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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『君の名は。』完全解説と、もしも3つの願いが叶うなら?」

    2019-07-20 07:00 18時間前 
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    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/20
     今日は、2019/06/30配信の岡田斗司夫ゼミ「『君の名は。』完全解説と、『なつぞら』『ガンダム THE ORIGIN』、プラス6月のお便り&ステッカープレゼント」から無料記事全文をお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
    雑談と今週の『なつぞら』
    【画像】スタジオから こんばんは、岡田斗司夫ゼミです。  今日は6月30日ですね。6月5回目の日曜日ということで、なんかね、気圧もあってちょいと疲れてます。よろしくお願いします。
    「こんばんは」(コメント)
     こんばんはです。  今、色々とコメントを見ている最中です。
     なんかよくわからないけど、今、「100ポイント」という文字と共に、プレミアム放送の画面の方に湯呑が落ちてきたんだけど。  こんなもん、初めて見たな。なんのことだろう?
     今日は、ちょっと急に機材を用意したもんで、YouTubeライブの方が不安定で、画面がガタガタするみたいです。  次回は専用の機材を入れて、パソコンももう1台、モニターももう1面用意して準備します。  すみません、僕が「6月中にYouTubeライブを始めたい」とスタッフに言ったもんで、今回はなんとか準備してもらいました。なので、ちょっとガタガタです。  YouTubeライブの方で見ている人は、ガタガタ気になったら、ニコ生でも同じタイミングで無料でやってますので、こちらで見ると楽だと思います。  最初の30分くらい、いわゆるニコ生でいつもやっている無料枠という部分は、YouTubeライブでも同時に配信しますので、お楽しみください。
     春風亭昇太さんが、いきなり結婚を発表しましたね。  なんか、落語会では「最後の砦」と言われてた人が、結婚してしまいまして、「なんかちょっと面白いことになったな」と。  「笑点で何か重大発表がある」と聞いた時、これはもう、昇太の結婚か、または、山田君がついに格上がりして、三平が格下がりして座布団運びになるのかのどっちかだろうと思ってたけど、やっぱり結婚でしたか」というふうに思います。
    「大人のおもちゃが映ってる」(コメント)
     大人のおもちゃに見えるのか、これが!
    【画像】いじめる棒 これは違いますよ。これは「コサック兵がユダヤ人をいじめる棒」という、僕のウクライナ土産ですよ。何を言うんだ。
     ではでは、始めましょう。
     では今週の『なつぞら』からです。  ついに、なつがアニメーターとして認められるエピソードでした。
     なつは、こういう絵を描いたわけですね。 (パネルを見せる)
    【画像】なつの絵 ©NHK ちょっと白黒だから見にくいんですけど。走ってる馬の足を表現しようとして、残像込みで作画して、前足が4本ある馬を描いたんです。  しかし、これに対して、『わんぱく牛若丸』の監督である露木監督が怒ります。 (パネルを見せる)
    【画像】監督と作画班 ©NHK 真ん中の人が露木監督で、後ろの方で不安げに見ているのが、後の高畑勲なわけですけど。非常識な4本足の馬に対して怒る露木監督に、作画班が全員一丸となって対抗しているという場面です。  露木監督が「なんてものを描くんだ! こんなものを客に見せれるか!」と言うと、「いや、これでいいんだ!」というふうに作画班全員がなつを庇う。  いわゆる「なつが周りのみんなから一人前のアニメーターとして認められた瞬間」というやつです。
     このシーン、『なつぞら』というドラマの中では、割りと美談ぽく描かれているんですけど。こういうトラブルって、実は実際のアニメの現場でもよくあります。  つまり、これって作画の暴走なんですよ、ハッキリ言っちゃって。  「こんなことを勝手に作画がやると、このシーンは目立っちゃうことになるんだけども、それをして大丈夫か?」ということなんですね。  「この馬は、このシーンで目立っていいのか?」という判断を、勝手に動画がやっちゃったということなんですよ。
     この場面、前後のシーンがないのでわからないんですけど、演出家が「坂を駆け下りるシーンとして一気に見せたい」と思っていた場合、馬だけがこういう動きをしちゃうと邪魔なんですよね。見ている人の気がお話の本筋から横に逸れちゃう、と。  そういうのがないように、演出家はドラマを作っているんですけど。  これって、舞台の例えで言うと「単なるエキストラの通行人が、ちょっと舞台を通る時に、アドリブで一発ギャグをやる」というのに近いんですよね。  全体の流れからして、そのシーンを面白いと判断して入れるかどうかというのは、実は演出家の判断なんですよ。だから、監督、つまり演出の人が、怒って怒鳴り込んでくることになるわけですね。
     なぜこれが作画と演出の対立っぽく描かれるのかと言うと。  もうね、30年近く昔になるんですけど、押井守監督から聞いた話があって。「アニメの監督というのは理屈が言えなきゃダメだ!」っていうふうに、押井さんはすごく熱く語ってたんですよ。「言葉を持ってないとダメだ!」と。  アニメーター、絵描きというのは、習性として「自分より絵が上手いヤツの言うことは絶対に聞くが、絵が描けない人間の言うことはなかなか聞かない、説得されない」という頑固者が多い、と。  そんな絵描き達に、こちらの意図を納得させて、一度描いたものを描き直させるというのは至難の技だ。「こういうふうに描き直してくれ」と言うと、「描けません」とか。「じゃあ、そっちで勝手に描いてください」なんて、開き直るヤツまでいる。  「そんな時、演出家が対抗できるのは、言葉の力だけだ」と。どれくらいの言葉を持っているのか? どれくらいの理屈を持っているのか? もう、言葉でひたすら説得するしかないんだそうです。  絵描きが絵で勝負するならば、演出家というのは言葉で、理屈でそれに対抗する。勝負する、と。
     高畑勲っていうのは、実はそっち側、押井守側の人間なんですよ。  宮崎駿って、自分で絵が描けるじゃないですか。だから、アニメ監督としては、ズルいというか、ちょっと特別なんですよ。  宮崎さんって、絵が描けるから、最悪「こう描くんだよっ!」って描いて見せることで、大体の人は「うわあっ! それは思いつかなかった! それは描けてなかった! すいません!」ということで参っちゃう。  つまり、絵描きに対して絵で反論することができるんですね。
     このシーンでも、本当は、露木監督は「なぜダメか?」というのを言葉で言わなきゃダメなんですよ。  「こんな非常識なものはダメだ! 誰が許可したんだ!?」って怒って、対立シーンになっているんですけど、すごい「やらせの対立」っぽいんですよね。
     本当の監督だったら、ここで「このシーンは、こうでこうでこうだから、この絵はダメなんだ」というふうに、あくまで言葉でダダダッと言うのが、当たり前のやるべきことなんですよね。  でも、このシーンではやらない。ただ単に権力争いというか、意地の張り合いみたいに見えちゃう。  なぜかというと、実は「ここにいる、高畑勲をモデルにした坂場さんというキャラを立てるため」なんですよね。  坂場というのは、このドラマの中でヒーロー属性として設定されているんです。
     ここで露木さんが、論理的なことをバーっと言っちゃうと、坂場のキャラが弱くなっちゃうんですね。  そして、この『なつぞら』という舞台上には、坂場以上に理屈っぽい人間がいてはならないんですよ。それが、彼の個性であり、ヒーロー属性だから。  その結果、露木監督の怒り方は、理不尽な、今コメントで流れてたんですけど、「噛ませ犬」っぽい怒り方になっちゃうわけですね。
     このヒーロー属性というのを、わざわざ設定したことによって、いわゆる坂場(高畑勲)が『なつぞら』というドラマの中での主人公なつの相手役、つまり、なつの恋愛相手になるということが、ほぼ確定したと思います。  これによって、これから8月に訪れるドラマ全体のクライマックスも、自動的に『太陽の王子ホルスの大冒険』になるということに、ほとんど自動的に決定したわけですね。  ということは、お話全体の盛り上がりも、「経営者と労働者の対立の中で、本当に作りたいアニメ、作るべきアニメというのは何なのか?」という部分になる。  でも、『太陽の王子ホルスの大冒険』は興業的に大失敗するんですよね。興業的に大失敗した結果、二度と演出の仕事が回ってこないということに絶望して、高畑勲は東映動画を去る事になるんですけども。  この歴史的事実を、ハッピーエンドで終わる朝ドラの中に、どのように入れるのか?
     ハッピーエンドのドラマの中に、こういうのを入れるのは難しいので、そこはもう、グニッと曲げて「『太陽の王子ホルスの大冒険』みたいなアニメは大成功しました」っていうふうになるのか?  または、『あまちゃん』の中に出て来る3.11大震災のように、「こんなこともあったんだけど、でも、立ち上がりつつある。なつはやっぱり元気です」というふうにするのか?  そこら辺、もう、どんなハッピーエンドにするのか、ちょっとワクワクが止まらないような状態です。
     ドラマの中での坂場さんというのは、高畑勲がまだまだ下っ端だった時代なんですけど。ここで語られる彼の演出法というのはソクラテスの対話法に近いですね。  「これでいいんでしょうか?」というふうに、相手にどんどん聞いて行くことで、相手のハードルを上げていく。  「それでいいんですか?」、「本当にそれでいいんですか?」、「顔だけの演技だけでいいんですか?」、「それしか考えてないんですか?」というふうに。
     これ、聞いている自分の中に答えがあるかどうかは問題じゃないんです。  だから、坂場さんは、「じゃあ、どうすればいいんですか?」という聞き返しに対して、何も答えません。なぜかというと、これが対話法による演出だからですね。  それよりも、アニメーターが自分と同じ問題意識を持って描いてくれれば、その悩みから生まれた表現というのは、必ずや絵を描けない自分の想像の上を行く、尊敬できるものになる、と。  そういう作り方なんじゃないかと思います。
     来週は、舞台が十勝に戻るので、アニメの話は1回止まるんじゃないかと思います。  7月8日からの週に、ついに宮崎駿が登場するみたいですね。一気にアニメが加速するので、今週は一休みしながら、続きを見ていこうと思います。  『なつぞら』の話はここまでです。
    『ガンダム THE ORIGIN』から考える「SFとファンタジーの違い」
    【画像】スタジオから じゃあ次は、『ガンダム THE ORIGIN』ですね(笑)。  もう、毎週毎週、話してる『ガンダム THE ORIGIN』の話をちょいとします。
     あのね、せっかくYouTubeライブでも配信してるから話しますけど。  このニコ生ゼミの無料枠というのは、分割してYouTubeでも公開しているんですね。  で、YouTubeにはコメント欄というのがあって、その動画に対するコメントが付きます。僕、そういうコメントには、だいたい目を通しているんですけど。
     先週、『ガンダム THE ORIGIN』に関して「月面都市の中にあるアナハイム・エレクトロニクスのシーンの、6分の1重力の表現が、まあ、ひでえよ」という話をしたんですよ。  そしたら、YouTubeのコメントとしてわりと多かったのが、「いや、あの時代だから人工重力があるんだろ?」とか、「巨大ロボットを作れるほどのアナハイム・エレクトロニクスの技術があれば、宇宙に移民してから70年も経ってるんだから、人口重力くらい当たり前だろ」という意見。  これを読んで、僕、ちょっと複雑な気持ちになっちゃったんですよね。
     まず、SFとファンタジーの違いから、説明させてください。
     SFというのは「科学的なお約束に沿って展開するもの」なんですよ。  例えば、「100年以内に巨大ロボット」はアリなんだけど、「100年以内に重力制御」はナシなんですね。  まあ、『銀河英雄伝説』みたいな千年以上の遠未来だったら、重力制御もアリなんですけど。
     この「アリ / ナシ」というのは、「技術的に無理なのか? 科学的にまだ無理なのか?」で決まります。  例えば、巨大ロボットは単に技術的に無理なんですよ。つまり、技術が追いつけば、巨大ロボットは作れるんですけど。  でも、人間みたいに恋愛するロボットというのは、科学的にまだ無理なんですね。  この技術的に無理と、科学的に無理というのには、ちょっと温度差があるんです。
     こういう、僕が今言った面倒くさい制限とか約束事を、あえて面白がって守って、そういうルールの中で遊ぼうというのがSFなんですよ。  それに対して、こういった制限が面倒くさくなって、それを外してもっと自由に遊ぼうというのがファンタジーなんです。  ファンタジーとSFというのは、どっちが優れてるというものではなくて、そういった技術的な制限や科学的な制限、制約、縛りを面白がるか、あんまり面白がらないかの差だと思ってください。
     例えば、『ハリー・ポッター』はファンタジーだから、魔法のエネルギー源を問わないんですよ。  魔法を使っても、「じゃあ、この系にあるエネルギー保存則はどうなっているのか?」ということは、あんまり気にしないんですね。  逆に、初期の『機動戦士ガンダム』というのは、慣性の法則とか、科学的な部分にこだわりまくってるんですよ。そこがこの作品を面白がるポイントの1つなわけですね。
     富野さんというのは、その時代にやっていたような他のロボットモノとの差別化というのを、ここでやろうとしたわけですね。  なのに、「所詮は巨大ロボットモノなんだから、そこまでのリアリティなんか別に要らない」と言うと、あの頃の富野さんを全否定するような形になるんです。  俺、YouTubeのコメントを見て、「それは富野さんが気の毒だよ」って思ったんですけど。
     巨大ロボットというのは、さっきも話したように、技術的に無理なだけなんですよ。材料工学とか動力源の問題が解決したら、全然アリなんですよね。  でも、反重力とか重力制御というのは、科学的にまだ無理なんです。理論も実験も、その基礎状態から何もない状態です。「こうすれば可能なんじゃないかな?」という仮説が、かろうじてあるくらいですね。  なので、『ガンダム』の中に、人工重力場を登場させると、一気にジャンルがファンタジーになっちゃうんですね。  「技術的に無理だけど、科学的には不可能じゃないよね」っていう、「もしも」を重ねて楽しむのがSFであって、SFとファンタジーでは、どっちが上とかじゃなくて、ジャンルが違うんです。
     もちろん、そういうこだわりがない人にとっては、「ファンタジーだろうがSFだろうが、どっちでも自分の好きなロボットモノの世界なんだから、うるさいことを言わずに楽しませてくれよ」という話なんですよ。  それはね、すごくよくわかる。  ただ、この岡田斗司夫ゼミというのは、申し訳ないけど「ファンタジーなロボットモノが大好きだ」と言う人をターゲットにしてないんですよね。  なので、たまたま動画を見ちゃって、気分を害してしまった人には「申し訳ございません」と謝るしかないんですけど。
     さて、そういうこだわりが大好きな人への、SFの話です。  先週の『ガンダム THE ORIGIN』で、僕が一番ゾクゾクしたのが、コロニーの落下シーンなんです。  これ、初期のTVシリーズでも「人類史上最悪の被害」として描かれているんですけども。
     この人類の歴史上最大の被害というのがかなり正確に描かれているところが、僕、見ててゾクゾクしたんですよ。  『機動戦士ガンダム』の放映当時、ガンダムのファングループの1つにGun Sightというところがありました。東京のファングループだったんですけど、そこが作った有名な商業誌に『ガンダムセンチュリー』というのがあるんです。  この本の中で、コロニー落としの被害のすごまじさを、たった1行で語っているんですけど。「コロニー落下の影響で、地球の自転速度が1時間あたり1.2秒加速した」って書いてあるんですね。  これが、やっぱりSFの感覚なんですよ。
     つまり、地球がこういうふうに回転しているわけですね。 (地球儀を見せながら)
    【画像】地球儀 それに対して、コロニーが地球の自転と同じベクトルで衝突してくるわけです。すると、地球の自転は、コロニーの重さ×速度によって、加速しちゃうわけですね。  それまでの自転速度より、1時間につき1.2秒速くなる、と。  この言い方が、なんかゾクゾクして、「かっこいいー!」って。「ああ、自転速度が速くなるんだ!」って。
     ここらへんがSFなんですよ。そこら辺をあまり気にしないというのが、ファンタジーなんですけど。  まあ、そういうSFファンの業の深い見方で見ておるというところで、ご容赦願いたいと思います。
     今週の『ガンダムTHE ORIGIN』の話はここまでです。
    『君の名は。』と『Gu-Guガンモ』のドラマ構造
    【画像】スタジオから じゃあ、『君の名は。』の話に行きましょうか。  今日の第1特集です。新海誠監督の『君の名は。』ですね。
     これについては、まず、映画公開当時に僕が語った解説があるので、その録画映像を見ていただきたいと思います。  2016年、今から3年前の9月4日に、サロンのオフ会で語った、ほぼ10分間の映像です。  この録画映像が終わった後に、また生放送の方に戻りますので、そのままお待ちください。
     それでは、岡田斗司夫ゼミの2016年9月4日号として公開した、3年前の映像です。よろしくお願いします。
    (録画映像開始)
    【画像】サロンオフ会映像 『君の名は。』というのは、飛騨の山奥に住んでいる女子高生・三葉と、東京に住んでいる男子高校生・瀧の話です。  ……ネタバレですよ。大丈夫ですね?
     ある日、この2人のお互いの身体が入れ替わっちゃった、と。  まあまあ、「わあ! 俺、女の子になっちゃった! ……おっぱいモミモミ」みたいなやつがあって、「わあ! 私、男の子になっちゃった! おしっこに行く時に、なんか変なものがついてる!」みたいなものもあります。  で、お互い、自分が持っている携帯にメッセージを残すことを思いついて、2人のコミュニケーションが始まる。一度も会ったことのない2人は、徐々に互いに気になる存在になりました。
     それと同時に、映画の中でも最初から語られるのが、1200年に一度、地球に接近するティアマト彗星ですね。この彗星が、どんどん近づいて来る。  実は、この女の子というのは、3年前に死んでいるんです。  「お互いの身体が入れ替わった」と思ってたんですけど、実は「3年前の女の子と、現代の男の子が入れ替わった」という話で出来ています。  ティアマト彗星は、地球に近づいて来る時に2つに分かれて、彗星の欠片が女の子の住む村に落ちて来て、その村全てが消えてしまう。「これを知った2人が、なんとかして全滅してしまう村からみんなを逃がそうとする」というのが、お話のクライマックス辺りのプロットになっています。  結局、ちゃんと成功はするんですけどね。
     瀧と三葉という2人の高校生は、その消えてしまった村の、クレーターの端で、黄昏時、逢魔が時に出会うんですね。  その時間だけ奇跡が起こって、時間を超えて2人は出会う。お互いに「あなたのことは絶対に忘れない」と言い合って、「みんなを助けよう」と決意する。  しかし、確かに覚えていたはずなのに、2人共、記憶がどんどん薄れて行くんですね。絶対に忘れたくない、覚えておきたいことなのに、どんどん忘れてしまう。  それでも、肝心なことだけは覚えていて、「このままでは村が滅びる。だから何とかして、村の人を騙してでもいいから、避難させなきゃいけない!」ということで、女子高生の三葉は、学校の放送部から嘘の避難放送をして、村の人を動かそうとするんです。でも、村の人は動いてくれない。  そこで、村長だったか町長だったかをやっている三葉のお父さんに、話をしに行って、「最初は信じてもらえなかったのに、最後は三葉の熱意がなぜか通じたような形になって、協力してくれて、みんな助かる」という話になる。
     で、最後、もう、それから10年後くらいに、2人は東京の街で偶然出会うんです。  それまで、2人共「何かが足りない。自分は何かを探しているはずだ。何か思い出せなかったことがあったはずだ」という思いを抱きながら、10年くらい生きてたんです。だって、お互い、もう名前も何も覚えていない状態ですから。  そんな中、東京の街で偶然、出会った2人は、お互い振り返って、「君の名は?」というのを聞き合う。再会できたわけです。  その時に、「2人共、なぜか、すれ違った時から涙が止まらなかったから、わかった」という話になっているんですね。
     「この構造、どこかで見たことあるな」と思ったんですよ。  何かというと、少年サンデー原作版の『Gu-Guガンモ』なんですね。
     『Gu-Guガンモ』のメインキャラクター「ガンモ」というのは、高い空が飛べない鳥だったんですけど、最終回の間際になって、やっと飛べるようになった。そしたら、ガンモが空を飛ぶ時、なぜか、その周りで、いろんな鳥が一緒に飛ぶようになるんですね。  その時から、話が「あれ? ガンモって、ダメな鳥だと思ったけど、鳥の王様みたいだな」というふうになるんです。  そしたら、夜中に変な使者が来て、ガンモに「あなたは実は鳳凰なんです」と告げるんですね。
     ガンモって、ドラえもんみたいな、コーヒーを飲んだら酔っ払う、人間の言葉を喋るキャラクターなんですよ。  でも、この姿は卵体という、巨大な卵だったんですね。卵に手足がついて羽がついた存在。だから、ちょっと飛べて話せるだけだったんですけど。その中には、何十匹もの鳳凰の子供が入っている。  ガンモはそこで、「鳳凰というのは、人間の子供の純粋な気持ちというのを受けて、清い気持ちのまま、この世に羽ばたかなければいけない。だから、1年間という期間に限って、卵の状態で人間社会の中で過ごすことが必要でした。でも、あなたの役目はもうすぐ終わります。あなたはもうすぐ消えてなくなります」と言われるんですね。  つまり、ガンモというのは包み紙だったんですよ。元から捨てられる運命の、1年間限定の包み紙。それが破れることで、素晴らしい鳳凰が生まれるんですけど。  でも、ガンモのことを「自分の無二の親友だ」と思っている男の子や、その家族にしてみれば、ガンモというかけがえのない存在はいなくなっちゃうんですね。
     最後は、ガンモの殻が破れて消えてしまうんですけど。その前の晩に、ガンモはみんなに挨拶するんですね。  「実は僕の正体は卵で、もうすぐいなくなっちゃう。でも、悲しまなくてもいいよ。僕がいなくなった瞬間に、みんなの記憶から、僕は消えてしまうから。半平太君、これからは僕なしでもちゃんと生きてね」と。  こんな、ドラえもんの最終回レベルの大感動の盛り上がりがあるんです。
     これ、なぜかと言うと。  『Gu-Guガンモ』の作者である細野不二彦という人が、少年サンデー編集部に最初にマンガを持ち込んだ時から、小学館の編集者は「ゲェェーッ!」って思ったんですよ。  「こいつ、メッチャ絵が上手い! おまけに子供向けの話が描ける! オバケみたいな大きいキャラクター描いてもいける! こいつは藤子・F・不二雄になるしかない!」と。
     細野不二彦って、もともと、『アクエリオン』とか『マクロス』の監督をやったスタジオぬえの河森正治の友達だった人で、慶応大学の小等部の頃からSFばっかり描いてた人だったんですね。  それが、大学生になった頃、少年サンデーに持ち込んで「SFを描きたい」と言ったら、「お前はそんなものを描いてはダメだ! 細野不二彦、お前は藤子不二雄の後を継げ!」と命令されて、苦しみながら描いたのが『Gu-Guガンモ』なんです。  まあまあ、『バクマン。』でいうと『走れ!大発タント』みたいな話なんですよね。  そんな人が描いてるので、まあ、上手くて当たり前なんですけど。
     さて、その最終回。  前の夜にガンモが、みんなに「これでお別れだよ。でも、みんなの記憶から僕は消えてしまうから、悲しまなくてもいいんだ」という、藤子・F・不二雄ばりの挨拶をするんです。  で、挨拶をし終わった瞬間に、その場でガンモの身体がボンッと破けて、その中から何百匹もの綺麗な鳥がブワーっと世の中に羽ばたいていく。  この鳳凰がまたこの世界をきっと平和にしてくれる。良くしてくれる。  でも、半平太という主人公の男の子は、「ガンモのことは絶対に忘れない! 忘れない! 忘れない!」と言って、夜が更けて行く。  そして、その翌日の朝というのが、マンガのラストシーンです。
     半平太が目を覚ますと、何かが足りない気がする。だけど、それが何かはわからない。思い出せない。  そんな中、お母さんが「もう学校に行きなさい」と言って、半平太にコーヒーを淹れてくれるんです。コーヒーというのは、消えてしまったガンモがすごい好きだった飲み物なんですけど。  半平太は、コーヒーを飲んだ瞬間に、なぜか涙が出てくるんです。  「自分は何かを忘れている。それは一番大事なものだったはずなのに。なんだろう?」ということで、涙だけが止まらないというラストシーンなんですよ。  ものすごい感動のクライマックスなんです。
     「要するに、『君の名は。』ってそういうことね」と。  「わかった。『Gu-Guガンモ』だったんだ!」と。  「泣けるあれを持ってくるのは偉い!」と、僕は思いました(笑)。
     何が言いたいかというと、『君の名は。』にしても、『Gu-Guガンモ』にしても「ハイ・ドラマ」を目指しているんですね。  それが「半平太がコーヒーを飲んだ時、なぜだかわからないけど涙が出てきた」なんですけど。  でも、『Gu-Guガンモ』って、僕が改めて話をするまで、みんなも思い出さなかったくらいの作品なんですよ。つまり、名作だけどマイナーなんですね。
