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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『千と千尋の神隠し』~宮崎駿が描いたテーマと鈴木敏夫が隠したモチーフを発掘する」

    2019-11-30 07:00  
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    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/11/30
     今日は、2019/11/10配信の岡田斗司夫ゼミ「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]」から無料記事全文をお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜7時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜7時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
    本日のお題『千と千尋の神隠し』残り10の謎
    【画像】スタジオから
     こんばんは、11月10日の岡田斗司夫ゼミです。  あの、今日ね、長いですよ本当に。一応、放送の時にはレジュメを用意しているんですけど、今日は37枚だから、たぶん、過去一番長い回になりますね。長い回の1つと言ってもいいんですけども。  だから、途中でトイレ休憩とかを入れますので、すみません、皆さんも長期戦を覚悟して見てもらえればありがたいなと思います。  一応、無料枠の方は、それでも35分か40分くらいで終わるつもりなんですけど。先週に話した謎を最後まで全部、有料を使って話し切るつもりですので、そのくらいになると思っておいてください。
     あと、先週から夜7時、19時からのスタートになったんですけど、大丈夫ですね? 今週のガンダム講座も夜7時からになります。  ちょっと先週、告知するのを忘れてたんですけど、次回のガンダム講座だけ、火曜日ではなく水曜日になります。13日の水曜日にガンダム講座をやりますので、皆さん、時間を合わせてください。よろしくお願いします。  まあ、生で見れなかった人は後で録画で見ていただければ。
     来週は、久し振りに雑談特集をやります。  先週、今週と、ちょっと濃い目の話をしたので、来週は雑談をやりますので、お便りとか質問とかあれば、僕のメールアドレスの方によろしくお願いします。  まあ、お便りが来れば来るほど雑談がやりやすくなるので、そこら辺は協力して頂きたいと思います。
    ・・・
     じゃあ、前回のおさらいから行きましょうか。  『千と千尋の神隠し』なんですけど。一応、前回「こんなふうに、14の謎があるぞ」と話しました。
    (パネルを見せる)
    【画像】14の謎のパネル不思議な世界の謎
    湯婆婆の謎
    ストーリーの謎
    神隠しの謎
    油屋の謎
    メガヒットの謎
    ジブリの謎
    神様の謎
    海原電鉄の謎
    カオナシの謎
    銭婆の謎
    ハクの謎
    「振り向いてはいけない」の謎
    両親の謎
     前回は、そのうちの4つを話しました。まあ、4つ話したところで、まあ本当に時間いっぱいになっちゃったんですけど。
     1つ目の謎は「不思議な世界の謎」。 (パネルを見せる)
    【画像】街の構造図
     これ、『千と千尋』のロマンアルバム(『ロマンアルバム 千と千尋の神隠し』徳間書店、2001年)に載っている街全体の構造図なんですけど。  「千尋達が一番最初に階段とかを上って、街に入っていって、油屋に行って~」という、街の全体の構造図がこの本には載っていて、すごく便利だったので、ちょっと今回、紹介してみました。  前回では、冒頭16分をすごく細かく話しました。無料放送のうちの半分くらいがこの街の話で「この街では、現実の10分の1の速度で時間が進む。だから、この世界の中で1日1ヶ月と過ごすと、まあ10日10ヶ月以上の時間が経ってしまう」という話もしました。  あとは「この街は、神様の世界と人間の世界の狭間にある」ということも、先週、話しました。
     2つ目に話した謎が、これも先週の無料放送で話したやつなんですけど、「湯婆婆の謎」。 (パネルを見せる)
    【画像】湯婆婆と銭婆
     このイメージボードを見ればわかる通り、湯婆婆と銭婆というのは、双子の姉妹という設定になっているんですけど。  ここでは「湯婆婆は、実はホワイト企業を運営していて『もののけ姫』のエボシの成れの果ての存在ではないか?」という話をしました。そして「それは、かつては理想もあった、鈴木敏夫や宮崎駿自身の成れの果ての姿でもある」という話もしました。  つまり、昔は『もののけ姫』のエボシのように、自分なりに理想もあって、他人に何か命令したりする時もちゃんと理由があったのが、どんどん歳を取るにつれて暴君となっている。そんな自分自身や鈴木敏夫の姿を、この湯婆婆の中に入れているという話をしました。
     3つ目は「ストーリーの謎」として『雪の女王』とか『霧のむこうのふしぎな町』『ハリー・ポッター』などとの共通点の話をして。
    【画像】空の穴 ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     4つ目に「神隠しの謎」として前回話したのが『銀河鉄道の夜』の中に出てくる「空の穴」というブラックホールのような存在ですね。  これは、現実にも存在している、石炭袋とも呼ばれる、天の河の中にあるコールサック星雲というものなんですけど。
    【画像】石炭 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     油屋では、そこで取れた物質から出来ている石炭を使って炉を沸かしている。この石炭がものすごく重いのは、これが暗黒物質で出来ているからだ、と。  そして、こういう暗黒物質を大量に貯め込んでいるので、油屋の周りの時空は歪んでて、10分の1の時間しか流れない。この辺を有料枠で話しました。
    ・・・
     今回、さっきの14の謎はあまりにも多いので、ちょっとまとめて、13の謎にしたので、残り9個になりました。
    (パネルを見せる)
    【画像】残り9個の謎不思議な世界の謎
    湯婆婆の謎
    ストーリーの謎
    神隠しの謎
    油屋とジブリの謎
    ハクの謎
    両親の謎
    神様の謎
    海原鉄道と釜爺の謎
    カオナシの謎
    銭婆の謎
    「振り向いてはいけない」の謎
    誰も知らないハッピーエンドの謎
     まあ、おわかりの通り、「油屋とジブリの謎」とか「海原鉄道と釜爺の謎」とか、ちょっとまとめることで数を減らしましたけど、内容は全く減っておりません(笑)。  こんな感じにしてみました。よろしくお願いします。  ということで、一番最初に、油屋とジブリの謎から行きましょう。
     ちょっと待ってね、ここまでの説明であたふたしてるから、これ今日は大変だぞと思ってるんで、一息つかせてください。  大丈夫かな? もう本当に、これだけでも放送2回分くらいあるんですけど。まあ、その分、来週は楽をするつもりなんですけども。
    「俺たちの仕事はこの油屋!」という宮崎駿のメッセージ
    【画像】スタジオから
      じゃあ行きましょう。油屋とジブリの謎です。 (パネルを見せる)
    【画像】油屋イメージボード
     これ、イメージボードに描いてある油屋ですね。主人公の千尋が、送り込まれるというか働くことになる油屋のイメージボードです。  壮大な和風建築みたいに見えます。しかし、よく見ると、この下半分というのはコンクリートで作られているんですね。
    【画像】油屋ペントハウス
     そして、この上半分は豪華に見えますけど、これは全部、湯婆婆のペントハウスなんですよ。上半分のすごくカッコいい部分って、言っちゃえば、昔の帆船の船長室とか『宇宙海賊キャプテンハーロック』の艦長室みたいなもので、艦長室だけがやたらと豪華な建築なんですよ。  これ、すごく綺麗に見えるんですけど、実はお客さんが飲んだり遊んだりする場所というのは狭い区域に限られていて、それ以外の豪華な部分というのは、ほとんど湯婆婆のペントハウスになっています。
    【画像】油屋の厠
     ちなみに、初期案では、この位置に……わかるかな? ここに張り出しみたいなものがあるのわかりますか?  これ、何かというと「厠」と書いてあって、ポットン便所なんですね。  この位置にトイレがあって、ここからうんちとかおしっこがポトンと落ちるようになっているんですけど。こんなふうになっています。
     これを横から見るとどうなっているのかというと、これも宮崎駿が初期のうちに描いていたイメージボードがあります。 (パネルを見せる)
    【画像】油屋全体図
     さっき話したように、この壮大にカッコいい部分というのは、湯婆婆のペントハウスなんですけど。ここには「客室」と書いてあります。  これ、宮崎駿が初期に描いたもので、まだ、上の部分に湯婆婆のものすごく豪華な部分が乗ってないんですけど。下半分は、さっき言ったようにコンクリート造りなんですね。  大門から入って、お風呂場の部分が全て吹き抜けになっていて、その周りに客室がついていて、裏側に従業員の宿舎が張り付いているというような構造になっています。  1階に番台と風呂場があって、2階部分は全て吹き抜け。3階と4階は吹き抜けの周りに、客室がある感じですね。そして、5階以上が湯婆婆のペントハウス。
     この建物を、宮崎駿は擬洋風というふうに呼んでいます。  擬洋風というのは建築界の用語であって、どういう意味かと言うと、巨大なボイラーハウスが下にあることからもわかるように、これ、コンクリート建築なんですね。つまり、和風建築ではなくて、コンクリートの偽物なんです。  このように、西洋建築の技術を取り入れた和風建築のようなものを、建築業界では擬洋風というふうに言います。明治時代によく建てられた「和風建築の偽物」……と言うよりかは「洋風建築の偽物」と言うべきか。  だいたい、明治時代に、西洋建築の建て方をよく知らない大工達が、新しく入ってきた素材とか設計図とか材料で、見様見真似で洋風建築みたいなのを作ったんだけど、上にはデカい瓦とかを載せちゃう、と。そういうのを擬洋風と言うんですけども。  これね、宮崎駿の強烈なメッセージなんですね。
    ・・・
     何かと言うと、日本のアニメーションそのものを指して「擬洋風」と言っているんですよ。  つまり、ディズニーなんかの西洋が始めた芸術に、日本のセンスを乗っけただけなんですね。宮崎駿も、よく「日本のアニメーションのやっていることというのは、所詮は西洋が始めたものに自分なりのセンスを乗せているだけだ」って言ってるんですけども。  つまり、『もののけ姫』そのものなんですね。この建物自体が、自分の作品である『もののけ姫』を強烈に皮肉っているんですよ。  「いくら室町時代を描こうが、縄文時代を出そうが、針葉樹林文化論を出そうが、そういう神話を描こうが、所詮、自分の作ったアニメーションというのは擬洋風であって、西洋が作ったアニメーションの技法、西洋が作った映画の文法の上にのっとってやっちゃっている」ということなんですね。
     そして、この油屋というのは、かつて自分が作った『もののけ姫』そのものであると同時に、スタジオジブリそのものでもあるんですね。  「この中で、女の人ばかりが働いている」というのにも理由があります。当時のジブリというのは『もののけ姫』の時にトラブルがあって、大量にアニメーターが辞めたんです。その結果、残ったのは女性の新人ばっかりが多くなって、一時期は「ジブリのアニメーターって女の子ばっかりだ」って言われてたんですけど。そんなふうに、女の子がいっぱいいる体制だったんですね。  そんな、女性ばっかりのアニメーターを集めて何を作るのかと言うと、湯婆婆、すなわち鈴木敏夫プロデューサーは「ヒットさせろ!」と言うんです。  この巨大になってしまったアニメスタジオで、高畑勲が何も考えず湯水のように金と時間を使うから、どうにかして作品をヒットさせなきゃいけない。観客の欲望を満たすようなアニメーションを作らなきゃいけない。  つまり、「女の子を大量に集めて、偽の洋風建築の中で、観客の欲望を満たすようなものを作れ!」というメッセージが、すごく大きく入っているわけですね。
     「お客様は神様であって、そんな神様の機嫌を取るような面白いアニメというのをひたすら作り続ける。それが俺達の仕事だ! 俺達の仕事は、この油屋そのものじゃないか!」というメッセージなんです。  実は、この『千と千尋の神隠し』の裏テーマの1つが、当時、金儲けに走っていたジブリへの批判なんですね。アンチ鈴木敏夫作品でもあるんですよ。  このアンチ鈴木敏夫作品というのを誤魔化すために「油屋は風俗産業だ」という、キャッチーな、評論家受けするようなフレーズというのが生まれたわけなんですけども。
     宮崎駿は、油屋について、こんなイメージボードを描いているんです。 (パネルを見せる)
    【画像】油屋内部イメージボード
     神様が来て、中には番台があって湯婆婆が座ってて、「お背中を流しましょう」というふうに、神様を気持ちよくして帰っていただくという。いわゆる「垢を落とす」わけなんですけど。  これは、映画館に来る観客を意味しているわけですね。映画館に来る観客というのは、日常の澱みとか、嫌なこととかがいっぱい溜まっている。それを、映画館に来ることで、感動したり笑ったり涙を流したりして、さっぱりして帰って頂く、と。  「我々はそうやってお金を頂いている。だから、あくまでヒットさせなきゃいけない」。これは、宮崎駿が鈴木敏夫から言われてたことでもあるんです。それまでは、宮崎駿もこの言い分に納得してやってたんですけど。しかし、もう、この頃になると、流石にいろんなことが積もりに積もって。  特に『もののけ姫』が、空前のヒットを飛ばしたもんだから、まさか『千と千尋』がそれ以上にヒットするとは思わずに、宮崎駿も「あんなにヒットしたことによって、俺達は何かが狂ってしまった。今、何かがおかしいぞ」というメッセージを込めて作ったら、それ以上にヒットしちゃったという作品だったんです。
    油屋のモデルと宮﨑駿の「私小説」
    【画像】スタジオから
     「『千と千尋』は風俗産業を描こうとしている」とか「キャバクラがモデルになっている」という説が生まれたきっかけは、そもそも、鈴木敏夫さんのインタビューなんですね。  「宮崎駿にキャバ嬢の話をした」と。  実はキャバ嬢というのは、もともとコミュ症、つまり、他人と上手く話せない人が多い。ところが、面白いもんで、他人と全く話せない女の子が、キャバクラでキャバ嬢をやると、数週間くらいでお客さんと話せるようになる。  そんな話をしたら、宮崎駿はすごく感心して「俺らのジブリも似たようなもんだね」と。地方から出てきた、もう絵しか描けないとか、アニメにしか興味がないというようなやつらが集まって、一緒に物を作っていくうちに、段々と他人と話が出来るようになってくる、と。  いや、これだけだったんですよ。宮崎駿が「そうだよね」と言ったのって、この部分だけだったんですけど。
     しかし、「現代の日本はまるでキャバクラ、風俗だ、というメッセージを込めた」と言えば、マスコミは取り上げるわけですね。「今回のジブリ作品は、それをテーマにしている」と言ったら、すごい評判になるわけですよ。  鈴木敏夫のこういった宣伝文句は『ゲド戦記』の時にも前科のある、週刊誌的な手法なんですけど。  昔は僕もこれを信じたわけなんですよ。本当に、1年くらい前までかな? 前回も言ったんですけど、『千と千尋の神隠し』というのを、すごい作品だとは思うんですけど、僕はあまり好きな作品ではないので。僕もこれにコロッと騙されて「いやいや、『千と千尋』のテーマは、やっぱり風俗を描くことでしょう?」というふうに思ってたんです。もう本当に、恥ずかしいんですけども。
     こういう鈴木敏夫さんの宣伝手法というのは、本質をわかりやすくキャッチーに歪めちゃうところがあるんですよ。  例えば、『かぐや姫の物語』では、高畑勲からは「絶対に書くな!」と言われていたのに、作品のテーマを「かぐや姫の罪と罰」というふうに宣伝してしまって、もう大喧嘩したんですね。そして、それっきり、高畑勲は『かぐや姫』の宣伝に関して、全く口を出さなくなったということがありました。  あとは『もののけ姫』というのも、宮崎駿は『アシタカせっ記』という、アシタカを主人公とした話として作ってたのに、鈴木敏夫が『もののけ姫』というタイトルで先に記者会見をしてしまったので、そうなってしまい、作品のストーリー自体が誤解されるきっかけにもなりました。  さっきも言った『ゲド戦記』では、マスコミに「宮崎駿と宮崎吾朗の親子は仲が悪い」という話が報道されたので、それを逆手にとって、わざと「『ゲド戦記』は父殺しの物語で、宮崎吾朗が宮崎駿を否定するための作品だ」みたいなことをいっぱい言って、それで注目を集めようとしたわけですね。  もう本当に、週刊誌的な作り方なんですよ。
     しかし、宮崎駿というのは「自分が知らないものを作らない人」なんですね。  宮崎駿自身は「『千と千尋』はジブリを描くのが目的だ」と、はっきり言っているんですよ。  それはふゅーじょんぷろだくと社が出版した『千尋の大冒険』という、割とマイナーな本なんですけど、この中でいっぱい言ってるんですよ。 (本を見せる 『「千と千尋の神隠し」千尋の大冒険』別冊COMIC BOX vol.6、ふゅーじょんぷろだくと、2001年)
    【画像】『千尋の大冒険』表紙
     なぜかと言うと、この本、唯一鈴木敏夫の検閲が入らない本なんですね。
     『千と千尋』の研究本とか解説本って、いろんな出版社から出てるんですよ。まあ、図版を使わなければ、どんな出版社からでも出せるんですけど、図版をいっぱい使っている、いわゆる公式本の類というのは、講談社とか、角川とか、文藝春秋とか、そういう一流の出版社からしか、鈴木さんはオーケーをしないんです。  ところが、このふゅーじょんぷろだくと社というのは、全く一流の出版社ではないんです。  この『千尋の大冒険』という本は、ただ単に「社長が左翼で、宮崎駿と仲が良かった」というだけの理由で出せた、奇跡のような本なんですね。  なので、この本の中には「当時のジブリの批判」とか「スタッフが宮崎駿の悪口を言ってること」とか「本当はこんなことやりたかったんだ」というのが山のように載っているんです。  だけど、ジブリ美術館でも、これは売ってないんですよね。それは、ジブリ公認ではない。鈴木敏夫公認ではないからなんですけども。
     このふゅーじょんぷろだくと社の本の中には、例えば「なぜ、油屋で働く男たちがカエルなのかと言うと、徳間社長の葬式の時に、背広姿の偉い人がいっぱい来た。その背広姿の偉い人が全員カエルに見えた」という事が書いてあります。  「あれは総理大臣というカエルだ」と。総理大臣も徳間の社長の葬式に来たそうですね。「ジブリの近くにいるスーツ組、いわゆる、お金を儲けようとしてジブリの近くに寄ってくる人たちというのは、みんなカエルに見えた」と。  それに比べて、自分たちアニメーターというのは虫けら扱いなので、女の子はナメクジ。本草学によると、ナメクジもやっぱり虫ですので。まあ、カエルも虫なんですけど。  こういうな形で、カエルの男とナメクジの女というのが描かれているわけですね。
     この本の中で、宮崎駿は「ジブリというのは理不尽で重労働だ」と言ってます。  そして、「そんなジブリを舞台に、小さな女の子が無理矢理に働かされる話をやりたかった」と。
    ・・・
     千尋にはモデルがいます。  これはウィキペディアにも載っているんですけども、ジブリの後援者の1つである日本テレビのお偉いさんの奥田さんという人の娘ですね。  この奥田さんという人の娘について、宮崎駿が「この女の子は、あの親の元で真っ直ぐに育つとは思えない!」と言い出して……本当に、他人の家のことに口を出すんですけども(笑)。  「まっすぐに育つとは思えない! あのままでいいと思うか!? なんとか俺達でまともに出来ないか!? いっそ、ジブリに連れてきたらもっとまともに育つんじゃないか!?」と。  その結果、奥田さんはしょっちゅう自分の娘を宮崎駿の別荘に連れて行ったんですね。
     ここで『千と千尋の神隠し』の根本構造が出来るわけです。  つまり、「食い物に釣られてブタになってしまう両親」というのは、イコール「お金のため、仕事のために、ジブリや宮崎さんにホイホイ近づくビジネスマン」。  その娘が、ジブリみたいな、おっかない場所、重労働で理不尽なところに連れて来られて、そこで働かされるという話なんですね。
     ウィキペディアにも、この辺の事実経緯が書いてあります。

