私の『戦後史の正体』について陰謀論と批判する人がいる。
こういう人は、歴史を勉強しているのだろうか、戦略を勉強したことがあるのだろうか、不思議に思う。
先ずこうした人は、『孫子』位から勉強を始めたら如何だろうか。
孫子の兵法に謀攻編がある。「故に上兵は謀を伐つ。其の次ぎは交を伐つ。その次は兵を伐つ。その下は城を攻む。攻城の法は、已むを得ざるが為めなり。」とある。口語訳は「だから軍事力の最高の運用法は、敵の策謀を未然に打ち破ることである。その次は敵国と友好国との同盟関係を断ち切ることである。その次は敵の野戦軍を撃破することである。最も劣るのは敵の城を攻撃することである。城を攻めるという方法は、他に手段がなくてやむを得ずに行なう」とある。
国際政治や安全保障の分野で謀略がないと思う人は、孫子から言わせれば、「最も劣るのは敵の城を攻撃することである」と言われるごとく、戦いは「城を攻めること」位にしか考えぬ「最も劣る」と定義される部類に属する。しかし、「城を攻めること」位にしか思えぬ「最も劣る」レベルの人が、今日本では大手をふって、「陰謀論」「陰謀論」と騒ぐから滑稽である。
私は『戦後史の正体』を書くにあたって、わざわざ、冒頭に陰謀論に対する考え方を紹介しておいた。次に紹介する。
米国の対外工作の中心は、みなさんもよくご存じのCIAです。その元長官であるW・E・コル ビーが著書のなかで、第二次大戦後、CIAがイタリアで行なった裏工作について次のようにのべています。「秘密チャネルによる直接的な政治的、準軍事的援助によって『干渉』することは、数世紀にわたって国家関係の特徴となってきた。各国は自衛のために武力を行使する道徳的権利をもち、その目的に必要な程度の武力行使を許されている。もしもそのような軍事的干渉が許されるなら、同じ状況下でそれ以下の形での干渉は正当化されよう」(『栄光の男たち――コルビー元CIA 長官回顧録』) 直訳調で少しわかりにくい文章ですが、コルビーはここで、日本の評論家たちが「陰謀論だ」などといって否定する秘密チャネルでの裏工作が、はるか昔から広く行なわれてきたこと、他国の主権を侵害するそうした裏工作がなぜ道徳的に許されるかといえば、国家は自衛のためには軍事力さえ使うことを許されている、だから軍事力以下の形での干渉、つまり違法行為をともなう裏工作についても、当然許されるはずだといっているのです。 「イタリアの民主勢力が、ソ連の支援する〔政府〕転覆運動に対抗できるように、民主勢力に支援をあたえるのは道徳的活動といえよう。(略) この種の工作をするには、資金源は米国政府という事実を秘匿する必要があった。CIAの中道勢力に対する援助は、主として(略)直接金をわたす形で行なわれた」冷戦期にアメリカ(CIA)やソ連(KGB)がイタリアで行なっていた裏工作は、同じく日本でも行なわれていたと考えるのが常識です。事実、一九五〇年代から六〇年代にかけて、CIAが自民党や民社党の政治家に資金を提供していたことは、米国側の公文書によってあきらかにされています。歴史を勉強していない人だけが、それを「陰謀論だ」などといって安易に否定するのです。「これらの作戦で根本的に重要なことは秘密維持である。米国政府が支援しているとの証拠がでては絶対にいけない。そのため、金にせよ、(略)たんなるアドバイスにせよ、援助はCIAとなんの関係もなく、米国大使館とも関係のない第三者を通じて渡された。資金は実際には外部者によって渡され、公認の米国公務員が渡したことは一回もない」(同前)これが原則です。だから基本は、証拠は絶対に表に出ないのです。しかし現実には裏工作は存在する。「証拠がないからそれは陰謀論だ」などといっていては、話にならないのです。
ここまで、「陰謀論」と批判するものに対して、事前に懇切丁寧に説明した。
こうした文書を前にして、「陰謀論」、「陰謀論」と騒ぐ人は少しは物を考えているのでしょうか。それでもまだ不足な人には、次のニクソンの言葉を紹介しましょう。私の『日米同盟の正体』からです。
私は『日米同盟の正体』で陰謀に関するイランの童話を紹介しました。
