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第12回文化レクリエーション…日中文化交流協定締結40周年記念 特別展「三国志」
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第12回文化レクリエーション…日中文化交流協定締結40周年記念 特別展「三国志」

2019-08-24 15:36

     本会設立以来、毎年のように訪れる「東京国立博物館(TNM)」ですが、今年は日本でも大人気の三国志をテーマとする展示での開催となりました。会場では日本人はもちろん、中国語と思われる言葉も飛び交っていて関心の高さが感じられましたね。中国語も正確には4種の区分があるようですが、私の耳には区別が付きません(苦笑)。
     音声ガイド(有料)にも一工夫あって、三国志関連のアニメやゲームの声優が担当したものと、歌手が後段で述べる吉川英治著「三国志」の物語を交えつつ語るものの二種類が用意されており、来場者の趣向によって選べるようになっていました(値段も少し異なります)。最近は三国志への入り口が小説や漫画だけではなくエンターテイメント分野からの流入も多いとのことで、その方面からの関心もきちんと評価して捉えようとする姿勢には好感が持てますね。私はガイドを使わずに鑑賞するタイプですが、三国志の前提知識がなくても楽しめるような仕掛けがあることはとても良いことだと思います。


    - 関羽の石像が出迎え -
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     基本的に中国の歴史は「正史」に位置付けられる書によって記されているのですが、三国志については正史の他に「演義」という大衆小説のような書かれ方をしたストーリーも存在し、我が国ではそちらの話が広く浸透しています。小説家・吉川英治が著した「三国志」も演義の内容に沿ったものと考えられ、日本の三国志理解におけるデファクトスタンダード的な位置を築いていると言って良いでしょう。また、この吉川三国志を基調とした横山光輝著の漫画作品「三国志」60巻も非常に読まれていますね。私の周囲にも愛読家が少なくありません。三国志演義が劉備・関羽・張飛・諸葛亮といった「蜀」の人物を主たる登場人物に据えているのは、この著者である「羅漢中」という人物が蜀地方の出身という理由もあるとかないとかで、私自身の三国志にまつわる記憶も呼び起こしながらの鑑賞となりました。
     ところで、中国人の知己と議論になると面白い話があって彼らは当時の中国における事実上の支配者であった「曹操」を英雄視しています。そして「劉備はずる賢い男、諸葛亮は智謀の人だが不運極まる、関羽は義の人だが仕える主を誤った」などの評価をしており、日本における三国志のイメージとは乖離した認識を持っています。正史を中心視している中国と、演義が広まっている日本での差異はとても興味深いことですね。
     こうした遠い過去への歴史認識への違いを感じるに、近現代における中国・韓国・北朝鮮といった国々が日本へ抱く認識と我が国が自認する歴史観との間に摩擦が起きるのは、ある意味で「不自然なことではないのかもしれない」と自らの視野を一層広げる必要性について思案したりもしたものです。

    - 人形劇・三国志 -
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     さて主題です。展示会場を歩いている際に脳裏をよぎったのは「同時代の日本」のことでした。我が国の最初の書物と言えば古事記ですが、これが8世紀前半の712年成立。三国志の舞台よりも500年も時代を下っています。そして現在も使う「漢字」は「漢の国の字」ですね。漢は前漢・後漢に分かれていますが劉備の祖先と言われる中山靖王・劉勝は前漢時代(紀元前)の人物です。劉備自体は後漢の人。我が国はその頃、弥生文化(稲作文化)が広がる様相を示していた時期でしょう。縄文文化・弥生文化は文字が残っていない文化なので、その生活様式は出土する土器・鉄器や遺跡・遺構といったものから想像するしか術がありません。もちろん、これはこれで豊かな人間の文化・生態を示していますが、一方で中国大陸では文字を通して自国の軌跡を記述するという「より具象的な営み」を展開していたわけで「中国3千年の歴史」という表現はやはり伊達ではありませんね。

    - 青銅器での表現力も高い -
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    - 赤壁の戦いを模した矢の雨、船に突き刺さった矢を回収する孔明の智謀 -

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    - 弩の技術は目を見張る -
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    - 紙も現存 -
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    - 撒菱(まきびし)の罠 -

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    - 張飛の武器と伝わる蛇矛 -
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    - 俎板の鯉 -
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     基本的に私自身は三国志に関わることについて通り一遍は把握しているつもりでしたが、今回の展示で新たに更新された知識がありました。それは「曹操の墓が発見されていた」という点です。2000年に入って以降の調査で判明したようですが、すでに盗掘にあっており葬送品に類する宝物等は持ち去られていたとのこと。残された石碑に刻まれた文や墳墓の形状からして、曹操の遺言(墓を質素にせよ等)に符合するという鑑定に。その墓の遺構を展示で再現していたのは白眉でしたね。空間に足を踏み入れるとたちまちタイムスリップが起きます。脳裏に浮かぶ往時の想像と自らの網膜に映る墳墓の具体とが写実的に融合して「乱世の奸雄」の終焉と臣下の心境が胸に去来します。場内で流れていた発掘映像では曹操本人のものと見られる白骨化した姿が捉えられていました。その画を見た時、周囲の音が遮断され自らの鼓動だけが際立って迫ってきて「ただ一人立ち尽くす」ような感覚に襲われたことが忘れられません。畏敬なる存在、曹操孟徳。その感を新たにした一幕でありました。

    - 曹操のものとされる墳墓 -
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     三国志展は10月から九州国立博物館でも鑑賞が始まります。上記の曹操墓も展示されるとのこと。来場される方にとって代えがたい価値とテーマを提供してくれることでしょう。三国志に関心があってもなくても楽しめる内容になっています。是非とも足を運んで、これから未来にわたっても滅ぶことのない英雄達の軌跡に触れてもらいたいと願うばかりです。

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