戦前、通信社に同盟通信があり、戦後、これが、共同通信と時事通信に分離した。戦後、時事通信の内信部長の任にあった大屋寿雄が第2次大戦前、自らが経験した日中戦争、欧州戦争、太平洋戦争について、『戦争巡歴』という題で総ページ数、731という大部のものが今出版された。

 この本の冒頭石山永一郎共同通信編集委員が「教訓の宝庫」と題し一文を載せているがこれが興味深い。

 もし、戦前、同盟通信の記者が軍や政権の指示の下、鉄の規律で上の命令に従って書いていたのなら評価は簡単だが、そうした強い規律もなく、比較的自由に書けそうな雰囲気の中で記者は活動しており、そうだとすると、同盟通信などが書いた報道で国を誤った道に導いてしまったとすると事態はより深刻ではないかとの問題提起をしている。つまり、今と同じような環境で記者が仕事をしていて「国を誤った道に導いてしまった」とすると、そこから考えなければなら