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記事 5件
  • 【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 第五話序章「犬張子」

    2022-05-31 14:07  
    第五話 序章 犬張子著:古樹佳夜
    絵:花篠
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    ■『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 連載詳細について
    https://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2060929
    ※本作『阿吽』のご感想・ファンアートなどは 
    #あうんくろねこ をつけてツイートいただけますと幸いです
    [本作に関する注意]---------------------------------
    本作(テキスト・イラスト含む)の全部または一部を無断で
    複製、転載、配信、送信、譲渡(転売、オークションを含む)すること、
    あるいはSNSなどネット上への公開・転載等を禁止します。
    また、内容
  • 【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 第四話第四章「依代」

    2022-05-28 14:49  
    200pt
    第四話 第四章 依代  著:古樹佳夜
    絵:花篠
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    ■『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 連載詳細について
    https://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2060929
    ※本作『阿吽』のご感想・ファンアートなどは 
    #あうんくろねこ をつけてツイートいただけますと幸いです
    [本作に関する注意]---------------------------------
    本作(テキスト・イラスト含む)の全部または一部を無断で
    複製、転載、配信、送信、譲渡(転売、オークションを含む)すること、
    あるいはSNSなどネット上への公開・転載等を禁止します。
    また、内容を無断で改変、改ざん等を行うことも禁止します。
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    ◆◆◆◆◆神社◆◆◆◆◆
    夕刻、廻り髪結の仕事が終わってから、
    阿文は主人の待つ神社へと向かった。
    長屋生活で集めた怪異にまつわる情報を報告するためだ。
    吽野とは暮れ六に境内の前で待ち合わせている。
    阿文 「少し早く着き過ぎたか」
    今日は大店の娘たちに話しかけられることもなく、
    仕事は早々に終わった。だから、まだ時刻は七つ頃で、
    西の空に日が傾き始めたくらいだった。
    阿文「吽行が来るまで、社の周りを綺麗に掃除しておくか」
    髪結道具を片手に、阿文は境内へ続く石階段を上がっていく。
    黒猫 「にゃあん」
    ふと、小さな鳴き声に呼び止められた。
    阿文 「ああ、なんだ。黒いのか」
    阿文は微笑み、身を屈めると、黒猫の頭を撫でる。
    黒猫は気持ちよさそうに、ゴロゴロと喉を鳴らした。
    阿文 「ふふ。長屋から追いかけてきたのか? 残念ながら、今日は餌は持ってないぞ」
    黒猫 「にゃーん」
    黒猫は小さく鳴き声をあげると、阿文の少し前を歩き始めた。
    阿文 「一緒に主人様のところに行くか?」
    黒猫 「にゃあ」
    黒猫は振り返って、目を細めて返事をした。
    阿文 「さて、箒はどこに置いたかな」
    石段を登りきった阿文は、早速自分たちの主人の待つ社に向かった。
    ところが、社には奇妙な先客がいた。
    何が妙かと言えば、相撲取りのような大きな体に、
    大きさの合わない服を着ている。
    それが、ひどくうす汚れた風体で、
    ぼんやりとした表情で、お参りをするでもなく、
    一人で立っている。
    その大男は、じっと社を眺めていた。
    阿文 (……この異様な気……! まさか)
    阿文の横で、黒猫も毛を逆立てた。
    けれど大男は、威嚇する猫の声に一瞥もしなかった。
    阿文 「もし?」
    阿文は声をかけた。しかし、
    男 「……」
    男が阿文の言葉に反応を示すことはなかった。
    その場でゆらゆらと揺れながら、口をだらんと開けたままだ。
    日の落ち始めた神社に、男と阿文は二人きりだった。
    大男の影が長く伸びてくる。その様子は一層不気味だ。
    しばらくして、男は社殿をぐるぐると回り始めた。
    何が目的なのか、検討もつかない。
    いよいよ阿文は警戒の色を強め、大声で呼びかけた。
     
  • 不思議堂【黒い猫】令和4年3月・4月記/ミステリにゃん限定チェキプレゼントのお知らせ

    2022-05-21 17:17  
    ミステリにゃん(会員)でご応募の方の中からそれぞれ抽選で2名様に、令和4年3月・4月の現場にて撮影した
    店主・浅沼晋太郎と店員・土田玲央 の

    「サイン入りチェキ」をプレゼントいたします。
    【応募しめ切り】2022年5月24日(火)23:59
    ●ご応募はこちらから。諸注意をご確認の上、ご応募ください3月記https://ch.nicovideo.jp/kuroineko/event/ev294874月記https://ch.nicovideo.jp/kuroineko/event/ev29488
    ●ミステリにゃん入口https://ch.nicovideo.jp/kuroineko/join?hash=1633515193
  • 【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 第四話第三章「不思議屋」

