禅の言葉、「不立文字」について、鎌倉時代に凝然(1240-1321)が書いた『八宗綱要』には「達磨西来、不立文字、直指人心、見性成仏」があります。鎌田茂雄氏の訳をお借りすれば、「達磨が中国へ来て禅宗を伝えた。その教えは文字によることなく、直ちに人心を見て、自己の本性を徹見して成仏することを説いた」の解説があります。すでに見た『伝心法要・宛陵録』で「此一心即ち仏なり、仏と衆生と更に別異なし」「唯、是の衆生は相に著して外に求め、之を求むるに轉た失す」、「法身の説法は言語音声形相文字を以って求むべからず。自性虚通なるのみ」とあるのを見た。
これは多くの宗教と異なる。キリスト教であれ、イスラム教であれ、ユダヤ教であれ、絶対神が存在し、絶対神が人類に与えた教えを守ることを主たる目的とする。「モーセが神から与えられたとされる10の戒律」が代表例である。①わたしのほかに神があってはならない。②あなたの神、