     ええとですね、今回、新海誠が挑戦したのは「作家性の諦め」なんですよ。  それまで、新海誠というのは、例えば『ほしのこえ』という「愛し合う2人が何光年も離れ離れになってしまって、男の子の方は女の子のことをいつまでも思っているはずなのに、勝手に結婚なんかしやがって、女の子の方は宇宙の果てで宇宙人と戦っていて、いつか私はあの人に会える時が来るんだろうかと考えている」みたいな、もう救いようのないほど切ない話を連続して描いてて、そこそこ評価もあったんですけど。  「このままでは、俺はジブリにはなれない! 庵野秀明にはなれない!」と、自分で思ったのか、他人から言われたのかはわからないけど。  そこからガラッと作風を変えて、「よっしゃあ、わかった! 俺はもう、中学生や高校生、言い方は悪いけど馬鹿でもわかる映画を撮るぜ! ほら、作った! ほら、馬鹿が泣いてる!」というのが『君の名は。』なんじゃないかな、と。
     まあ、「馬鹿が泣いてる」って言ったら、言い過ぎなんですよ。  さっきも言ったように、世の中の大半の人は、そういうのしかわからないんだから。メジャー作家としてデビューしている以上は、みんなにわかるのものを作るのが正しいんですね。  わかる人にだけわかっちゃったら、それはもう『水曜日のダウンタウン』になっちゃうんですよね。  新海誠というのは、そういう方式で十数年間、頑張ってきた上で、「ああ、この方法では先が見えない」と思い直して、徹底的にベタの方向に振った。  その結果、まあ、大ヒットしてるんじゃねえかなというふうに思います。
    (録画映像終了)
     ……いやあ、2016年の俺は、ものすごく口が悪いね(笑)。  今だったら、まず、言わない言い方してます。「3年前の俺は、もう怖いものなんてなかったんだなあ」と思いますけど。  本当に口が悪くてビックリしました。
     コメントで、ちょっと聞かれたんですけど、『君の名は。』というのは、SFなんですよ。  というのも、科学的な縛り、例えば「複雑に混じっている世界線」とか、「タイムパラドックスの矛盾」とか、「ティアマト彗星の軌道」とか、そういう科学的な縛りというのを、全部、楽しんで使いこなしてる。  この感覚がSF特有だと思うんですけどね。
     さっき話した中で「ベタ」っていうのは何かというと、「わからない人にもわかるような感動をさせる表現」というのを、ベタと呼んでいるんですけど。  同時に、「作家性の諦め」というふうにも言いました。  これはどういう意味かというと、「自分の中で考えた、ストーリーとかテーマを作家性にするのではなく、自分が持っている絵の力、絵の表現というのを作家性と決めた」ということです。  その結果、ドラマ部分というのは、あえてベタの方に思い切って持っていっちゃった。そういうところが、『君の名は。』のすごいところだと思います。
     絵の力というのは、例えばどういうものかと言うと。  『君の名は。』にタイムラプス的な表現というのが出てくるんですよ。タイムラプスというのは、「日が昇って、その後、日が沈んでいく」というのを早回しにして見せるみたいなものなんですけど。  これは、『AKIRA』というアニメの中で使われた、ストリーク表現のようなものなんです。
     バイクが走る時、テールランプがビューっと後を引く。こういうのをストリーク表現と言うんですけど。  ストリークというのは、もともとビデオカメラのレンズの奥にある光学センサーの限界によって発生するものなんですね。ビデオカメラの光学センサーの処理速度が、現実に求められているより遅いから、光っているものが動いた場合、尾を引いているように見えてしまう。つまりは、ビデオカメラの欠点なんですけど。  『AKIRA』という映画では、それをあえてバイクが走るシーンに入れることによって、逆にリアリズムを表現したんです。
     それと同じように、『君の名は。』でも、タイムラプス的な映像を入れることによって、リアリズムを出している。  つまり、僕らが持っているリアリズムというのは「現実にどういうふうに物を見えるのか?」ではなく、「日常的にどういう映像を目にしているのか?」によって出来ているわけですね。  なので、あえてビデオ風に荒くした画面にリアリティを感じる場合もある。ストリーク的な表現や、タイムラプス的な表現というのを、あえてアニメの中でやることによって、ドキッとするくらいリアリティが出る場合もあるんです。
     あとは、新海誠の絵の力というのは……ちょっとこれ、説明しにくんだけど。説明できるかな?  空に鳥の影があるんですよ。 (ホワイトボードに図説する)
    【画像】鳥の影 すみませんね、絵が下手で。ええと、これ、わかりますかね?  太陽が沈んでて、空に鳥が飛んでるんですけど。鳥の後ろの空に、影がちょっとあるんですね。  これ、現実にはありえないんですよ。空に影が落ちるなんてことなんて、あるはずがない。でも、新海誠の『君の名は。』の中には、空を飛んでいる鳥の後ろに軽く影が落ちているシーンが、何ヶ所かあるんですね。
     これも、現実ではないんですよ。むしろ、マンガの表現に近いんですよね。  つまり、マンガの表現に近いことをあえて映像の中でやることによって、「これ、なんか見た事ある!」っていう感じを出してるんですね。  僕らがそれを見たのは、さっきのストリークやタイムラプスと同じように、作られた映像の中なんですよ。  それを、あえて入れることによって、ドキッとするようなリアリティを出す。
     『君の名は。』というのは、新海誠の作家性というのを、こういった絵としての表現の部分に限定して、テーマ的、ストーリー的なところは思い切ってベタな方に振ってしまった。  つまり、ハイ・ドラマというのを押し付けず、ドラマの中に隠すことをしたわけですね。
    『君の名は。』全体のテーマとは?
    【画像】サロンオフ会より じゃあ、どんなドラマを隠したのか?  続きの映像をこれから見てもらいます。
     テーマとストーリーの関係性についての話なんですけど。  これも同じく2016年の9月に話した映像です。  それでは、よろしくお願いします。
    (録画映像開始)
     テーマとストーリーの関係なんですけど。
     今回、映画の中に「結ぶ」という言葉が出てきています。  「結ぶ」という言葉とか、あと組紐という、細かい糸を撚って紐にするというのが、何回か出て来るんですけど。  お話としては、「1つの円環の中で、同じことが繰り返され、いろんな時間軸でいろんな事件が組み変わることで、話の糸を紡いでいく」というふうになっています。  つまり、「結ぶ」、「結う」というのが、お話全体のテーマとして流れているんです。
     主人公の三葉と瀧は「お互いの身体が入れ替わる」という体験をするんですけど。  三葉が、それをお婆ちゃんに話した時、お婆ちゃんが「ああ、身体が入れ替わる、そんなこと私にもあった気がするわ」と言うんです。それどころか「お前のお母さんにもあったんじゃなかったっけ?」と言うシーンがあるんですけど。  つまり、この神主の一族……三葉は神主の一族なんですけど。神主の一族は、昔から思春期になると、どこかの誰かと身体が入れ替わったみたいなんですよね。  こういう話が、ごく自然に入ってくるんです。
     「三葉と瀧は身体が入れ替わるんですけど、お婆さんも誰かと入れ替わったことがある。お母さんも誰かと入れ替わったらしい」と。  でも、劇中では、お母さんが誰と入れ替わったかが、描かれてないんですね。  ただ、描かれてないだけで、わかるようになっている。これ、実は三葉のお父さんなんですね。  だからこそ、町長であるお父さんのところに、三葉が「みんなを避難させなければいけない!」と言いに行った時、その理由を告げるまでは、お父さんは全く納得しなかったんです。でも、三葉が「自分は身体が入れ替わったんだ」ということを言った瞬間に、お父さんは彼女の言葉を信じたんです。  お父さんが、なぜ、それまで再婚しなかったのか? なんで、お母さんのことをずっと大事に思っていたのかというと、こんな体験があったから。  だからこそ、娘の世迷言のように聞こえた話を、お父さんも本気にしてくれて、「ああ、じゃあ、本当に隕石がこの場所に落ちてくるんだ」と信じてくれた。  でなければ、お父さんの心変わりする理由がないんですね。
     映画の中では、三葉がお父さんのところに行って、真剣に「お父さん、話を聞いて!」と言うところまでしか描いてないんですけども。  その後は、もう全て終わってて、「町長が急にすごい指導力を発揮して、村民を避難させた」という新聞記事が出ているだけなんですよ。  なぜ、このお父さんが動いたのか、全く説明がない。  でも、それは、「思春期に誰かと入れ替わるという関係が、三葉の一族それぞれに成立してたから」なんですね。
     つまり、この『君の名は。』というお話では、時間的、空間的な部分で、多重構造的に「結ぶ」ということが行われているんです。
     では、ティアマト彗星の軌道図というのを考えてみましょう。 (ホワイトボードに図説する)
    【画像】彗星の軌道 まあ、いくつか間違いも指摘されていますけど。太陽があって、その周りを地球が回ってる、と。  ティアマト彗星は1200年に一度、太陽系外から地球の近くを通って、太陽の方に行く彗星です。  なので、彗星の位置がここにある時は、尾がこのように伸びていきます。太陽風で彗星の尾というのは伸びていくからですね。
     今回は、この彗星が2つに割れ、その破片が地球に落ちたことで、大災害が起こります。  ところが、彗星が落ちる前のこの村の写真というのを見てみると、巨大なクレーターのようなものがあって、その真ん中に神社があるんですね。この隣に村があるような構造になっている。  もちろん、このクレーターというのは、1200年前に彗星が落ちた時に出来たクレーターです。  つまり、「この村に彗星が落ちる」という事件は、さっき言った「三葉、お母さん、お婆さんそれぞれが、思春期に誰かと身体が入れ替わる」というのと同じく、過去に何度もあったのかもしれない。1200年前、2400年前という周期で、あったのかもしれない。  そして、なぜ、こんなことが繰り返されるかと言うと、「かつて地球に落ちて来た隕石の欠片が、ティアマト彗星にもう一度会いたいと思ったから」なんですね。
     お話全体は「七夕」なんですよ。  2つに分かれたもの同士が「もう一度会いたい」と願う。これは、人間であっても隕石であっても気持ちは同じなんです。その願いが奇跡を起こす。  ただ、星の願う奇跡というのは、人間界にものすごい迷惑をもたらす。  なので、まるでウルトラマンが「ハヤタ隊員、私は命を2つ持って来た」と言うように、この村に住む一族に超能力が与えられて、せめて人間が、そこから逃げるようなチャンスを与えてくれたのかもわかりません。
     「星と星とのもう一度出会いたいという思いは、確かに1200年に一度、叶うんだけど。その度ごとに、地球人類にはエラい迷惑が掛かる」と。これ、この太陽系というスケールだけで見ると、そういう話なんですけど。  ところが、太陽系自体も、ペテレルギウス座だったかな? その辺りを中心とした巨大な円周軌道を回っています。そして、この円周軌道自体も、巨大な銀河平面に対して回転しています。  銀河を真上から見ると、渦巻き状になっていて、地球はその第3渦状腕だったかな? 中心から3.5光年くらい離れたところで、1周辺り10億年くらいの時間を掛けて回転しています。  なので、太陽の回転というのは、銀河平面上で見ると、このような渦巻状になっているわけですね。 (銀河の中心に対して、受話器のコードのような軌跡を描きながら回る図を描く)
    【画像】太陽の軌道 それに対するティアマト彗星の軌道は、この渦巻状に移動する太陽系に出会うために、このようになっているわけです。 (太陽系の軌道に絡まるように飛ぶ、ティアマト彗星の軌道図を描く)
    【画像】彗星の軌道 こんなふうに、かなり複雑なものになっていると思われます。
     これが、お話全体のテーマ、「結ぶ」なんですよ。この中で、奇跡が起こったり、何かをしたりする。  人の縁そのもの指す言葉である「結ぶ」とか「結う」。それと対応するように、映画の中には糸を撚る、紐を組むシーンが出てくるんですけど。それと共に、銀河平面で見た太陽系の軌道と、それに絡み合うように進んでいるティアマト彗星の軌道という全体が、大きい1つの糸を作っているんです。  つまり、そんな中で、1200年に一度だけ出会える彗星が、離れ離れになったもう1つの片割れに「もう一度会いたい」と思っているからこそ、起こるドラマなんです。  さらにその中で、一度別れた、もう二度と会えない相手に会いたいと思う人間が、心の入れ替わりみたいな奇跡を起こして、それが代々受け継がれて行く。  そんなふうに、物語全体が「結ぶ」とか「結う」、糸から紐が組まれていくような構造で出来てるんですね。
     なので、新海誠としては、それまでの宇宙モノとかを合わせた集大成としてやっているんですけど。  この辺りの説明を全て諦めてまで、ベタな泣かせドラマに集中したというところが、「すげえよ、新海! よく割り切ったな!」と思うんですけども(笑)。
     面白いのは、三葉の友達にテッシーという、ざっくばらんな男の子がいるんですけど。  このテッシーは、最初、自転車に乗ってるんですね。テッシーはこの自転車を「行って来いや! この村を救って来い!」みたいな感じで、三葉に貸してくれるんですよ。  で、三葉はその自転車で走って行くんですけど、途中で転んで、自転車を壊してしまうんですね。  なので、その後、瀧とクレーターで出会った後で、三葉はテッシーに「ごめん、自転車、壊しちゃった」って言うんですけど。テッシーは「何のこと?」って言うんですよね。
     なぜ、ここで「何のこと?」と言ったのかというと、実は、瀧と三葉が出会った時に、もう時間軸全てが変わっちゃったんですね。  テッシーが自転車に乗っていない世界にズレちゃってるんですよ。  この世界では、テッシーは自転車に乗ってなくて、ずっとバイクに乗っている。その後、そのバイクを貸してくれたんですけど。  ここからもわかる通り、実は、時間軸のズレというのは、かなり早い時点で行われているんですね。
     まあ、でも、そこら辺の説明も全て抑えて、「もう描かなくてもいいや!」と排除して行って、ベタなドラマにしているところが面白いと思いましたね。
     あとは、「ティアマト彗星の軌道が曲がっているように見えて、ちょっと変だ」というふうに、SF作家の山本弘さんが指摘されてて。まあ、天文学的に考えればそうなんですけど。  ここら辺も、作画ミスと考えることもできるんですけど。その他にも、「いや、そうじゃなくて、これはこの星と星とが出会いたいからだ。作為的なリードなんだ」というふうに考えることもできるんじゃないかと思ってました。  まあ、99%作画ミスだと思いますけどね(笑)。
     そんな感じがしますということで、ロー・ドラマの名作、『君の名は。』の話はここまでです。
    (録画映像終了)
     はい、どうもお疲れ様でした。
     コメントを見てたら、「新海誠はそこまで考えていたのか?」と言う人がいたんですけど。考えているに決まってるんですよ。  ええとね、アニメの監督って、たぶん、普通の人が思っているより100倍考えています。これ、本当に真面目な話。  100倍考えた上で、「これをどこまで見せようか?」というのを調整しながら出してるんです。
     それまでの新海誠は、そういうのを「わかってほしい! わかってほしい!」という出し方をしてたんですけど、「やっぱり、それでは売れない」というのがわかるわけですよね。  そこで、「あくまでベタなドラマを提供して、そのバックグラウンドの方に自分の言いたいことを引っ込める」ということを徹底的にやった。そのおかげで、プロデューサーの思惑通り、ちゃんと当てることができたんですけども。
     まあ、解説の中で、いくつかミスがありました。地球はですね、銀河の中心から「3.5万光年」です。3.5光年のはずがない(笑)。  あと、銀河の自転って、僕が昔、本で読んだ時は、「10億年」と書いてあったんですけど、最近は「2億年から2億5千万年」となっているそうです。  ちょっと、そこだけ修正しておきます。
     なぜ、町長である三葉の父が、三葉の言うことを信じて町の人達を避難させたのかというのは、映画内ではほとんど説明されてないんですね。  これも、やっぱりわざとなんですよ。新海誠は、これを説明しようとしたら、そういう脚本も描けるわけですね。でも、それを描かないわけなんです。抑えるわけですね。  「そうか! 三葉の父も、三葉と同じように、昔、入れ替わった記憶があるんだな! 構造的に重なっているんだな!」というのは、気が付ける人にだけ気付いてもらおうというふうになってるんですね。
     これに気付かないような人というのは、とりあえず主題歌をガンガン掛けて、盛り上げたら、勝手に感動してくれるわけですよ。  そうやって、「ベタで盛り上げつつ、映画の構造的な面白さというのも、わかる人にだけわかるように、あえて後ろに引っ込める」というところが、この『君の名は。』の、世界映画としてメジャーを狙ったところだと思います。  「ティアマト彗星が、地球に落ちた欠片に会いたがって、1200年に一度地球に欠片を落としてくる」という、七夕のような、大変ロマンチックなお話を、夏に持ってくる。もう「この映画で当ててやる!」という勢いを感じる戦略、僕は好きですね。
     「テッシーという友達の自転車を壊したことは、映画の中ではクライマックス以降、なかったことになっている」ということで、世界線がそこで切り替わっているんですけど。これも、気が付く人だけが気が付けばいい。  もうね、新海誠は変わりましたよ。『秒速5センチメートル』とかだったら、絶対にいくつも映像的な伏線を持ってきて、押し付けるように説明してたのが、そこら辺サラッサラになってきた。  なので、『天気の子』も、たぶん、やるとしたらこのベタ路線だと思うんですけど。どれくらいやるのか、ちょっと興味がありますね。
     この辺りの仕掛けを、わかる人だけにわかるようにするというのは、作家としてはかなりシンドいんですよ、正直言って。  さっきも言ったように、作家というのは、僕らが考えるよりは10倍100倍は考えているんですけど、どうしても「わかってほしくなる人種」なんですね。  で、この「わかってほしくなるバルブ」というのを、どれくらい開けるのかによって、やっぱり、その作家の格みたいなものが変わるんです。
     あの、皆さんもご存知の通り、僕の中で『けものフレンズ』という作品の評価が大変低いのは、そのバルブがガバっと開くからなんですよ。  「なんじゃこりゃ!?」ってくらい、かなりガバっと開いて、「はいはい、そういうことをやろうとしているのね。ほた見ろ、普通のアニメファンでも気が付く出来になってるじゃねえか」って思うから、「ああ、俺はもういいや」ってなっちゃうんですけど。  ……ああ、2016年の口の悪い俺に戻ってしまう、アハハ(笑)。
     でも、新海誠のこの『君の名は。』の場合は、これを思い切って隠しているから、ドラマとしては、あくまでもベタに進行できる。  このアニメは、作品としての側面と、商品としての側面、2つを持っていることになると思います。
     今、ちょっとコメントで流れたんですけど、そうなんです。宮崎駿って、ここら辺のバルブが、割りと開いちゃうタイプなんですよね。  『未来少年コナン』とかを見たら、バルブが開いちゃってるんですよ。なので、一生懸命、たぶん、鈴木敏夫さんに言われて閉めようとした。  その甲斐あってか、『ナウシカ』は、割りと開け気味で作ってるんですけど、ジブリというスタジオが出来てからは、バルブを閉め気味にして、1回見ただけでは見抜けないような構造にしているところが面白いと思います。  ……ああ、そうですね。高畑勲さんのバルブは逆に硬すぎて、俺でもシンドいです(笑)。
     兎にも角にも、『君の名は。』というのは、商品と作品という2つの部分を合わせ持ったまま出したので、国民映画として成立したと思います。  『シン・ゴジラ』で、「ゴジラの正体は、人間が変身したものだ」という設定を、いまだに徹底的に隠しているのと同じです。これを隠すことによって、ゴジラが暴れるシーンというのに、映像的な快感を与えることに成功したわけですね。
    『君の名は。』の「ルック」とその素晴らしさの理由
    【画像】スタジオから 次は、恋愛ドラマとしての『君の名は。』の可能性を語った動画です。  これは3分くらいの映像ですので、ちょっと見てください。  では、お願いします。
    (録画映像開始)
     「『君の名は。』は第2の〇〇になる」という話です。  ついに、ジブリ作品を抜いちゃったよね。もう今、2位だっけ? 『君の名は。』。  まあ、『君の名は。』っていうのは、これまでのビターだった新海誠監督のドラマに、砂糖をたっぷり入れて、ミルクをちょっと加えて滑らかにしたダークチョコくらいのさじ加減になってるんだよね。
     邦画と洋画って、やっぱり何が違うかっていうとさ。  『ハリー・ポッター』の新作の『ファンタスティック・ビースト』を見た人はわかると思うんだけども、あれ、本当に内容がないんだよね。  ただ、絵はものすごく本格的なんだよ。  『スター・ウォーズ』の新作の『ローグワン』の予告編を見たらわかる通り、そういった絵作りの部分に関してだけは、洋画ってメチャクチャ本格的じゃん?  それに対して、邦画って、ああいう本格的な高級感のある絵というのが、もう本当に作れないんだよね。「珍しい風景映す」くらいしかない。
     そんな中で、新海さんというのは、圧倒的に美しい「ルック」というのを持っている作家なんだよね。  それぞれの映画なりの撮り方の個性、マンガ家で言うと絵の個性、絵面みたいなものを、映画の世界では「撮影監督が持っているルック」って言うんだけどさ。  なので、『君の名は。』というのには、ものすごく美しい画面が出てこれる。  今、中国でも大ヒットしてて。残念ながら、3億円くらいの買い切りだったそうなんだけど。それでも、大量のチャイナマネーが日本のアニメ産業に対して、動いているそうなんだけど。
     『君の名は。』ってね、総括すると「21世紀の『ローマの休日』」だと思うんだよ。  『ローマの休日』っていうのは、青春ドラマ、恋愛ドラマの原型中の原型で、世界中の人が知っていて、世界中の人が共感できる話として、ハリウッドで作られた映画なんだけど。  あの時代は、スターが出てきて、観光地としてのローマ、みんなが行きたいところに行って、お姫様と新聞記者の恋愛を描くというだけで、世界恋愛映画足り得たんだけど。  もうね、今や、世界中の人が憧れることが出来る21世紀の恋愛ストーリーっていうのは、『君の名は。』みたいなものなんだと思う。  出会いがあって、悲しい別れがあって、含みがあるラストシーン。  基本的に言えば、もう『ローマの休日』での枠組みっていうのを踏襲してるよね。
     こういうワールドスタンダードな恋愛ドラマが、日本のアニメから出てきたっていうのはすごい嬉しいし、たぶん、黒澤明の『七人の侍』以来の、世界の映画界に対してショックを与える作品になるだろうと思ってるんだ。  なので、「『君の名は。』は、世界でヒットして、おそらく『ローマの休日』のような、世界標準の恋愛ドラマになるだろう」という予想でありました。
    (録画映像終了)
     はい、今ご覧になって頂いたのは、2016年の年末に行った「今年の映画を総括する」というニコ生の映像でした。  「邦画は、高級感のある本格的な絵が弱い」という話をしてて、「それに対して、新海はルックがあるね」という話をしてたんですけど。
     『君の名は。』って、現在、ハリウッドで実写化が進行してるんですよ。  「あんなにねヒットして、あんなにカッコいい絵を作れても、やっぱり実写にしないと世界映画になれない」というのはもうショックです。  まだまだアニメは弱いなと思います。
     アニメで世界映画になれたのって、ディズニーと、ピクサーと、宮崎駿だけなんですよね。  それだけが世界中で、アニメのまま受け入れられて、「ああ、ヒットしたんだ。じゃあ、実写に置き換えようか」などという、屈辱的なことを考えられなくて済んでいるんですよ。  アニメっていうのは、実写に比べて格下だから。いわゆる、メキシコとか、そこら辺の国でヒットした映画を、「じゃあ、ハリウッドで作り直してあげよう」という、リメイクみたいなことをされてしまうんですね。  そんな中で、ディズニー、ピクサー、宮崎駿だけは、そういうことがあまりなかったんです。まあまあ、最近はディズニーのアニメもどんどん実写になるので、そこら辺も油断できないんですけど。
     まとめとして、『君の名は。』のルックが、なんであんなに素晴らしいかというと、「新海誠は目が良いから」なんですよ。  とにかく、新海誠には、東京という街が、新宿という街が、あんなに綺麗に見えるんです。あれがすごいんですよね。  あの目っていうのは、富野由悠季も、宮崎駿も、高畑勲も、押井守も、庵野秀明も、誰も持ってないんですよ。
     「現実があれだけ綺麗に見えるレンズを持っている」ということが、新海誠の作家性。新海誠は、『君の名は。』で、そこにようやっと踏み切れた。  「SF的なプロットとか、仕掛けとか、伏線こそが自分の中での作家性だ」と思っていたところから、「この世界を見る目そのものが、実は自分の最大の作家性だったんだ」と気が付いたところが、やっぱり『君の名は。』のすごさだし、新海誠のカッコいいところだと思います。  どっちかっていうと、マンガ家の目に近いんじゃないのかな?
     後は、『ガンダム THE ORIGIN』のところでも語った通り、「SFを上手く使いこなしてる」というところが、SF野郎としては評価が高くなるところだと思います。  以上で、『君の名は。』の話を終わります。
    お便り紹介「3つの願い」
    【画像】スタジオから 無料放送は、もう9時近くなりましたので、ここで終わりなんですけど。  今回は、お便り特集でもあるので、ちょっと後半から、皆さんから頂いたメールを紹介していきますけど、前半の内に、2つだけ紹介します。
     まずは、福岡県の江口さんからのお便りですね。  先週、取り上げた『アラジン』に関して、「もし、3つの願いが叶うとしたら?」というテーマで投稿をいただきました。