    制作のきっかけは、宮崎駿の個人的な友人である10歳の少女を喜ばせたいというものだった。 この少女は日本テレビの映画プロデューサー、奥田誠治の娘であり、主人公千尋のモデルになった。 企画当時宮崎は、信州に持っている山小屋にジブリ関係者たちの娘を集め、年に一度合宿を開いていた。 宮崎はまだ10歳前後の年齢の女子に向けた映画を作ったことがなく、そのため彼女たちに映画を送り届けたいと思うようになった。

     つまり「親の仕事のために、欲望のために、ジブリに入れられた女の子が、観客の心を慰めるアニメを作るためにアニメーターにさせられる」という、とんでもない話が『千と千尋』のベース、油屋のベースなんですよ。  ところが、ベースがそれであっても、その上にどんどん面白いものを乗っけているんです。  さっきも話したように、これは油屋で言えば、コンクリートの構造部分なんですね。下の構造部分がそこで「さあ、この上に何を乗せたら面白いアニメを作れるだろうか?」ということで、どんどん変質していくわけです。
    ・・・
     「ハヤオの好きな女の子が、ジブリで鈴木敏夫にこき使われる」という話をやってみよう、と。  しかし、ハヤオは助けることが出来ない。「俺は、俺は、単なるおじいちゃんだから、湯婆婆のような、あんなに怖い鈴木敏夫に逆らうことは出来ない。しかし、助言はしてやれる!」と言って、自分はいつの間にかに釜爺という、なんか良いポジションをきっちり取っているわけですね。  そんな中、千尋は勝手に強くなってくれる。  さて、釜爺の他にもう1人、作中には宮崎駿の分身がいます。それが、ハクという美少年。ハクこと宮崎駿は、鈴木敏夫の理不尽な命令で、血まみれになりながら、アニメを作らされているわけですね。  そして、『もののけ姫』の時みたいに「年老いてあまり使えなくなった」と判断したら、鈴木敏夫は宮崎駿を、冷酷にも穴の中に捨てて、若いアニメーターとか、宮崎吾朗とか、宮崎駿の弟子筋とか、あとは何よりも高畑勲を贔屓にし始めるわけですね。  この辺りの「鈴木さん、本当は俺よりも若いやつの方が大事なんじゃないのか!?」っていう、宮崎駿の勝手な妄想が、湯婆婆が坊という子供を溺愛するシーンとかにガンガン溢れ出していて、まあ、なかなか面白くなってるんですけど(笑)。  しかし、千尋だけは、宮崎駿の分身である美少年のハクを見捨てずに、命をかけて銭婆、すなわち高畑勲の元に行ってくれるわけですね。  千尋は最後に宮崎駿に本当の名前を教えてくれる。この「本当の名前」というのは、つまり「あなたが今やるべきアニメは、これですよ」ということを教えて、去って行くわけです。  そして、「その、やるべきアニメというものこそ、この『千と千尋の神隠し』だ!」と。
     つまり、これは宮崎駿の私小説なんですよ。  私小説として、すごい上手く出来ている。徹底的に、宮崎駿による、宮崎駿のためのアニメなんですよ。「10歳の娘に向けたアニメ」というのは、いつの間にか吹き飛んでしまって、自分のためのアニメをつくっちゃったという。  同時期の『On Your Mark』と全く同じです。完全に、この時期から宮崎駿は自分にしかわからない話を作るようになります。  ところが、そんな自分にしかわからない話というのが、禍々しい深みというのを作り出している。  おまけに、宮崎駿の中にも「一般にヒットさせよう」という思いもあるし、また、そうさせるだけの手練手管、素晴らしいアイデアやイメージを持っている。これが、ヒットする秘密になっていくわけですね。  だけど、構造自体は、すごく作家性が強いアニメーションになったわけです。
     しかし、宮崎駿が自分のために作ったアニメだと『もののけ姫』のようなメガヒットは狙えない。  まるで、宮崎駿の私小説なんですけど、その代わり、社会性がない。そして、社会批判があるように見えないと、やっぱり評論家が深読みしてくれない。  そこで、鈴木敏夫が宣伝を通じてミスリードさせようとするわけですね。  鈴木敏夫には、早い段階で「ああ、宮崎駿はこの映画を自分の私小説にするつもりだな」ということがわかったわけですね。そうなると、これをなんとかして『もののけ姫』のように社会批判があるというパッケージに落とし込まないと、絶対にメガヒットしない。  そこで、鈴木敏夫は「この油屋というお風呂場は、風俗のアナロジーなんですよ。まあ、キャバクラみたいなものです」という宣伝を始めたんですね。  すると、評論家たちは、思い通り、狙い通り、僕を含めて騙されて、間違えてくれて「これはジブリというアニメスタジオを描いた話だ」ということがバレなかったわけです。
    ・・・
     油屋というのは実はジブリであって、ジブリで働くと人の心を失ってしまう。  千尋は、油屋で働いているうちに、ブタになった両親を見ても平気になるんです。この『千尋の大冒険』の中でも語っています。  まあ、実際に作った映画の中には、ちゃんと「ブタになった両親を見て悲しむ千尋」というシーンがあるんですけど。この本が作られた時には、まだ映画の前半しか出来てなかったんですね。  宮崎駿は、その時、取材に対して「千尋はブタになった両親を見ても平気になってしまう。何も心が動かない。しかし、おにぎりを食べて自分の名前を思い出したことで、自分はなんて変わってしまったんだと涙をポロポロ流す」というふうに言っているんです。  つまり、「油屋で働くことで、心を失ってしまう」と言っている。
     宮崎駿の実のお母さんが死んだ時、宮崎駿は仕事が忙しくて、お葬式に行かなかったんですね。  本当に、アニメーションの仕事の現場にいると、どんどん人間の心を失ってしまう、と。  それは、現に宮崎駿も「ジブリの中では、アニメーターに対して、本当に理不尽な命令をしたり、怒鳴ったりしている」ということで、実感しているということを表しています。
     千尋が、自分の名前すらも完全に忘れてしまうほどの忙しさの中で、心を取り戻す方法というのが、この「おにぎりを貪る」というシーンなんですけど。 (パネルを見せる)
    【画像】おにぎりを食べる千尋 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     ハクの作ってくれたおにぎりを貪る千尋ですね。おにぎりを両手に持ってガツガツ食べています。  千尋って、実は、一番最初から欲望がない子なんですね。「痩せっぽち」というのは何かというと「食欲があまりない」ということなんですけど。  両親と一緒に、不思議な街の食物屋がいっぱいあるところに行って「千尋も食べなさい」と言われている時に「私、いらない」と言う。あれが、普段の千尋なんですよ。ご飯の時もあんまりご食べない。欲望が出てこないんですね。だから、痩せっぽちなんです。  欲望があんまりない。お腹が空かない。「食べろ」と命じられても食べない。  しかし、ハクに勧められて、初めておにぎりを食べた時、「自分はお腹が空いている」ということに気付くんですね。「どんなに自分が飢えていたのかわかった」と。
    ・・・
     宮崎駿って、当時、『もののけ姫』の辺りまで、ずっと「儲けることには興味がない。ヒットのためにやってない」って言ってたんですね。  世間は、宮崎駿に金の魅力、「こうやれば、もっとヒットしますよ? 儲かりますよ?」と言って仕事をさせようとする。それに対して宮崎駿は「いや、儲けなくてもいいんだ! 俺は金のためにやってるんじゃないんだ!」というふうに、ずっと言ってたんですよ。  しかし、現にお金がないと力が出ないわけですね。腹が減っては動けないのと同じで、アニメーターに金が払えない。宮崎駿は『魔女の宅急便』が終わった時から、「ジブリでは、アニメーターを正社員にしよう」と言ってたわけです。これには、もう莫大なお金が必要なわけです。  「金がないと自分の好きな作品も作れない」と。宮崎駿は、ちょうどこの頃から、自分の中の隠れた欲望を肯定するようになったんですね。  まあ、これ自体は「自分では隠してるつもりだった欲望」だったんですけども。  今言ったような「金には興味がない。ヒットにはあまり興味がない」というのは、本人が言ってるだけで、実は、宮崎駿は誰よりも「どれくらい儲かっているのか? どれくらいヒットしているのか?」を気にする人間なんですね。  それは『カリオストロの城』の時に、自分が渾身の力で作ったアニメーションというのが全然ヒットしなかったおかげで、5年くらい業界から干されたという、やっぱり、すごく痛い経験があるからなんですよ。  だから、「どれくらいヒットしているのか?」を気にする。  ただ、相変わらず、宮崎さんは「自分がどれくらいお金を持つか?」には、もう本当に興味がないんです。  「カップヌードルのカレー味を食べることが自分の中ではごちそうになっている」と言ってるくらいですから。「こんな塩分の強いものを、女房に隠れて食うのが一番のごちそうだ」と、嬉しそうに食っているシーンが、ドキュメンタリーにも収められているんですけど。  こういう人なので、本当に「自分にどれくらい金があるのか?」には興味がないんです。  だけど、「ジブリのアニメがどれくらいヒットしているのか?」には、本当に興味があるというか、こだわる人で。特に「自分が高畑さんに勝ったか、負けたか?」というのには、やっぱりすごい興味があるんですね。
     そこで出てくるのが、これです。 (パッケージに入ったオモチャのようなものを見せる)
    【画像】ハクのおにぎりフィギュア
     ハクの作ったおにぎりが、DVDの特典のフィギュアになったんです。ふざけてますよね(笑)。  「DVDの特典にフィギュアをつける」という時に、宮崎駿はDVDを出すの大反対して、特典として何かオモチャを付けるということにも、もう怒りまくってたんですけど。  ようやっと、それにOKしたと思ったら、「白い米のおにぎりをフィギュアにする」と言い出した。  「なんだこりゃ?」って思うでしょ? 僕も思ったんですよ。だから、これ、発売した時には要らなかったんですけど、あとで猛烈に欲しくなって、ヤフオクでわざわざ手に入れたんです。
     やっぱり、DVDの特典というのは、宮崎駿にしたら許せないわけですね。  まず「作品をビデオで売る」ということにも反対してたんです。「子どもたちにとっては、映画館で一生に1回しか見れない、そういう体験を俺は作っているつもりなのに、ビデオを売るとは何ごと? レーザーディスクを売るとは何ごと? DVDを売るとは何ごと?」ということで、何ごと感がどんどん増していった。  おまけに「その特典としてフィギュア玩具をつけるとは、もう許せん!」というふうになってたわけですよ。  だけど、もうそれに加担することを決意したわけですね。自分がいくら止めても、やっぱりやられてしまうし、それをやることによってスタジオジブリの維持もできる。  何より、自分がちょうど『千と千尋』を作っている時に夢中になっていたジブリ美術館というのを作るには、やっぱり何十億円も必要なわけですね。そのための金がどこから出てくるのかと言うと、自分が毛嫌いして軽蔑していた金儲けから、原動力が出て来るわけです。  だから、このおにぎりフィギュアというのは、そんな金儲けに加担することを決意した、宮崎駿なりの精一杯のメッセージなんですね。
