-
むしマガ Vol.69【クマムシが見えなくて困っています→コケの量に問題があります】
2012-09-30 17:39220pt・パスツール研究所 こちらでは毎月末に、パスツール研究所でパリ在住の日本人研究者が集うセミナーが開催されています。金曜日のセミナーが、僕にとって2回目の参加だったのですが、こちらにいる日本人研究者の研究レベルは高く、とても勉強になるとともに良い刺激にもなります。 そして来月のセミナーでは、僕がクマムシの発表をすることになりました。在フランス日本人研究者達にも、クマムシの布教を頑張りたいと思います。・望月さん 日本人研究者の会に誘ってくれたのは、ちょっと前までパスツール研究所で博士課程の大学院生でいた望月さんでした。彼は極限環境に棲む古細菌に寄生するウィルスの研究をしていました。 望月さんとは全く面識が無かったのですが、彼が僕のブログの読者で、わざわざメールを送っていただいたのです。その時は、彼の博士論文の発表会があるので見に来てほしい、というお誘いでした。 パスツール研究所で行われた望月さんの博士論文発表会は、それまでに見た中でも群を抜いて素晴らしいものでした。データの量とオリジナリティ、流暢な英語、学生らしからぬ堂々とした態度。すでに第一著者の論文も四報出しており、「いやぁ、すごい学生だなぁ」と感心しきりでした。 しかし発表の最後のパート、謝辞(自分の研究をサポートした人たちへのお礼)のところになって望月さんに異変が。 -
むしマガ Vol.68【ボゴールの奇跡】
2012-09-28 17:31220pt・キュリオシティ 先月火星に着陸した火星探査車のキュリオシティ、ようやく活動を本格化したようです。今日はこんなニュースがありました。火星に川が流れた跡…NASAの探査車が発見 火星に水があることはすでに分かっていますし、あとは地表を掘削して水を含む試料を分析すれば、かなりの確率で生命の痕跡が見つかるんじゃないかと思います。 今回のキュリオシティのスペックでは、火星生命を直接確認することは不可能ですが、近い将来、火星からのサンプルリターンが実現すれば、これも可能になります。 ですので、地球外生命の発見までは秒読み段階に入っているといえるでしょう。私たちは、初めての地球外生命発見の瞬間に立ち会うことができるかもしれない、素晴らしい時代に生まれているのです。 願わくば、初めて発見された宇宙生命体がクマムシみたいな形であってくれればと思っています。★クマムシ研究日誌「ボゴールの奇跡」 私がクマムシの研究を初めて10年以上が経ちました。ここでは、これまでのクマムシ研究生活を振り返りつつ、その様子を臨場感たっぷりにお伝えしていきます。 熱帯のクマムシを求め、はるばるインドネシアにやってきた。行き先はボゴールというまあまあ規模の大きな町である。ここの植物園にあるゲストハウスで、別のテーマで研究調査に来ていた東先生と先輩と合流した。 初めて東南アジアの国に来た僕は、現地のストリートマーケットの様子を見て、日本とあまりの環境の違いに驚き、戸惑っていた。 どこまで歩いても、鼻をつく生ゴミが腐ったような匂い。土埃。物乞いをする人々の視線。しつこく追跡してくる客引き。何もかもが新鮮で強烈だった。 そして、このストリートマーケットで悲劇が起きた。 -
むしマガ Vol.67【使用済み靴下フェチの吸血グモ】
2012-09-24 17:11220pt今号のむしコラムも夜遅くなってしまいました。先週と同様、やはり内容的に食事前にはお届けするのが不適切との判断からです。この調子だと、毎週夜のお届けになってしまうかもしれませんが...。 例によって変な夢を見ても、当方では一切の責任は負いかねます。 ということで、どうぞよろしくお願いいたします。★むしコラム「使用済み靴下フェチの吸血グモ」 世の中には色んなフェチがいます。靴下匂いフェチもそのひとつ。あの匂いがたまらない、という人はかなりの人数いることが予想されます。 靴下匂いフェチの人は、朝から晩まで働いた後にビールを一杯...ではなく、汗にまみれた格別の靴下の、その蒸せかえるような匂いを嗅ぐことで一日の疲れを癒し、明日働くための活力を沸き立たせるのです。 そんな使用済み靴下フェチは人間だけの性癖ではありません。