    1つ目、無病で永遠の命。 2つ目、仕事をしないで好きなだけ趣味に打ち込めるだけの財力。(岡田さん程度) 3つ目、近視を治し、裸眼で2.0の視力。

     ということなんですけど。気持ちはわかりますよね。
     でもね、「永遠の命」ってね、ベジータとか、フリーザとか、悪役時代のピッコロ大魔王が言うセリフでして。  気づいたら、僕らはドラゴンボールの悪役のような望みを持って生きているわけですね。
     「財力」はね、正直、キリがないと思います。  僕は今、エコノミーシートだったら、世界中、どこでも行けるくらいの状態になっているんですけど。それでも、日曜日には帰って来てニコ生をやらなきゃいけない。  プラモや本も、買おうと思ったらいくらでも買えるんですけど。もう、無理なんですよ。これ以上、部屋に置けないから。  あと、読めもしない本とか、作れもしないプラモを買っても、自分が嫌になるから、やっぱり買えないんです。  わりと制限があるんですよ。
     「視力」についても、どうしても裸眼で見たいものっていうのも、あんまり思いつかない。  映画って、矯正視力で十分だし。
    「倉庫を借りないの?」(コメント)
     倉庫とか、別の部屋とか、書斎とかっていうのは無駄なんですよ。  もう、とにかく俺は、1日あたり50歩くらいしか歩きたくなくて、その範囲の中で、このニコ生を作っているのが幸せだから。これを動かしたくないわけですね。
     というわけで、気持ちはわかりますけど、江口さんの3つの願いというのは、「現状でかなり幸せ」という意味なんじゃないでしょうか?  だって、望んでいることがドラゴンボールの悪役レベルなんだから。「現状でかなり幸せ」というバロメーターなんじゃないかと思います。
     とりあえず、6月のステッカーを1枚送りますので、これで我慢してください。
     次は、埼玉県のみらさんからの3つの願いですね。

    1つ目、人生のとある時期に戻りたい。 2つ目、衰えない声。自分で音源を作ってレコーディングしたものを、iTunesで配信したりして、音楽を諦めずに済んでいます。しかし、年齢のため徐々に声が出づらくなってます。 3つ目、行動力。私がいろいろと考え過ぎてしまって、アイデアはあったのですが、それを現実化できなかった、そして、最近、身体が付いて行かなくなってしまったので、本当に惜しいことをした気分です。

     という、3つの願いだそうですけども。
     いや、それってやり残しだと思うから、今からやればいいと思います。  行動力っていうのは、人間、失敗しても取り返せる中年になってからの方があるんですよ。  20代30代の頃って、行動力あるように思うじゃないですか。でも、20代30代の頃って失敗が怖いんです。  だけど、40、50を超えると「まあ、失敗しても取り返せる」って思うので、そっちの方が行動力があると思います。
     声についても、味だと思うし、「とある時期に戻りたい」と思うなら、その時にやりたかったことを今からやった方が、絶対に楽しいと思います。  僕は応援しています。その印として、ステッカーを3枚送りますので、これで頑張ってください。
    記事全文は、アーカイブサイトでお読みいただけます。
    2019/06/30 #288 「『君の名は。』完全解説と、『なつぞら』『ガンダム THE ORIGIN』、プラス6月のお便り&ステッカープレゼント」
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「21世紀の『ローマの休日』になった、新海誠の『君の名は。』」

    2019-07-19 07:00  
    216pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/19
     今日は、2019/06/30配信の岡田斗司夫ゼミ「『君の名は。』完全解説と、『なつぞら』『ガンダム THE ORIGIN』、プラス6月のお便り&ステッカープレゼント」からハイライトをお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
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     「『君の名は。』は第2の〇〇になる」という話です。  ついに、ジブリ作品を抜いちゃったよね。もう今、2位だっけ? 『君の名は。』。  まあ、『君の名は。』っていうのは、これまでのビターだった新海誠監督のドラマに、砂糖をたっぷり入れて、ミルクをちょっと加えて滑らかにしたダークチョコくらいのさじ加減になってるんだよね。
     邦画と洋画って、やっぱり何が違うかっていうとさ。  『ハリー・ポッター』の新作の『ファンタスティック・ビースト』を見た人はわかると思うんだけども、あれ、本当に内容がないんだよね。  ただ、絵はものすごく本格的なんだよ。  『スター・ウォーズ』の新作の『ローグワン』の予告編を見たらわかる通り、そういった絵作りの部分に関してだけは、洋画ってメチャクチャ本格的じゃん?  それに対して、邦画って、ああいう本格的な高級感のある絵というのが、もう本当に作れないんだよね。「珍しい風景映す」くらいしかない。
     そんな中で、新海さんというのは、圧倒的に美しい「ルック」というのを持っている作家なんだよね。  それぞれの映画なりの撮り方の個性、マンガ家で言うと絵の個性、絵面みたいなものを、映画の世界では「撮影監督が持っているルック」って言うんだけどさ。  なので、『君の名は。』というのには、ものすごく美しい画面が出てこれる。  今、中国でも大ヒットしてて。残念ながら、3億円くらいの買い切りだったそうなんだけど。それでも、大量のチャイナマネーが日本のアニメ産業に対して、動いているそうなんだけど。
     『君の名は。』ってね、総括すると「21世紀の『ローマの休日』」だと思うんだよ。  『ローマの休日』っていうのは、青春ドラマ、恋愛ドラマの原型中の原型で、世界中の人が知っていて、世界中の人が共感できる話として、ハリウッドで作られた映画なんだけど。  あの時代は、スターが出てきて、観光地としてのローマ、みんなが行きたいところに行って、お姫様と新聞記者の恋愛を描くというだけで、世界恋愛映画足り得たんだけど。  もうね、今や、世界中の人が憧れることが出来る21世紀の恋愛ストーリーっていうのは、『君の名は。』みたいなものなんだと思う。  出会いがあって、悲しい別れがあって、含みがあるラストシーン。  基本的に言えば、もう『ローマの休日』での枠組みっていうのを踏襲してるよね。
     こういうワールドスタンダードな恋愛ドラマが、日本のアニメから出てきたっていうのはすごい嬉しいし、たぶん、黒澤明の『七人の侍』以来の、世界の映画界に対してショックを与える作品になるだろうと思ってるんだ。  なので、「『君の名は。』は、世界でヒットして、おそらく『ローマの休日』のような、世界標準の恋愛ドラマになるだろう」という予想でありました。
    (録画映像終了)
     はい、今ご覧になって頂いたのは、2016年の年末に行った「今年の映画を総括する」というニコ生の映像でした。  「邦画は、高級感のある本格的な絵が弱い」という話をしてて、「それに対して、新海はルックがあるね」という話をしてたんですけど。
     『君の名は。』って、現在、ハリウッドで実写化が進行してるんですよ。  「あんなにねヒットして、あんなにカッコいい絵を作れても、やっぱり実写にしないと世界映画になれない」というのはもうショックです。  まだまだアニメは弱いなと思います。
     アニメで世界映画になれたのって、ディズニーと、ピクサーと、宮崎駿だけなんですよね。  それだけが世界中で、アニメのまま受け入れられて、「ああ、ヒットしたんだ。じゃあ、実写に置き換えようか」などという、屈辱的なことを考えられなくて済んでいるんですよ。  アニメっていうのは、実写に比べて格下だから。いわゆる、メキシコとか、そこら辺の国でヒットした映画を、「じゃあ、ハリウッドで作り直してあげよう」という、リメイクみたいなことをされてしまうんですね。  そんな中で、ディズニー、ピクサー、宮崎駿だけは、そういうことがあまりなかったんです。まあまあ、最近はディズニーのアニメもどんどん実写になるので、そこら辺も油断できないんですけど。
     まとめとして、『君の名は。』のルックが、なんであんなに素晴らしいかというと、「新海誠は目が良いから」なんですよ。  とにかく、新海誠には、東京という街が、新宿という街が、あんなに綺麗に見えるんです。あれがすごいんですよね。  あの目っていうのは、富野由悠季も、宮崎駿も、高畑勲も、押井守も、庵野秀明も、誰も持ってないんですよ。
     「現実があれだけ綺麗に見えるレンズを持っている」ということが、新海誠の作家性。新海誠は、『君の名は。』で、そこにようやっと踏み切れた。  「SF的なプロットとか、仕掛けとか、伏線こそが自分の中での作家性だ」と思っていたところから、「この世界を見る目そのものが、実は自分の最大の作家性だったんだ」と気が付いたところが、やっぱり『君の名は。』のすごさだし、新海誠のカッコいいところだと思います。  どっちかっていうと、マンガ家の目に近いんじゃないのかな?
     後は、『ガンダム THE ORIGIN』のところでも語った通り、「SFを上手く使いこなしてる」というところが、SF野郎としては評価が高くなるところだと思います。  以上で、『君の名は。』の話を終わります。
    お便り紹介「3つの願い」
    【画像】スタジオから 無料放送は、もう9時近くなりましたので、ここで終わりなんですけど。  今回は、お便り特集でもあるので、ちょっと後半から、皆さんから頂いたメールを紹介していきますけど、前半の内に、2つだけ紹介します。
     まずは、福岡県の江口さんからのお便りですね。  先週、取り上げた『アラジン』に関して、「もし、3つの願いが叶うとしたら?」というテーマで投稿をいただきました。

    1つ目、無病で永遠の命。 2つ目、仕事をしないで好きなだけ趣味に打ち込めるだけの財力。(岡田さん程度) 3つ目、近視を治し、裸眼で2.0の視力。

     ということなんですけど。気持ちはわかりますよね。
     でもね、「永遠の命」ってね、ベジータとか、フリーザとか、悪役時代のピッコロ大魔王が言うセリフでして。  気づいたら、僕らはドラゴンボールの悪役のような望みを持って生きているわけですね。
     「財力」はね、正直、キリがないと思います。  僕は今、エコノミーシートだったら、世界中、どこでも行けるくらいの状態になっているんですけど。それでも、日曜日には帰って来てニコ生をやらなきゃいけない。  プラモや本も、買おうと思ったらいくらでも買えるんですけど。もう、無理なんですよ。これ以上、部屋に置けないから。  あと、読めもしない本とか、作れもしないプラモを買っても、自分が嫌になるから、やっぱり買えないんです。  わりと制限があるんですよ。
     「視力」についても、どうしても裸眼で見たいものっていうのも、あんまり思いつかない。  映画って、矯正視力で十分だし。
    「倉庫を借りないの?」(コメント)
     倉庫とか、別の部屋とか、書斎とかっていうのは無駄なんですよ。  もう、とにかく俺は、1日あたり50歩くらいしか歩きたくなくて、その範囲の中で、このニコ生を作っているのが幸せだから。これを動かしたくないわけですね。
     というわけで、気持ちはわかりますけど、江口さんの3つの願いというのは、「現状でかなり幸せ」という意味なんじゃないでしょうか?  だって、望んでいることがドラゴンボールの悪役レベルなんだから。「現状でかなり幸せ」というバロメーターなんじゃないかと思います。
     とりあえず、6月のステッカーを1枚送りますので、これで我慢してください。
     次は、埼玉県のみらさんからの3つの願いですね。

    1つ目、人生のとある時期に戻りたい。 2つ目、衰えない声。自分で音源を作ってレコーディングしたものを、iTunesで配信したりして、音楽を諦めずに済んでいます。しかし、年齢のため徐々に声が出づらくなってます。 3つ目、行動力。私がいろいろと考え過ぎてしまって、アイデアはあったのですが、それを現実化できなかった、そして、最近、身体が付いて行かなくなってしまったので、本当に惜しいことをした気分です。

     という、3つの願いだそうですけども。
     いや、それってやり残しだと思うから、今からやればいいと思います。  行動力っていうのは、人間、失敗しても取り返せる中年になってからの方があるんですよ。  20代30代の頃って、行動力あるように思うじゃないですか。でも、20代30代の頃って失敗が怖いんです。  だけど、40、50を超えると「まあ、失敗しても取り返せる」って思うので、そっちの方が行動力があると思います。
     声についても、味だと思うし、「とある時期に戻りたい」と思うなら、その時にやりたかったことを今からやった方が、絶対に楽しいと思います。  僕は応援しています。その印として、ステッカーを3枚送りますので、これで頑張ってください。
    記事全文は、アーカイブサイトでお読みいただけます。
    2019/06/30 #288 「『君の名は。』完全解説と、『なつぞら』『ガンダム THE ORIGIN』、プラス6月のお便り&ステッカープレゼント」
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『君の名は。』解説:複雑な仕掛けは抑えて、ベタなドラマ作りに徹した新海誠の割り切り」