     千尋は自分の欲望を肯定して、おにぎりを両手で頬張る。もう本当に、汚く食べることによって、生きる力を発見した。まあ、こういう話なんですけど。  ちょっと、宮崎駿の話、ジブリの話、アニメの中の油屋の設定の話という、3つの話を混ぜて語りましたけど。油屋とジブリの謎、今日の1つ目の謎の話はここまでです。
    『銀河鉄道の夜』から読み解くハクの謎
    【画像】スタジオから
     『千と千尋の神隠し』13の謎、6番目の謎は「ハクの謎」です。 (パネルを見せる)
    【画像】ハクを抱きしめる千尋 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     はい、これは「血まみれになって帰って来たハクを抱きしめる千尋」なんですけども。
     そもそも、ハクというのはどういう存在としてデザインされているのか? テーマ的なものではなく、お話の中の構造として、どんなふうにデザインされているのかというと女の子から見た不良少年なんですね。  強い大人に命じられて、純粋な少年が外の世界で悪いことをして、そして血まみれになって帰って来る。「そんな人なんだけども、周りから怖がられている人なんだけども、私だけには優しいんだ」っていう、少女マンガにおけるヒーロー、彼氏設定ですね。  俺、昭和の時代、『ホットロード』という少女マンガを読んだことあるんだけど、まあ、あんな感じなんですよ。『バナナフィッシュ』とかもそうなんでしょうね。
    【画像】ハク © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     このハクが、千尋に「私はずっとお前を見ていた」と言うシーンがあります。  「どうして私の名前を知っているの?」と千尋が聞くと、「そなたの小さい時から知っている」と答えます。  これ、さっきの、千尋におにぎりを渡すシーンなんですけど。ここでは、ハクは自分の名前を思い出せないんですね。やっぱり名前を奪われているから。  そんなハクが、自分の名前も思い出せないのに「でも、不思議だね。千尋のことは覚えていた」と言うんですよ。  これね、ここから先のストーリー展開を全てセリフ通りに考えると、「ハクというのはコハク川という川の守り主の神様で、千尋が小さい時に溺れかけたのを助けてあげた」ということになるんですけど。  でも、なんで、そんな事件だけで「そなたの小さい時から知っている」ことになるのか? 「自分の名前も忘れたのに、お前のことだけは覚えていた」というセリフは、辻褄があわないんですよ。
     他にも、倒れたハクを千尋が心配する様子を見て、釜爺は「愛だね。愛じゃ」と言うんです。  これも、それまでの宮崎アニメの文法とは違いすぎるんですね。仮に、こんなふうに、主人公同士が思い合っている恋愛感情みたいなものがあったとしても、「それは愛だ」というふうに、あまりハッキリと言い切らないんですね。  では、なぜ、そんなにハッキリと言い切ったのか?
     あとは、謎の歌詞という問題もあって。  宮崎駿が『千と千尋の神隠し』を作った時に、音楽を担当した久石譲に送ったイメージ歌詞というのがあります。 (パネルを見せる)
    【画像】イメージ歌詞
     『あの日の川で』という詩なんですけど。全文読むとこんな感じになります。

    『あの日の川で』
    陽のさす裏庭から 忘れていた木戸を抜け 生け垣が影落とす道を行く 向こうから走ってくる幼い子は わたし ずぶぬれで泣きながらすれ違う 砂場の足跡をたどって もっと先へ いまは 埋もれてしまった川まで
    ゴミの間の水草がゆれている あの小さな川で 私はあなたに出会った 私のクツがゆっくり流れていく 小さな渦にまかれて消える 心をおおうチリが晴れる 目を隠すくもりが消える 手は空気に触れ 足は地面のはずみを受けとめる
    誰かのために生きている私 私のために生きてくれた誰か
    私は あの日 川に行ったのだ 私は あなたの 川へ行ったのだ

     こんな歌詞なんですね。  「ずぶ濡れになって帰ってくる」「私の靴がゆっくり流れていく」「私のために生きてくれた誰か」みたいに、なんか、物言いいたげな、不思議な歌詞。  結局、この本編には採用されなかったんですけども。
    ・・・
     さらに不思議なのが「千尋が過去を思い出す」というシーンなんですね。  もう本当に物語のラスト、龍の姿になったハクの上に乗って一緒に飛ぶシーンなんですけど。銭婆に会いに行って、ハクを許してもらって、ハクの化身である白い龍に乗って空を飛んでいるシーン。ドラマの中で一番盛り上がるところです。  ここで千尋は突然、思い出すんですよ。 (パネルを見せる)
    【画像】水に伸ばす手 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     こんなふうに「水の中に手が伸びていく」というシーンなんですけど。  しかし、これ「靴が川に落ちて拾おうとした」にしては、水しぶきのサイズが大き過ぎるんですよね。  「じゃあ、千尋が落ちた時の水しぶきなのか?」というと、手が伸びる前から水しぶきが立っている。  何か大きなものが落ちた時の水しぶきに向かって手が伸びているように見えるんです。
     これをハッキリさせるために、このシーンの絵コンテを見てみましょう。 (パネルを見せる)
    【画像】手の絵コンテ
     絵コンテを見ると、実際の画面に映し出されているものと同じことが描いてあるんですけど。  ここで注目すべきは、コンテに描かれた説明文。ここには「サーッと伸びていく子供の手」と書いてあるんですよね。
     なぜ「子供の手」と書いているのかと言うと、「千尋の手」と書かないためなんですよ。  つまり、「手を伸ばしているのは千尋じゃないから」なんですね。  そして「それは誰か?」ということを明かしたくないからです。  「誰かの手が伸びていって、そして、水の中に落ちた者を助けようとしている」という状況を描こうとしているわけです。
     続いて、千尋がその時の記憶を思い出すシーンです。 (パネルを見せる)
    【画像】水中の千尋 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     ここで、千尋の肩のところを見てください。顔と肩の色が同じです。つまり、これ、裸なんですね。  では、なぜ、記憶の中での千尋が裸だったのかと言うと。「幼い頃の千尋が川に落ちた時に裸だったから」です。  よく、パンツだけで川遊びする子供がいますよね? あれと同じで、川に落ちた時の千尋は、実は上半身裸だったんですね。
     しかし、水に落ちた何かに向かって手を伸ばしている子供の手は、Tシャツの袖が見えるんですよ。  おかしいですよね? Tシャツを着ている子供が手を伸ばしている。幼い頃、川に落ちた千尋は上半身裸だった。矛盾しています。  じゃあ、これは一体、何を描こうとしているのか?
    ・・・
     前回も話したんですけど、『千と千尋の神隠し』について、宮崎駿はインタビューの中でこう語っています。

    「自分の中でいつか『銀河鉄道の夜』をやらなきゃいけないと思い続けてきた」 「今回でそれに答えられたと思う」 「テーマは、自分が生きているとき、それは誰かが自分を生かしてくれたのだ、という事実があるということ」

     それをちゃんと言いたい。  こんなふうに言ってるんですね。  これはもう、本当に、映画のパンフレットの中でも「誰かが自分を生かしてくれた」ということを言っているんですけど。  ところが、『千と千尋』のアニメのストーリーだけを追っていると、なぜ宮崎駿がそれを何度も強調するのか、よくわからない話になっているんですよ。
     『千と千尋』の研究書はいっぱい出てるんですけど、この『銀河鉄道の夜』について……もちろん、海原電鉄のシーンがオマージュになっていると言ってる人は多いんですけども。もっと、この作品のテーマ的な部分になっていると言っている人は、ほとんど見当たらないんですね。  なぜかと言うと、やっぱりみんな、『千と千尋』をストーリーとか、何よりもセリフから理解しようとしているからなんですよ。  でも、宮崎駿というのは絵で語る作家なんですね。 (パネルを見せる)
    【画像】二つの家 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     例えば、これを見てください。上の絵と下の絵、ほとんど同じ絵に見えます。こう、家が1軒だけ建っている。上の絵では、水の中に建っている。下では丘に建っているんですけど。  上が『千と千尋の神隠し』の海原電鉄のシーンです。下が、アニメ版の『銀河鉄道の夜』の「もうすぐ、みんなが死の世界に行く」というところで出てくる風景なんですけど。  こうやって並べて見たらわかる通り、ほとんど同じ構図で描いているんですよ。これは、やっぱり『銀河鉄道の夜』に対する宮崎駿のリスペクトの1つなんですけど。わざと構図を同じにしているわけですね。
    ・・・
     『銀河鉄道の夜』では、主人公のジョバンニは、ケンタウル祭という夏祭りの夜に、丘の上でボーッとしているんですよ。  すると、ジョバンニは、いつの間にか銀河鉄道に乗っているんですね。そして、なぜか目の前に、親友のカンパネルラが、全身ずぶ濡れで立っています。 (パネルを見せる)
    【画像】カンパネルラ ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     カンパネルラが、肩をハンカチで拭うと、水玉がいっぱい落ちます。  ジョバンニは「なんで濡れているんだろう?」と思うんですけど、喜んで「カンパネルラ、僕達はずっと一緒だね!」と言うんですけど、そこでカンパネルラは寂しく笑うだけなんですよね。
     映画が進行して行くと、3人の人物が乗ってきます。 (パネルを見せる)
    【画像】3人の人物 ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     アニメ版の『銀河鉄道の夜』って、もう、ほとんど全てのキャラクターが猫として描かれているんですけど、唯一例外的に、この3人だけは人間の姿として出てくるので、ちょっとドキドキするんですけど。  ここで3人の人物、弟と姉と家庭教師が出てくるんですよ。この弟、最初から、靴を片方、履いていないので、もう本当にドキッとするんですけど。
    【画像】頭に水のついた弟 ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     靴を履いてない弟と一緒に姉が入って来るんです。この弟の頭には、水玉がいっぱいついているので、お姉さんが優しくそれを拭いてあげるんですね。
     この3人は何かと言うと、タイタニック号に乗っていた人なんですね。彼らが乗った船は氷山にぶつかって、それはもう大変な事故で、みんな水の中に沈んでしまった。  このシーンだけ、やっぱり人間が登場してるから、見てるともう本当にドキドキして、「なんか、この雰囲気、怖いな」と思うんですよ。  そんな自分たちの身に起きた事故のことを、家庭教師が、すごく淡々と、本当に優しい声で淡々と語るんですよね。