アフリカに棲むある吸血グモも、そんな性癖をもっています。 そのクモこそ、ケニアに生息する吸血性ハエトリグモの一種、Evarcha culicivoraです。吸血グモのEvarcha culicivora このクモは人の血を吸います。といっても、直接私たちの体から血を吸うのではなく、人の血を吸ったばかりの蚊から間接的に血液を摂取するのです。餌となる蚊はマラリアを媒介するハマダラカなので、人にとっては有益なクモなんですね。ちなみにこのクモにとって人の血は栄養分になるばかりでなく、異性を惹き付けるための媚薬にもなるんだとか。 このクモは人が集まる建物の周りをよくウロウロしているので、人の匂いを感知しているのではないかと考えられていました。そこで研究者はこのことを検証するために、人が履いた靴下の匂いにクモが惹き付けられるかを実験したのです。 実験では人が履いたばかりのホヤホヤ靴下を用意しました。ボランティアの男性が12時間ずっと履いていた靴下です。白のコットン100%のやつです。 クモを小さな部屋に入れ、そこに靴下の匂いを流し込んでいきます。小さな部屋に入れたクモは、その部屋から自由に逃げることができます。比較として、未使用の靴下の匂いを使って同様の実験を行いました。 -
むしマガ Vol.66【クマムシさんのてくてくレポート2:パリのザ・庶民フード】
2012-09-23 16:41220pt・クマムシ漫画 最近むしマガの購読をはじめた漫画家の羽鳥まりえ先生が、クマムシの漫画をウェブ漫画サイトのエアレイドに11月ごろ発表されるようです。エアレイド すでにミドリムシ漫画は同サイトにて掲載済みですので、ぜひ読んでみてください。オチでかなり笑ってしまいました。 クマムシ漫画も楽しみです。・ミドリムシ ミドリムシといえば、株式会社ユーグレナが大量培養方法を確立してサプリメントやバイオ燃料への開発を進めています。株式会社ユーグレナ 「ムシ」という名がつくため、私は勝手にミドリムシをクマムシのライバルとみなしています。メラメラ。・ムシといっても ミドリムシは単細胞生物なんですけどね。・ミドリムシブランド 株式会社ユーグレナは潤沢な資本と優秀な経営陣を擁しており、プロモーションのやり方が本当に凄まじいです。 これまでにミドリムシクッキーをはじめ、ミドリムシラーメンやミドリムシアイスクリームなど「えっ?!」と思わせるような商品を展開しており、ミドリムシを世間に浸透させる活動を積極的に行っています。 これまでのバイオベンチャーの失敗を教訓に、B to Cにより売上を確保しようとする姿勢がよく見えます。「ムシ」という名前がついた食品を世間に受け入れさせようとする努力には敬意を表したいと思います。 しかしながらイマイチ、ミドリムシのキャラクターが弱いんですよね。単細胞なのでイメージしづらいというか。愛着がわきにくいのです。羽鳥先生のようにミドリムシを擬人化させた方が、プロモーションには良いのかもしれません。・そういえば 株式会社ユーグレナが作ったミドリムシのイメージキャラクターに「ゆーぐりん」というのがいましたが、いつの間にか消滅していますね。・ということで クマムシさんは夢破れたゆーぐりんの分も、微小生物ゆるキャラの代表として、今後頑張って全国制覇してもらいます。 ということで、今号はクマムシさんの登場です。★クマムシさんのてくてくレポート2【パリのザ・庶民フード】やあ、おひさクマムシ。パリはすっかり冷えこんできたよ。これからやってくる冬に備えて、しっかりと脂肪をたくわえなくちゃ、いけないね。いけないんだ。だから、今日もおいしいものを食べにいくよ。たまには、ちょっぴりジャンクなザ・庶民フードを食べにいこう。てくてく、てくてく、てくてくまむし。おや、ケバブ屋さんだ。これこそまさに、パリジャンヌのザ・庶民フード。フランスの外食では高価な順に、フランス料理=日本料理>イタリア料理>ベトナム料理>中華料理>中東料理、というヒエラルキーが形成されているんだ。ケバブは中東料理だから、もっともお手頃に食べられる、ザ・庶民フードなんだ。だから、ケバブ屋さんにはいつもザ・学生たちであふれかえっているんだ。フランスには中東方面からの移民がたくさんいるから、街のそこらじゅうにケバブ屋さんがあるんだよ。おっと、のうがきが長くなったね。さむいし、お店の中に入ろう。ボンジュール「イラッシャーイ」おすすめケバブくださーい。「オッケーイ!」ノリのいいおじさんだなぁ。何人だろう。「トルコッ子サァネ!」トルコかぁ。じゃあ本場のケバブが食べられるね。わくわくまむし。「ヘイオマチー」お!おおきい!!ケバブも大きいけど、ポテトの量もジンジョーじゃないね。 -