    2022-05-14 16:27  
    200pt
    第四話 第三章 不思議屋  
    著:古樹佳夜
    絵:花篠
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    ■『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 連載詳細について
    https://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2060929
    ※本作『阿吽』のご感想・ファンアートなどは 
    #あうんくろねこ をつけてツイートいただけますと幸いです
    [本作に関する注意]---------------------------------
    本作(テキスト・イラスト含む)の全部または一部を無断で
    複製、転載、配信、送信、譲渡(転売、オークションを含む)すること、
    あるいはSNSなどネット上への公開・転載等を禁止します。
    また、内容を無断で改変、改ざん等を行うことも禁止します。
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    ◆◆◆◆◆人間の暮らし◆◆◆◆◆
    阿行と吽行が名を阿文と吽野に改め、
    長屋で暮らし始めてから数ヶ月。
    阿文は、長屋の一室で二人の少女に囲まれていた。
    梅「阿文さん、今日は私の髪を結綿(ゆいわた)じゃなくて銀杏返し(いちょうがえし)で結ってちょうだい」
    阿文「わかりました」
    阿文は髪結として働いていた。
    少女たちは、うっとりとした表情で
    彼が髪結道具を取り出す仕草を見つめている。
    この少女たちは桜と梅という。武家屋敷の令嬢たちだ。
    梅「ねえ、阿文さんの長屋に押しかけちゃってごめんなさいね。怒ってる?」
    阿文「いいですよ。梅さんのお宅には、明日伺う予定でしたし」
    本来、阿文は「廻り髪結い」と言って、
    客の家に通うのが普通だ。
    この部屋は髪結床ではない。
    ところがこの二人、美丈夫の阿文を気に入って、
    部屋に押しかけてきたのだった。
    桜「私のところにはいつ来てくれるの?」
    阿文「桜さんのお宅には明後日に。旦那様からお母様の髪結いと一緒にお願いされてますよ」
    桜「やった! じゃあ、また二日後も阿文さんに会えるのね」
    梅「もう! 桜ったら、ずるい!」
    子犬が目の前で喧嘩を始めた。
    可愛らしいな、と、阿文は穏やかな気持ちになりつつ、
    梅の頭からかんざしを抜き取った。
    それから鮮やかな手つきで髪を櫛で梳かした。
    最近要領を得たばかりだが、なかなか様になっている。
    桜「ねえねえ、阿文さん、あなた怖い話って好き?」
    阿文「怖い話ですか?」
    少しでも阿文の興味をひきたいと、
    桜は話を持ち出した。
    連れの髪が結い終わるまで、
    桜は手持ちぶさただったのかもしれない。
    梅「桜ったら、またあの話をするの?」
    桜「いいでしょ別に!」
    阿文「いいですよ、聞かせてください」
     
  • 【連載物語】『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 第四話第二章「長屋の暮らし」

    2022-05-04 18:43  
    200pt
    第四話第二章 長屋の暮らし  
    著:古樹佳夜
    絵:花篠
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    ■『不思議堂【黒い猫】~阿吽~』 連載詳細について
    https://ch.nicovideo.jp/kuroineko/blomaga/ar2060929
    ※本作『阿吽』のご感想・ファンアートなどは 
    #あうんくろねこ をつけてツイートいただけますと幸いです
    [本作に関する注意]---------------------------------
    本作(テキスト・イラスト含む)の全部または一部を無断で
    複製、転載、配信、送信、譲渡(転売、オークションを含む)すること、
    あるいはSNSなどネット上への公開・転載等を禁止します。
    また、内容を無断で改変、改ざん等を行うことも禁止します。
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    ◆◆◆◆◆長屋◆◆◆◆◆
    阿行「ここが長屋と言うものか」
    吽行「なんだか手狭だねぇ?」
    阿行「四畳半に二人だからなぁ。でも、裏店(うらだな)はここよりも狭いはずだ」
    阿行と吽行の二人は、長屋の戸を開け、
    そろりと足を踏み入れた。
    中は片付いていて、新たに居を構える者を
    受け入れる準備は整っているようだ。
    備え付けの茶箪笥に空の行李。
    箪笥の横には文机、小さな行灯が、
    行儀良く寄せられ、並べてあった。
    吽行「確か、大屋さんが裏店は九尺二間(くしゃくにけん)と言っていたっけ?江戸長屋ってのは、せせこましいものだ」
    阿行「確かにな。いつの間にこんなに立て込んだのやら……」
    吽行「人間の住む場所というのは、窮屈だ。こんなところで本当に生活ができるのか?」
    吽行は文句を言いつつも、畳の上に腰をおろして、寝転んでみた。
    吽行「あ……」