    この子たちの手を引きながら、ボートへと並んでいる子供たちをむりやり追い抜きながら考えました。 これは本当にこの子たちの幸せになるんだろうか? 罪を私一人で受けて、この子たちを生かすのが私の務めなんだろうか? そう思いながら、並んでいる子供たちを追い抜いてボートに近づくと、やっと我が子だけをボートに乗せて泣いている母親や、同じようなたくさんの親たちを見ていると、もう、そんなことはどうでもよくなって、沈んでいく船の上でしっかり二人を抱きしめていました。

     こんなふうに、ゆっくりゆっくり語るシーンがあるんですよ。  家庭教師がこの話を語っている時、お姉さんは、弟の濡れている髪を拭いてあげて、どこかから見付けてきた靴を履かせてあげるんですね。  このあたりのお話が『よだかの星』を描いた宮沢賢治の真骨頂なんです。「自己犠牲による、他人のための幸せ」というやつです。  これは、宮崎駿がずっとずっと「描きたい。描かなくてはいけない」と思っていたテーマなんですけど。
     そこで出てくるのが、さっきの『あの日の川で』という詩なわけですね。  「私の靴がゆっくり流れる」「小さな渦に巻かれて消える」「私のために生きてくれた誰か」というこのテーマ。  本当は、これをやろうとしてたんですよね。
     『銀河鉄道の夜』で、家庭教師は「でも、もう大丈夫。南十字まで行けば、苦しいことも全部なくなってしまう」と言って、南十字の駅でこの3人は降ります。 (パネルを見せる)
    【画像】南十字 ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     この南十字の駅というのは、巨大な十字架が地平線の遥か向こうに立っていて、それに向かって参礼者が無限に列をなしているんですね。
    【画像】参列者たち ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     そんな列をなす猫たちに混じって、この3人、家庭教師、お姉さん、弟も、礼拝者のような格好をして、ずっと歩いて行くんです。
     石炭袋の駅を過ぎた後、カンパネルラは「もう僕は一緒に行けないんだ」とジョバンニに言います。そして、そのまま、車の後ろに行って、消えてしまうんですね。  実は、カンパネルラは、川に落ちたクラスメートのザネリという猫を助けて、そのまま溺れて死んでしまっていたわけです。だから、カンパネルラも、家庭教師達この3人も、身体が濡れていたんですね。  友達を助けるために、自分の命を犠牲にしたカンパネルラ。
    ・・・
     『千と千尋』の話に戻りますけども。  何かが落ちた水しぶきに向かって、誰かの手が伸びている。絵コンテには「子供の手」とだけ書いてあるわけですね。  じゃあ、これは千尋の手なのかというと、千尋ではない。千尋はこの時、裸なんです。裸で落ちた千尋を助けるために、誰か子供の手が伸びているわけなんですね。  つまり、裸だった幼い千尋に手を差し伸べて助けたTシャツを着た子供が、どこかにいるはずなんですよ。
     それは誰かと言うと……あの、これが今回の前半の考察の主なところなんですけど。  「どうして私の名前を知ってるの?」と千尋が言った時、ハクは「小さい時から知っている」と言うんです。  なぜ、自分の名前も思い出せないハクが、千尋を小さい時から知っているのかと言うと、ハクは千尋の死んだお兄さんなんですね。
     あの日、千尋は「川で靴を流した」んじゃなく、川に落ちたわけです。  そして、それを助けようとお兄さんが手を引っ張って、代わりに、お兄さんは川に流されて帰って来なかった。  お兄さんは他人のために命を捧げたので、この川で神様になれた。  そういうお話なんです。
     千尋は、この日の出来事を覚えてないんですね。「私、覚えてなくて、お母さんから聞いたんだけど」って言ってるんです。  つまり、「靴を流した」というのは、あくまで千尋が聞いた証言であって、この事件自体を、千尋は全く覚えていないんですね。  母親は、千尋に「お兄さんがいた」とか「千尋のせいで死んだ」ということは伝えてないんです。「子供の頃に川で溺れかけた」ということだけを伝えている。  だから、千尋は覚えてないんですけども。ハクは「そなたの小さい時から知っている。不思議だね。千尋のことを覚えていた」と言うんです。
     釜爺が「愛の力だ」と断言するのは、これが兄妹愛だからなんですね。  ハクは、千尋を傷つけたくないので、たぶん、これを思い出したとしても絶対に言わないし、釜爺も言わない。または、ハク自身も気付いていないのかもわかりません。  セリフの上では「ハクの川は埋もれてしまった」ということになっているんですよ。この「埋もれてしまった」というのも「地中に埋葬されてしまった」という、死を暗示させる言葉ですね。いわゆる、葬式とか死体のメタファーとして「今は埋められてしまって、見えなくなった川」という言い方をしているわけなんですけど。
     しかし、ハクはまだ完全な神様ではないんですよ。千尋にも見えてしまっているから。  本当の神様であれば、夜になって、灯りがついて、油屋に近づかないと見えないはずなんですけど。ハクはまだ完全な神様ではない。  『千と千尋』というのは「そんなハクが最後は完全な神様になる」というお話なんですけど。  これを話すために、まだ無料放送は続きます。無料の最後は「両親の謎」というコーナーをやりたいと思います。
    ハクの正体を考えることで映画全体の辻褄が合う
    【画像】スタジオから
     『千と千尋の神隠し』13の謎、7番目の謎は「両親の謎」です。 (パネルを見せる)
    【画像】千尋と母親 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     これを見てください。千尋が「後ろの建物、唸ってる」と訴えても、お母さんは「風で鳴っているだけでしょ」と言って、千尋の顔を見ずに振り返るだけなんですね。  千尋は手を引っ張ったり話しかけたりしてるのに、お母さんは「気持ちがいいところね。車のサンドイッチ持ってくればよかった」って、お父さんに向かって喋ってるんですよ。
     この辺りのシーン、千尋はずっと母親の注意を引こうとしているんですけど、お母さんは、千尋とは顔を合わせずに会話をしています。  でも、お父さんとは、ちゃんと目を見て会話をしてるんですね。お父さんとの態度に差がありすぎます。  もうね、こんなふうに「千尋のお母さんは変だ」というのは、この映画を見た人はみんな気が付いているんです。 (パネルを見せる)
    【画像】千尋の父と母 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM【画像】千尋の母 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     これは、お母さんが川の岩場を歩いているところ。自分で歩いててもわかるくらい危ないところなんですよ。それで、お父さんに「きゃっ!」と抱きついたりしてるんですけど。  ところが、千尋に対しては「千尋、気をつけなさい」と、振り返って冷たく言うだけなんですね。
     これ、なぜかと言うと、やっぱり、無意識のうちに「長男を死なせた自分の娘につらく当たってしまうから」なんですね。  もちろん、意識はしてないんですよ。お母さんも、意識の上では、ちゃんと娘を大事にしているし、息子が死んだのは娘のせいではないとわかっているんです。  わかってるんだけど、無意識に「千尋の顔を見ない」とか「声の色が冷たい」という、実際の態度に出ちゃうわけですね。
     ハクというのは、千尋の死んだお兄さんで、両親は長男を失ったことを千尋に隠しているわけです。  だから、このお母さんは千尋に冷たいんです。
    ・・・
     というわけで、これでようやっと、この映画全体の辻褄が合うんですね。  なぜ、「このお母さんは娘に冷たい」ということを、画面上でハッキリ見せながら、その理由を語らないのか?  なぜ、ハクは「昔から千尋を知っている」と言いながら、その理由を言わないのか?
     もし、ハクが、本人が言ったように川の神様だったら、初登場のシーンから、彼の姿が千尋に見えているはずがないんですよ。  この世界での神様というのは、人間の目には見えない存在であって、夜になって暗くなって、盛り場みたいなところに来てから実体化するんです。  つまり、ハクは神様ではないんですね。「コハク川の主だ」というのも、今はまだ、それになりかけている状態なんです。  後半の限定放送の方で、この「『千と千尋』の中における神様というのは何なのか?」というのは、ちゃんと定義していきますけども。
     ところが、ハクは千尋のために死んだんですけど、千尋はハクのために帰り道のない電車に乗って謝りに行ったんです。  そして「帰り道のない電車に乗る」というのは「ハクのために帰れない死の世界に行った」ということなんですよ。  ここでようやっと「私は誰かのおかげで生きている。私も誰かのために生きよう」というテーマが完結するわけですね。  千尋がハクのために自分の死を覚悟して「帰り道がないんだぞ?」と言われている電車に乗って、三途の川みたいなものを延々と走って行くシーンは、もう、これは誰が見てもわかるとおり、死の世界に行ってるわけですね。  つまり、ようやっとここで「かつて自分は誰かに命を救われて生きている。そのことを、自分は気づきもしていなかった。ならば今、私も誰かのために命を懸けよう」ということで、テーマが一巡するんです。  だけど、この一巡するテーマという肝心なところを、セリフで言わずに、久石譲の感動的な音楽で持って行くもんだから、それがわりとわからない構造になっているんですね。
    ・・・
     『銀河鉄道の夜』の中で、主人公のジョバンニは、最初、幽霊のように生きているんですよ。学校の授業もぼんやり聞いてる。  それはなぜかと言うと、どうも、お父さんの乗っている船が……ラッコの密猟船なんですけど。お父さんは漁師なんですけど、そのラッコの密猟船がどうも事故に遭ったらしいんです。  「お父さんは死んでるかもしれない」ということで、ジョバンニは心配で心配で、ずーっと学校でぼんやりしている。生きてるか死んでいるかわからないような状態になっていた、と。  しかし、カンパネルラ達と銀河鉄道に乗って、そこで他人のために死ぬカンパネルラ、他人のため他の子供達のために、あえて人を掻き分けてまで生きようとしなかったタイタニック号の乗員の話とかを聞いて、ようやっとジョバンニは生きる意思を取り戻すわけですね。  物語のラストで、ジョバンニは、カンパネルラのお父さんから「カンパネルラは、たぶん、もう助からない」と冷静に告げられるんですけど。それと同時に「君のお父さんに会ったよ。もうすぐ帰ってくる」と言ってくれるんですね。  たぶん、「ジョバンニのお父さんが、船の事故に遭ったのに生きて帰ってこられた」ということは「誰かのおかげで生きる事が出来た」ということなんですね。  その結果、ジョバンニは「誰かのために生きる」ということがわかって、生き生きとした少年、明るい少年として復活する。  これが『銀河鉄道の夜』の全体のお話になっているんですけど。
     これ、『千と千尋』も同じなんですよ。  『千と千尋』でも、冒頭のシーンでの千尋は、ぼーっと生きていて、生きているのか死んでいるのかわからない、食欲もないような欲望がない状態。カオナシのような状態なんですよ。  そのカオナシのような、欲望のない、何をしたいのかもわからない状態から、人間になる話なんですね。
     そもそも、千尋たちの一家3人が不思議な世界に引き込まれていったのは「3人とも生きているとはいえない状態だったから」なんですね。  お母さんは、死んだ長男のために娘と向かい合えない。たぶん、お父さんが引っ越しを始めた理由というのも、そんなお母さんのための気分転換みたいなものなんですね。  だって、仕事の都合とか、全く言わないんですよ。劇中で彼らが引っ越す理由が全く語られない。少なくとも、千尋が理由ではないんです。じゃあ、お父さんが引っ越す理由というのは、たぶん、「お母さんがずっと塞いだ状態だから」ということで、気分転換しようとしている、と。  だけど、それによって千尋は、なかよしの友達と引き裂かれて、まあ、絶望している。  果たして、この3人は、この映画が終わった後、どう生きるのかと言うと。これは、後半の最後で語ろうと思っているんですけど。実は宮崎駿は、この家族に大ハッピーエンドを用意しているんですよ。  でも、この大ハッピーエンドというのが、やっぱり、わりとわからない構造なんです。
     『千と千尋の神隠し』というのは、宮崎駿が宮崎駿のために作った映画であり、宮崎駿は登場人物を心から愛しているので、全員がちゃんと幸せになるような大ハッピーエンドを用意しているんですけども。  それについては、ちょっと後半で語ります。
    参考文献
    スタジオジブリ責任編集『The art of spirited away―千と千尋の神隠し』ジブリ・ジ・アート・シリーズ、スタジオジブリ、2001年
    『ロマンアルバム 千と千尋の神隠し』徳間書店、2001年
    『「千と千尋の神隠し」千尋の大冒険』別冊COMIC BOX vol.6、ふゅーじょんぷろだくと、2001年
    宮崎駿『スタジオジブリ絵コンテ全集13 千と千尋の神隠し』スタジオジブリ、2001年
    宮崎駿『風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡』ロッキング・オン、2002年
    宮崎駿『続・風の帰る場所 映画監督・宮崎駿はいかに始まり、いかに幕を引いたのか』ロッキング・オン、2013年
    宮崎駿『出発点 1979~1996』スタジオジブリ、1996年
    宮崎駿『折り返し点 1997~2008』岩波書店、2008年
    鈴木敏夫『風に吹かれて』中央公論新社、2013年
    押井守『誰も語らなかったジブリを語ろう』東京ニュース通信社、2017年
    叶精二『宮崎駿全書』フィルムアート社、2006年
    宮沢賢治『新編 銀河鉄道の夜』(新潮文庫)新潮社、平成24年
    柏葉幸子『霧のむこうのふしぎな町(新装版)』講談社、2004年
    『ジブリの教科書11 ホーホケキョとなりの山田くん』(文春ジブリ文庫)文藝春秋、2015年
    『ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し』(文春ジブリ文庫)文藝春秋、2016年
    『ジブリの教科書19 かぐや姫の物語』(文春ジブリ文庫)文藝春秋、2018年
    『宮崎駿「千と千尋の神隠し」の世界 ファンタジーの力』ユリイカ8月臨時増刊号、青土社、2001年
    ニュータイプ編『千尋と不思議の町 千と千尋の神隠し徹底攻略ガイド』角川書店、2001年
    『『千と千尋の神隠し』を読む40の目』キネ旬ムック、キネマ旬報社、2001年
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    2019/11/10 #307 「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]」
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    岡田斗司夫ゼミ#306:『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[前編]
    岡田斗司夫ゼミ#307:『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「母親はなぜ千尋に冷たいの?『千と千尋の神隠し』ウラ読み解説」

