出典 『鴻上尚史が選ぶ谷川俊太郎の詩』
「歌っていいですか」
歌っていいですか
独りの部屋であなたがうなされている時
歌っていいですか
あなたの苦しい夢のなかで・
歌っていいですか
塹壕の中であなたがが照準を合わせている時
歌っていいですか
幼い日の思い出の調べを・
歌っていいですか
ふるさとを見失いあなたが路上にうずくまる時
歌っていいですか
暮れかかる今日の光のきらめきを・
歌っていいですか
この世のすべてにあなたが背を向ける時
歌っていいですか
愛を あなたとそして私自身のために
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谷川俊太郎「泣けばいい」
泣けばいいんだ泣けばいい
哀しいときは泣けばいい
泣けば烏もカアと鳴く。
泣けばいいんだ泣けばいい
ひとりのときは泣けばいい
遠い誰かにとどけとばかり
風もいっしょにむせび泣く・
泣けばいいんだ泣けばいい
苦しいときは泣けばいい
泣いてどうなる
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「幼い日」に家にあった「けんはへっちゃら」(谷川俊太郎 作・和田誠 絵)が妙に懐かしくなって20年前にアマゾンで入手したが、今また取り出して読んでしまった。ただのノスタルジーなのか否か分からないが、この文と絵に独特の気分にさせられる。「ピロスマニ」の映画に通じるものもある気がする。彼らには美意識や理想の世界像が しっかり出来上がっていたのだろう。
谷川氏の「詩」は平易な言葉でただありのままの生活感・喜怒哀楽の気持ちを表現したものが多い。
「詩」を作るときは。心を「空っぽ」にして一切の先入観を排除しているといっている。
無限の可能性を秘めた「心」からその時その時出てきた言葉が「詩」となっているということなのでしょう。
学歴があると、いつも学歴を背負って、高名な誰それが言っているといって、知識を開けだす人が多い中で、一切の知識にとらわれることがない。ただ「詩」に向き合っている姿勢が、、素朴だが、また子供にもわかりやすく親しまれ、学校でも取り上げられているのでしょう。