むしマガ Vol.65【クマムシと橋本聖子における共通点についての考察】
2012-09-21 15:45220pt・クマムシさんの展開 抽選販売した薄毛ぬいぐるみファクトリー作のクマムシさんのプレミアムぬいぐるみ、ようやく当選したみなさまにお届けすることができました。受け取った方々から喜びの声をいただき、とても感動しています。クマムシさんのぬいぐるみ、今年末に一般販売を開始する予定ですので、ぜひ皆様に引き取って可愛がってもらえればと思っています。 クマムシさんを展開するにあたり、協力していただける仲間がだんだん増えてきました。これから加速的にクマムシさんを広めて行き、来年には国内で一大ブームを巻き起こせればとたくらんでおります。 とりあえず近いうちにクマムシさんとファンとの交流をもちたいですね。オンラインでのバーチャルでも、リアルでも。リアルでのイベントって難しいけど、やりようはある気がします。その前に、まずはクマムシさんにtwitterで人生相談をやってもらおうと思います。人生にお悩みの方は、なんでもクマムシさん@kumamushisanに聞いてみてください。 きっと、適当なアドバイスが返ってきますので。★クマムシ研究日誌「クマムシと橋本聖子における共通点についての考察」 アメリカから帰ってきてから、東先生と修士論文のデータについて話し合った。 しかし、クマムシシンポジウムで発表した内容を広げていきたい、というこちらの意向は東先生によって完全に却下された。これでは修士論文として認められるようなクオリティではない、ということだった。 このときに初めて、自分の研究内容に対する客観的評価が、いかにできていなかったかを思い知らされたのだった。 これまでに取ってきたデータが使えないということは、これから新たにテーマを設定して実験をしなくてはならないことを意味する。このとき、すでに修士課程二年目の9月だった。修士論文提出まで4ヶ月ほどしか、時間がない。必至になって再度文献を読み返し、東先生を納得させられるだけのネタを考えた。 そして、クマムシのひとつの能力が気になった。それは、凍眠(クライオバイオシス)とう能力である。分かりやすくいえば、凍結に耐えられる能力のことだ。 南極や極域に棲むクマムシは、液体窒素のマイナス196度などで凍っても生存できることが分かっていた。ちなみに乾燥した乾眠状態ではなく、活動状態のクマムシが、である。 通常、生物が耐えられる温度範囲は、周囲の環境温度によって決まる。これは、環境温度が非常に強力な淘汰圧になるためである。寒い場所には低い温度に適応した生物が、暑い場所には高い温度に適応した生物が棲んでいるのだ。 しかし寒い場所に適応した生物、とりわけ動物では、環境温度の下限よりもはるかに低い温度にさらされると死んでしまう。 ところが、クマムシでは地球上に存在しないようなマイナス200度で凍っても生存できる。オーバースペックな凍結耐性もつわけだ。このクマムシのオーバースペックな低温耐性を、他の生物の凍結耐性とは区別して凍眠とよぶようになった。より正確な凍眠の定義は、クマムシのクリプトバイオシスのうち、低温で誘導される仮死状態である。クマムシのクリプトバイオシス さて、なぜクマムシはこのようなオーバースペック凍結耐性をもつのだろうか?そんな疑問を解決する鍵が、別の文献に書かれていた。 その文献は、凍結と乾燥が生物に及ぼす影響について解説したものだった。実は凍結と乾燥は、両方とも細胞内からの脱水を引き起こす。つまり、凍結耐性も乾燥耐性も細胞からの脱水に耐える共通のメカニズムがあると思われるのだ。 そこで、次のような仮説を立てた。クマムシは陸に進出する過程で高い乾燥耐性、つまり乾眠能力を獲得した。そしてその乾燥耐性のメカニズムが、凍結耐性のメカニズムにも応用されているのだろう、と。つまり、クマムシの凍結耐性は寒い環境に適応した結果ではなく、乾燥に適応したおまけとして、凍結耐性も同時に獲得したものと考えたのだ。 これは、アイススケートの練習を一生懸命した選手が、アイススケートだけでなく、自転車競技でも一流の成果を残してしまう現象と似ている。アイススケートと自転車競技では、共通の筋肉が効果的に使われているのだ。 -