    2019-11-29 07:00  
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    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/11/29
     今日は、2019/11/10配信の岡田斗司夫ゼミ「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]」からハイライトをお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜7時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜7時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
     『千と千尋の神隠し』13の謎、7番目の謎は「両親の謎」です。 (パネルを見せる)
    【画像】千尋と母親 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     これを見てください。千尋が「後ろの建物、唸ってる」と訴えても、お母さんは「風で鳴っているだけでしょ」と言って、千尋の顔を見ずに振り返るだけなんですね。  千尋は手を引っ張ったり話しかけたりしてるのに、お母さんは「気持ちがいいところね。車のサンドイッチ持ってくればよかった」って、お父さんに向かって喋ってるんですよ。
     この辺りのシーン、千尋はずっと母親の注意を引こうとしているんですけど、お母さんは、千尋とは顔を合わせずに会話をしています。  でも、お父さんとは、ちゃんと目を見て会話をしてるんですね。お父さんとの態度に差がありすぎます。  もうね、こんなふうに「千尋のお母さんは変だ」というのは、この映画を見た人はみんな気が付いているんです。 (パネルを見せる)
    【画像】千尋の父と母 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM【画像】千尋の母 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     これは、お母さんが川の岩場を歩いているところ。自分で歩いててもわかるくらい危ないところなんですよ。それで、お父さんに「きゃっ!」と抱きついたりしてるんですけど。  ところが、千尋に対しては「千尋、気をつけなさい」と、振り返って冷たく言うだけなんですね。
     これ、なぜかと言うと、やっぱり、無意識のうちに「長男を死なせた自分の娘につらく当たってしまうから」なんですね。  もちろん、意識はしてないんですよ。お母さんも、意識の上では、ちゃんと娘を大事にしているし、息子が死んだのは娘のせいではないとわかっているんです。  わかってるんだけど、無意識に「千尋の顔を見ない」とか「声の色が冷たい」という、実際の態度に出ちゃうわけですね。
     ハクというのは、千尋の死んだお兄さんで、両親は長男を失ったことを千尋に隠しているわけです。  だから、このお母さんは千尋に冷たいんです。
    ・・・
     というわけで、これでようやっと、この映画全体の辻褄が合うんですね。  なぜ、「このお母さんは娘に冷たい」ということを、画面上でハッキリ見せながら、その理由を語らないのか?  なぜ、ハクは「昔から千尋を知っている」と言いながら、その理由を言わないのか?
     もし、ハクが、本人が言ったように川の神様だったら、初登場のシーンから、彼の姿が千尋に見えているはずがないんですよ。  この世界での神様というのは、人間の目には見えない存在であって、夜になって暗くなって、盛り場みたいなところに来てから実体化するんです。  つまり、ハクは神様ではないんですね。「コハク川の主だ」というのも、今はまだ、それになりかけている状態なんです。  後半の限定放送の方で、この「『千と千尋』の中における神様というのは何なのか?」というのは、ちゃんと定義していきますけども。
     ところが、ハクは千尋のために死んだんですけど、千尋はハクのために帰り道のない電車に乗って謝りに行ったんです。  そして「帰り道のない電車に乗る」というのは「ハクのために帰れない死の世界に行った」ということなんですよ。  ここでようやっと「私は誰かのおかげで生きている。私も誰かのために生きよう」というテーマが完結するわけですね。  千尋がハクのために自分の死を覚悟して「帰り道がないんだぞ?」と言われている電車に乗って、三途の川みたいなものを延々と走って行くシーンは、もう、これは誰が見てもわかるとおり、死の世界に行ってるわけですね。  つまり、ようやっとここで「かつて自分は誰かに命を救われて生きている。そのことを、自分は気づきもしていなかった。ならば今、私も誰かのために命を懸けよう」ということで、テーマが一巡するんです。  だけど、この一巡するテーマという肝心なところを、セリフで言わずに、久石譲の感動的な音楽で持って行くもんだから、それがわりとわからない構造になっているんですね。
    ・・・
     『銀河鉄道の夜』の中で、主人公のジョバンニは、最初、幽霊のように生きているんですよ。学校の授業もぼんやり聞いてる。  それはなぜかと言うと、どうも、お父さんの乗っている船が……ラッコの密猟船なんですけど。お父さんは漁師なんですけど、そのラッコの密猟船がどうも事故に遭ったらしいんです。  「お父さんは死んでるかもしれない」ということで、ジョバンニは心配で心配で、ずーっと学校でぼんやりしている。生きてるか死んでいるかわからないような状態になっていた、と。  しかし、カンパネルラ達と銀河鉄道に乗って、そこで他人のために死ぬカンパネルラ、他人のため他の子供達のために、あえて人を掻き分けてまで生きようとしなかったタイタニック号の乗員の話とかを聞いて、ようやっとジョバンニは生きる意思を取り戻すわけですね。  物語のラストで、ジョバンニは、カンパネルラのお父さんから「カンパネルラは、たぶん、もう助からない」と冷静に告げられるんですけど。それと同時に「君のお父さんに会ったよ。もうすぐ帰ってくる」と言ってくれるんですね。  たぶん、「ジョバンニのお父さんが、船の事故に遭ったのに生きて帰ってこられた」ということは「誰かのおかげで生きる事が出来た」ということなんですね。  その結果、ジョバンニは「誰かのために生きる」ということがわかって、生き生きとした少年、明るい少年として復活する。  これが『銀河鉄道の夜』の全体のお話になっているんですけど。
     これ、『千と千尋』も同じなんですよ。  『千と千尋』でも、冒頭のシーンでの千尋は、ぼーっと生きていて、生きているのか死んでいるのかわからない、食欲もないような欲望がない状態。カオナシのような状態なんですよ。  そのカオナシのような、欲望のない、何をしたいのかもわからない状態から、人間になる話なんですね。
     そもそも、千尋たちの一家3人が不思議な世界に引き込まれていったのは「3人とも生きているとはいえない状態だったから」なんですね。  お母さんは、死んだ長男のために娘と向かい合えない。たぶん、お父さんが引っ越しを始めた理由というのも、そんなお母さんのための気分転換みたいなものなんですね。  だって、仕事の都合とか、全く言わないんですよ。劇中で彼らが引っ越す理由が全く語られない。少なくとも、千尋が理由ではないんです。じゃあ、お父さんが引っ越す理由というのは、たぶん、「お母さんがずっと塞いだ状態だから」ということで、気分転換しようとしている、と。  だけど、それによって千尋は、なかよしの友達と引き裂かれて、まあ、絶望している。  果たして、この3人は、この映画が終わった後、どう生きるのかと言うと。これは、後半の最後で語ろうと思っているんですけど。実は宮崎駿は、この家族に大ハッピーエンドを用意しているんですよ。  でも、この大ハッピーエンドというのが、やっぱり、わりとわからない構造なんです。
     『千と千尋の神隠し』というのは、宮崎駿が宮崎駿のために作った映画であり、宮崎駿は登場人物を心から愛しているので、全員がちゃんと幸せになるような大ハッピーエンドを用意しているんですけども。  それについては、ちょっと後半で語ります。
    参考文献
    スタジオジブリ責任編集『The art of spirited away―千と千尋の神隠し』ジブリ・ジ・アート・シリーズ、スタジオジブリ、2001年
    『ロマンアルバム 千と千尋の神隠し』徳間書店、2001年
    『「千と千尋の神隠し」千尋の大冒険』別冊COMIC BOX vol.6、ふゅーじょんぷろだくと、2001年
    宮崎駿『スタジオジブリ絵コンテ全集13 千と千尋の神隠し』スタジオジブリ、2001年
    宮崎駿『風の帰る場所 ナウシカから千尋までの軌跡』ロッキング・オン、2002年
    宮崎駿『続・風の帰る場所 映画監督・宮崎駿はいかに始まり、いかに幕を引いたのか』ロッキング・オン、2013年
    宮崎駿『出発点 1979~1996』スタジオジブリ、1996年
    宮崎駿『折り返し点 1997~2008』岩波書店、2008年
    鈴木敏夫『風に吹かれて』中央公論新社、2013年
    押井守『誰も語らなかったジブリを語ろう』東京ニュース通信社、2017年
    叶精二『宮崎駿全書』フィルムアート社、2006年
    宮沢賢治『新編 銀河鉄道の夜』(新潮文庫)新潮社、平成24年
    柏葉幸子『霧のむこうのふしぎな町(新装版)』講談社、2004年
    『ジブリの教科書11 ホーホケキョとなりの山田くん』(文春ジブリ文庫)文藝春秋、2015年
    『ジブリの教科書12 千と千尋の神隠し』(文春ジブリ文庫)文藝春秋、2016年
    『ジブリの教科書19 かぐや姫の物語』(文春ジブリ文庫)文藝春秋、2018年
    『宮崎駿「千と千尋の神隠し」の世界 ファンタジーの力』ユリイカ8月臨時増刊号、青土社、2001年
    ニュータイプ編『千尋と不思議の町 千と千尋の神隠し徹底攻略ガイド』角川書店、2001年
    『『千と千尋の神隠し』を読む40の目』キネ旬ムック、キネマ旬報社、2001年
    記事全文は、アーカイブサイトでお読みいただけます。
    2019/11/10 #307 「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]」
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    ガンダム完全講義32:第12話「ジオンの脅威」解説Part5
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「ハクの正体は●●!感動と怖さの両立『千と千尋の神隠し』完全解説」

    2019-11-28 07:00  
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    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/11/28
     今日は、2019/11/10配信の岡田斗司夫ゼミ「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]」からハイライトをお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜7時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜7時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
     『千と千尋の神隠し』13の謎、6番目の謎は「ハクの謎」です。 (パネルを見せる)
    【画像】ハクを抱きしめる千尋 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     はい、これは「血まみれになって帰って来たハクを抱きしめる千尋」なんですけども。
     そもそも、ハクというのはどういう存在としてデザインされているのか? テーマ的なものではなく、お話の中の構造として、どんなふうにデザインされているのかというと女の子から見た不良少年なんですね。  強い大人に命じられて、純粋な少年が外の世界で悪いことをして、そして血まみれになって帰って来る。「そんな人なんだけども、周りから怖がられている人なんだけども、私だけには優しいんだ」っていう、少女マンガにおけるヒーロー、彼氏設定ですね。  俺、昭和の時代、『ホットロード』という少女マンガを読んだことあるんだけど、まあ、あんな感じなんですよ。『バナナフィッシュ』とかもそうなんでしょうね。
    【画像】ハク © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     このハクが、千尋に「私はずっとお前を見ていた」と言うシーンがあります。  「どうして私の名前を知っているの?」と千尋が聞くと、「そなたの小さい時から知っている」と答えます。  これ、さっきの、千尋におにぎりを渡すシーンなんですけど。ここでは、ハクは自分の名前を思い出せないんですね。やっぱり名前を奪われているから。  そんなハクが、自分の名前も思い出せないのに「でも、不思議だね。千尋のことは覚えていた」と言うんですよ。  これね、ここから先のストーリー展開を全てセリフ通りに考えると、「ハクというのはコハク川という川の守り主の神様で、千尋が小さい時に溺れかけたのを助けてあげた」ということになるんですけど。  でも、なんで、そんな事件だけで「そなたの小さい時から知っている」ことになるのか? 「自分の名前も忘れたのに、お前のことだけは覚えていた」というセリフは、辻褄があわないんですよ。
     他にも、倒れたハクを千尋が心配する様子を見て、釜爺は「愛だね。愛じゃ」と言うんです。  これも、それまでの宮崎アニメの文法とは違いすぎるんですね。仮に、こんなふうに、主人公同士が思い合っている恋愛感情みたいなものがあったとしても、「それは愛だ」というふうに、あまりハッキリと言い切らないんですね。  では、なぜ、そんなにハッキリと言い切ったのか?
     あとは、謎の歌詞という問題もあって。  宮崎駿が『千と千尋の神隠し』を作った時に、音楽を担当した久石譲に送ったイメージ歌詞というのがあります。 (パネルを見せる)
    【画像】イメージ歌詞
     『あの日の川で』という詩なんですけど。全文読むとこんな感じになります。

