私達は様々な思いで小説を読む。一番の目的は娯楽であろう。でも時に人生を生きていく上で、何かのアドバイスがないかと思って読むこともある。娯楽のつもりで読んでいて、人生の生き方が顔を出す作品もある。浅田次郎氏の作品に多い。
 そうした中で、金子勝慶応大名誉教授は人生相談に小説を使ったのである。朝日新聞は「人生のつぼ」というコーナーがある。著名人が人生相談の回答者になり、金子氏も回答者の1人であった。どこかの講演で一緒になり、回答をまとめた本『悩みいろいろ』を二人で話した。「多くの本は青春時に読んでいる。今読み返すと、青春時には気付かなかったことがとても多いのです」
『悩みいろいろ』と題しただけあって、悩みには様々なものがある。質問は次である。
10年ほど前に地方公務員を辞めてしまって以来、自分なりに努力していますが定職に就けません。もちろん未婚です。公務員を辞めたのは、当時は生涯現役で働けるよう