我が家に突然猫が来た。アメリカにいる娘が持ってきたのである。

 娘は大学の時留学したいと言った。私はそんなに前向きでない。「奨学金を得られたら許可」と言っていた。娘は内村鑑三スカラーシップを得た。アマースト大学に入り、その後バージニア大学博士課程に入った。ある雪の降る日、彼女の家の入口に放浪中の猫が座っている。なかなか動かない。外は雪だ。餌も見つかりにくい。何よりも寒い。娘は猫を家に入れ、猫はそのまま居ついた。

 バージニア大学の博士課程は容易ではない。彼女は英文学専攻であったが、先ず大きい分野二つを決め、それぞれの分野で読むべき本百冊のリストを作成する。そのリストが妥当かの審査を受ける。200冊の読了後、口頭試問を受ける。それにパスして初めてドクター論文を書くのが許される。審査を終えた後、彼女は米国の大学で教えることを希望した。これがまた難問である。通常学会時に面接審査、その後学校訪問