    『あの日の川で』
    陽のさす裏庭から 忘れていた木戸を抜け 生け垣が影落とす道を行く 向こうから走ってくる幼い子は わたし ずぶぬれで泣きながらすれ違う 砂場の足跡をたどって もっと先へ いまは 埋もれてしまった川まで
    ゴミの間の水草がゆれている あの小さな川で 私はあなたに出会った 私のクツがゆっくり流れていく 小さな渦にまかれて消える 心をおおうチリが晴れる 目を隠すくもりが消える 手は空気に触れ 足は地面のはずみを受けとめる
    誰かのために生きている私 私のために生きてくれた誰か
    私は あの日 川に行ったのだ 私は あなたの 川へ行ったのだ

     こんな歌詞なんですね。  「ずぶ濡れになって帰ってくる」「私の靴がゆっくり流れていく」「私のために生きてくれた誰か」みたいに、なんか、物言いいたげな、不思議な歌詞。  結局、この本編には採用されなかったんですけども。
    ・・・
     さらに不思議なのが「千尋が過去を思い出す」というシーンなんですね。  もう本当に物語のラスト、龍の姿になったハクの上に乗って一緒に飛ぶシーンなんですけど。銭婆に会いに行って、ハクを許してもらって、ハクの化身である白い龍に乗って空を飛んでいるシーン。ドラマの中で一番盛り上がるところです。  ここで千尋は突然、思い出すんですよ。 (パネルを見せる)
    【画像】水に伸ばす手 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     こんなふうに「水の中に手が伸びていく」というシーンなんですけど。  しかし、これ「靴が川に落ちて拾おうとした」にしては、水しぶきのサイズが大き過ぎるんですよね。  「じゃあ、千尋が落ちた時の水しぶきなのか?」というと、手が伸びる前から水しぶきが立っている。  何か大きなものが落ちた時の水しぶきに向かって手が伸びているように見えるんです。
     これをハッキリさせるために、このシーンの絵コンテを見てみましょう。 (パネルを見せる)
    【画像】手の絵コンテ
     絵コンテを見ると、実際の画面に映し出されているものと同じことが描いてあるんですけど。  ここで注目すべきは、コンテに描かれた説明文。ここには「サーッと伸びていく子供の手」と書いてあるんですよね。
     なぜ「子供の手」と書いているのかと言うと、「千尋の手」と書かないためなんですよ。  つまり、「手を伸ばしているのは千尋じゃないから」なんですね。  そして「それは誰か?」ということを明かしたくないからです。  「誰かの手が伸びていって、そして、水の中に落ちた者を助けようとしている」という状況を描こうとしているわけです。
     続いて、千尋がその時の記憶を思い出すシーンです。 (パネルを見せる)
    【画像】水中の千尋 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     ここで、千尋の肩のところを見てください。顔と肩の色が同じです。つまり、これ、裸なんですね。  では、なぜ、記憶の中での千尋が裸だったのかと言うと。「幼い頃の千尋が川に落ちた時に裸だったから」です。  よく、パンツだけで川遊びする子供がいますよね? あれと同じで、川に落ちた時の千尋は、実は上半身裸だったんですね。
     しかし、水に落ちた何かに向かって手を伸ばしている子供の手は、Tシャツの袖が見えるんですよ。  おかしいですよね? Tシャツを着ている子供が手を伸ばしている。幼い頃、川に落ちた千尋は上半身裸だった。矛盾しています。  じゃあ、これは一体、何を描こうとしているのか?
    ・・・
     前回も話したんですけど、『千と千尋の神隠し』について、宮崎駿はインタビューの中でこう語っています。

    「自分の中でいつか『銀河鉄道の夜』をやらなきゃいけないと思い続けてきた」 「今回でそれに答えられたと思う」 「テーマは、自分が生きているとき、それは誰かが自分を生かしてくれたのだ、という事実があるということ」

     それをちゃんと言いたい。  こんなふうに言ってるんですね。  これはもう、本当に、映画のパンフレットの中でも「誰かが自分を生かしてくれた」ということを言っているんですけど。  ところが、『千と千尋』のアニメのストーリーだけを追っていると、なぜ宮崎駿がそれを何度も強調するのか、よくわからない話になっているんですよ。
     『千と千尋』の研究書はいっぱい出てるんですけど、この『銀河鉄道の夜』について……もちろん、海原電鉄のシーンがオマージュになっていると言ってる人は多いんですけども。もっと、この作品のテーマ的な部分になっていると言っている人は、ほとんど見当たらないんですね。  なぜかと言うと、やっぱりみんな、『千と千尋』をストーリーとか、何よりもセリフから理解しようとしているからなんですよ。  でも、宮崎駿というのは絵で語る作家なんですね。 (パネルを見せる)
    【画像】二つの家 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     例えば、これを見てください。上の絵と下の絵、ほとんど同じ絵に見えます。こう、家が1軒だけ建っている。上の絵では、水の中に建っている。下では丘に建っているんですけど。  上が『千と千尋の神隠し』の海原電鉄のシーンです。下が、アニメ版の『銀河鉄道の夜』の「もうすぐ、みんなが死の世界に行く」というところで出てくる風景なんですけど。  こうやって並べて見たらわかる通り、ほとんど同じ構図で描いているんですよ。これは、やっぱり『銀河鉄道の夜』に対する宮崎駿のリスペクトの1つなんですけど。わざと構図を同じにしているわけですね。
    ・・・
     『銀河鉄道の夜』では、主人公のジョバンニは、ケンタウル祭という夏祭りの夜に、丘の上でボーッとしているんですよ。  すると、ジョバンニは、いつの間にか銀河鉄道に乗っているんですね。そして、なぜか目の前に、親友のカンパネルラが、全身ずぶ濡れで立っています。 (パネルを見せる)
    【画像】カンパネルラ ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     カンパネルラが、肩をハンカチで拭うと、水玉がいっぱい落ちます。  ジョバンニは「なんで濡れているんだろう?」と思うんですけど、喜んで「カンパネルラ、僕達はずっと一緒だね!」と言うんですけど、そこでカンパネルラは寂しく笑うだけなんですよね。
     映画が進行して行くと、3人の人物が乗ってきます。 (パネルを見せる)
    【画像】3人の人物 ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     アニメ版の『銀河鉄道の夜』って、もう、ほとんど全てのキャラクターが猫として描かれているんですけど、唯一例外的に、この3人だけは人間の姿として出てくるので、ちょっとドキドキするんですけど。  ここで3人の人物、弟と姉と家庭教師が出てくるんですよ。この弟、最初から、靴を片方、履いていないので、もう本当にドキッとするんですけど。
    【画像】頭に水のついた弟 ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     靴を履いてない弟と一緒に姉が入って来るんです。この弟の頭には、水玉がいっぱいついているので、お姉さんが優しくそれを拭いてあげるんですね。
     この3人は何かと言うと、タイタニック号に乗っていた人なんですね。彼らが乗った船は氷山にぶつかって、それはもう大変な事故で、みんな水の中に沈んでしまった。  このシーンだけ、やっぱり人間が登場してるから、見てるともう本当にドキドキして、「なんか、この雰囲気、怖いな」と思うんですよ。  そんな自分たちの身に起きた事故のことを、家庭教師が、すごく淡々と、本当に優しい声で淡々と語るんですよね。

    この子たちの手を引きながら、ボートへと並んでいる子供たちをむりやり追い抜きながら考えました。 これは本当にこの子たちの幸せになるんだろうか? 罪を私一人で受けて、この子たちを生かすのが私の務めなんだろうか? そう思いながら、並んでいる子供たちを追い抜いてボートに近づくと、やっと我が子だけをボートに乗せて泣いている母親や、同じようなたくさんの親たちを見ていると、もう、そんなことはどうでもよくなって、沈んでいく船の上でしっかり二人を抱きしめていました。

     こんなふうに、ゆっくりゆっくり語るシーンがあるんですよ。  家庭教師がこの話を語っている時、お姉さんは、弟の濡れている髪を拭いてあげて、どこかから見付けてきた靴を履かせてあげるんですね。  このあたりのお話が『よだかの星』を描いた宮沢賢治の真骨頂なんです。「自己犠牲による、他人のための幸せ」というやつです。  これは、宮崎駿がずっとずっと「描きたい。描かなくてはいけない」と思っていたテーマなんですけど。
     そこで出てくるのが、さっきの『あの日の川で』という詩なわけですね。  「私の靴がゆっくり流れる」「小さな渦に巻かれて消える」「私のために生きてくれた誰か」というこのテーマ。  本当は、これをやろうとしてたんですよね。
     『銀河鉄道の夜』で、家庭教師は「でも、もう大丈夫。南十字まで行けば、苦しいことも全部なくなってしまう」と言って、南十字の駅でこの3人は降ります。 (パネルを見せる)
    【画像】南十字 ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     この南十字の駅というのは、巨大な十字架が地平線の遥か向こうに立っていて、それに向かって参礼者が無限に列をなしているんですね。
    【画像】参列者たち ©朝日新聞社/テレビ朝日/KADOKAWA/アスミック・エース
     そんな列をなす猫たちに混じって、この3人、家庭教師、お姉さん、弟も、礼拝者のような格好をして、ずっと歩いて行くんです。
     石炭袋の駅を過ぎた後、カンパネルラは「もう僕は一緒に行けないんだ」とジョバンニに言います。そして、そのまま、車の後ろに行って、消えてしまうんですね。  実は、カンパネルラは、川に落ちたクラスメートのザネリという猫を助けて、そのまま溺れて死んでしまっていたわけです。だから、カンパネルラも、家庭教師達この3人も、身体が濡れていたんですね。  友達を助けるために、自分の命を犠牲にしたカンパネルラ。
    ・・・
     『千と千尋』の話に戻りますけども。  何かが落ちた水しぶきに向かって、誰かの手が伸びている。絵コンテには「子供の手」とだけ書いてあるわけですね。  じゃあ、これは千尋の手なのかというと、千尋ではない。千尋はこの時、裸なんです。裸で落ちた千尋を助けるために、誰か子供の手が伸びているわけなんですね。  つまり、裸だった幼い千尋に手を差し伸べて助けたTシャツを着た子供が、どこかにいるはずなんですよ。
     それは誰かと言うと……あの、これが今回の前半の考察の主なところなんですけど。  「どうして私の名前を知ってるの?」と千尋が言った時、ハクは「小さい時から知っている」と言うんです。  なぜ、自分の名前も思い出せないハクが、千尋を小さい時から知っているのかと言うと、ハクは千尋の死んだお兄さんなんですね。
     あの日、千尋は「川で靴を流した」んじゃなく、川に落ちたわけです。  そして、それを助けようとお兄さんが手を引っ張って、代わりに、お兄さんは川に流されて帰って来なかった。  お兄さんは他人のために命を捧げたので、この川で神様になれた。  そういうお話なんです。
     千尋は、この日の出来事を覚えてないんですね。「私、覚えてなくて、お母さんから聞いたんだけど」って言ってるんです。  つまり、「靴を流した」というのは、あくまで千尋が聞いた証言であって、この事件自体を、千尋は全く覚えていないんですね。  母親は、千尋に「お兄さんがいた」とか「千尋のせいで死んだ」ということは伝えてないんです。「子供の頃に川で溺れかけた」ということだけを伝えている。  だから、千尋は覚えてないんですけども。ハクは「そなたの小さい時から知っている。不思議だね。千尋のことを覚えていた」と言うんです。
     釜爺が「愛の力だ」と断言するのは、これが兄妹愛だからなんですね。  ハクは、千尋を傷つけたくないので、たぶん、これを思い出したとしても絶対に言わないし、釜爺も言わない。または、ハク自身も気付いていないのかもわかりません。  セリフの上では「ハクの川は埋もれてしまった」ということになっているんですよ。この「埋もれてしまった」というのも「地中に埋葬されてしまった」という、死を暗示させる言葉ですね。いわゆる、葬式とか死体のメタファーとして「今は埋められてしまって、見えなくなった川」という言い方をしているわけなんですけど。
     しかし、ハクはまだ完全な神様ではないんですよ。千尋にも見えてしまっているから。  本当の神様であれば、夜になって、灯りがついて、油屋に近づかないと見えないはずなんですけど。ハクはまだ完全な神様ではない。  『千と千尋』というのは「そんなハクが最後は完全な神様になる」というお話なんですけど。  これを話すために、まだ無料放送は続きます。無料の最後は「両親の謎」というコーナーをやりたいと思います。
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    2019/11/10 #307 「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]」
    ゼミ、マンガ・アニメ夜話 電子書籍販売中!
    AmazonのKindleストアで、岡田斗司夫ゼミ、岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話の電子書籍を販売中です(「岡田斗司夫アーカイブ」でもご覧いただけます)。
    ジブリ特集
    岡田斗司夫ゼミ#212:『天空の城ラピュタ』完全解説① 〜超科学とエロス
    岡田斗司夫ゼミ#213:『天空の城ラピュタ』完全解説② 〜幻の産業革命が起こった世界
    岡田斗司夫ゼミ#297:『天空の城ラピュタ』完全解説③ 〜スラッグ渓谷とポムじいの秘密
    岡田斗司夫ゼミ#296:『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病
    岡田斗司夫ゼミ#298:『崖の上のポニョ』はどうやって生まれたか 〜空想で現実を書き換える
    岡田斗司夫ゼミ#306:『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[前編]
    岡田斗司夫ゼミ#307:『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]
    月着陸50周年特集
    岡田斗司夫ゼミ#269:恐怖と贖罪のホラー映画『ファースト・マン』完全解説
    岡田斗司夫ゼミ#258:アポロ計画と4人の大統領
    岡田斗司夫ゼミ#250:白い悪魔“フォン・ブラウン” 対 赤い彗星“コロリョフ” 未来をかけた宇宙開発戦争の裏側
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    岡田斗司夫ゼミ#292:アポロ宇宙船(後編)〜月着陸と月面歩行
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    ガンダム完全講義32:第12話「ジオンの脅威」解説Part5
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ【緊急速報】『On Your Mark』特集前に、ぜひ予習を!