むしマガ Vol.64【サイボーグゴキブリの憂鬱】
2012-09-17 15:38220pt今号のむしコラムをお届けします。 夜にお届けしたのは理由があります。 夕食を済ませた後に読んでいただきたかったからです。 ただ、寝る前に読むと嫌な夢を見るかもしれません。 嫌な夢を見たとしても、苦情は受け付けませんのでどうかご了承ください。 ご了承ください。 念のため2回言いました。 ・・・・・・ ではどうぞ。★むしコラム「サイボーグゴキブリの憂鬱」 人類は動物の動力を大いに利用して、文明化を果たして来ました。近年は産業化が進み、移動手段に馬を使う機会は激減しましたが、最近になり人類のために再び動物の動力を役立てようとする研究の潮流が起こりつつあります。 ノースカロライナ州立大学の研究グループが、今年の第34回国際IEEE医学生物工学会議に発表した研究成果は、この流れが加速するであろうことを予感させるものでした。 その研究成果とは、人類を救うために開発された、自由に操縦できるサイボーグゴキブリの開発です。 -
むしマガ Vol.63【クマムシを小さじ一杯分集めるには何匹必要か】
2012-09-16 15:34220pt・サザエさん もう終わってしまいました。・でも 残り少ない日曜日の時間、だらだらのお供として、実生活に全く役に立たない今号のクマムシトリビアを楽しんでいただけますと幸いです。★クマムシトリビア その22 読者からのクマムシにまつわる様々な疑問に対して堀川が回答します。◆ 質問: クマムシのサイズ感がいまひとつ分からないのですが、例えばヨコヅナクマムシを小さじ一杯分すくうとだいたい何匹くらいになるのでしょうか?◇ 回答: おそらくクマムシがどんな味なのか確かめたいから食べたい、という願望から出てきたと思われる、純粋かつ恐ろしい疑問なのでしょう。僕はとてもじゃないですが、小さじ一杯分のクマムシを食べるなどという大量殺戮行為は想像すらしたくありません。 しかしまあ、とりあえずクマムシの大きさを実感するために、小さじ一杯分のクマムシを集めるに何匹必要かを推測するのは意義のあることです。ここでは、乾眠状態のクマムシで換算してみましょう。 成体のヨコヅナクマムシの体長はおよそ0.3ミリメートルです。乾眠状態になると、その40%くらいの0.12ミリメートルほどに縮み、体の形がボール状に変形します。 -
むしマガ Vol.62【救世主の鬼軍曹】
2012-09-13 15:30220pt・クマムシ集会 ちょっと前の話になりますが、先月の一時帰国のときに大阪・鶴橋と東京・品川で、突発的にクマムシ集会を開催しました。クマムシ集会といっても、ただのオフ会ですが。 クマムシ集会当日に突発的にtwitterにて参加者を募集したにもかかわらず、大阪でも東京でも4名ずつの方にお越しいただきました。中にはむしマガ読者の方もいらっしゃり、クマムシや生き物にまつわる話で盛り上がりました。連れていったクマムシさんプレミアムぬいぐるみも、皆さんから激写されまくりでアイドルさながらの人気ぶりでありました。 次回は年末頃の開催を予定していますので、そのときはこちらでも告知させていただきます。・キーウェスト 今号のクマムシ研究日誌に出てくるキーウェストは、これまでに訪れたなかでも最も浮かれポンチな南国リゾートです。キーウェスト キーウェストはキューバまですぐそこ、フロリダの最南端に位置しています。そこにいる人々はすべてが弛緩しきっており、最低限の理性だけを保持しつつ、どこまでもダラダラ過ごしているように見えました。怠惰な南国ライフを経験してみたい方は、ぜひ一度訪れることをお薦めします。★クマムシ研究日誌「救世主の鬼軍曹」 私がクマムシの研究を初めて10年以上が経ちました。ここでは、これまでのクマムシ研究生活を振り返りつつ、その様子を臨場感たっぷりにお伝えしていきます。 真夜中のマイアミのスラム街にある小さな駅前に、一人残された自分。タクシー会社に電話するも断られ、人生最大のピンチを迎えていた。ピラニアの棲む水槽に放り込まれた、グッピーのような心境だった。 ここがどこかも分からないので、移動するに移動できないし、移動したらより危険な状況に陥るであろうことは明らかであった。八方塞がりとは、まさにこのことである。 すると、こちらに向かってくる一台の車が見えた。パトカーだった。 パトカーが駅前に止まると、2人の警察官が懐中電灯を手に出てきた。一人は映画フルメタル・ジャケットの鬼軍曹のような風貌の白人、もう一人は元野球選手のトニー・グウィンを増量した感じの黒人だった。 -
