たくさんの方に購入してもらい、ほっとしています。 さて、今号ではクラウドファンディングにちなんで、海外の事例を紹介しながら今後のDIYバイオについても考えていきます。★むしコラム「「光る植物プロジェクト」の終焉と、DIYバイオの存在意義」 2013年、アメリカのクラウドファンディングサイト「Kickstarter」上でひとつのプロジェクトがスタートした。そのプロジェクトの名前は「Glowing Plant」。これはバイオテクノロジーで「光る植物を作りだす」ことを目的にするプロジェクトだった。 このプロジェクトの提案者はアンソニー・エバンス。彼は生物学のエキスパートではないが、起業家精神に溢れる若者であり、未来を劇的に変えるような技術を模索していた。そしてNASAエームズ研究所の敷地内にあるシンギュラリティー・ユニバーシティーの講義内容にヒントを得て、合成生物学を利用して持続可能な社会を築くことを思い立つ。 そのアウトプットが、光る植物の作製だった。屋内でも屋外でも欠かせない照明。当然だが、屋内外の暗闇を照らすには、電力エネルギーが必要である。世界中の照明にかかる、膨大なエネギー量。もしも、道路に並ぶ街灯を「光る街路樹」で置き換えられれば、エネルギー的に持続可能な未来を構築できるのではーーそんな夢のようなアイディアを、エバンスはこのプロジェクトで提唱したのである。 生物のなかには、自ら発光するものがいる。ルシフェラーゼ遺伝子などを含むホタルの生物発光システムを遺伝子工学技術により植物に組み込むことで、理論上は光る植物を作り出せる。1980年代にはすでに、この方法でタバコを弱いながら光らせることに成功している。さらに2010年には、バクテリアの中でホタルのルシフェリンとルシフェラーゼを発現させるシステムも構築された。 まず、植物に感染するアグロバクテリウムに、デザインした発光遺伝子セットを導入する。これを植物のシロイヌナズナに感染させることで遺伝子セットを受け渡させ、シロイヌナズナを光らせよういう作戦を、エバンスはとった。エバンスは生物学を専攻していた仲間らと共に、サンフランシスコのガレージで研究を開始。いわゆる、DIYバイオのやり方で、である。 このクラウドファンディングプロジェクトの目標支援額は6万5千ドルだったが、8400人以上の支援者から目標額をはるかに上回る48万4千ドル、日本円にしておよそ5千万円もの金額が集まった。ここまで多額の支援が集まったのは、SNSなどで拡散されたことと、何よりも、支援リターンとして「光る植物」そのものが含まれていたことにある。 だが、この「光る植物プロジェクト」は、物議も呼んだ。 
  • むしマガ Vol.382号 2017/4/24【黒歴史は必要悪かもしれない】

    2017-04-24 22:36  
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     こんばんは。またまたお久しぶりになってしまいました。ゴールデンウィークが近づく今日この頃、のむしマガをお送りします。昨日は現役高校生のための予備校、早稲田塾の最先端科学プログラムの講師をつとめてきました。早稲田塾最先端科学プログラム このプログラムは、ペーパー試験のための勉強ではなく、実際の研究活動を体験しながら科学を学んでいくというもの。慶應大先端生命科学研究所所長の冨田勝さんがずっと担当してきたプログラムですが、なぜかパスされたボールが自分のところにまわってた、というわけです。 こういう予備校のプログラムに需要が出てきているのは、きっと親の中にも今の日本の教育システムに疑問を持つ人が増えてきたからなんでしょうね。この流れは強まっていくのかも。 高校生たちは初日からNatureの論文を読ませられたりと、なかなか大変そうでした。でもみんなモチベーションが高いので、これからが楽しみ。 
  • むしマガ Vol.381号 2017/4/14【NASAが発表した「太陽系の海に関する知見」について】

    2017-04-14 22:31  
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     こんばんは。NASAの発表がありましたね。なんだかここのところ立て込んでいて、すっかり発表時間を勘違いしていました。まあ、こういうこともあります。今回は予想はできませんでしたが、発表内容の解説を書きましたので、お送りします。★むしコラム「NASAが発表した「太陽系の海に関する知見」について」 現地時間2017年4月13日、NASAは土星の衛星エンセラダスから噴き出している間欠泉ガスから水素(H2)を検出したことを発表した。これは、エンセラダスの内部海底に熱水活動が存在し、生命が存在しうる環境が整っていることを示唆している。 エンセラダスは氷に覆われているが、その下には全球的に海が広がっていることが判明している。これは木星の衛星エウロパでも同じ。このような海は内部海という。エンセラダスの氷の裂け目からは間欠泉が宇宙空間まで吹き出しており、土星探査機カッシーニはしばしばこの中を通り過ぎながら
  • むしマガ Vol.380号 2017/4/10【同窓会の参加をよびかけたら、参加表明したのは1人だけだった話】

    2017-04-10 22:25  
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     こんばんは。4月になりましたね。遅れましたが、むしマガの配信です。 それにしても、すっかり春ですね。4月に入ってから、ようやく暖かくなってきた・・・と思ったら、急に寒くなったり。気温の変化が激しいです。だからかどうかわかりませんが、少し風邪をひいてしまいました。この歳になって風邪をひくと集中力とか気力が想像以上に奪われてしまいますね。 いかんいかん、年寄りじみた文章になってしまいました。それでは今号のむしマガ、スタートです。★むしコラム「同窓会の参加をよびかけたら、参加表明したのは1人だけだった話」 このむしマガも早いもので、今月で創刊からちょうど5年が経過しました。創刊から購読いただいている方にもそうでない方にも、最大級の感謝の意をここに表させていただきます。有難うございます。飽きっぽい自分が(配信遅延などはあるものの)ここまで続けられたことは、読者の皆様の存在なくしては考えられません。 裏を返せば、このメルマガが終わるのは、読者の皆様が離れていったときです。そうならないように、ちょっとでも「ふーん」とか「くすっ」と言ってもらえるようなメルマガ作りを心がけていきたいところです。 しっかし、5年前のむしマガを読んでいると、なんだか肩に力が入っていて初々しい感じが伝わってきますね。当時、本当にメルマガを購読してくれる人がいるかどうか未知数な状況だったし、だいぶビクビクしながら書いてたんだろうなぁ。あ、皆さんは別に読み返す必要はないですからね。恥ずかしい。 この5年を振り返ってみると、いろいろあったようで、あっという間に時間が過ぎてしまったように感じます。自分の中身については、あまり変化はないかな。でも、思った以上に人との繋がりは増えましたね。 メルマガも含めて、ネットのアクティビティのない世の中は、もはや考えられません。とくに自分のように、生身の人に接してライブをするよりも、文章で表現する方が向いている人間にとって、ネットには本当に感謝しなければなりません。非リア充はもっと活用したらええんや。 こういうことを書くと、「クマムシ博士はメディアやイベントに露出してるし、非リア充じゃないだろ」という反論がたまにでてきます。でも、人付き合いはあまり上手じゃないし、しょっちゅう会うような友達もいない。ネットでの距離感の方が心地よかったりする。 先日、こんなことがありました。中学高校時代の恩師のO先生から、ひょんな事でメールをもらい、卒業以来初めて、実に20年以上ぶりに会うことになったのです。