    2019-11-27 07:30  
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    岡田斗司夫ゼミ会員の皆様にだけ、一足先にご案内です!

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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『千と千尋の神隠し』は、宮崎駿による宮崎駿のための「私小説」」

    2019-11-27 07:00  
    9999999pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/11/27
     今日は、2019/11/10配信の岡田斗司夫ゼミ「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]」からハイライトをお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜7時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜7時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
     「『千と千尋』は風俗産業を描こうとしている」とか「キャバクラがモデルになっている」という説が生まれたきっかけは、そもそも、鈴木敏夫さんのインタビューなんですね。  「宮崎駿にキャバ嬢の話をした」と。  実はキャバ嬢というのは、もともとコミュ症、つまり、他人と上手く話せない人が多い。ところが、面白いもんで、他人と全く話せない女の子が、キャバクラでキャバ嬢をやると、数週間くらいでお客さんと話せるようになる。  そんな話をしたら、宮崎駿はすごく感心して「俺らのジブリも似たようなもんだね」と。地方から出てきた、もう絵しか描けないとか、アニメにしか興味がないというようなやつらが集まって、一緒に物を作っていくうちに、段々と他人と話が出来るようになってくる、と。  いや、これだけだったんですよ。宮崎駿が「そうだよね」と言ったのって、この部分だけだったんですけど。
     しかし、「現代の日本はまるでキャバクラ、風俗だ、というメッセージを込めた」と言えば、マスコミは取り上げるわけですね。「今回のジブリ作品は、それをテーマにしている」と言ったら、すごい評判になるわけですよ。  鈴木敏夫のこういった宣伝文句は『ゲド戦記』の時にも前科のある、週刊誌的な手法なんですけど。  昔は僕もこれを信じたわけなんですよ。本当に、1年くらい前までかな? 前回も言ったんですけど、『千と千尋の神隠し』というのを、すごい作品だとは思うんですけど、僕はあまり好きな作品ではないので。僕もこれにコロッと騙されて「いやいや、『千と千尋』のテーマは、やっぱり風俗を描くことでしょう?」というふうに思ってたんです。もう本当に、恥ずかしいんですけども。
     こういう鈴木敏夫さんの宣伝手法というのは、本質をわかりやすくキャッチーに歪めちゃうところがあるんですよ。  例えば、『かぐや姫の物語』では、高畑勲からは「絶対に書くな!」と言われていたのに、作品のテーマを「かぐや姫の罪と罰」というふうに宣伝してしまって、もう大喧嘩したんですね。そして、それっきり、高畑勲は『かぐや姫』の宣伝に関して、全く口を出さなくなったということがありました。  あとは『もののけ姫』というのも、宮崎駿は『アシタカせっ記』という、アシタカを主人公とした話として作ってたのに、鈴木敏夫が『もののけ姫』というタイトルで先に記者会見をしてしまったので、そうなってしまい、作品のストーリー自体が誤解されるきっかけにもなりました。  さっきも言った『ゲド戦記』では、マスコミに「宮崎駿と宮崎吾朗の親子は仲が悪い」という話が報道されたので、それを逆手にとって、わざと「『ゲド戦記』は父殺しの物語で、宮崎吾朗が宮崎駿を否定するための作品だ」みたいなことをいっぱい言って、それで注目を集めようとしたわけですね。  もう本当に、週刊誌的な作り方なんですよ。
     しかし、宮崎駿というのは「自分が知らないものを作らない人」なんですね。  宮崎駿自身は「『千と千尋』はジブリを描くのが目的だ」と、はっきり言っているんですよ。  それはふゅーじょんぷろだくと社が出版した『千尋の大冒険』という、割とマイナーな本なんですけど、この中でいっぱい言ってるんですよ。 (本を見せる 『「千と千尋の神隠し」千尋の大冒険』別冊COMIC BOX vol.6、ふゅーじょんぷろだくと、2001年)
    【画像】『千尋の大冒険』表紙
     なぜかと言うと、この本、唯一鈴木敏夫の検閲が入らない本なんですね。
     『千と千尋』の研究本とか解説本って、いろんな出版社から出てるんですよ。まあ、図版を使わなければ、どんな出版社からでも出せるんですけど、図版をいっぱい使っている、いわゆる公式本の類というのは、講談社とか、角川とか、文藝春秋とか、そういう一流の出版社からしか、鈴木さんはオーケーをしないんです。  ところが、このふゅーじょんぷろだくと社というのは、全く一流の出版社ではないんです。  この『千尋の大冒険』という本は、ただ単に「社長が左翼で、宮崎駿と仲が良かった」というだけの理由で出せた、奇跡のような本なんですね。  なので、この本の中には「当時のジブリの批判」とか「スタッフが宮崎駿の悪口を言ってること」とか「本当はこんなことやりたかったんだ」というのが山のように載っているんです。  だけど、ジブリ美術館でも、これは売ってないんですよね。それは、ジブリ公認ではない。鈴木敏夫公認ではないからなんですけども。
     このふゅーじょんぷろだくと社の本の中には、例えば「なぜ、油屋で働く男たちがカエルなのかと言うと、徳間社長の葬式の時に、背広姿の偉い人がいっぱい来た。その背広姿の偉い人が全員カエルに見えた」という事が書いてあります。  「あれは総理大臣というカエルだ」と。総理大臣も徳間の社長の葬式に来たそうですね。「ジブリの近くにいるスーツ組、いわゆる、お金を儲けようとしてジブリの近くに寄ってくる人たちというのは、みんなカエルに見えた」と。  それに比べて、自分たちアニメーターというのは虫けら扱いなので、女の子はナメクジ。本草学によると、ナメクジもやっぱり虫ですので。まあ、カエルも虫なんですけど。  こういうな形で、カエルの男とナメクジの女というのが描かれているわけですね。
     この本の中で、宮崎駿は「ジブリというのは理不尽で重労働だ」と言ってます。  そして、「そんなジブリを舞台に、小さな女の子が無理矢理に働かされる話をやりたかった」と。
    ・・・
     千尋にはモデルがいます。  これはウィキペディアにも載っているんですけども、ジブリの後援者の1つである日本テレビのお偉いさんの奥田さんという人の娘ですね。  この奥田さんという人の娘について、宮崎駿が「この女の子は、あの親の元で真っ直ぐに育つとは思えない!」と言い出して……本当に、他人の家のことに口を出すんですけども(笑)。  「まっすぐに育つとは思えない! あのままでいいと思うか!? なんとか俺達でまともに出来ないか!? いっそ、ジブリに連れてきたらもっとまともに育つんじゃないか!?」と。  その結果、奥田さんはしょっちゅう自分の娘を宮崎駿の別荘に連れて行ったんですね。
     ここで『千と千尋の神隠し』の根本構造が出来るわけです。  つまり、「食い物に釣られてブタになってしまう両親」というのは、イコール「お金のため、仕事のために、ジブリや宮崎さんにホイホイ近づくビジネスマン」。  その娘が、ジブリみたいな、おっかない場所、重労働で理不尽なところに連れて来られて、そこで働かされるという話なんですね。
     ウィキペディアにも、この辺の事実経緯が書いてあります。

    制作のきっかけは、宮崎駿の個人的な友人である10歳の少女を喜ばせたいというものだった。 この少女は日本テレビの映画プロデューサー、奥田誠治の娘であり、主人公千尋のモデルになった。 企画当時宮崎は、信州に持っている山小屋にジブリ関係者たちの娘を集め、年に一度合宿を開いていた。 宮崎はまだ10歳前後の年齢の女子に向けた映画を作ったことがなく、そのため彼女たちに映画を送り届けたいと思うようになった。