むしマガ Vol.61【余剰博士問題について】
2012-09-10 15:24220pt★むしコラム「余剰博士問題について」 先々週のむしマガvol.55では、既得権益について書きました。既得権益側にいる人間は、自分たちが既得権益側にいること無自覚である場合が多いという話です。今回のお話は余剰博士問題についてです。結論から言うと、余剰博士問題が生じたひとつの大きな原因として「博士=既得権益層」というのがあると考えています。 余剰博士問題とは、大学院重点化のもとにポスドク一万人計画が実行された結果として、国内に大量の博士が生み出され、供給過剰になっている状態を指しています。 博士号を取ると、多くの人はポスドクになります。ポスドクは数年間の任期付の研究員であり、終身雇用のポジションゲットを目標に研究活動を行っています。僕は海外にいますが、僕もそんなポスドクの一人です。 しかし博士が供給過剰になっている現在では、大学の助教などのポジションを得るのは大変難しく、ポスドク先を転々としながらいつ首が切られるか分からない生活を余儀なくされている博士が多くなっているのです。 そして、この当事者(自分も当事者ですが)の博士の中には、余剰博士を救済するために政府が積極的に介入すべきだ、つまり、セーフティネットを設けるべきだと声を上げる人がいます。 政府の政策が余剰博士を生み出した要因であるので、これを救済するのは政府の責任だということ、そして、博士を育てるためには税金が使われており、その税金で育てた博士を活用できないことは税金を無駄にする、という論理です。 確かに政府の政策にも、この原因の一因はあると思いますし、税金が投入されて博士が育成されていることも事実です。しかし、ちょっと待て、と言いたいのです。 -
むしマガ Vol.60【なぜクマムシは飼育が難しいのか】
2012-09-09 15:06220ptこんばんは。日曜日のむしマガ、なんとかサザエさんの放送前にお届けできました。 サザエさんを見ながらでも、見ながらでなくても、日曜日の平和な夜にクマムシの世界に浸っていただければこれ以上の喜びはございません。★クマムシトリビア その21 読者からのクマムシにまつわる様々な疑問に対して堀川が回答します。◆ 質問: クマムシの飼育が難しいという話を以前おっしゃっていたと思います。しかし、「地上最強に死なない」と、「飼育超困難」がどうも矛盾に思えてしまったのですが。飼育しようとするとガンガン死んでしまうのでしょうか?◇ 回答: クマムシが「地上最強に死なない」かどうかは分かりませんが、乾燥や凍結、そして放射線などのストレスに対して、動物界で最も高い耐性を示すのは間違いありません。もちろんここでいうクマムシとは、陸に棲み乾眠能力をもつクマムシのことです。 クマムシの飼育は難しいです。ほとんどのクマムシの種類において、何が適切な餌かわかっていませんが、餌がわかっている種類でも、卵をあまり多く産まなかったり、飼育培地を交換しないと雑菌が沸くなどして環境が悪化して弱ってしまうことが多いのです。 高い耐性能力をもつクマムシが、なぜ飼育しようとするとなかなか増えないのか。これには生物の「能力バランスルール」を考える必要があります。つまり、ある能力を高めると別の能力が低下せざるを得ない、というルールです。 わかりやすい例えとして、ドラえもんのひみつ道具「いいとこ選択しボード」について説明します。 このひみつ道具には、知能指数、体力指数、かっこよさ指数の3つの指数のメーターがボードに備わっていて、そのうち好きな指数を上げることで、自分の能力を高めることができます。
1 / 2