    2019-07-18 07:00  
    216pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/18
     今日は、2019/06/30配信の岡田斗司夫ゼミ「『君の名は。』完全解説と、『なつぞら』『ガンダム THE ORIGIN』、プラス6月のお便り&ステッカープレゼント」からハイライトをお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
    【画像】サロンオフ会より じゃあ、どんなドラマを隠したのか?  続きの映像をこれから見てもらいます。
     テーマとストーリーの関係性についての話なんですけど。  これも同じく2016年の9月に話した映像です。  それでは、よろしくお願いします。
    (録画映像開始)
     テーマとストーリーの関係なんですけど。
     今回、映画の中に「結ぶ」という言葉が出てきています。  「結ぶ」という言葉とか、あと組紐という、細かい糸を撚って紐にするというのが、何回か出て来るんですけど。  お話としては、「1つの円環の中で、同じことが繰り返され、いろんな時間軸でいろんな事件が組み変わることで、話の糸を紡いでいく」というふうになっています。  つまり、「結ぶ」、「結う」というのが、お話全体のテーマとして流れているんです。
     主人公の三葉と瀧は「お互いの身体が入れ替わる」という体験をするんですけど。  三葉が、それをお婆ちゃんに話した時、お婆ちゃんが「ああ、身体が入れ替わる、そんなこと私にもあった気がするわ」と言うんです。それどころか「お前のお母さんにもあったんじゃなかったっけ?」と言うシーンがあるんですけど。  つまり、この神主の一族……三葉は神主の一族なんですけど。神主の一族は、昔から思春期になると、どこかの誰かと身体が入れ替わったみたいなんですよね。  こういう話が、ごく自然に入ってくるんです。
     「三葉と瀧は身体が入れ替わるんですけど、お婆さんも誰かと入れ替わったことがある。お母さんも誰かと入れ替わったらしい」と。  でも、劇中では、お母さんが誰と入れ替わったかが、描かれてないんですね。  ただ、描かれてないだけで、わかるようになっている。これ、実は三葉のお父さんなんですね。  だからこそ、町長であるお父さんのところに、三葉が「みんなを避難させなければいけない!」と言いに行った時、その理由を告げるまでは、お父さんは全く納得しなかったんです。でも、三葉が「自分は身体が入れ替わったんだ」ということを言った瞬間に、お父さんは彼女の言葉を信じたんです。  お父さんが、なぜ、それまで再婚しなかったのか? なんで、お母さんのことをずっと大事に思っていたのかというと、こんな体験があったから。  だからこそ、娘の世迷言のように聞こえた話を、お父さんも本気にしてくれて、「ああ、じゃあ、本当に隕石がこの場所に落ちてくるんだ」と信じてくれた。  でなければ、お父さんの心変わりする理由がないんですね。
     映画の中では、三葉がお父さんのところに行って、真剣に「お父さん、話を聞いて!」と言うところまでしか描いてないんですけども。  その後は、もう全て終わってて、「町長が急にすごい指導力を発揮して、村民を避難させた」という新聞記事が出ているだけなんですよ。  なぜ、このお父さんが動いたのか、全く説明がない。  でも、それは、「思春期に誰かと入れ替わるという関係が、三葉の一族それぞれに成立してたから」なんですね。
     つまり、この『君の名は。』というお話では、時間的、空間的な部分で、多重構造的に「結ぶ」ということが行われているんです。
     では、ティアマト彗星の軌道図というのを考えてみましょう。 (ホワイトボードに図説する)
    【画像】彗星の軌道 まあ、いくつか間違いも指摘されていますけど。太陽があって、その周りを地球が回ってる、と。  ティアマト彗星は1200年に一度、太陽系外から地球の近くを通って、太陽の方に行く彗星です。  なので、彗星の位置がここにある時は、尾がこのように伸びていきます。太陽風で彗星の尾というのは伸びていくからですね。
     今回は、この彗星が2つに割れ、その破片が地球に落ちたことで、大災害が起こります。  ところが、彗星が落ちる前のこの村の写真というのを見てみると、巨大なクレーターのようなものがあって、その真ん中に神社があるんですね。この隣に村があるような構造になっている。  もちろん、このクレーターというのは、1200年前に彗星が落ちた時に出来たクレーターです。  つまり、「この村に彗星が落ちる」という事件は、さっき言った「三葉、お母さん、お婆さんそれぞれが、思春期に誰かと身体が入れ替わる」というのと同じく、過去に何度もあったのかもしれない。1200年前、2400年前という周期で、あったのかもしれない。  そして、なぜ、こんなことが繰り返されるかと言うと、「かつて地球に落ちて来た隕石の欠片が、ティアマト彗星にもう一度会いたいと思ったから」なんですね。
     お話全体は「七夕」なんですよ。  2つに分かれたもの同士が「もう一度会いたい」と願う。これは、人間であっても隕石であっても気持ちは同じなんです。その願いが奇跡を起こす。  ただ、星の願う奇跡というのは、人間界にものすごい迷惑をもたらす。  なので、まるでウルトラマンが「ハヤタ隊員、私は命を2つ持って来た」と言うように、この村に住む一族に超能力が与えられて、せめて人間が、そこから逃げるようなチャンスを与えてくれたのかもわかりません。
     「星と星とのもう一度出会いたいという思いは、確かに1200年に一度、叶うんだけど。その度ごとに、地球人類にはエラい迷惑が掛かる」と。これ、この太陽系というスケールだけで見ると、そういう話なんですけど。  ところが、太陽系自体も、ペテレルギウス座だったかな? その辺りを中心とした巨大な円周軌道を回っています。そして、この円周軌道自体も、巨大な銀河平面に対して回転しています。  銀河を真上から見ると、渦巻き状になっていて、地球はその第3渦状腕だったかな? 中心から3.5光年くらい離れたところで、1周辺り10億年くらいの時間を掛けて回転しています。  なので、太陽の回転というのは、銀河平面上で見ると、このような渦巻状になっているわけですね。 (銀河の中心に対して、受話器のコードのような軌跡を描きながら回る図を描く)
    【画像】太陽の軌道 それに対するティアマト彗星の軌道は、この渦巻状に移動する太陽系に出会うために、このようになっているわけです。 (太陽系の軌道に絡まるように飛ぶ、ティアマト彗星の軌道図を描く)
    【画像】彗星の軌道 こんなふうに、かなり複雑なものになっていると思われます。
     これが、お話全体のテーマ、「結ぶ」なんですよ。この中で、奇跡が起こったり、何かをしたりする。  人の縁そのもの指す言葉である「結ぶ」とか「結う」。それと対応するように、映画の中には糸を撚る、紐を組むシーンが出てくるんですけど。それと共に、銀河平面で見た太陽系の軌道と、それに絡み合うように進んでいるティアマト彗星の軌道という全体が、大きい1つの糸を作っているんです。  つまり、そんな中で、1200年に一度だけ出会える彗星が、離れ離れになったもう1つの片割れに「もう一度会いたい」と思っているからこそ、起こるドラマなんです。  さらにその中で、一度別れた、もう二度と会えない相手に会いたいと思う人間が、心の入れ替わりみたいな奇跡を起こして、それが代々受け継がれて行く。  そんなふうに、物語全体が「結ぶ」とか「結う」、糸から紐が組まれていくような構造で出来てるんですね。
     なので、新海誠としては、それまでの宇宙モノとかを合わせた集大成としてやっているんですけど。  この辺りの説明を全て諦めてまで、ベタな泣かせドラマに集中したというところが、「すげえよ、新海! よく割り切ったな!」と思うんですけども(笑)。
     面白いのは、三葉の友達にテッシーという、ざっくばらんな男の子がいるんですけど。  このテッシーは、最初、自転車に乗ってるんですね。テッシーはこの自転車を「行って来いや! この村を救って来い!」みたいな感じで、三葉に貸してくれるんですよ。  で、三葉はその自転車で走って行くんですけど、途中で転んで、自転車を壊してしまうんですね。  なので、その後、瀧とクレーターで出会った後で、三葉はテッシーに「ごめん、自転車、壊しちゃった」って言うんですけど。テッシーは「何のこと?」って言うんですよね。
     なぜ、ここで「何のこと?」と言ったのかというと、実は、瀧と三葉が出会った時に、もう時間軸全てが変わっちゃったんですね。  テッシーが自転車に乗っていない世界にズレちゃってるんですよ。  この世界では、テッシーは自転車に乗ってなくて、ずっとバイクに乗っている。その後、そのバイクを貸してくれたんですけど。  ここからもわかる通り、実は、時間軸のズレというのは、かなり早い時点で行われているんですね。
     まあ、でも、そこら辺の説明も全て抑えて、「もう描かなくてもいいや!」と排除して行って、ベタなドラマにしているところが面白いと思いましたね。
     あとは、「ティアマト彗星の軌道が曲がっているように見えて、ちょっと変だ」というふうに、SF作家の山本弘さんが指摘されてて。まあ、天文学的に考えればそうなんですけど。  ここら辺も、作画ミスと考えることもできるんですけど。その他にも、「いや、そうじゃなくて、これはこの星と星とが出会いたいからだ。作為的なリードなんだ」というふうに考えることもできるんじゃないかと思ってました。  まあ、99%作画ミスだと思いますけどね(笑)。
     そんな感じがしますということで、ロー・ドラマの名作、『君の名は。』の話はここまでです。
    (録画映像終了)
     はい、どうもお疲れ様でした。
     コメントを見てたら、「新海誠はそこまで考えていたのか?」と言う人がいたんですけど。考えているに決まってるんですよ。  ええとね、アニメの監督って、たぶん、普通の人が思っているより100倍考えています。これ、本当に真面目な話。  100倍考えた上で、「これをどこまで見せようか?」というのを調整しながら出してるんです。
     それまでの新海誠は、そういうのを「わかってほしい! わかってほしい!」という出し方をしてたんですけど、「やっぱり、それでは売れない」というのがわかるわけですよね。  そこで、「あくまでベタなドラマを提供して、そのバックグラウンドの方に自分の言いたいことを引っ込める」ということを徹底的にやった。そのおかげで、プロデューサーの思惑通り、ちゃんと当てることができたんですけども。
     まあ、解説の中で、いくつかミスがありました。地球はですね、銀河の中心から「3.5万光年」です。3.5光年のはずがない(笑)。  あと、銀河の自転って、僕が昔、本で読んだ時は、「10億年」と書いてあったんですけど、最近は「2億年から2億5千万年」となっているそうです。  ちょっと、そこだけ修正しておきます。
     なぜ、町長である三葉の父が、三葉の言うことを信じて町の人達を避難させたのかというのは、映画内ではほとんど説明されてないんですね。  これも、やっぱりわざとなんですよ。新海誠は、これを説明しようとしたら、そういう脚本も描けるわけですね。でも、それを描かないわけなんです。抑えるわけですね。  「そうか! 三葉の父も、三葉と同じように、昔、入れ替わった記憶があるんだな! 構造的に重なっているんだな!」というのは、気が付ける人にだけ気付いてもらおうというふうになってるんですね。
     これに気付かないような人というのは、とりあえず主題歌をガンガン掛けて、盛り上げたら、勝手に感動してくれるわけですよ。  そうやって、「ベタで盛り上げつつ、映画の構造的な面白さというのも、わかる人にだけわかるように、あえて後ろに引っ込める」というところが、この『君の名は。』の、世界映画としてメジャーを狙ったところだと思います。  「ティアマト彗星が、地球に落ちた欠片に会いたがって、1200年に一度地球に欠片を落としてくる」という、七夕のような、大変ロマンチックなお話を、夏に持ってくる。もう「この映画で当ててやる!」という勢いを感じる戦略、僕は好きですね。
     「テッシーという友達の自転車を壊したことは、映画の中ではクライマックス以降、なかったことになっている」ということで、世界線がそこで切り替わっているんですけど。これも、気が付く人だけが気が付けばいい。  もうね、新海誠は変わりましたよ。『秒速5センチメートル』とかだったら、絶対にいくつも映像的な伏線を持ってきて、押し付けるように説明してたのが、そこら辺サラッサラになってきた。  なので、『天気の子』も、たぶん、やるとしたらこのベタ路線だと思うんですけど。どれくらいやるのか、ちょっと興味がありますね。
     この辺りの仕掛けを、わかる人だけにわかるようにするというのは、作家としてはかなりシンドいんですよ、正直言って。  さっきも言ったように、作家というのは、僕らが考えるよりは10倍100倍は考えているんですけど、どうしても「わかってほしくなる人種」なんですね。  で、この「わかってほしくなるバルブ」というのを、どれくらい開けるのかによって、やっぱり、その作家の格みたいなものが変わるんです。
     あの、皆さんもご存知の通り、僕の中で『けものフレンズ』という作品の評価が大変低いのは、そのバルブがガバっと開くからなんですよ。  「なんじゃこりゃ!?」ってくらい、かなりガバっと開いて、「はいはい、そういうことをやろうとしているのね。ほた見ろ、普通のアニメファンでも気が付く出来になってるじゃねえか」って思うから、「ああ、俺はもういいや」ってなっちゃうんですけど。  ……ああ、2016年の口の悪い俺に戻ってしまう、アハハ(笑)。
     でも、新海誠のこの『君の名は。』の場合は、これを思い切って隠しているから、ドラマとしては、あくまでもベタに進行できる。  このアニメは、作品としての側面と、商品としての側面、2つを持っていることになると思います。
     今、ちょっとコメントで流れたんですけど、そうなんです。宮崎駿って、ここら辺のバルブが、割りと開いちゃうタイプなんですよね。  『未来少年コナン』とかを見たら、バルブが開いちゃってるんですよ。なので、一生懸命、たぶん、鈴木敏夫さんに言われて閉めようとした。  その甲斐あってか、『ナウシカ』は、割りと開け気味で作ってるんですけど、ジブリというスタジオが出来てからは、バルブを閉め気味にして、1回見ただけでは見抜けないような構造にしているところが面白いと思います。  ……ああ、そうですね。高畑勲さんのバルブは逆に硬すぎて、俺でもシンドいです(笑)。
     兎にも角にも、『君の名は。』というのは、商品と作品という2つの部分を合わせ持ったまま出したので、国民映画として成立したと思います。  『シン・ゴジラ』で、「ゴジラの正体は、人間が変身したものだ」という設定を、いまだに徹底的に隠しているのと同じです。これを隠すことによって、ゴジラが暴れるシーンというのに、映像的な快感を与えることに成功したわけですね。
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『君の名は。』解説:大ヒットの鍵は「作家性の諦め」にあった」

    2019-07-17 07:00  
    216pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/17
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    『君の名は。』と『Gu-Guガンモ』のドラマ構造
    【画像】スタジオから じゃあ、『君の名は。』の話に行きましょうか。  今日の第1特集です。新海誠監督の『君の名は。』ですね。
     これについては、まず、映画公開当時に僕が語った解説があるので、その録画映像を見ていただきたいと思います。  2016年、今から3年前の9月4日に、サロンのオフ会で語った、ほぼ10分間の映像です。  この録画映像が終わった後に、また生放送の方に戻りますので、そのままお待ちください。
     それでは、岡田斗司夫ゼミの2016年9月4日号として公開した、3年前の映像です。よろしくお願いします。
    (録画映像開始)
    【画像】サロンオフ会映像 『君の名は。』というのは、飛騨の山奥に住んでいる女子高生・三葉と、東京に住んでいる男子高校生・瀧の話です。  ……ネタバレですよ。大丈夫ですね?
     ある日、この2人のお互いの身体が入れ替わっちゃった、と。  まあまあ、「わあ! 俺、女の子になっちゃった! ……おっぱいモミモミ」みたいなやつがあって、「わあ! 私、男の子になっちゃった! おしっこに行く時に、なんか変なものがついてる!」みたいなものもあります。  で、お互い、自分が持っている携帯にメッセージを残すことを思いついて、2人のコミュニケーションが始まる。一度も会ったことのない2人は、徐々に互いに気になる存在になりました。
     それと同時に、映画の中でも最初から語られるのが、1200年に一度、地球に接近するティアマト彗星ですね。この彗星が、どんどん近づいて来る。  実は、この女の子というのは、3年前に死んでいるんです。  「お互いの身体が入れ替わった」と思ってたんですけど、実は「3年前の女の子と、現代の男の子が入れ替わった」という話で出来ています。  ティアマト彗星は、地球に近づいて来る時に2つに分かれて、彗星の欠片が女の子の住む村に落ちて来て、その村全てが消えてしまう。「これを知った2人が、なんとかして全滅してしまう村からみんなを逃がそうとする」というのが、お話のクライマックス辺りのプロットになっています。  結局、ちゃんと成功はするんですけどね。
     瀧と三葉という2人の高校生は、その消えてしまった村の、クレーターの端で、黄昏時、逢魔が時に出会うんですね。  その時間だけ奇跡が起こって、時間を超えて2人は出会う。お互いに「あなたのことは絶対に忘れない」と言い合って、「みんなを助けよう」と決意する。  しかし、確かに覚えていたはずなのに、2人共、記憶がどんどん薄れて行くんですね。絶対に忘れたくない、覚えておきたいことなのに、どんどん忘れてしまう。  それでも、肝心なことだけは覚えていて、「このままでは村が滅びる。だから何とかして、村の人を騙してでもいいから、避難させなきゃいけない!」ということで、女子高生の三葉は、学校の放送部から嘘の避難放送をして、村の人を動かそうとするんです。でも、村の人は動いてくれない。  そこで、村長だったか町長だったかをやっている三葉のお父さんに、話をしに行って、「最初は信じてもらえなかったのに、最後は三葉の熱意がなぜか通じたような形になって、協力してくれて、みんな助かる」という話になる。
     で、最後、もう、それから10年後くらいに、2人は東京の街で偶然出会うんです。  それまで、2人共「何かが足りない。自分は何かを探しているはずだ。何か思い出せなかったことがあったはずだ」という思いを抱きながら、10年くらい生きてたんです。だって、お互い、もう名前も何も覚えていない状態ですから。  そんな中、東京の街で偶然、出会った2人は、お互い振り返って、「君の名は?」というのを聞き合う。再会できたわけです。  その時に、「2人共、なぜか、すれ違った時から涙が止まらなかったから、わかった」という話になっているんですね。
     「この構造、どこかで見たことあるな」と思ったんですよ。  何かというと、少年サンデー原作版の『Gu-Guガンモ』なんですね。
     『Gu-Guガンモ』のメインキャラクター「ガンモ」というのは、高い空が飛べない鳥だったんですけど、最終回の間際になって、やっと飛べるようになった。そしたら、ガンモが空を飛ぶ時、なぜか、その周りで、いろんな鳥が一緒に飛ぶようになるんですね。  その時から、話が「あれ? ガンモって、ダメな鳥だと思ったけど、鳥の王様みたいだな」というふうになるんです。  そしたら、夜中に変な使者が来て、ガンモに「あなたは実は鳳凰なんです」と告げるんですね。
     ガンモって、ドラえもんみたいな、コーヒーを飲んだら酔っ払う、人間の言葉を喋るキャラクターなんですよ。  でも、この姿は卵体という、巨大な卵だったんですね。卵に手足がついて羽がついた存在。だから、ちょっと飛べて話せるだけだったんですけど。その中には、何十匹もの鳳凰の子供が入っている。  ガンモはそこで、「鳳凰というのは、人間の子供の純粋な気持ちというのを受けて、清い気持ちのまま、この世に羽ばたかなければいけない。だから、1年間という期間に限って、卵の状態で人間社会の中で過ごすことが必要でした。でも、あなたの役目はもうすぐ終わります。あなたはもうすぐ消えてなくなります」と言われるんですね。  つまり、ガンモというのは包み紙だったんですよ。元から捨てられる運命の、1年間限定の包み紙。それが破れることで、素晴らしい鳳凰が生まれるんですけど。  でも、ガンモのことを「自分の無二の親友だ」と思っている男の子や、その家族にしてみれば、ガンモというかけがえのない存在はいなくなっちゃうんですね。
     最後は、ガンモの殻が破れて消えてしまうんですけど。その前の晩に、ガンモはみんなに挨拶するんですね。  「実は僕の正体は卵で、もうすぐいなくなっちゃう。でも、悲しまなくてもいいよ。僕がいなくなった瞬間に、みんなの記憶から、僕は消えてしまうから。半平太君、これからは僕なしでもちゃんと生きてね」と。  こんな、ドラえもんの最終回レベルの大感動の盛り上がりがあるんです。
     これ、なぜかと言うと。  『Gu-Guガンモ』の作者である細野不二彦という人が、少年サンデー編集部に最初にマンガを持ち込んだ時から、小学館の編集者は「ゲェェーッ!」って思ったんですよ。  「こいつ、メッチャ絵が上手い! おまけに子供向けの話が描ける! オバケみたいな大きいキャラクター描いてもいける! こいつは藤子・F・不二雄になるしかない!」と。
     細野不二彦って、もともと、『アクエリオン』とか『マクロス』の監督をやったスタジオぬえの河森正治の友達だった人で、慶応大学の小等部の頃からSFばっかり描いてた人だったんですね。  それが、大学生になった頃、少年サンデーに持ち込んで「SFを描きたい」と言ったら、「お前はそんなものを描いてはダメだ! 細野不二彦、お前は藤子不二雄の後を継げ!」と命令されて、苦しみながら描いたのが『Gu-Guガンモ』なんです。  まあまあ、『バクマン。』でいうと『走れ!大発タント』みたいな話なんですよね。  そんな人が描いてるので、まあ、上手くて当たり前なんですけど。
     さて、その最終回。  前の夜にガンモが、みんなに「これでお別れだよ。でも、みんなの記憶から僕は消えてしまうから、悲しまなくてもいいんだ」という、藤子・F・不二雄ばりの挨拶をするんです。  で、挨拶をし終わった瞬間に、その場でガンモの身体がボンッと破けて、その中から何百匹もの綺麗な鳥がブワーっと世の中に羽ばたいていく。  この鳳凰がまたこの世界をきっと平和にしてくれる。良くしてくれる。  でも、半平太という主人公の男の子は、「ガンモのことは絶対に忘れない! 忘れない! 忘れない!」と言って、夜が更けて行く。  そして、その翌日の朝というのが、マンガのラストシーンです。
     半平太が目を覚ますと、何かが足りない気がする。だけど、それが何かはわからない。思い出せない。  そんな中、お母さんが「もう学校に行きなさい」と言って、半平太にコーヒーを淹れてくれるんです。コーヒーというのは、消えてしまったガンモがすごい好きだった飲み物なんですけど。  半平太は、コーヒーを飲んだ瞬間に、なぜか涙が出てくるんです。  「自分は何かを忘れている。それは一番大事なものだったはずなのに。なんだろう?」ということで、涙だけが止まらないというラストシーンなんですよ。  ものすごい感動のクライマックスなんです。
     「要するに、『君の名は。』ってそういうことね」と。  「わかった。『Gu-Guガンモ』だったんだ!」と。  「泣けるあれを持ってくるのは偉い!」と、僕は思いました(笑)。
     何が言いたいかというと、『君の名は。』にしても、『Gu-Guガンモ』にしても「ハイ・ドラマ」を目指しているんですね。  それが「半平太がコーヒーを飲んだ時、なぜだかわからないけど涙が出てきた」なんですけど。  でも、『Gu-Guガンモ』って、僕が改めて話をするまで、みんなも思い出さなかったくらいの作品なんですよ。つまり、名作だけどマイナーなんですね。
     ええとですね、今回、新海誠が挑戦したのは「作家性の諦め」なんですよ。  それまで、新海誠というのは、例えば『ほしのこえ』という「愛し合う2人が何光年も離れ離れになってしまって、男の子の方は女の子のことをいつまでも思っているはずなのに、勝手に結婚なんかしやがって、女の子の方は宇宙の果てで宇宙人と戦っていて、いつか私はあの人に会える時が来るんだろうかと考えている」みたいな、もう救いようのないほど切ない話を連続して描いてて、そこそこ評価もあったんですけど。  「このままでは、俺はジブリにはなれない! 庵野秀明にはなれない!」と、自分で思ったのか、他人から言われたのかはわからないけど。  そこからガラッと作風を変えて、「よっしゃあ、わかった! 俺はもう、中学生や高校生、言い方は悪いけど馬鹿でもわかる映画を撮るぜ! ほら、作った! ほら、馬鹿が泣いてる!」というのが『君の名は。』なんじゃないかな、と。
     まあ、「馬鹿が泣いてる」って言ったら、言い過ぎなんですよ。  さっきも言ったように、世の中の大半の人は、そういうのしかわからないんだから。メジャー作家としてデビューしている以上は、みんなにわかるのものを作るのが正しいんですね。  わかる人にだけわかっちゃったら、それはもう『水曜日のダウンタウン』になっちゃうんですよね。  新海誠というのは、そういう方式で十数年間、頑張ってきた上で、「ああ、この方法では先が見えない」と思い直して、徹底的にベタの方向に振った。  その結果、まあ、大ヒットしてるんじゃねえかなというふうに思います。
    (録画映像終了)
     ……いやあ、2016年の俺は、ものすごく口が悪いね(笑)。  今だったら、まず、言わない言い方してます。「3年前の俺は、もう怖いものなんてなかったんだなあ」と思いますけど。  本当に口が悪くてビックリしました。
     コメントで、ちょっと聞かれたんですけど、『君の名は。』というのは、SFなんですよ。  というのも、科学的な縛り、例えば「複雑に混じっている世界線」とか、「タイムパラドックスの矛盾」とか、「ティアマト彗星の軌道」とか、そういう科学的な縛りというのを、全部、楽しんで使いこなしてる。  この感覚がSF特有だと思うんですけどね。
     さっき話した中で「ベタ」っていうのは何かというと、「わからない人にもわかるような感動をさせる表現」というのを、ベタと呼んでいるんですけど。  同時に、「作家性の諦め」というふうにも言いました。  これはどういう意味かというと、「自分の中で考えた、ストーリーとかテーマを作家性にするのではなく、自分が持っている絵の力、絵の表現というのを作家性と決めた」ということです。  その結果、ドラマ部分というのは、あえてベタの方に思い切って持っていっちゃった。そういうところが、『君の名は。』のすごいところだと思います。
     絵の力というのは、例えばどういうものかと言うと。  『君の名は。』にタイムラプス的な表現というのが出てくるんですよ。タイムラプスというのは、「日が昇って、その後、日が沈んでいく」というのを早回しにして見せるみたいなものなんですけど。  これは、『AKIRA』というアニメの中で使われた、ストリーク表現のようなものなんです。
     バイクが走る時、テールランプがビューっと後を引く。こういうのをストリーク表現と言うんですけど。  ストリークというのは、もともとビデオカメラのレンズの奥にある光学センサーの限界によって発生するものなんですね。ビデオカメラの光学センサーの処理速度が、現実に求められているより遅いから、光っているものが動いた場合、尾を引いているように見えてしまう。つまりは、ビデオカメラの欠点なんですけど。  『AKIRA』という映画では、それをあえてバイクが走るシーンに入れることによって、逆にリアリズムを表現したんです。
     それと同じように、『君の名は。』でも、タイムラプス的な映像を入れることによって、リアリズムを出している。  つまり、僕らが持っているリアリズムというのは「現実にどういうふうに物を見えるのか?」ではなく、「日常的にどういう映像を目にしているのか?」によって出来ているわけですね。  なので、あえてビデオ風に荒くした画面にリアリティを感じる場合もある。ストリーク的な表現や、タイムラプス的な表現というのを、あえてアニメの中でやることによって、ドキッとするくらいリアリティが出る場合もあるんです。
     あとは、新海誠の絵の力というのは……ちょっとこれ、説明しにくんだけど。説明できるかな?  空に鳥の影があるんですよ。 (ホワイトボードに図説する)
    【画像】鳥の影 すみませんね、絵が下手で。ええと、これ、わかりますかね?  太陽が沈んでて、空に鳥が飛んでるんですけど。鳥の後ろの空に、影がちょっとあるんですね。  これ、現実にはありえないんですよ。空に影が落ちるなんてことなんて、あるはずがない。でも、新海誠の『君の名は。』の中には、空を飛んでいる鳥の後ろに軽く影が落ちているシーンが、何ヶ所かあるんですね。
     これも、現実ではないんですよ。むしろ、マンガの表現に近いんですよね。  つまり、マンガの表現に近いことをあえて映像の中でやることによって、「これ、なんか見た事ある!」っていう感じを出してるんですね。  僕らがそれを見たのは、さっきのストリークやタイムラプスと同じように、作られた映像の中なんですよ。  それを、あえて入れることによって、ドキッとするようなリアリティを出す。
     『君の名は。』というのは、新海誠の作家性というのを、こういった絵としての表現の部分に限定して、テーマ的、ストーリー的なところは思い切ってベタな方に振ってしまった。  つまり、ハイ・ドラマというのを押し付けず、ドラマの中に隠すことをしたわけですね。
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    2019/06/30 #288 「『君の名は。』完全解説と、『なつぞら』『ガンダム THE ORIGIN』、プラス6月のお便り&ステッカープレゼント」
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「今日のニコ生は、ガンダム完全講義第16回です」

    2019-07-16 07:00  
    216pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/16
     今日は、岡田斗司夫のコンテンツ情報をお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
    7月16日(火) 20:00~ 「機動戦士ガンダム完全講義〜第16回」 
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    2019/07/02 マンガ・アニメ夜話 #14 「ガンダム完全講義14:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part1」

    ホワイトベースに遠回りさせて、地球全部が戦争状態にあることを見せる
    「弱者と強者」という避難民の構造とアムロの「やる気」
    避難民についての補足
    ホワイトベース内のパワーバランスについて
    ジオンのガンダム分析とガルマの驚きの意味
    ガンダムの分析補足
    ホワイトベースに遠回りさせて、地球全部が戦争状態にあることを見せる
     おはようございます。岡田斗司夫です。  岡田斗司夫の機動戦士ガンダム講座、今日は第14回。「コアファイター脱出せよ」ということになってますけども。  ……というか、おはようじゃないですね。もう夜の8時だわ。はいはい、すみません。
     今日はね、もう1日家の中にいたもんで、季節感がわからなくなって来て。  1日家の中にいたんじゃないですね。正確に言うと、夕方に一度、睡眠呼吸科に行って、CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸療法)の機械を取り替えたんですけど。  これまではPhilipsだった機械を、TEIJINの機械に取り替えるというのをやってたんですけども。  そんなこんなで7月2日の火曜日です。
     最初は、福井県のハンドルネームこうこうさんのお便りからいきましょう。

    岡田さん、こんばんは。ガンダム講座を見て疑問がわきました。 「ホワイトベースの大気圏突入は、シャアによって妨害され、ジオン軍が支配する北米カリフォルニア付近に降下した」とのことですが、ロサンゼルスからブラジル・サンパウロは1万キロですので、そのまま南下して南米大陸に行けばいいと思うのです。 なぜ、わざわざ西回りで地球を一周4万キロの旅をしてジャブローに行ったのでしょうか?

