-
【連載物語】不思議堂 黒い猫【阿吽】~ふたりの陰陽師編~ 第一話【黒の陰陽師】/後編
2023-09-18 12:17season2~ふたりの陰陽師編~第一話『黒の陰陽師』後編
著:古樹佳夜
絵:花篠
前編はこちらからお読みいただけます◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
吽野と阿文、そして満月は、
不思議堂の裏手にある暗い夜道を進んでいた。
月は南に向かって宙空に昇り、雨雲の隙間から上弦を覗かせている。
「あ〜あ。俺のネギマ……」
吽野はガックリと肩を落とした。歩きながら、飲み足りないとばかりに、
ブツクサと文句を垂れるのである。そんな相棒を、阿文は肘で小突いた。
「なんでもないならそれでいい。その時は、また店に戻って一杯やろう」
宥める満月に向かって、吽野は特大のため息を吐いた。
「ねえ、なんでそんなに急ぐのさ」
「別に急いじゃいない。お前こそ、さっさと歩けよ」
「んなこと言ったってぇ……」
上背のある満月の歩幅は大きい。投げやりにそぞろ歩くだけの吽野など、
すぐに置き去りにす
1 / 1