核兵器の出現は戦略を一転させた。キッシンジャーの『核兵器と外交政策』の説明が核心をついている。
「熱核兵器の保有が増大することによって、戦争があまりにも危険なものと言わないまでも、少なくとも割の合わないものにさせる一種の行き詰まり状態を作り出している。それはもはや、戦争が考えられる政策追求の手段ではないという見識である。」
 核戦略の核心は相互確証破壊戦略である。図で見てみよう。
 ソ連 →           米国(完全に破壊される)
 先ずソ連は米国を攻撃すれば、米国は完全に破壊される。
 米国 →           ソ連(完全に破壊される)
 米国がソ連を攻撃すれば、ソ連は完全に破壊される。
 この状態の中、米国・ソ連とも最初に攻撃したら、相手を打ち負かせる。量・質の点でどちらが比較優位にあるかは問題ではない。最初に攻撃した方が勝ちだ。大変に危険な状況である。ある日、ソ連が「米国を攻撃しよう」と