     これ、なぜかと言うと。ここに簡単な世界地図を用意したんですけど。 (世界地図を使って図説する)
    【画像】世界地図 ホワイトベースは、南米のジャブロー、この辺に行きたいわけですよ。なのに、シャアに妨害されて北米カリフォルニアに着いてしまった。  「だったら、そこから真っ直ぐ南に行きゃあいいじゃないか。なんで真っ直ぐ行かずに、こんなふうに日本の鳥取砂丘に行って、その後、モンゴルを突っ切って、黒海付近のオデッサに行って、イギリスのベルファストに行く、みたいに、がーっと行ったのか?」ということなんですけど。
     これ、まあ簡単に言うと、南米の辺りというのは、ジオンの防衛線というのがメチャクチャ堅いからですね。  連邦軍の最大の主力が残っているジャブローを包囲するためのジオンの包囲戦力があるので、ホワイトベースとしては、例えば「一旦、太平洋に出て、東からジャブローに入る」というコースであろうとなんだろうと、難攻不落で通れない。  そういう設定上の理由があります。
     この設定上の理由以外には、『機動戦士ガンダム』って、実は、高畑勲と宮崎駿が作った『母をたずねて三千里』をモデルにしているんですね。  『アルプスの少女ハイジ』や『母をたずねて三千里』の時に、富野由悠季監督は絵コンテをやってたんですけど、高畑勲から散々ダメを出された。「これではダメだ。これではリアリティがない」と言われたんです。まあ、『赤毛のアン』もそうなんですけど。  そうやって、高畑勲に散々鍛えられた富野由悠季が、「じゃあ、俺が作れるものは何なんだろう?」と考えた時に、モデルに選んだのが『母をたずねて』なんです。  『母をたずねて三千里』って、もともと原作の小説は、確かね3、40ページくらいしかない、かなり短い話なんですよ。  それを、1年間のドラマにした高畑勲の手腕というのに、富野由悠季はものすごく感動して、「ああ、そうなのか! これがドラマ作りというものなのか!」というのがわかったわけですね。
     主人公の少年に世界中を旅させることによって、「戦争状態というのは何か?」ということを見せる。  例えば、中盤の砂漠地帯での戦いとか、ベルファストという軍港、あとはジャブローという南米。こういうふうなところへアムロを行かせることによって、地球全部が戦争状態にあるということを見せる。  それも、「船の上から眺めているだけ」ではなく、時々、下に降りて、土地の人と混ざることによって、いろんな経験をしていく。  アムロがガンダムを盗んで脱走した時の、たまたま会った砂漠のお爺さんとの「水、ありませんか?」みたいな会話って、僕らは単なる繋ぎのシーンとして見てるんですけども。そうではなくて、あれは本当に「どうやったら、地球全体が戦争状態にあるという極限状態を見せられるのか?」という、富野由悠季なりの工夫なんですね。  あとは、「この『母をたずねて三千里』を、俺もちょっとやってみたい」というか。「アムロ・レイという少年の目線を通じて、地球1周をさせてみたい」という、そういう野望が混ざっているんだということを、ちょっと覚えておいていただければありがたいです。
     すみません、面白いお便りを頂いたので、こうこうさんには6月のステッカーを1枚差し上げます。
    【画像】ステッカー では、今回の『コアファイター脱出せよ』という話。  コアファイターというのは、ガンダムのお腹の中に入っているカプセルの部分が広がって、飛行機の形になったものです。 (模型を見せる)
    【画像】コアファイター これ、35分の1のスケールだから、かなり大きいサイズで作ってあります。  窓も、このように、OPの「まだ怒りに燃える~♪」という時にアムロ君が乗り込むシーンのように、ちゃんと窓がせり出てくるという、なかなか良いプラモデルなんですけど。  これを使って弾道飛行をする話です。
     弾道飛行というのは何かというと、「軌道速度に達しないロケット・ミサイルの飛行経路」だと思ってください。  この弾道飛行のモデルになっているのは、富野由悠季さんが子供の頃に憧れたX-15という、ロケット飛行機のコースだと思います。  X-15というのは、2分間の加速でだいたいマッハ5からマッハ6くらいの速度に達するんですけども。そのX-15と同じく「宇宙高度」と呼ばれる、だいたい高度10万メートルあたりをかすめて南米まで直行する予定でした。  つまり、普通の飛行機として、大気圏の中をビューっと飛んで行くのではなくて、本当にミサイルの飛び方なんですね。「最初に思いっきり加速して、石ころが飛んで行くみたいな形で、ジオンの制空権の遥か上を飛び越えて、南米ジャブローまで行っちゃおう」という計画だったんです。
     「最初の30秒がツラいぞ」というふうに、アムロ君は連邦軍の士官に教えられます。  まあ、怪我をしているので、サラミスのカプセルと一緒に降りて来た士官なんでしょうけども。  「中央カタパルトを使ってコアファイターを発射させる」と言います。つまり、コアファイターの足のところに、橋桁みたいなやつをカチャッとくっつけちゃって、これを中央スチームバルブで思いっきりバーンと引っ張る。
    【画像】コアファイター脚部 それと同時に、コアファイターの後ろのブースターを思いっきり吹かすことによって、30秒間加速する。  たぶん、この加速によって、5G、重力の5倍の圧力が掛かるんじゃないか、と。つまり、毎秒50メートルの加速で行くんじゃないかと、僕は考えています。  毎秒50メートルということは、発射して1秒後は、まだ秒速50メートルなんですけど、7秒後には秒速350メートル、つまり音速に達します。そして、30秒後、加速の終わった時の終端速度は秒速1500メートルですから、マッハ4.5ですね。時速5000キロくらいだから、まあまあな速度なんですよ。  アムロ君は、これでジャブローまで行こうと考えます。
     果たして、アムロのこの大胆な計画は成功するのか?  では、機動戦士ガンダム講座、第14回、「コアファイター脱出せよ」前半の解説をお楽しみください。  では、どうぞ!
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『ガンダム THE ORIGIN』から考える「SFとファンタジーの違い」」

    2019-07-15 07:00  
    216pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/15
     今日は、2019/06/30配信の岡田斗司夫ゼミ「『君の名は。』完全解説と、『なつぞら』『ガンダム THE ORIGIN』、プラス6月のお便り&ステッカープレゼント」からハイライトをお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
    【画像】スタジオから じゃあ次は、『ガンダム THE ORIGIN』ですね(笑)。  もう、毎週毎週、話してる『ガンダム THE ORIGIN』の話をちょいとします。
     あのね、せっかくYouTubeライブでも配信してるから話しますけど。  このニコ生ゼミの無料枠というのは、分割してYouTubeでも公開しているんですね。  で、YouTubeにはコメント欄というのがあって、その動画に対するコメントが付きます。僕、そういうコメントには、だいたい目を通しているんですけど。
     先週、『ガンダム THE ORIGIN』に関して「月面都市の中にあるアナハイム・エレクトロニクスのシーンの、6分の1重力の表現が、まあ、ひでえよ」という話をしたんですよ。  そしたら、YouTubeのコメントとしてわりと多かったのが、「いや、あの時代だから人工重力があるんだろ?」とか、「巨大ロボットを作れるほどのアナハイム・エレクトロニクスの技術があれば、宇宙に移民してから70年も経ってるんだから、人口重力くらい当たり前だろ」という意見。  これを読んで、僕、ちょっと複雑な気持ちになっちゃったんですよね。
     まず、SFとファンタジーの違いから、説明させてください。
     SFというのは「科学的なお約束に沿って展開するもの」なんですよ。  例えば、「100年以内に巨大ロボット」はアリなんだけど、「100年以内に重力制御」はナシなんですね。  まあ、『銀河英雄伝説』みたいな千年以上の遠未来だったら、重力制御もアリなんですけど。
     この「アリ / ナシ」というのは、「技術的に無理なのか? 科学的にまだ無理なのか?」で決まります。  例えば、巨大ロボットは単に技術的に無理なんですよ。つまり、技術が追いつけば、巨大ロボットは作れるんですけど。  でも、人間みたいに恋愛するロボットというのは、科学的にまだ無理なんですね。  この技術的に無理と、科学的に無理というのには、ちょっと温度差があるんです。
     こういう、僕が今言った面倒くさい制限とか約束事を、あえて面白がって守って、そういうルールの中で遊ぼうというのがSFなんですよ。  それに対して、こういった制限が面倒くさくなって、それを外してもっと自由に遊ぼうというのがファンタジーなんです。  ファンタジーとSFというのは、どっちが優れてるというものではなくて、そういった技術的な制限や科学的な制限、制約、縛りを面白がるか、あんまり面白がらないかの差だと思ってください。
     例えば、『ハリー・ポッター』はファンタジーだから、魔法のエネルギー源を問わないんですよ。  魔法を使っても、「じゃあ、この系にあるエネルギー保存則はどうなっているのか?」ということは、あんまり気にしないんですね。  逆に、初期の『機動戦士ガンダム』というのは、慣性の法則とか、科学的な部分にこだわりまくってるんですよ。そこがこの作品を面白がるポイントの1つなわけですね。
     富野さんというのは、その時代にやっていたような他のロボットモノとの差別化というのを、ここでやろうとしたわけですね。  なのに、「所詮は巨大ロボットモノなんだから、そこまでのリアリティなんか別に要らない」と言うと、あの頃の富野さんを全否定するような形になるんです。  俺、YouTubeのコメントを見て、「それは富野さんが気の毒だよ」って思ったんですけど。
     巨大ロボットというのは、さっきも話したように、技術的に無理なだけなんですよ。材料工学とか動力源の問題が解決したら、全然アリなんですよね。  でも、反重力とか重力制御というのは、科学的にまだ無理なんです。理論も実験も、その基礎状態から何もない状態です。「こうすれば可能なんじゃないかな?」という仮説が、かろうじてあるくらいですね。  なので、『ガンダム』の中に、人工重力場を登場させると、一気にジャンルがファンタジーになっちゃうんですね。  「技術的に無理だけど、科学的には不可能じゃないよね」っていう、「もしも」を重ねて楽しむのがSFであって、SFとファンタジーでは、どっちが上とかじゃなくて、ジャンルが違うんです。
     もちろん、そういうこだわりがない人にとっては、「ファンタジーだろうがSFだろうが、どっちでも自分の好きなロボットモノの世界なんだから、うるさいことを言わずに楽しませてくれよ」という話なんですよ。  それはね、すごくよくわかる。  ただ、この岡田斗司夫ゼミというのは、申し訳ないけど「ファンタジーなロボットモノが大好きだ」と言う人をターゲットにしてないんですよね。  なので、たまたま動画を見ちゃって、気分を害してしまった人には「申し訳ございません」と謝るしかないんですけど。
     さて、そういうこだわりが大好きな人への、SFの話です。  先週の『ガンダム THE ORIGIN』で、僕が一番ゾクゾクしたのが、コロニーの落下シーンなんです。  これ、初期のTVシリーズでも「人類史上最悪の被害」として描かれているんですけども。
     この人類の歴史上最大の被害というのがかなり正確に描かれているところが、僕、見ててゾクゾクしたんですよ。  『機動戦士ガンダム』の放映当時、ガンダムのファングループの1つにGun Sightというところがありました。東京のファングループだったんですけど、そこが作った有名な商業誌に『ガンダムセンチュリー』というのがあるんです。  この本の中で、コロニー落としの被害のすごまじさを、たった1行で語っているんですけど。「コロニー落下の影響で、地球の自転速度が1時間あたり1.2秒加速した」って書いてあるんですね。  これが、やっぱりSFの感覚なんですよ。
     つまり、地球がこういうふうに回転しているわけですね。 (地球儀を見せながら)
    【画像】地球儀 それに対して、コロニーが地球の自転と同じベクトルで衝突してくるわけです。すると、地球の自転は、コロニーの重さ×速度によって、加速しちゃうわけですね。  それまでの自転速度より、1時間につき1.2秒速くなる、と。  この言い方が、なんかゾクゾクして、「かっこいいー!」って。「ああ、自転速度が速くなるんだ!」って。
     ここらへんがSFなんですよ。そこら辺をあまり気にしないというのが、ファンタジーなんですけど。  まあ、そういうSFファンの業の深い見方で見ておるというところで、ご容赦願いたいと思います。
     今週の『ガンダムTHE ORIGIN』の話はここまでです。
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「再入門『進撃の巨人』。途中までしか読んでない人もみんな一緒にクライマックスを味わう準備を!」

    2019-07-14 07:00  
    216pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/14
     今日は、岡田斗司夫のコンテンツ情報をお届けします。
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    【ニコ生】
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    今夜のテーマは、『進撃の巨人』です。
    どうやら今年中にはマンガ連載が終了しそうな『進撃の巨人』。 来年秋には第4期(最終期)のアニメもNHKで放送が決定しました。
    『進撃の巨人』は、きちんと伏線も回収して、納得のエンディングを迎えるはず。僕には、そんな予感がビンビンしています。みなさんも、最後まで読んで絶対に損はないはず!
    とは言え、長期連載の途中で、読むのをやめてしまった人も多いようです。 読もう、読もうと思いながらも、「読み直すなら一巻からだよな。設定も、ストーリーも複雑で、かなり忘れちゃってるから。でも、そんな時間はないんだよ、う~ん」と、二の足を踏んでいる人も多いのではと思います。
    そんなあなたのために、岡田斗司夫がここさえ押さえれば『進撃の巨人』が楽しめるポイントをしっかりお届けします。 それを聞いてから、現在の連載から読むもよし、読んでなかった部分を読むもよし、やる気を出して1巻から読み返すもよし。
    いずれにしても、今年中に迎えるであろうエンディングの感動を、ぜひ、みんなで一緒に味わえるように、しっかり復習&予習をしたいと思います。
    また、毎回のお楽しみ、今週の『なつぞら』コーナー、今回は宮崎駿の登場で、特に盛り上がっています!
    お楽しみに!
    ちなみに、前回のニコ生岡田斗司夫ゼミ#288「『LINEスコアと評価経済』と『スパイダーマン』。今夜のゼミは甘辛ミックス!」の内容は、
    表放送
    表・裏 放送
    表・裏・放課後放送
    表放送 00:00 岡田斗司夫のライン@登録してね 03:35 今週の『なつぞら』 14:03 スパイダーマン・ファー・フロム・ホーム 20:05 今週の都市伝説 27:50 ラインスコアの真実 38:05 3つのお願い 裏放送 40:50 ラインスコアの真実続き 01:06:42 『トイ・ストーリー4』 01:19:34 『スパイダーマン』日本の漫画版 01:33:42 Q「サンダーバードやってください」 放課後 01:36:41 『ゲーム・オブ・スローンズ』 01:41:47 レゴの月着陸船 01:44:51 サターン5型ロケット
    明後日(火)の岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話は
    7月16日(火) 20:00~ 「機動戦士ガンダム完全講義〜第16回」 
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    2019/06/30 #288 「『君の名は。』完全解説と、『なつぞら』『ガンダム THE ORIGIN』、プラス6月のお便り&ステッカープレゼント」

    雑談と今週の『なつぞら』
    『ガンダム THE ORIGIN』から考える「SFとファンタジーの違い」
    『君の名は。』と『Gu-Guガンモ』のドラマ構造
    『君の名は。』全体のテーマとは?
    『君の名は。』の「ルック」とその素晴らしさの理由
    お便り紹介「3つの願い」
    次回告知
    お便り 「岡田さんが話していた集中力アップの機械、買っちゃいました!」
    お便り 「シャアの人心掌握術を会社で使ってみました」
    お便り 「未来に対して無根拠に楽しみだと思えなくなりました」
    俺の悩みを聞いてくれ 「ガンダム講座が終わったら、何をしたらいいだろう?」
    お便り 「オーバークオリティのアニメはリソースの無駄?」
    お便り 「機械=全部ロボットという雑な括りに納得できません」
    お便り 「『メリー・ポピンズ』を語ってください!」
    俺の悩みを聞いてくれ! 「最近、話が長すぎる」
    お便り 「勤め先が映画の詐欺に遭っています」
    お便り 「なぜ少女マンガの時代考証は雑なのですか?」
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『さらざんまい』の味わい方と、マンガ実写化反対論」