筆者は一九九九年から二〇〇二年まで駐イラン大使を務めていた。ここでイランの童話を読みあさった。この中にフクロウの集団とカラスの集団の戦争の話がある。 童話は「ある時フクロウの集団がカラスの集団を襲いました。このときカラスの王様は何人かの大臣を寄せ集めどう対応するか意見を聞きました」で始まる。ここで、読者の皆様にはカラスの大臣になったつもりで助言を考えてみて欲しい。じつは筆者が安全保障関連での講演中しばしば行う質問である。駐イラン大使のとき、自衛隊の練習艦隊がイラン革命後初めてイランを訪問し、その際、「大使、講話をお願いしたい」と言われたときにも艦上でこの問を出した。 さて、読者はどのような助言を用意されただろうか。イランの童話では案がいくつも出る。戦う、一時移動する、交渉する、他の鳥の援軍を求める、防御を固める。最後に首相が次の進言をする。「自分を傷つけ放り出せ。自分は敵に駆け込み、『自分は和平を主張し痛めつけられた。恨みがある。カラスをどう攻撃するか助言する』と言って自分を受け入れさせる。相手 側に受け入れられている間に敵の弱点を探りそれを知らせる。王様はそれに従い攻撃して下さい」(筆者訳) 最後の助言はヘロトドトスの『歴史』に記載されているペルシア軍によるバビロン城攻略時のゾピュロスの助言と同じである。外交や安全保障の歴史の中で、陰謀と言われるものは無数にある。
それらに触れたことのない人、歴史を学んだことのない人が「陰謀論」「陰謀論」と騒いでいるのは滑稽である。孫子の「攻城の法」しか知らぬ人間が「上兵」に悪態をついている図である。
さらに『日米同盟の正体』で記述したが、ニクソン大統領の言葉に次のものがある。
―権謀術数は一般に悪だとされているが、指導者にはなくてはならない。ルーズベルトは絶対に参戦しないといいながら、密かに戦争準備を進めた。権謀術数を用いなければ大事で目的を達成できないときが多い(中略)。ドゴールも〝真の政治家は権謀のときと誠実のときと使い分けなければならない。千回繰り返すことで全権掌握が初めて可能となる〟と言った(中略)。(リチャード・ニクソン『指導者とは』文藝春秋社、一九八六年)。(了)
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本来ならコッソリと陰謀を図る筈のスパイたちが、日本では何ということか、堂々とメディアにも登場し、日本政府を恫喝する。その位日本が舐められているのに、気づかず、或いは気づかぬ振りで保身を図り、日本を悲劇に陥れてきた日本の政治家達や官僚達、そしてマスコミには、もうウンザリ。そういう論調を信じ振りまわされ、自ら思考することを失った日本国民にも絶望しかけている。
社会は多面的である。
一口にアメリカと言っても、主流と傍流、右と左、白色と有色・・その他無数の属性の人々が存在する。
アメリカも一枚岩ではない。
異文化と多様性、その葛藤と共生の中に、アメリカという国はある。
しかし、ある種の固定観念が刷り込まれた人々には、そのアメリカの素晴らしい多様性は目に入らない。
結果、特定派閥の意見のみを、アメリカの総意と勘違いし、必要以上に敵視したり、必要以上にへりくだる。
陰謀と、陰謀論は、そうした個人のバイアスの中で生まれ、自己肥大する。
まだら色の現実を、陰謀で全て解釈する人間と、陰謀論で全て切り捨てる人間は、どちらも同根である。
すなわち、どちらも何かを説明しているようでいて、何一つ説明できていないのである。
相手のことをよく知ること。
相手のあらゆる面に目を配ること。
真の信頼や友情は、こうした地道な努力と関係づくり抜きに、育まれることはない。
この日本が、50年後、100年後と、末永く続くパートナーとして、ふさわしい振る舞いをすること。
個人と国家、現在と未来のあらゆるスケールで、相手のことをきちんと見据えた関係を築くことを、私は信じています。
日本をこんなにしたのは亜米利加だよ
日本は元々世界一の学力を誇っていた
だから亜米利加は、その勉強方法を自
分の国に取り入れて、日本がこれ以上
大きくならないように、ゆとり教育を
させたんだ。因みに今の韓国の性格を
作ったのも亜米利加だ。要するに韓国
は、亜米利加に操られてるということだ。
「陰謀論」って、現状を非難する時に使われる言葉(レトリック・政治的修辞)なのかな??「今俺らを取り巻く状況は実は○○の陰謀のせいだっ!陰謀だから良くないっ!変えろっ!」てな風に。
確かに陰謀と言われていい気はしないけど、外交や政治の世界においては、国家第一級の優秀な戦略家達が自国の国益(あと自分の出世)のために何日も徹夜でタイプライター打って議論して、カフェインとニコチン漬けになりながら作り出した技術的作品なんだろね。あくまで技術的。だから国益実現のための手段に陰謀のレッテルとか善悪判断持ち込むのは、政治的な意味しかないだろなぁ。相手国の外交的政治的技術を見抜けず上手く対応できなかった失態に、能力的な意味での善悪判断持ち込むのはいいかもね(笑)。CIA元副長官のリチャード・カーが言うように、「時に、邪悪な組織だと思われてもいいでしょう。しかし無能だと思われるのは我慢なりません。情報機関がそう思われているとしたら、事態は深刻です」。善悪判断と技術的巧拙は分けないとね。まぁ他国の技術に感心してばかりはいられないけども。