冬の寒さは必然的に読書量を多くさせる。窓辺まで雪が降り積もった書斎に籠もって、と「冬夜読書」という有名な漢詩に描かれているような風情ある文章でも書いてみたいところだけれど、今年は暖冬だし、そもそも僕が暮らしているのは冬でもあたたかい陽射しが降り注ぐ浜をビーサンで散歩する人もいるような海辺の町だ。雪など滅多に積もらない。

 それでも読書量が増えるのは朝晩湯船に浸かっている間ずっと紙の本を読んでいるからだ。あえて「紙の本」と書いたのには理由がある。数年前に荷物をトランクひとつ分にまで削ぎ落とした際、