    2019-07-13 07:00  
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    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/13
     今日は、2019/06/23配信の岡田斗司夫ゼミ「『アラジン』特集、原作『アラビアン・ナイト』から、アニメ版・実写版まで徹底研究!」から無料記事全文をお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
    『さらざんまい』の見方と、マンガ実写化反対論
     はい、こんばんは、今日は6月23日ですね。  始まる前にコメントなどをダラダラ読んでいる中で、気になったので、いくつか話をしようかと思っているのがありました。
     まあ、まず「『さらざんまい』を語ってくれ」というコメントなんですけど。たぶんね、僕の『さらざんまい』の見方って特殊なんですよ。  なので、最終回についても「ああ、もう最終回なのか」と。「別に全3話でもいいし、全20話でもいいんだけど、全11話で終わったのか」という感想ですね。  もう本当にミュージカルとしてしか見てないので、「最終回ではカワウソまで歌った。面白かったな」というのと、「あと、最後の最後、なんか3人がサッカーしているシーンがやたら長くて、あそこはいらねえよな」とか。ああいうところ、本当にもう要らないというか。
     僕の『さらざんまい』の見方が、なぜ特殊かと言うと、あそこで出てくるセリフとか人間関係が、僕には塗料みたいに見えるからなんですよ。  まず「さらざんまい」というすごく面白い彫刻があって、その上に塗料が塗ってあって、その塗料の上に模様として字が書いてあるんですよ。  その字というのが、いわゆるセリフで、人によってはその字ばかりを読んで「いや、これはすごい!」とか、「3人が幸せになって!」とか見てるんですけど。もう、僕は全然そうじゃなくて、「いや、そんな模様とかディティールとかじゃなく、ちょっと離れて見た時の彫刻としての面白さがすげえんじゃん」という。  そんな見方なので、あんまりこのニコ生でガツッと語れる感じがしないんですよね。僕の興味は「誰が歌うか?」しかなかったから(笑)。
     本当にそういう見方なんですよね。なんだろうな? まあ、AKBでもなんでもいいんですけど「アイドル歌謡の歌詞をどれくらい本気で受け取るか?」という問題に近い感じ。  「『恋するフォーチュンクッキー』の歌詞、そんなに本気で受け取ってどうするの?」というふうに感じてて。「それよりは、全員揃ってるダンスの面白さがすごいんじゃん」とかね、そっちの方の見方なんですよね。
     あとは、冒頭、コメントでちょっと流れてた、「なぜマンガの映画化、実写化に反対するのか?」という話。  これ、ちょっと面白いと思ったから、そこだけ話します。
     僕も、マンガの映画化、実写化にはあんまり賛成じゃないんですよ。  なぜかというと、うーんとね、「マンガにブレを作るから」と言うかな?  本来言えば、マンガ家が描きたいように描かせてあげたいわけじゃないですか。ところが、実写化とかアニメ化とか映像化されると、普通のマンガより資本が大きく動くので、編集部も動揺しちゃう、みたいなもんですね。  その結果、それがマンガの方に悪影響を及ぼして、マンガがブレちゃうことが多い。
     終わったマンガだったらもう全然OKなんですよ。  だから、『BANANA FISH』が、あんなアニメにされたとしても全然文句はないんです(笑)。  いや、文句は言いますよ? でも、それは「このアニメには文句を言うという楽しみ方があるんだな」と発見しているので文句を言ってるだけなんですけど。  だけど、終わってないマンガを実写化するのは、あんまり賛成ではないんですよね。  『進撃の巨人』の実写なんて、もう黒歴史ですよね。アニメのみが正しい歴史として残っていくというのが、すごく面白いところだと思うんですけど。
     だから、連載中はね、本当いえば、あんまり望ましくないんですけど。  まあ、作者の方がメンタル強くてブレなければ、それで十分ですね。
    「『アオイホノオ』は?」(コメント)
     そう、『アオイホノオ』のように、作者が実写化によって、そっちの方に心が持ってかれて、そこから先は、もう、なんか、今、どういう展開になって、一体、島本君が何で悩んでいるのかもわからないんですよ。  「早く終わらせるか、面白くするか、どっちかしろよ!」ってふうに思うんですけども(笑)。  まあ、そういうふうに考えています。
     あとは、そうそう「今日は生か?」みたいなコメントがあったんですけど。基本的に「月に1回は録画をやろう」というふうに考えちゃってるんですね。  なので、次回の録画は7月28日という、だいぶ先になります。先週、録画放送をやったところですから。  月に1回というのがポイントですね。
    「最近、対談ないですね」(コメント)
     やっぱり、去年、一昨年といろいろやって、しみじみ思ったのが「1人で喋るのが好き」なんですよ(笑)。  もう、本当に申し訳ないけど、これ、別に対談する相手が悪いわけでもなんでもないんですよ。「自分1人で面白さをコントロールしたい」という宮崎駿なんですよ。宮崎駿が「俺が5人いれば!」って思っているとすれば、俺は「ラッキー! このメディアは1人で出来るメディアだから、1人で語るよ!」というふうに思っちゃってるので、1人でやらせてください。
     福岡の富野由悠季展、『富野由悠季の世界』という展示会に行って来たんですけど。  まあまあ、来週のお便りコーナー、お便りをどんどん寄せて貰ってるんですけど、まだまだください。プレゼントもですね、いっぱい用意してます。  プレゼントとして……これはね、あげられないんですよ。 (富野由悠季氏の写真がプリントされた、透明な置物)
    【画像】富野アクリルスタンド これは富野由悠季のアクリルスタンドなんですけども。まあ、こんなものは誰もいらないと思うんですけど、あまりに嬉しくて買ってしまって。  俺、本当にね、なんかこういうアイドル的に追っかけてる人って、世界中で、このオッサンだけなんだろうな(笑)。  なので、ここに置いておきましょう。楽しいからですね。
    「いくら?」(コメント)
     いくらだったかな? なんか、そこそこしたと思うよ。800円くらいしたと思うんだけど。  あと、展示会に行ったら、富野さんが中学1年生くらいの時に描いた、ペン画みたいな宇宙船のコックピットの絵があって。「この人のやってること、俺の中学1年生の時と本当に変わらないわ!」と思って、ちょっと嬉しかったですね。
    【画像】富野絵 まあまあ、それはお便りのコーナーで後で見せたりします。
     ということで、今日はだいたいこんな感じです。 (パネルを見せる)
    【画像】今日の内容 無料の方では、『なつぞら』がね、もうとにかく先週いっぱい面白かったので、1、2、3と分けて語ります。  あと、『ガンダムORIGIN』も、ちょっと見逃せないところがありました。  今やってる実写版『アラジン』を、観て来たんですけどネタバレはしたくないので、まあちょっと基本的なところからどんどん語っていこうと思います。無料と有料の方で。  あとは、展示会での富野由悠季の講演の方も、これ、ちょっと細かく説明したい。『Vガンダム』についても、なかなか良い話が出てきたので、そこら辺のことを話そうと思います。  放課後の方もですね、一応レジュメを作ってみましたんで、こんな感じで進めて行こうと思います。
    『なつぞら』のアニメーション制作体制
     ではでは、『なつぞら』の話から行ってみましょうか。  僕、やっぱり『なつぞら』の見方も特殊で、登場人物の人間関係なんかは、わりとどうでもいいんですね。なので「なつが誰と恋愛して結婚するのか?」みたいなことも、どうでもいい。  僕はアニメ史の歴史モノとして見ているので、興味があるのは「どのように描くのか?」なんです。実際に歴史の中に、あえて架空の人物を入れたり、もしくは、いくつかの人物を1つの人物に統合したり、時間軸をズラしたりして、面白い戦国マンガを作ってくれてるみたいな感じで見てるんです。
     まずは、新作アニメ『わんぱく牛若丸』に出てくる常盤御前というキャラクターの会議がありました。  69話の、会議をしているシーンです。 (パネルを見せる)
    【画像】なつぞら会議 ©NHK 左から、主人公のなつ。セカンドの原画をやっている、これ大塚康生さんがモデルになっている下山さん。井戸原チーフ作画監督。で、ここにマコさんが座ってて、ここが仲作画監督ですね。この女の人が、三村さんといって、後に宮崎駿の嫁になる人なんですけど。  今回の『わんぱく牛若丸』という作品は、この後ろにキャラクターのイメージボードが貼ってあるところからわかる通り、作画班全体からキャラクターを募集してるんですね。縦割り体制ではなく、現場型になっている。  例えば、「キャラクターデザインはキャラクターデザイナーだけがやって、現場の人間は絵を描くだけ」という、それまでのちょっと窮屈なスタッフ分けではなくて、現場のみんでわいわいやっていこうという形でやってるんですね。  その中で「常盤御前というのを、どんなキャラクターにするのか?」と話し合っているシーンなんですけども。
     これは、まあ、例えばウォルト・ディズニー・プロダクションは、これのずっと前、長編第1作の『白雪姫』の頃から、「キャラごとにアニメーターを変える」というのをやってるんですね。  「7人の小人の中のこのキャラクターはこの人に描かせる」とか、「この動物はこの人に描かせる」、「王子様はこの人に描かせる」と。「このシーンをこの人に描かせる」からもう一歩進んで、キャラクターというのも、アニメーションの作画をする人間が作り出す動きを演技として捉えて、「この人にはこのキャラクターを描かせよう」というようなことを実験的にやっていたんです。  なので、東洋のディズニーを目指している東洋動画……現実には東映動画なんですけど。将来的にはそういう体制にしようとして、徐々に徐々に、この頃から「作画班全体でキャラクターを描いていこう」ということになっています。
     ポイントは、作画班スタッフ全員が集まっているんですけども、この中に露木監督の姿がないことなんですね。  つまり、「作画セクションが決めて、演出には事後承諾させる」と。これがちょっと面白いところです。  これ「現場型に改善する」と言いながら、すでに、後に出てくる労働組合でのセクト闘争、「それぞれのセクト(集まり)ごとに対立する」という前触れになっているんですね。  これ、一見すごく良いシーンなんですけど、後に演出の方から「作画班に口を出すのが大変だった」とか、「あいつら、プライドが高いから、なかなか認めない」というセリフがちゃんと出てくるんですけども、これが生まれるなんかこう前提になっているんですね。
     『なつぞら』って、尺が長いんです。1日15分とはいえ、毎週6日間やって、それを25週も続けるもんだから、かなりいろんなことが描けるんですね。  なので、アニメーションの歴史を語る上で、もう本当に、かつてないくらいのすごい作品になっていってると思うんですよ。  だから、ぜひ皆さんにも見て欲しい。まだまだ間に合うので、見て欲しいと思います。
     その中で、大塚康生さんがモデルの、麒麟の川島さんが演じている下山くんという人が中心となって、下山班というのを5人で作ってるわけですね。
    【画像】下山班 ©NHK この下山班が、今、作ってる『わんぱく牛若丸』という長編作品が、現実のどの作品をモデルにしているのかというのが、まだ特定しづらいんですね。  というのも、この前まで作ってた長編アニメ『白蛇姫』というのは、まあ『白蛇伝』だから、わかりやすいんですよ。  ただ、どうも『なつぞら』の中の時代は、昭和33年辺り、つまり1958年なんですよね。ドラマ内では『白蛇姫』の制作はとっくに終わってるんですけど、現実の歴史では『白蛇伝』の制作は1958年に始まるので、ちょっと現実の時間とズレてる。  こんなふうに、どの作品がモデルになっているのかが特定しづらいというのがあるんですけども。
     この後、歴史的に言えば、次の長編アニメは『少年猿飛佐助』。その次は『西遊記』。手塚治虫が参加したやつですね。『安寿と厨子王』。『アラビアン・ナイト』。『シンドバットの大冒険』と続いて、その後に『わんぱく王子の大蛇退治』になります。  僕、最初は『わんぱく牛若丸』のモデルは、この『わんぱく王子の大蛇退治』じゃないかと思ってたんですけども。たぶん、『わんぱく牛若丸』というのは、『安寿と厨子王』と『わんぱく王子』の合成なんですね。
     これは、大塚康生さんの本に載っている、当時の森康二さん、このNHKのドラマの中では、仲さんが描いている『安寿と厨子王』の安寿のキャラクター表なんですけど。 (パネルを見せる)
    【画像】安寿 ©NHK 一応、これは平安時代の衣装とかを反映しているということで、さっきの常盤御前と、まあまあ同じような感じになってるんですね。  なので、この辺りの時代なんだろうと思ってます。
     会社側としては、なぜ、こんな『安寿と厨子王』という作品を作ったのかというと、「東映という会社自体が時代劇で有名だったので、時代劇というのをやりたい」ということ。  あとは、「西洋ネタではディズニーにとても敵わないから、輸出するにしても、西洋ネタをやったら不利だ」ということ。  そして、「わかりやすく感動させたいから、わりと昔話みたいなものを持ってきたい」。  なので、実際に『安寿と厨子王』では、当時のスターだった北大路欣也と佐久間良子が、声優を担当したんですね。
     その結果、作画班の方にも「できるだけこのキャラクターは北大路欣也に似せてくれ」とか、「ヒロインは佐久間良子に似せてくれ」という指示があり、そのおかげで、これまでキャラクターを自由にアニメらしく描けていた作画班は、実写を写したような作画をさせられたそうなんですよ。  これが現場で大反発を呼んでですね、この作品の制作が終わった後、このドラマの中でマコさんと呼ばれる人を含めた何人かのメインスタッフは、結局、この会社の管理体制が嫌で、東映動画を辞めてしまって、虫プロに引き抜かれて、『鉄腕アトム』を作るという事件に発展しました。  なので、実際には『わんぱく王子の大蛇退治』には、マコさんは参加してないわけですね。
     当時の『わんぱく王子』の作画システムというやつを、大塚さんがちゃんと表にして残しているんですけども、なつのモデルになった奥山玲子はAグループの原画担当です。もう本当にトップにいるんですよ。
    【画像】作画システム 後に、この奥山玲子の夫になる、つまりなつの旦那になる小田部羊一さんが原画補だから、この時点で、旦那になる人よりも偉くなっちゃってるんですね。  後の宮崎駿の嫁になる大田朱美は、この時、まだセカンドですから、本当にねブチ抜きでどんどん出世していくんですね。
     Aグループ、Bグループ、Cグループとわかれて、このBグループのトップが大塚康生さんなんです。  なので、今回、ドラマでも班体制にわかれて下山班というのができてるんですけど、実際の歴史上は「なつはこの頃にはもっと上手くなって出世していた」というふうに考えてください。
    「もう天才やん」(コメント)
     そうなんですよ。この頃の東映動画って、天才しかいないというくらい、すごい体制でアニメを作ってたんですね。
     ここから先の『なつぞら』は、「東映の労働組合争議と、アニメ暗黒歴史というのをどこまで描くのか?」というのが、僕は見どころだと思ってます。
     まあ、理想的な展開としては、『わんぱく牛若丸』というこの作品、おそらく失敗すると思うんですね。  「下山班は、すごく頑張って作画をやったんだけど、売上はそこそこ上がったものの、内容的には満足できない」という展開になるんじゃないかと思います。  その結果、『アトム』をきっかけに虫プロに引き抜かれたマコたちが退社して、残されたなつや下山達の元に、ついに翌年、宮崎駿が入社してきます。今週、高畑勲が入って来たんですけど、この翌年には宮崎駿が入ってくるんです。
     ここからが、もう大展開になると思います。  だから、その大展開のために、たぶん来週は、お休み同然の話になるんでしょう。お菓子屋で修行している友達が、なんか「演劇をやりたい」と言うような。  これも、後になって、たぶん、伏線になるんでしょうけど。実は、僕的には、わりとどうでもいい話が展開するのではないかと思います。
    『なつぞら』の「タップ」と演出の高畑勲くん
     じゃあ、2つ目ですね。『なつぞら』のもう1つの話なんですけど。  今回、「技術革新としてタップというのが導入されました」というシーンがありました。 (パネルを見せる)
    【画像】下山 ©NHK 下山さんが用紙をセットする時に、使ってるんですけど。
    【画像】タップ1 ©NHK これが実際のアニメーションのタップというやつです。 (金具のような器具を見せる)
    【画像】タップ2 こういうふうに、アニメーションの作画用紙上に3つ穴が空いていて、ここにピッタリ入るようになっている。これだけのものなんですけども。  何が技術革新だったかと言うと、それまでは「隅合わせ」と言う、要するに紙をまとめて、端っこをヘアピンかなんかで止めていたんですね。これでも作画ができないことはないんですけど。  やっぱり紙って、同じところで買っていても、それぞれの形というのは、そんなにね均一じゃないんですよね。紙の角も完全に直角ではないし、裁断の時のタイミングによって、幅も高さも微妙に1ミリくらいの差があるんですよ。なので、実は、隅合わせをしていると、徐々に徐々に狂ってきちゃうんですね。  当時、アメリカのアニメスタジオでは、このタップというのが使われていたんですけど、たぶん、今、なつ達が使っているタップは、アメリカから輸入している高級品なんですよ。まだまだ国産で作られる時代ではない。ここから先、町工場とかに依頼して作ってもらうようになって、ようやっと安くなるんでしょうけども。  このタップによって正確に紙を重ねることができるようになり、例えば「キャラクターの腕だけを動かす」とか、「口パクだけ動かす」とか、もしくは「ブック」と呼ばれる「背景が前にあって、そこからヌッと顔を出す」というアニメを作る時に、絶対にズレないように組セルが出来る、と。  そういう、リミテッドアニメを助ける意味での技術革新になってます。
     どの辺が技術革新なのかというと、ここから先はなんか面倒くさい話になっちゃうんですけども。  このタップというのを出してくれただけでも、僕的にはちょっと感動でした。
     こうやって作画してるところへ、ついに登場した高畑勲。劇中では、新人の演出助手の坂場という名前なんですけども。  この男が、下山に対して「この絵、動きがおかしくないか?」と、質問に来ます。
     この、なつが描いた「馬が坂を駆け下りる」というシーンの、作画がおかしくないかと言ってくるんです。 (パネルを見せる)
    【画像】馬の作画 ©NHK もう、俺はこのキャラクターを高畑勲として見てるから、以降は「高畑勲」と呼びますけど。  高畑勲が言うには「この馬は急な坂を下りているんだから、怖いはずだ。なのに、なぜ、前のめりに作画しているんだ?」ということを聞いてくるんですね。  なつは、それに対して、一生懸命「いや、ディズニーのアニメではこういうふうになっている」とか、「キャラクターだ。性格だ」というふうに説明するんですけども。
     高畑が言いたいことは「デフォルメするんだったら、まず、正確なデッサンをしてからにしてくれ」と。  例えば、「急な坂を馬に乗った人が駆け下りる時、乗っている人物が怖くないんだったら、馬にはちゃんと怖がっているように見せろ」と。さらに「怖がっているということを表情で見せるな」と。「怖がっている顔で伝えたら、それは説明であって、表現ではない」というのが高畑勲の主張なんですよ。なかなか厳しいですね。  本当言えば、彼は正確なデッサンを元にしてデフォルメをして欲しいわけですね。「馬が怯えているというのを表情だけで見せるのは手抜きだ」というのが高畑勲の主張なんです。
     この少し前に、ライブアクションという、人間が実際に牛若丸の衣装を着たり、常盤御前の衣装を着たりして動く様子を撮るという工程が出てきたんですね。  この時に「実際の服がどのように翻るのか?」とか、「人間が走ると、どういうふうな歩幅になるのか?」というのを、なつたちは一生懸命スケッチしていたんですけども。  ディズニーは、『バンビ』において、スタジオ内に馬とか鹿を持ち込んで、スケッチをやってるんですよ。 (パネルを見せる)
    【画像】スタジオの馬【画像】スタジオの鹿 高畑勲が望んでいるのは、このレベルなんですよね(笑)。  「できれば、本当に馬を坂まで連れて行って、駆け下りてくれ」と。「それができないんだったら、変に中途半端な動きで馬なんか出すな!」という考えなんですよ。「馬を出すからには真面目にやれ!」と。  これを突き詰めて行った結果、『かぐや姫の物語』は大変なことになったんですけども(笑)。  基本的に、高畑勲というのは、もう最初から主張が変わらない。そういうふうに考えているんですね。
     さて、この段階で「こんなデフォルメは変だ」と、演出が作画に口出しすることに関して、ドラマ内でも、明らかに、下山さんもマコさんも先輩方は不愉快そうにしているんですよね。  下山さんは、ついに「それは演出の露木さんの意見なのか? それとも、ただの演出助手のお前の意見なのか?」と聞きます。  で、「いや、露木さんの意見です」と言われたら、渋々「直す」と答えるんですよ。これで、一応は解決するんですけども。  結局、高畑勲がここで言っている「現実的なリアリティを追求すべきか、アニメにしかできない表現を目指すべきか?」というのは、高畑勲の遺作、もう死ぬ何年か前に完成した『かぐや姫の物語』で、ようやっと達成されたようなものなんですけどね。
     この頃から、作画と演出の間にヒビが入るというか、対立が出来てくるんですね。  この後、高畑勲くんは、制作課に帰って、露木に報告するんですよね。「今、こういうふうになっています」と。すると、「よくプライドの高い絵描き達を納得させたなあ」と驚かれるんですね。  もう、この段階で、本当に対立が生まれてきているのがわかります。  前に話した「スタッフ全員で今回のアニメのキャラクターを作ろう!」という集まりの中に、演出は参加してなくて、演出には「このキャラクターで行く」という決定事項だけを事後承諾させる形になってしまっているという、この歪み。  後に、労働争議の中で出来ていくセクト主義も、ここに現れていると思います。
     あと、まあ、先週の『なつぞら』で面白かったのは、ももっちという仕上げ部のお姉さん、なつの友達が「新人の演出助手の坂場君が、東京大学出身だ」ということを知っていた、ということですね。  ドラマの中では「哲学科」と言ってたんですけど、実際の高畑勲は文学部フランス文学科です。ただ、フランス文学科というのは、小説をやるのではなくて、フランス文学という哲学を行うから、まあ、事実上は哲学科と言ってもかまわないんですけども。
     なぜ、「東京大学で哲学をやっていた」と知っていたのかというと、「そういう情報は仕上げ部にはすぐに伝わるから」と、ももっちは言います。  この仕上げ部にいる女性たちはお嫁さん候補であり、その中の女性たちは、作画とか制作の中で偉くなりそうな男達、出世しそうな男達に対して……まあ狩場って言うんですかね? 自分達をアピールして有利な結婚をする場でもあった、と。  ももっちには、この感覚があるので、なつの世間知らずぶりを笑っているんですね。  社内の女の子は、だいたい、ももっちと同じ視線で、誰か新しい社員が入って来たと聞いたら、そいつが出世しそうだったら、自分達をアピールしまくって結婚しようとするという話なんですよ。
     現実に、この当時の東映動画でもそんな感じで。高畑勲も爪弾きにされるのではなく、モテていました。  みんなでパンも食べてたんですけど、まあ、パンをパクパク食べてるから「パクさん」と呼ばれてたんですけどね。「仕上げの女の子が順番でお弁当を作って持って来た」というふうに言われるくらい、モテモテでした。  じゃあ、宮崎駿はその時どうだったのかというと。高畑勲が、後に「あの顔でしょ? 無理ですよ」って言ってたんですけど。背が低く、メガネがやっぱりハンデだった時代なんですね。なので、宮崎駿は全然モテずですね、高畑勲はモテモテだったそうです。  そういうふうな部分も頭に入れておくとですね、ももっちのあのセリフも、なかなか味わい深く聞けるのではないかと思います。
    『安寿と厨子王』酷評と今後の『なつぞら』予想
     じゃあ、『なつぞら』3つ目のトピックですね。これが最後です。  再来週以降の展開予想。まあ、これ、僕の勝手な想像なんですけど。
     『わんぱく牛若丸』は、もうすぐ完成です。もうすぐ完成というところで、その分、「お菓子屋を継ぐのか、演劇をやるのか?」みたいな話になると思うんですけども。  さっきも話した通り、実際の『安寿と厨子王』という作品は、興行的には成功したんだけど、スタッフは猛反発していました。  どれくらい反発してたのかというと、『作画汗まみれ』という大塚康生さんの本の中に書いてあります。 (本を見せる)
    『作画汗まみれ 増補改訂版』(大塚 康生)
     『安寿と厨子王』が終わった後、みんなで反省文というのを書いたそうなんです。その反省文の中には、作画に参加していなかった宮崎駿も、社内の上映会を見た時に感じた批評というのを書いています。
     まずは、なつのモデルになった奥山玲子さんの、『安寿と厨子王』に対する批評です。

    厨子王が一人前の若者に成長した頃、これまたちょうど都合よく帝が雲のオバケに悩まされ、これを退治して出世の糸口を掴む。 案の定、丹後の国の守に命じられる。 さっそく帝の御威光をバックに山椒太夫を懲らしめ、仏様安寿のお導きで、何の苦もなく母親の所在を突き止め、めでたしめでたしとなる。
    この映画のどこに「克服していく姿」があるんでしょうか? これが十分に描けていたら、もうちょっと見られるものになっていたのではないでしょうか? 言い過ぎかもしれませんが、これでは「非常な社会悪の中で、周りの人の好意と保護の元に厨子王が運良く出世していく姿を日本独特の動画として描きたい」になってしまいます。

     というふうに批判しています。  つまり、「私達は、真面目に、作品として1人の人間が成長して行くところを描こうとしたんだけど、これではまるで『課長島耕作』じゃないですか!」と。  「ただ単に周りから贔屓されて、トントン拍子に出世するような作品を作って、どんな意味があるんですか?」というようなことを、ものすごく厳しく書いてるわけですね。
     大塚康生さんはこう書いています。

    全く酷いテーマである。 「親子の愛、兄弟愛、動物への愛、主従愛など、安寿兄弟の一家を中心とした家長制度的な愛情が、悪人達によって色々な試練を受けるが、悪人達は天罰と帝の思し召しによって報いられる」という、単純でバカバカしい話を、いくつかの悲しげなシーンで繋いであつらえたのがこの映画である。

     実際はもっと長いんですよ? 僕、最初の読みやすい部分だけを読んでるんですけど。  本当に、みんな、もう口を限りに、メチャクチャけなしてるんですね。
     ドラマの中では仲さんと呼ばれている森康二さんは、こう言っています。

    悲劇であった。悲しみがいっぱいであった。涙がこぼれそうであった。 といっても、映画そのもののことではない。「なんと情けないアニメを作ったものであろう」という、私達自身への憤りを通り越した悲しみであった。 なんの感動もなかった。
    以前の作品には、少なくとも、完成試写には、完成の喜びと感動があった。 あの感動はどこにいったのか?

     これもボロクソに書いてますね。すごいですね。
     宮崎駿は、後に、こう書いています。

    安寿にしろ厨子王にしろ、二郎にしろ実に嫌らしい連中である。 こんな連中を描いて客を泣かせ、金を稼ぎ、現代の矛盾に満ちた現実に目をつぶる人間を作ろうとする『安寿』は、僕らにとって百害あって一利ない。彼ら映画を作らせた会社側の資本家連中には、百利あって一害ない映画である。
    大川博(東映社長)が「試写を見て泣いた」という伝聞を聞いたが、ありそうなことだ。 くたばれ『安寿』。

     というふうに、もう本当にボロクソなんですよね。
     実は、なつが始めて作画に抜擢された『わんぱく牛若丸』の元になったと思われる『安寿と厨子王』という作品は、興行的には成功しているんですね。  本当に、会社の思惑通り、北大路欣也と佐久間良子が声優をやって、そっくりな作画が動いているから、ちゃんとヒットしてるんですよ。
     なので、ここからの展開としては、そこら辺を描きつつ「このままではいけない!」という話になって。  そんな中で、もうこの会社を見捨てて行くマコさんたちと、会社に残ってなんとかしようとする、なつたち。  そこに、宮崎駿が入って来て、いよいよ面白くなるんではないかな、というのが、僕の展開予想なんですね。
     実際の歴史的には、『安寿と厨子王』のショックがあると同時に、さらに手塚治虫が「アニメ作ります!」宣言をやって、大量にスタッフを募集するんです。  その募集要項には「正社員とか派遣社員の区別はないし、東映動画のような年功序列、もしくは学閥、どの学校出てるから偉い的なものなく、本当に実力主義である」ということが書いてあり、わりと理想の職場に見えたんですね。  なので、そこら辺の問題も出てくるのではないかと思っているんですよ。
     再来週以降の時代から、なつのモデルとなった奥山玲子は、アニメーター間の待遇格差や正社員と派遣社員の格差の是正というのをやっていくことになるんですけど。  しかし、実際の歴史では、この問題は解決しないんですね。
     例えば、大川社長が「能力が低くてノルマが守れないアニメーターはクビにするか、もしくは給料を安くする」ということをやろうとしてたので、それを庇う形で、宮崎駿も高畑勲も奥山玲子も、みんな協力して、統一賃金というのを認めさせたんですね。どんなアニメーターに対しても、統一の賃金を保証させたんですけど。  すると、これまで1日25枚以上の動画を上げていた、本来、できるはずのアニメーター達は、みんな一斉に、毎日5枚しか描かなくなったんです。  「だって、その方が楽だし、何枚描いてもギャラが同じなんだったら、自分の好きなように凝りたい分だけ凝って、1日5枚だけ描こう」というふうになって行っちゃったという話があります。  「十分に働けない人をみんなで庇っていく」という環境を作ったはずなのに、逆に「働き過ぎるヤツは白い目で見られる」という状況になってしまいました。  その結果、徐々に徐々に、東映動画という会社は、アニメを作る会社のはずだったのが、組合活動の現場の象徴みたいな会社になっていっちゃったんですね。
     そんな中で、虫プロが出来て、マコ達が出て行ったという事件があって。残されたなつや下山達の元に、やっと宮崎駿が入ってくる。  この宮崎駿というのは、今の流れで言うと、頼まれてもいない仕事を勝手にやってしまう1人ブラック企業な人間なんですね。  これが入ることで大きく現場の動きが変わるはず。いわゆる「それまで持っていた問題意識が、たった1人の頑張りとか、そういうふうなもので、どんどん変わって行く」というようなところが描かれると思うんですよ。
     さらに、それまでは立場的には新人で一番下だった高畑勲も、自分より後輩で作画の天才でもある宮崎駿が入ってくることによって、ようやっと自分の言うことを聞いてくれる作画の手下が手に入ることになるわけですね。  だって、それまでの高畑勲は絵が描けないものだから、絵が上手いやつ至上主義みたいなところがあるアニメーション会社で、演出というのは頭角を表しようがなかったんですね。  そこに、自分の思想に心酔してくれて、自分の言うことを聞いてくれる宮崎駿という子分が入ることによって、ようやっと強いパワーを高畑勲が発揮できるという、この土台作りが完成するわけです。
     たぶん、7月の後半か8月辺りで、新人監督である高畑勲の『太陽の王子ホルスの大冒険』の制作が始まると、僕は予想しています。  まあ、今、話しているのは全部「ここからこうなるだろう」という、僕の妄想ですよ? 別に、ここから先を知ってるわけではないんですからね?
     『太陽の王子ホルス』というのも、原題の通りにやるわけにいかないから、ドラマの中では違った名前になるはずです。  では、どんな名前になるのかと言うと。もともと『太陽の王子ホルス』というのは、高畑勲が人形劇団で見つけた『チキサニの太陽』という物語をベースにしているんですね。「チキサニ」というのは、アイヌの神様というか伝説の1つなんですけど。  なので、『チキサニの太陽』という名前にするか、『チキサニの王子』みたいなタイトルになるんじゃないかと思います。
     このアイヌ神話をモチーフにした物語をやることによって、なつの故郷である十勝の風景も使えるし、アイヌの共同体の話の中で、泰樹じいちゃんとのエピソードや組合の話も盛り込める。  「ここで全ての伏線が一気に回収できるんじゃないかな?」と。  例えば、泰樹じいちゃんと農協のトラブルというのは、虫プロの『アトム』制作という、天才ゆえのワガママ。つまり、「泰樹じいちゃん1人が品質のいい牛乳を作れるから、メーカーに対して強気に出ていて、他の弱い立場の農協の人らのことを考えられなかった」という問題も、ここでようやっとアウフヘーベンできて、「弱者のための組合というのが、何のためにあるのか?」というふうに、今のなつ達がすごくツラい思いをして実感していることと上手く重なってくるわけですね。  人里離れて熊を彫ってた阿川弥市郎という人がいましたね? その娘の砂良というのと柴田家の長男・照男が結婚したんですけど。これはなぜかというと、アイヌと開拓民の平和と共存のシンボルになるからです。  『太陽の王子ホルス』のクライマックスシーンで、ピリヤとルサンの結婚式があるんですけど、そういう結びみたいなことも出来る。  全ての伏線がバーっと回収できると思うんですよね。
     田舎の天陽君は、たぶん、日展で受賞して東京に出てくるでしょうし、ちょうどその頃、完成した『ホルス』を見た行方不明のなつの妹は、映画館でクレジットで姉の名前を見つけて、最終回あたりでやっと会える、というような流れになるんではないでしょうか?  妹がねこんなに見つからないのは、僕は、これも勝手な妄想なんですけど、アメリカ行ってるんじゃないかな、と。外国に行って、下手したらディズニーに行ってるんじゃないかなと思ってるんですけども。  なんかね、今まで見つからなかった理由というのは、それくらいアクロバティックなことをすると、スッとパーツがハマるので。
     というふうに、『なつぞら』は現実の歴史を踏まえて見ると、いろんな妄想が出来て楽しいので、皆さんも一緒に楽しみましょう(笑)。
    『ガンダム THE ORIGIN』の気になるシーン
     ああ、ここまででもう35分を過ぎちゃった。えらいこっちゃ。  まだ『アラジン』に行かないんですけども。『ガンダム THE ORIGIN』が、もう、楽しくて楽しくて。
     NHKで毎週日曜日に放送している『ガンダム THE ORIGIN』なんですけど。  ちょうど今、6月23日の日曜日の夜8時に喋ってますから、ここでは先週の話しかできないんですけども。  先週は第8話「ジオン公国独立」というエピソードでした。  内容としては「月のスミス海で亡命しようとしているミノフスキー博士をザクが襲う」という話。  なんか僕、これを見ていてフッと思い出したんです。
     「ちょっ、ちょっと待て! 俺、この話、知ってるぞ!」と。  「もう、かれこれ30年くらい前に、俺、その話を考えたよ!」と。  「ミノフスキー博士がジオンから連邦に亡命しようとして、ザクに襲われるって、俺、その話を考えて、マンガを描いてもらったことがあるよ!」という(笑)。  沖一さんというマンガ家がいて、シナリオを描いたのはストリームベースの高橋昌也さんなんですけど。 (本を見せる。『マンガ兵器サイバーコミックス (1)』)
    【画像】サイバーコミックス この中に、『ミノフスキー博士物語』というエピソードが載ってるんですけど。今回の「ジオン公国独立」の冒頭は、丸々それなんですね。
    【画像】ミノフスキー博士物語 自分がアイデアを考えたお話を、30年後に、いきなりNHKのアニメで見るこの感動という。  いやあ、人生ってなんて面白いんだろう。この時、しょーもない仕事も真面目にしてて良かった(笑)。
    「同人誌?」(コメント)
     同人ではありません。これはバンダイから出版している、ちゃんとした商業雑誌ですから(笑)。  まだ、これ、Amazonとかで手に入りますから、興味がある人は見ておいてください。
     まあ、ただ単に「こんな事があった」という話なんですけども。
     今回の『ガンダムTHE ORIGIN』で気になったのがここなんですよ。 (パネルを見せる)
    【画像】ORIGIN会議シーン ©SOTSU・SUNRISE 月のアナハイム・エレクトロニクスという、後にガンダムを作ることになる会社の会議室の風景ですね。  テム・レイ、いわゆるアムロ・レイのお父さんが、ガンダムの大プレゼンをやっているところで、アナハイム・エレクトロニクスの偉いさんたちが、月のフォン・ブラウンシティというところだと思うんですけど、そこの会議室に座っています。
     これ、何か気になるのかというと「この椅子にクッションがある」ということなんですよ。  あのね、月の重力は地球の6分の1なんですよ? 椅子にクッションなんていらんのですよ。というか、クッションなんかが下手にあると、お尻の座りが邪魔されるんです。  いわゆる、地球で言うと……フワフワな、コートとかに使っているダウンみたいな材質があるじゃん? そんな、ものすごくフワフワなもので作った椅子に座らされるみたいな、お尻がフワフワになっちゃう感触。  月というのは、地球の6分の1の重力なので、椅子にクッションいらないんですよ。お尻が座面にフィットしなくて、逆に座りにくくなっちゃうんですね。
     この「コップに水」というのもありえない。  なぜかというと、月では重力が6分の1。ということは、コップの中の水も、コップに対して1Gじゃなくて6分の1Gしか掛かっていないんですね。  その中で普通に水を飲んだら、水だけが慣性の法則でバシャッと上の方にあがってきてしまう。だから、こういうコップみたいなものに水を入れるはずがないんですよ。  これ、「アニメの方のミスかな?」と思って調べてみたら、マンガの方も、やっぱりこういうふうに描いているんですよね。
     おまけに、「汗が下に流れてる」んですよ。  6分の1の重力くらいでは、汗というのは表面張力の方が大きくなっちゃって、下に流れないんです。
     なんでこんなことを言うのかというと、これって「編集の人が仕事してない証拠」なんですね。  マンガ家とか作画の人というのは、そういうことを知らずにやるんですけども。ここで高畑勲みたいな人間が出てきて「これは違うでしょ?」って言わないと、どんどん「いわゆる~」になっちゃうんですよね。  この椅子のクッションなんかも典型的。椅子のクッション、コップ、汗もそうですけど、なぜ、彼らが背広を着てるのかも、全部「いわゆる~」なんですよ。  この場面で、椅子を単純な絵でなく、わざわざ手間をかけてクッションまで描いているのは、「画面にリアリティを与えるため」なんですよね。  ところが、この手間を掛けて書いた椅子のクッションが、逆にリアリティを減らしてしまう。
     さっきも言ったように、重役がスーツ姿なのも気になります。「なぜ、月面の企業のはずなのにスーツなのか?」と。  シリコンバレーで働いている人達は、「俺達はシリコンバレーで働いているんだから」ということで、過剰に自由な服を着るじゃないですか? みんな、Tシャツ・ジーパンで働いているんですね。  つまり、「俺達はシリコンバレーで働いている」というプライドが、彼らのファッションというのを、ある程度、決定しているわけです。  じゃあ、月に本社がある企業というのも、同じように、月なりのプライドがあるはずなんですよね。  むしろ、地球出身のテム・レイだけが逆にスーツであるべきなんですよ。テム・レイは地球生まれだから。彼がアナハイムでプレゼンする時に、地球の流儀でスーツを着ているのに対して、重役たちはノーマルスーツ(宇宙服)の下に着る温度調整が簡単に出来るジャージのようなハイテクアンダーウェアを着ている。そうすれば、この「アナハイムというエリート集団の元に、テム・レイという、ちょっと立場が悪いヤツが来ている」ということを見せれるはずなんです。  そこを考えずに、「いわゆる偉い人だからスーツを着てて、テム・レイは研究者だから白衣を着てて」という考えのなさが、「ちょっと待てよ!」と。
     いや、安彦さんがマンガで描いちゃうのは、手の癖だからしょうがないとしても、そこで「カドカワの編集、何やってんだ?」と。  お前らがやるのは、ガンダムファン上がりみたいに「このザクは違いますよ」とか、「このガンダムはこういう性能があって~」という、そういうしょーもない指摘ではなくて、もっとちゃんとした大学を出てるんだから、技術的なことを教えてやれよと思うんですけど。  本当に「仕事してねえな」と思います。
     あと、この会議室の天井の高さ。これも気になってて。  月面という環境を考えたら、この部屋も天井が低いはずなんですよ。  だって、そうでしょ? そういうところで天井を高くしても、危険度があがるだけなんですよ。
     そういうところで、会議室みたいなところで自分達の権力を誇示したいから天井を上げるのか? そうではないんですね。  例えば、「砂漠の民族は、金持ちだったら噴水を作るのか?」っていったら、案外、そっちの方に行かないんですよ。「どのように権力を見せるのか?」というのも、その土地土地の文化とかフォーマットというのがあるんだから。  それを考えることをサボっているんですね。
     高い天井なんか作っちゃったら、与圧する部屋の体積が増えて無駄が多いんですよ。  せっかくコロニーと月との差を見せるチャンスなのに。  コロニーは逆なんですよ、コロニーは巨大なシリンダーの中を丸々与圧してるから、ここでは高さというのを出してもいいんですけど。  「月とコロニーの差を見せる」というのは、天井の低さを思いっきり出すことによって、見せられるはずだったのにね。  コロニーというのは、全てにおいて大量の規格品で出来ていて、部屋は広くて天井が高く、エレベーターで中心軸に登れば0Gなるんですけども。  月というのはコロニーよりもエリートが多くて、天井は低くて、部屋も狭くて、どこに行っても6分の1の重力で、こういった椅子とかは、案外、簡単な出来のものになっている。  そこら辺で文化の差というのを見せて欲しかったんですけど。
     そういう環境の差というのが、そこに住む人間の常識の差になるので。なんか、砂漠の民と海の近くに住んでいる民族って、絶対に文化とか世界観違うじゃないですか。  そういうところを見せるべきだったと思います。
     SFというのは、「科学的な辻褄を合わせること」じゃないんです。  「それが本当に現実化した場合、コロニーが現実化してたり、月にハイテク企業の本社があるということが現実化した場合、お互いに、どのような常識の塊が、その世界を支配しているのかを考えること」がSFなんですね。
     このSFアニメの作り方に関しては、もうちょっと言いたいことがあるので、後半で話してみたいと思います。  というのも、富野さんは講演の中で、怒りを爆発させて「どんなにアニメのスタッフというのが、宇宙をわかっていないのか!」って力説していたことと、この問題とが、偶然、合ってたので。  今のは僕の意見なんですけど、「じゃあ、富野さんはどういうふうに語っていたのか?」という話を後半の方で語ってみたいと思います。
    『アラジン』の中の中国と日本とヨーロッパ
     じゃあ、やっと『アラジン』の話に行きましょう。  ディズニーが隠した『アラジン』裏話ということで、「舞台は中国、アラジンは母親に寄生するニート」という話です。
     これ、ディズニーの『アラジン』なんですけど。 (パンフレットを見せる)
    【画像】『アラジン』パンフ 興行成績は、アメリカ国内で2億6400万ドル、全世界の興行収入は7億2700万ドル。もう、大成功です。  1992年版のアニメの『アラジン』が、アメリカ国内で2億ドル、全世界で5億ですから、それと比べても大ヒット。リメイクとしては成功ですね。  アメリカでは、公開4週目でもう3位なんですけど、日本では2週目でまだまだ1位を保ってます。
     今週の岡田斗司夫ゼミは、そんな『アラジン』の特集なんですけど、あんまりネタバレはしないので安心してください。
     そもそも、『アラジン』とはどういう話だったのか?  さっき、タイトルの部分でも言ったんですけど、実は中国が舞台なんです。 (パネルを見せる)
    【画像】アラジン挿絵1 これ、「神秘の洞窟の中で魔法のランプを見つけるアラジン」という、19世紀末にウォルター・クレインというイギリスの画家が描いた絵本版の『アラジン』の挿絵なんですけど。  これがアラジンなんですね。もう完全に中国人なんですよ。  「これはアレンジなんじゃないのか?」というと、原作の『千夜一夜物語』、いわゆる『アラビアン・ナイト』に載っている『アラジン』にも、ちゃんと「中国」と書いてあるんですね。
     ここに『アラビアン・ナイト』の全集があるんですけど。 (本を見せる)
    【画像】アラビアンナイト全集 実は、この全集の方には『アラジン』は収録されていません。こちらの『アラビアン・ナイト 補遺』という、いわゆる付録版の方に入ってます。  だから、『アラジン』の原作を読みたい人は、こっちの全集を買っても無駄なんですね。こっちの方で読まなきゃいけないんですけど。こっちにも「中国」と書いてあります。
     この原作の冒頭は、こんな感じです。

    おお、偉大なる王様よ。その昔、中国に貧乏な仕立て屋がいました。彼にはアラジンという息子がいました。 仕立て屋は一生懸命にアラジンに仕事を覚えさせようとしましたが、遊んでばかりで働かない。ついに仕立て屋は、このアラジンがあまりに働かず、不良で、町で遊んでばかりいるということが心配で、死んでしまいました。 残された仕立て屋の妻が糸を紡いで、そのままアラジンを食わせていたんですけども、アラジンは全く働きません。親不孝の限りです。 アラジンはそのまま15歳になってしまいました。

     こんな、とんでもないオープニングから始まるんです。  アラジンはニートでろくでなしで、父親が死んだ後も母親だけを働かせるという人間のクズだったわけですね(笑)。
     しかし、そんなアラジンには、本人にも知らない秘密がありました。  どんなことかというと、実はアラジンの先祖はものすごい財宝を洞窟に隠していたんです。そして、その子孫でないと、洞窟の入り口の大理石の扉が開けられないんですよ。  そんな偶然みたいなことがあったんですけど。この祖先のことは、原作の中にも、ほとんど書いてないんですよ。お話し的にどうでもよかったから、単に「実は祖先は巨大な財宝を隠してて~」ってサラッと書いてるだけなんですよね。
     そんな中、遥か太陽の沈むアフリカより、1人の黒人の魔法使いがやってきます。  魔法使いは、この財宝を30年以上も狙ってて、ついに子孫アラジンを中国の「日の昇る果て」、つまり、東の果ての、おそらく上海辺りで見つけ、声を掛けました。 (パネルを見せる)
    【画像】アラジン挿絵2 はい、そのシーンの挿絵がこれですね。もう本当に、どこの国だかわからなくなってます。  扇子を持った美女がいるんですけど、もう、中国なのか日本なのかわからなくなっちゃてるんですね。下駄を履いちゃってますしね。
     この絵本が描かれた19世紀末のヨーロッパというのは、日本趣味(ジャポニズム)の真っ最中。  なので、イラストを描いたクレインも、「中国のそのまた東の果てにある都」という原文を読んで、「そりゃ、日本のことじゃないの? だって、日本って金銀財宝ザックザクなんでしょ?」というふうに思ったのかもしれません。  だから、こういうふうに、中国というよりは、日本趣味の絵になっちゃっています。
     日本では「アラビアの砂漠の中の話」と思われている『アラジン』なんですけど、ヨーロッパでは、実は舞台が中国だというのは当たり前の話で。  これが19世紀末には、「『アラジン』って、中国か、もしくは日本辺りの話でしょ?」と思われていたかもしれません。
     では、なぜ、こんなことになったのか?  なんで、こんな、日本と言ったら言い過ぎかもわからないけど、少なくとも、かなり中国の東寄りの話を、ディズニーのアニメにしても何にしても、僕らは砂漠の国の話と思うようになったのか。  それを、ここから話します。わりとね意外ですよね? 提灯があったりとか。
     『アラビアン・ナイト/千夜一夜物語』は、その名の通りですね、アラブ世界のお話なんですけども。  実は、この『千夜一夜物語』がヨーロッパ世界で紹介されたのは、かなり遅いんです。1700年頃なんですよ。  そして、その当時のヨーロッパというのは、シノワズリ、いわゆる中華趣味の真っ最中だったんですね。  どれくらいすごかったかというと、ルネッサンスの時代から、とにかく中国から輸入されるコップとかお皿の模様をみんな真似しようと必死で、貴族達はロココ調で統一された屋敷の中に、中国製の家具を置いたり、庭に変な家を建てたりしていたくらいなんですね。  ロシアのエカテリーナ2世なんて、中国風の村1つを丸々趣味で建ててます。「ちょっと午後からそこに散歩に行って、お茶を飲む」というために、村1つ丸々建てたというのが、エカテリーナ2世の写真として残っているんですけど。  この「中国ってカッコいいでしょ?」という文化の下地があったところに、今度はアラブ世界のちょっとエッチでエキゾチックな物語として『千夜一夜物語』という物語が紹介されました。
     なぜ、これが大きな事件なのかというと、当時のヨーロッパでは、これがアラブを理解し征服するための教科書として読まれてたんですね。  というのも、1700年代の頭というのは、ようやっと、ヨーロッパの植民地主義というのが、アラブ世界を征服してたんですよ。  それまで、実はアラブ・イスラム圏の方が文化的には上だったんですね。ヨーロッパ人って、ルネッサンス以前は「自分達はローマ帝国時代に比べて遅れた蛮族の一味に過ぎない」みたいに思ってたんですよ。  それに対して「力が復帰した自分達が、大航海時代を経て、アラブ圏というのを植民地にした!」というふうに、まあ、自信もあったし、逆にいえば「これからは、もっと勉強しなきゃいけない」と思ってた。  なので、そんな制服先のアラブ世界を理解するための教科書として、『千夜一夜物語/アラビアン・ナイト』というのが、翻訳されたわけですね。
     当時のヨーロッパ人の意識でアラブ世界というのはどこなのかと言うと、「アフリカ・インド・中国・その先の日本までも支配していた大帝国」というふうに思い込んじゃってたんですね。  「ローマ帝国は世界を支配してた」って言うじゃないですか。  でも、実際にローマ帝国が支配したのって地中海周りだけなんですよ。地中海周りと、あとイギリスの辺りまで行ってたんですけど。この範囲の中だけど、ヨーロッパ人は「世界」と呼んでいたんですね。  それに対して「ヨーロッパ以外全てを支配していた国が、アラブである」というふうに思い込んでいたんです。  だから「中国の話であろうと、インドの話であろうと、それは全部アラブの話だ」というふうに、1700年当時のヨーロッパ人は考えちゃったわけですね。
     まとめると、まず、18世紀のヨーロッパ人というのは、もともとシノワズリという中国趣味の真っ最中だった。  そこに植民地時代がやってきて、新たにアラブ世界というのがヨーロッパの支配地域、植民地として下層に入ってきたんですね。  そのアラブ世界の民話を集めた『千夜一夜物語』の翻訳がフランスから始まって、大ヒットした。  そして、地球という全体図が見えてない時代だったので、ヨーロッパ人は『千夜一夜物語』の中で「地の果て」として語られてた中国やアフリカも、「かつてはアラブの支配下にあった部分だ」というふうに考えてしまった。  これが、原作の『アラジン』は中国が舞台という理由です。
     なので、19世紀になって出版された、さっきのクレイン版の絵本でも、クレインは当時のジャポニズムを取り入れてしまったし、アラジンと魔法のランプの原作の舞台を中国の果て、上海辺りのイメージとして捉えてたんです。 (パネルを見せる)
    【画像】アラジン挿絵3 これは、黒人の魔法使いが、「綺麗なランプと汚いランプを交換しまっせ」と言って、アラジンの魔法のランプをなんとか盗もうとするシーンなんですけど。これも、完全にアジアとして描かれています。
    【画像】アラジン挿絵4 この女の人なんかそうですよね。王様の娘としてアラジンが惚れ込むお姫様、ディズニー版によるとジャスミン姫も、完全に日本人のイメージで描いてしまっているんですね。
     それでも、まあ、やっぱり疑問が残るのが、「なぜ、イスラム世界の民話なのに、中国が舞台なのか?」ということ。  さっきも言ったように、原作にも「中国のある都で~」って描いてるんですけども。なぜ、それがアラブに昔から伝わっていたのか?  これには、意外な理由があるんです。
     さっきもちょっと話したんですけど、「原作である『アラジンの魔法のランプ』というのは『千夜一夜物語 補遺』に収録されている」と言ったんですけども。  正確に言うと、これは『千夜一夜物語』じゃないんですよ。実は『千夜一夜物語』の中に、『アラジンと魔法のランプ』は入っていませんし、それどころか『アリババと40人の盗賊』もまるっきり入ってない。全て『補遺』の中に収録されています。  これ、なぜかというと、実は、今回ディズニーが映画化した『アラジン』というお話自体が贋作だった。いわゆる、歴史上の偶然によって生まれてしまった偽の話であり、もともと、アラブ世界にはこんな話はなかったからなんですよね。  それが、これまたいくつかの偶然の結果、贋作とは気付かれずに大流行して、おまけに大ヒットしてしまったという、すごくヘンテコな歴史があるんです。
     ここから先は、すみません。もう時間になりましたので、有料のほうでお話しようと思います。  いやいや、無料版では「ジャスミン姫は日本人だった」というところまで話してしまいました。  そうなんですよ。いわゆる同人誌みたいな偽物の話だったのに、本編を抑えて、一番有名になってしまったんです。もう本当に『アリババと40人の盗賊』とか、あとは『シンドバット』も、実は『千夜一夜物語』じゃないんですよね(笑)。  その辺も、あんまり触れられない話なんですけども。
     後半は、いよいよ『アラジン』の話から、「ディズニーのアラジンには、実はいろんな矛盾があって、それには理由があるんだ」という話に行こうと思います。
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    2019/06/23 #287 「『アラジン』特集、原作『アラビアン・ナイト』から、アニメ版・実写版まで徹底研究!」
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『アラジン』の舞台は、実は中国?!歴史の偶然から生まれたストーリー」

    2019-07-12 07:00  
    216pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/12
     今日は、2019/06/23配信の岡田斗司夫ゼミ「『アラジン』特集、原作『アラビアン・ナイト』から、アニメ版・実写版まで徹底研究!」からハイライトをお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
    『アラジン』の中の中国と日本とヨーロッパ
     じゃあ、やっと『アラジン』の話に行きましょう。  ディズニーが隠した『アラジン』裏話ということで、「舞台は中国、アラジンは母親に寄生するニート」という話です。
     これ、ディズニーの『アラジン』なんですけど。 (パンフレットを見せる)
    【画像】『アラジン』パンフ 興行成績は、アメリカ国内で2億6400万ドル、全世界の興行収入は7億2700万ドル。もう、大成功です。  1992年版のアニメの『アラジン』が、アメリカ国内で2億ドル、全世界で5億ですから、それと比べても大ヒット。リメイクとしては成功ですね。  アメリカでは、公開4週目でもう3位なんですけど、日本では2週目でまだまだ1位を保ってます。
     今週の岡田斗司夫ゼミは、そんな『アラジン』の特集なんですけど、あんまりネタバレはしないので安心してください。
     そもそも、『アラジン』とはどういう話だったのか?  さっき、タイトルの部分でも言ったんですけど、実は中国が舞台なんです。 (パネルを見せる)
    【画像】アラジン挿絵1 これ、「神秘の洞窟の中で魔法のランプを見つけるアラジン」という、19世紀末にウォルター・クレインというイギリスの画家が描いた絵本版の『アラジン』の挿絵なんですけど。  これがアラジンなんですね。もう完全に中国人なんですよ。  「これはアレンジなんじゃないのか?」というと、原作の『千夜一夜物語』、いわゆる『アラビアン・ナイト』に載っている『アラジン』にも、ちゃんと「中国」と書いてあるんですね。
     ここに『アラビアン・ナイト』の全集があるんですけど。 (本を見せる)
    【画像】アラビアンナイト全集 実は、この全集の方には『アラジン』は収録されていません。こちらの『アラビアン・ナイト 補遺』という、いわゆる付録版の方に入ってます。  だから、『アラジン』の原作を読みたい人は、こっちの全集を買っても無駄なんですね。こっちの方で読まなきゃいけないんですけど。こっちにも「中国」と書いてあります。
     この原作の冒頭は、こんな感じです。

    おお、偉大なる王様よ。その昔、中国に貧乏な仕立て屋がいました。彼にはアラジンという息子がいました。 仕立て屋は一生懸命にアラジンに仕事を覚えさせようとしましたが、遊んでばかりで働かない。ついに仕立て屋は、このアラジンがあまりに働かず、不良で、町で遊んでばかりいるということが心配で、死んでしまいました。 残された仕立て屋の妻が糸を紡いで、そのままアラジンを食わせていたんですけども、アラジンは全く働きません。親不孝の限りです。 アラジンはそのまま15歳になってしまいました。

     こんな、とんでもないオープニングから始まるんです。  アラジンはニートでろくでなしで、父親が死んだ後も母親だけを働かせるという人間のクズだったわけですね(笑)。
     しかし、そんなアラジンには、本人にも知らない秘密がありました。  どんなことかというと、実はアラジンの先祖はものすごい財宝を洞窟に隠していたんです。そして、その子孫でないと、洞窟の入り口の大理石の扉が開けられないんですよ。  そんな偶然みたいなことがあったんですけど。この祖先のことは、原作の中にも、ほとんど書いてないんですよ。お話し的にどうでもよかったから、単に「実は祖先は巨大な財宝を隠してて~」ってサラッと書いてるだけなんですよね。
     そんな中、遥か太陽の沈むアフリカより、1人の黒人の魔法使いがやってきます。  魔法使いは、この財宝を30年以上も狙ってて、ついに子孫アラジンを中国の「日の昇る果て」、つまり、東の果ての、おそらく上海辺りで見つけ、声を掛けました。 (パネルを見せる)
    【画像】アラジン挿絵2 はい、そのシーンの挿絵がこれですね。もう本当に、どこの国だかわからなくなってます。  扇子を持った美女がいるんですけど、もう、中国なのか日本なのかわからなくなっちゃてるんですね。下駄を履いちゃってますしね。
     この絵本が描かれた19世紀末のヨーロッパというのは、日本趣味(ジャポニズム)の真っ最中。  なので、イラストを描いたクレインも、「中国のそのまた東の果てにある都」という原文を読んで、「そりゃ、日本のことじゃないの? だって、日本って金銀財宝ザックザクなんでしょ?」というふうに思ったのかもしれません。  だから、こういうふうに、中国というよりは、日本趣味の絵になっちゃっています。
     日本では「アラビアの砂漠の中の話」と思われている『アラジン』なんですけど、ヨーロッパでは、実は舞台が中国だというのは当たり前の話で。  これが19世紀末には、「『アラジン』って、中国か、もしくは日本辺りの話でしょ?」と思われていたかもしれません。
     では、なぜ、こんなことになったのか?  なんで、こんな、日本と言ったら言い過ぎかもわからないけど、少なくとも、かなり中国の東寄りの話を、ディズニーのアニメにしても何にしても、僕らは砂漠の国の話と思うようになったのか。  それを、ここから話します。わりとね意外ですよね? 提灯があったりとか。
     『アラビアン・ナイト/千夜一夜物語』は、その名の通りですね、アラブ世界のお話なんですけども。  実は、この『千夜一夜物語』がヨーロッパ世界で紹介されたのは、かなり遅いんです。1700年頃なんですよ。  そして、その当時のヨーロッパというのは、シノワズリ、いわゆる中華趣味の真っ最中だったんですね。  どれくらいすごかったかというと、ルネッサンスの時代から、とにかく中国から輸入されるコップとかお皿の模様をみんな真似しようと必死で、貴族達はロココ調で統一された屋敷の中に、中国製の家具を置いたり、庭に変な家を建てたりしていたくらいなんですね。  ロシアのエカテリーナ2世なんて、中国風の村1つを丸々趣味で建ててます。「ちょっと午後からそこに散歩に行って、お茶を飲む」というために、村1つ丸々建てたというのが、エカテリーナ2世の写真として残っているんですけど。  この「中国ってカッコいいでしょ?」という文化の下地があったところに、今度はアラブ世界のちょっとエッチでエキゾチックな物語として『千夜一夜物語』という物語が紹介されました。
     なぜ、これが大きな事件なのかというと、当時のヨーロッパでは、これがアラブを理解し征服するための教科書として読まれてたんですね。  というのも、1700年代の頭というのは、ようやっと、ヨーロッパの植民地主義というのが、アラブ世界を征服してたんですよ。  それまで、実はアラブ・イスラム圏の方が文化的には上だったんですね。ヨーロッパ人って、ルネッサンス以前は「自分達はローマ帝国時代に比べて遅れた蛮族の一味に過ぎない」みたいに思ってたんですよ。  それに対して「力が復帰した自分達が、大航海時代を経て、アラブ圏というのを植民地にした!」というふうに、まあ、自信もあったし、逆にいえば「これからは、もっと勉強しなきゃいけない」と思ってた。  なので、そんな制服先のアラブ世界を理解するための教科書として、『千夜一夜物語/アラビアン・ナイト』というのが、翻訳されたわけですね。
     当時のヨーロッパ人の意識でアラブ世界というのはどこなのかと言うと、「アフリカ・インド・中国・その先の日本までも支配していた大帝国」というふうに思い込んじゃってたんですね。  「ローマ帝国は世界を支配してた」って言うじゃないですか。  でも、実際にローマ帝国が支配したのって地中海周りだけなんですよ。地中海周りと、あとイギリスの辺りまで行ってたんですけど。この範囲の中だけど、ヨーロッパ人は「世界」と呼んでいたんですね。  それに対して「ヨーロッパ以外全てを支配していた国が、アラブである」というふうに思い込んでいたんです。  だから「中国の話であろうと、インドの話であろうと、それは全部アラブの話だ」というふうに、1700年当時のヨーロッパ人は考えちゃったわけですね。
     まとめると、まず、18世紀のヨーロッパ人というのは、もともとシノワズリという中国趣味の真っ最中だった。  そこに植民地時代がやってきて、新たにアラブ世界というのがヨーロッパの支配地域、植民地として下層に入ってきたんですね。  そのアラブ世界の民話を集めた『千夜一夜物語』の翻訳がフランスから始まって、大ヒットした。  そして、地球という全体図が見えてない時代だったので、ヨーロッパ人は『千夜一夜物語』の中で「地の果て」として語られてた中国やアフリカも、「かつてはアラブの支配下にあった部分だ」というふうに考えてしまった。  これが、原作の『アラジン』は中国が舞台という理由です。
     なので、19世紀になって出版された、さっきのクレイン版の絵本でも、クレインは当時のジャポニズムを取り入れてしまったし、アラジンと魔法のランプの原作の舞台を中国の果て、上海辺りのイメージとして捉えてたんです。 (パネルを見せる)
    【画像】アラジン挿絵3 これは、黒人の魔法使いが、「綺麗なランプと汚いランプを交換しまっせ」と言って、アラジンの魔法のランプをなんとか盗もうとするシーンなんですけど。これも、完全にアジアとして描かれています。
    【画像】アラジン挿絵4 この女の人なんかそうですよね。王様の娘としてアラジンが惚れ込むお姫様、ディズニー版によるとジャスミン姫も、完全に日本人のイメージで描いてしまっているんですね。
     それでも、まあ、やっぱり疑問が残るのが、「なぜ、イスラム世界の民話なのに、中国が舞台なのか?」ということ。  さっきも言ったように、原作にも「中国のある都で~」って描いてるんですけども。なぜ、それがアラブに昔から伝わっていたのか?  これには、意外な理由があるんです。
     さっきもちょっと話したんですけど、「原作である『アラジンの魔法のランプ』というのは『千夜一夜物語 補遺』に収録されている」と言ったんですけども。  正確に言うと、これは『千夜一夜物語』じゃないんですよ。実は『千夜一夜物語』の中に、『アラジンと魔法のランプ』は入っていませんし、それどころか『アリババと40人の盗賊』もまるっきり入ってない。全て『補遺』の中に収録されています。  これ、なぜかというと、実は、今回ディズニーが映画化した『アラジン』というお話自体が贋作だった。いわゆる、歴史上の偶然によって生まれてしまった偽の話であり、もともと、アラブ世界にはこんな話はなかったからなんですよね。  それが、これまたいくつかの偶然の結果、贋作とは気付かれずに大流行して、おまけに大ヒットしてしまったという、すごくヘンテコな歴史があるんです。
     ここから先は、すみません。もう時間になりましたので、有料のほうでお話しようと思います。  いやいや、無料版では「ジャスミン姫は日本人だった」というところまで話してしまいました。  そうなんですよ。いわゆる同人誌みたいな偽物の話だったのに、本編を抑えて、一番有名になってしまったんです。もう本当に『アリババと40人の盗賊』とか、あとは『シンドバット』も、実は『千夜一夜物語』じゃないんですよね(笑)。  その辺も、あんまり触れられない話なんですけども。
     後半は、いよいよ『アラジン』の話から、「ディズニーのアラジンには、実はいろんな矛盾があって、それには理由があるんだ」という話に行こうと思います。
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    2019/06/23 #287 「『アラジン』特集、原作『アラビアン・ナイト』から、アニメ版・実写版まで徹底研究!」
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「SF作品を作るとは「科学的な辻褄を合わせること」じゃない!」

    2019-07-11 07:00  
    216pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/07/11
     今日は、2019/06/23配信の岡田斗司夫ゼミ「『アラジン』特集、原作『アラビアン・ナイト』から、アニメ版・実写版まで徹底研究!」からハイライトをお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜8時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜8時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
    『ガンダム THE ORIGIN』の気になるシーン
     ああ、ここまででもう35分を過ぎちゃった。えらいこっちゃ。  まだ『アラジン』に行かないんですけども。『ガンダム THE ORIGIN』が、もう、楽しくて楽しくて。
     NHKで毎週日曜日に放送している『ガンダム THE ORIGIN』なんですけど。  ちょうど今、6月23日の日曜日の夜8時に喋ってますから、ここでは先週の話しかできないんですけども。  先週は第8話「ジオン公国独立」というエピソードでした。  内容としては「月のスミス海で亡命しようとしているミノフスキー博士をザクが襲う」という話。  なんか僕、これを見ていてフッと思い出したんです。
     「ちょっ、ちょっと待て! 俺、この話、知ってるぞ!」と。  「もう、かれこれ30年くらい前に、俺、その話を考えたよ!」と。  「ミノフスキー博士がジオンから連邦に亡命しようとして、ザクに襲われるって、俺、その話を考えて、マンガを描いてもらったことがあるよ!」という(笑)。  沖一さんというマンガ家がいて、シナリオを描いたのはストリームベースの高橋昌也さんなんですけど。 (本を見せる。『マンガ兵器サイバーコミックス (1)』)
    【画像】サイバーコミックス この中に、『ミノフスキー博士物語』というエピソードが載ってるんですけど。今回の「ジオン公国独立」の冒頭は、丸々それなんですね。
    【画像】ミノフスキー博士物語 自分がアイデアを考えたお話を、30年後に、いきなりNHKのアニメで見るこの感動という。  いやあ、人生ってなんて面白いんだろう。この時、しょーもない仕事も真面目にしてて良かった(笑)。
    「同人誌?」(コメント)
     同人ではありません。これはバンダイから出版している、ちゃんとした商業雑誌ですから(笑)。  まだ、これ、Amazonとかで手に入りますから、興味がある人は見ておいてください。
     まあ、ただ単に「こんな事があった」という話なんですけども。
     今回の『ガンダムTHE ORIGIN』で気になったのがここなんですよ。 (パネルを見せる)
    【画像】ORIGIN会議シーン ©SOTSU・SUNRISE 月のアナハイム・エレクトロニクスという、後にガンダムを作ることになる会社の会議室の風景ですね。  テム・レイ、いわゆるアムロ・レイのお父さんが、ガンダムの大プレゼンをやっているところで、アナハイム・エレクトロニクスの偉いさんたちが、月のフォン・ブラウンシティというところだと思うんですけど、そこの会議室に座っています。
     これ、何か気になるのかというと「この椅子にクッションがある」ということなんですよ。  あのね、月の重力は地球の6分の1なんですよ? 椅子にクッションなんていらんのですよ。というか、クッションなんかが下手にあると、お尻の座りが邪魔されるんです。  いわゆる、地球で言うと……フワフワな、コートとかに使っているダウンみたいな材質があるじゃん? そんな、ものすごくフワフワなもので作った椅子に座らされるみたいな、お尻がフワフワになっちゃう感触。  月というのは、地球の6分の1の重力なので、椅子にクッションいらないんですよ。お尻が座面にフィットしなくて、逆に座りにくくなっちゃうんですね。
     この「コップに水」というのもありえない。  なぜかというと、月では重力が6分の1。ということは、コップの中の水も、コップに対して1Gじゃなくて6分の1Gしか掛かっていないんですね。  その中で普通に水を飲んだら、水だけが慣性の法則でバシャッと上の方にあがってきてしまう。だから、こういうコップみたいなものに水を入れるはずがないんですよ。  これ、「アニメの方のミスかな?」と思って調べてみたら、マンガの方も、やっぱりこういうふうに描いているんですよね。
     おまけに、「汗が下に流れてる」んですよ。  6分の1の重力くらいでは、汗というのは表面張力の方が大きくなっちゃって、下に流れないんです。
     なんでこんなことを言うのかというと、これって「編集の人が仕事してない証拠」なんですね。  マンガ家とか作画の人というのは、そういうことを知らずにやるんですけども。ここで高畑勲みたいな人間が出てきて「これは違うでしょ?」って言わないと、どんどん「いわゆる~」になっちゃうんですよね。  この椅子のクッションなんかも典型的。椅子のクッション、コップ、汗もそうですけど、なぜ、彼らが背広を着てるのかも、全部「いわゆる~」なんですよ。  この場面で、椅子を単純な絵でなく、わざわざ手間をかけてクッションまで描いているのは、「画面にリアリティを与えるため」なんですよね。  ところが、この手間を掛けて書いた椅子のクッションが、逆にリアリティを減らしてしまう。
     さっきも言ったように、重役がスーツ姿なのも気になります。「なぜ、月面の企業のはずなのにスーツなのか?」と。  シリコンバレーで働いている人達は、「俺達はシリコンバレーで働いているんだから」ということで、過剰に自由な服を着るじゃないですか? みんな、Tシャツ・ジーパンで働いているんですね。  つまり、「俺達はシリコンバレーで働いている」というプライドが、彼らのファッションというのを、ある程度、決定しているわけです。  じゃあ、月に本社がある企業というのも、同じように、月なりのプライドがあるはずなんですよね。  むしろ、地球出身のテム・レイだけが逆にスーツであるべきなんですよ。テム・レイは地球生まれだから。彼がアナハイムでプレゼンする時に、地球の流儀でスーツを着ているのに対して、重役たちはノーマルスーツ(宇宙服)の下に着る温度調整が簡単に出来るジャージのようなハイテクアンダーウェアを着ている。そうすれば、この「アナハイムというエリート集団の元に、テム・レイという、ちょっと立場が悪いヤツが来ている」ということを見せれるはずなんです。  そこを考えずに、「いわゆる偉い人だからスーツを着てて、テム・レイは研究者だから白衣を着てて」という考えのなさが、「ちょっと待てよ!」と。
     いや、安彦さんがマンガで描いちゃうのは、手の癖だからしょうがないとしても、そこで「カドカワの編集、何やってんだ?」と。  お前らがやるのは、ガンダムファン上がりみたいに「このザクは違いますよ」とか、「このガンダムはこういう性能があって~」という、そういうしょーもない指摘ではなくて、もっとちゃんとした大学を出てるんだから、技術的なことを教えてやれよと思うんですけど。  本当に「仕事してねえな」と思います。
     あと、この会議室の天井の高さ。これも気になってて。  月面という環境を考えたら、この部屋も天井が低いはずなんですよ。  だって、そうでしょ? そういうところで天井を高くしても、危険度があがるだけなんですよ。
     そういうところで、会議室みたいなところで自分達の権力を誇示したいから天井を上げるのか? そうではないんですね。  例えば、「砂漠の民族は、金持ちだったら噴水を作るのか?」っていったら、案外、そっちの方に行かないんですよ。「どのように権力を見せるのか?」というのも、その土地土地の文化とかフォーマットというのがあるんだから。  それを考えることをサボっているんですね。
     高い天井なんか作っちゃったら、与圧する部屋の体積が増えて無駄が多いんですよ。  せっかくコロニーと月との差を見せるチャンスなのに。  コロニーは逆なんですよ、コロニーは巨大なシリンダーの中を丸々与圧してるから、ここでは高さというのを出してもいいんですけど。  「月とコロニーの差を見せる」というのは、天井の低さを思いっきり出すことによって、見せられるはずだったのにね。  コロニーというのは、全てにおいて大量の規格品で出来ていて、部屋は広くて天井が高く、エレベーターで中心軸に登れば0Gなるんですけども。  月というのはコロニーよりもエリートが多くて、天井は低くて、部屋も狭くて、どこに行っても6分の1の重力で、こういった椅子とかは、案外、簡単な出来のものになっている。  そこら辺で文化の差というのを見せて欲しかったんですけど。
     そういう環境の差というのが、そこに住む人間の常識の差になるので。なんか、砂漠の民と海の近くに住んでいる民族って、絶対に文化とか世界観違うじゃないですか。  そういうところを見せるべきだったと思います。
     SFというのは、「科学的な辻褄を合わせること」じゃないんです。  「それが本当に現実化した場合、コロニーが現実化してたり、月にハイテク企業の本社があるということが現実化した場合、お互いに、どのような常識の塊が、その世界を支配しているのかを考えること」がSFなんですね。
     このSFアニメの作り方に関しては、もうちょっと言いたいことがあるので、後半で話してみたいと思います。  というのも、富野さんは講演の中で、怒りを爆発させて「どんなにアニメのスタッフというのが、宇宙をわかっていないのか!」って力説していたことと、この問題とが、偶然、合ってたので。  今のは僕の意見なんですけど、「じゃあ、富野さんはどういうふうに語っていたのか?」という話を後半の方で語ってみたいと思います。
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    2019/06/23 #287 「『アラジン』特集、原作『アラビアン・ナイト』から、アニメ版・実写版まで徹底研究!」
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