     つまり「親の仕事のために、欲望のために、ジブリに入れられた女の子が、観客の心を慰めるアニメを作るためにアニメーターにさせられる」という、とんでもない話が『千と千尋』のベース、油屋のベースなんですよ。  ところが、ベースがそれであっても、その上にどんどん面白いものを乗っけているんです。  さっきも話したように、これは油屋で言えば、コンクリートの構造部分なんですね。下の構造部分がそこで「さあ、この上に何を乗せたら面白いアニメを作れるだろうか?」ということで、どんどん変質していくわけです。
    ・・・
     「ハヤオの好きな女の子が、ジブリで鈴木敏夫にこき使われる」という話をやってみよう、と。  しかし、ハヤオは助けることが出来ない。「俺は、俺は、単なるおじいちゃんだから、湯婆婆のような、あんなに怖い鈴木敏夫に逆らうことは出来ない。しかし、助言はしてやれる!」と言って、自分はいつの間にかに釜爺という、なんか良いポジションをきっちり取っているわけですね。  そんな中、千尋は勝手に強くなってくれる。  さて、釜爺の他にもう1人、作中には宮崎駿の分身がいます。それが、ハクという美少年。ハクこと宮崎駿は、鈴木敏夫の理不尽な命令で、血まみれになりながら、アニメを作らされているわけですね。  そして、『もののけ姫』の時みたいに「年老いてあまり使えなくなった」と判断したら、鈴木敏夫は宮崎駿を、冷酷にも穴の中に捨てて、若いアニメーターとか、宮崎吾朗とか、宮崎駿の弟子筋とか、あとは何よりも高畑勲を贔屓にし始めるわけですね。  この辺りの「鈴木さん、本当は俺よりも若いやつの方が大事なんじゃないのか!?」っていう、宮崎駿の勝手な妄想が、湯婆婆が坊という子供を溺愛するシーンとかにガンガン溢れ出していて、まあ、なかなか面白くなってるんですけど(笑)。  しかし、千尋だけは、宮崎駿の分身である美少年のハクを見捨てずに、命をかけて銭婆、すなわち高畑勲の元に行ってくれるわけですね。  千尋は最後に宮崎駿に本当の名前を教えてくれる。この「本当の名前」というのは、つまり「あなたが今やるべきアニメは、これですよ」ということを教えて、去って行くわけです。  そして、「その、やるべきアニメというものこそ、この『千と千尋の神隠し』だ!」と。
     つまり、これは宮崎駿の私小説なんですよ。  私小説として、すごい上手く出来ている。徹底的に、宮崎駿による、宮崎駿のためのアニメなんですよ。「10歳の娘に向けたアニメ」というのは、いつの間にか吹き飛んでしまって、自分のためのアニメをつくっちゃったという。  同時期の『On Your Mark』と全く同じです。完全に、この時期から宮崎駿は自分にしかわからない話を作るようになります。  ところが、そんな自分にしかわからない話というのが、禍々しい深みというのを作り出している。  おまけに、宮崎駿の中にも「一般にヒットさせよう」という思いもあるし、また、そうさせるだけの手練手管、素晴らしいアイデアやイメージを持っている。これが、ヒットする秘密になっていくわけですね。  だけど、構造自体は、すごく作家性が強いアニメーションになったわけです。
     しかし、宮崎駿が自分のために作ったアニメだと『もののけ姫』のようなメガヒットは狙えない。  まるで、宮崎駿の私小説なんですけど、その代わり、社会性がない。そして、社会批判があるように見えないと、やっぱり評論家が深読みしてくれない。  そこで、鈴木敏夫が宣伝を通じてミスリードさせようとするわけですね。  鈴木敏夫には、早い段階で「ああ、宮崎駿はこの映画を自分の私小説にするつもりだな」ということがわかったわけですね。そうなると、これをなんとかして『もののけ姫』のように社会批判があるというパッケージに落とし込まないと、絶対にメガヒットしない。  そこで、鈴木敏夫は「この油屋というお風呂場は、風俗のアナロジーなんですよ。まあ、キャバクラみたいなものです」という宣伝を始めたんですね。  すると、評論家たちは、思い通り、狙い通り、僕を含めて騙されて、間違えてくれて「これはジブリというアニメスタジオを描いた話だ」ということがバレなかったわけです。
    ・・・
     油屋というのは実はジブリであって、ジブリで働くと人の心を失ってしまう。  千尋は、油屋で働いているうちに、ブタになった両親を見ても平気になるんです。この『千尋の大冒険』の中でも語っています。  まあ、実際に作った映画の中には、ちゃんと「ブタになった両親を見て悲しむ千尋」というシーンがあるんですけど。この本が作られた時には、まだ映画の前半しか出来てなかったんですね。  宮崎駿は、その時、取材に対して「千尋はブタになった両親を見ても平気になってしまう。何も心が動かない。しかし、おにぎりを食べて自分の名前を思い出したことで、自分はなんて変わってしまったんだと涙をポロポロ流す」というふうに言っているんです。  つまり、「油屋で働くことで、心を失ってしまう」と言っている。
     宮崎駿の実のお母さんが死んだ時、宮崎駿は仕事が忙しくて、お葬式に行かなかったんですね。  本当に、アニメーションの仕事の現場にいると、どんどん人間の心を失ってしまう、と。  それは、現に宮崎駿も「ジブリの中では、アニメーターに対して、本当に理不尽な命令をしたり、怒鳴ったりしている」ということで、実感しているということを表しています。
     千尋が、自分の名前すらも完全に忘れてしまうほどの忙しさの中で、心を取り戻す方法というのが、この「おにぎりを貪る」というシーンなんですけど。 (パネルを見せる)
    【画像】おにぎりを食べる千尋 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     ハクの作ってくれたおにぎりを貪る千尋ですね。おにぎりを両手に持ってガツガツ食べています。  千尋って、実は、一番最初から欲望がない子なんですね。「痩せっぽち」というのは何かというと「食欲があまりない」ということなんですけど。  両親と一緒に、不思議な街の食物屋がいっぱいあるところに行って「千尋も食べなさい」と言われている時に「私、いらない」と言う。あれが、普段の千尋なんですよ。ご飯の時もあんまりご食べない。欲望が出てこないんですね。だから、痩せっぽちなんです。  欲望があんまりない。お腹が空かない。「食べろ」と命じられても食べない。  しかし、ハクに勧められて、初めておにぎりを食べた時、「自分はお腹が空いている」ということに気付くんですね。「どんなに自分が飢えていたのかわかった」と。
    ・・・
     宮崎駿って、当時、『もののけ姫』の辺りまで、ずっと「儲けることには興味がない。ヒットのためにやってない」って言ってたんですね。  世間は、宮崎駿に金の魅力、「こうやれば、もっとヒットしますよ? 儲かりますよ?」と言って仕事をさせようとする。それに対して宮崎駿は「いや、儲けなくてもいいんだ! 俺は金のためにやってるんじゃないんだ!」というふうに、ずっと言ってたんですよ。  しかし、現にお金がないと力が出ないわけですね。腹が減っては動けないのと同じで、アニメーターに金が払えない。宮崎駿は『魔女の宅急便』が終わった時から、「ジブリでは、アニメーターを正社員にしよう」と言ってたわけです。これには、もう莫大なお金が必要なわけです。  「金がないと自分の好きな作品も作れない」と。宮崎駿は、ちょうどこの頃から、自分の中の隠れた欲望を肯定するようになったんですね。  まあ、これ自体は「自分では隠してるつもりだった欲望」だったんですけども。  今言ったような「金には興味がない。ヒットにはあまり興味がない」というのは、本人が言ってるだけで、実は、宮崎駿は誰よりも「どれくらい儲かっているのか? どれくらいヒットしているのか?」を気にする人間なんですね。  それは『カリオストロの城』の時に、自分が渾身の力で作ったアニメーションというのが全然ヒットしなかったおかげで、5年くらい業界から干されたという、やっぱり、すごく痛い経験があるからなんですよ。  だから、「どれくらいヒットしているのか?」を気にする。  ただ、相変わらず、宮崎さんは「自分がどれくらいお金を持つか?」には、もう本当に興味がないんです。  「カップヌードルのカレー味を食べることが自分の中ではごちそうになっている」と言ってるくらいですから。「こんな塩分の強いものを、女房に隠れて食うのが一番のごちそうだ」と、嬉しそうに食っているシーンが、ドキュメンタリーにも収められているんですけど。  こういう人なので、本当に「自分にどれくらい金があるのか?」には興味がないんです。  だけど、「ジブリのアニメがどれくらいヒットしているのか?」には、本当に興味があるというか、こだわる人で。特に「自分が高畑さんに勝ったか、負けたか?」というのには、やっぱりすごい興味があるんですね。
     そこで出てくるのが、これです。 (パッケージに入ったオモチャのようなものを見せる)
    【画像】ハクのおにぎりフィギュア
     ハクの作ったおにぎりが、DVDの特典のフィギュアになったんです。ふざけてますよね(笑)。  「DVDの特典にフィギュアをつける」という時に、宮崎駿はDVDを出すの大反対して、特典として何かオモチャを付けるということにも、もう怒りまくってたんですけど。  ようやっと、それにOKしたと思ったら、「白い米のおにぎりをフィギュアにする」と言い出した。  「なんだこりゃ?」って思うでしょ? 僕も思ったんですよ。だから、これ、発売した時には要らなかったんですけど、あとで猛烈に欲しくなって、ヤフオクでわざわざ手に入れたんです。
     やっぱり、DVDの特典というのは、宮崎駿にしたら許せないわけですね。  まず「作品をビデオで売る」ということにも反対してたんです。「子どもたちにとっては、映画館で一生に1回しか見れない、そういう体験を俺は作っているつもりなのに、ビデオを売るとは何ごと? レーザーディスクを売るとは何ごと? DVDを売るとは何ごと?」ということで、何ごと感がどんどん増していった。  おまけに「その特典としてフィギュア玩具をつけるとは、もう許せん!」というふうになってたわけですよ。  だけど、もうそれに加担することを決意したわけですね。自分がいくら止めても、やっぱりやられてしまうし、それをやることによってスタジオジブリの維持もできる。  何より、自分がちょうど『千と千尋』を作っている時に夢中になっていたジブリ美術館というのを作るには、やっぱり何十億円も必要なわけですね。そのための金がどこから出てくるのかと言うと、自分が毛嫌いして軽蔑していた金儲けから、原動力が出て来るわけです。  だから、このおにぎりフィギュアというのは、そんな金儲けに加担することを決意した、宮崎駿なりの精一杯のメッセージなんですね。
     千尋は自分の欲望を肯定して、おにぎりを両手で頬張る。もう本当に、汚く食べることによって、生きる力を発見した。まあ、こういう話なんですけど。  ちょっと、宮崎駿の話、ジブリの話、アニメの中の油屋の設定の話という、3つの話を混ぜて語りましたけど。油屋とジブリの謎、今日の1つ目の謎の話はここまでです。
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    2019/11/10 #307 「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]」
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    岡田斗司夫ゼミ#306:『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[前編]
    岡田斗司夫ゼミ#307:『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]
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    岡田斗司夫ゼミ#295:終戦記念『シン・ゴジラ』特集、「ゴジラと核兵器」
    岡田斗司夫ゼミ#299:『Dr.STONE』元ネタ『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』徹底解説!
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    岡田斗司夫ゼミ#301:『なつぞら』総決算+マンガ版『攻殻機動隊』解説 第3弾
    岡田斗司夫ゼミ#302:味を超越した“文化としてのハンバーガー論”
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    ガンダム完全講義2:ついに富野由悠季登場!
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    ガンダム完全講義5:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part1
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「今日のニコ生は、岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話「ガンダム完全講義〜第34回」です!」

    2019-11-26 07:00  
    9999999pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/11/26
     今日は、岡田斗司夫のコンテンツ情報をお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜7時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜7時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
    本日の岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話は 11月26日(火) 19:00~ 「機動戦士ガンダム完全講義〜第34回」
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    2019/11/13 マンガ・アニメ夜話 #32 「ガンダム完全講義32:第12話「ジオンの脅威」解説Part5」

    ギレン・ザビの名演説と、シャアの名ゼリフ
    シャアの「指の遊び」と「目」が意味するもの
    ギレンの演説について補足
    酒を飲むシャアについての解釈の違い
    『ガンダム』のテーマと「シャアの生死」の関係
    ギレン・ザビの名演説と、シャアの名ゼリフ
     こんばんは、『機動戦士ガンダム』完全講座。今日は32回、第12話「ジオンの脅威」全6回の解説の内の5回目です。  というわけで、今日はいよいよギレン総帥の演説なんですけど。その前に、今日もまたガンダムマンチョコを開けてみましょう。
    【画像】ガンダムマンチョコ
     なんか、聞くところによると、このガンダムマンチョコ、「東日本と西日本では違うバージョンが売っていて、しばらくしてから入れ替える」という例のパターンらしくて。  今、東日本は連邦軍のバージョンを売ってます。来週か再来週には、ジオンバージョンを売るのかな? ちょっと楽しみなんですけど。 (袋を開ける)
    【画像】マチルダ・アジャンシール ©創通・サンライズ ©LOTTE/ビックリマンプロジェクト
     「全24種類だから、ダブったらどうしよう?」と思ってたら、まだダブらないね。マチルダ・アジャンさんのシールが出ました。

    【マチルダ・アジャン】  将軍の直命でホワイトベースの整備に現れた補給隊指揮官! 淑やかで落ち着きのある大人の女性士官こそアムロの初恋の人?! 【ウワサ】  ホワイトベース男性乗組員たちの憧れの的となるが、技術士官の婚約者がいるとか?!

     というふうに書いてありますね。  このガンダム講座の方でも、ようやっと登場したマチルダさんのシールですね。  今の所、ダブらないな。いいですね。このガンキャノンから始まって、ハロ、マチルダさん、と。今日あたり、「ハロがダブったらどうしよう」と思ってたんですけど。ダブった時のトークは、なんにも考えてないです(笑)。  マチルダさん出てくると思わなかったな。いやいや、楽しい楽しい。
     さて今回は、第12話「ジオンの脅威」の第5回ということで、前半の無料では、ギレン・ザビの名演説を解説します。  そして、ついに今日の後半では、シャアの名台詞「坊やだからさ」が出てくるので、これを解説します。  いつもの通り、無料の終わりで、ちょっと追加の解説をしますので、お楽しみに。  それでは、ガンダム講座「ジオンの脅威」第5回の解説のスタートです。どうぞ!
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    ジブリ特集
    岡田斗司夫ゼミ#212:『天空の城ラピュタ』完全解説① 〜超科学とエロス
    岡田斗司夫ゼミ#213:『天空の城ラピュタ』完全解説② 〜幻の産業革命が起こった世界
    岡田斗司夫ゼミ#297:『天空の城ラピュタ』完全解説③ 〜スラッグ渓谷とポムじいの秘密
    岡田斗司夫ゼミ#296:『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病
    岡田斗司夫ゼミ#298:『崖の上のポニョ』はどうやって生まれたか 〜空想で現実を書き換える
    岡田斗司夫ゼミ#306:『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[前編]
    岡田斗司夫ゼミ#307:『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]
    月着陸50周年特集
    岡田斗司夫ゼミ#269:恐怖と贖罪のホラー映画『ファースト・マン』完全解説
    岡田斗司夫ゼミ#258:アポロ計画と4人の大統領
    岡田斗司夫ゼミ#250:白い悪魔“フォン・ブラウン” 対 赤い彗星“コロリョフ” 未来をかけた宇宙開発戦争の裏側
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『千と千尋の神隠し』解説:油屋は、風俗産業のメタファーじゃない!」

    2019-11-25 07:00  
    9999999pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/11/25
     今日は、2019/11/10配信の岡田斗司夫ゼミ「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]」からハイライトをお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜7時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜7時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
      じゃあ行きましょう。油屋とジブリの謎です。 (パネルを見せる)
    【画像】油屋イメージボード
     これ、イメージボードに描いてある油屋ですね。主人公の千尋が、送り込まれるというか働くことになる油屋のイメージボードです。  壮大な和風建築みたいに見えます。しかし、よく見ると、この下半分というのはコンクリートで作られているんですね。
    【画像】油屋ペントハウス
     そして、この上半分は豪華に見えますけど、これは全部、湯婆婆のペントハウスなんですよ。上半分のすごくカッコいい部分って、言っちゃえば、昔の帆船の船長室とか『宇宙海賊キャプテンハーロック』の艦長室みたいなもので、艦長室だけがやたらと豪華な建築なんですよ。  これ、すごく綺麗に見えるんですけど、実はお客さんが飲んだり遊んだりする場所というのは狭い区域に限られていて、それ以外の豪華な部分というのは、ほとんど湯婆婆のペントハウスになっています。
    【画像】油屋の厠
     ちなみに、初期案では、この位置に……わかるかな? ここに張り出しみたいなものがあるのわかりますか?  これ、何かというと「厠」と書いてあって、ポットン便所なんですね。  この位置にトイレがあって、ここからうんちとかおしっこがポトンと落ちるようになっているんですけど。こんなふうになっています。
     これを横から見るとどうなっているのかというと、これも宮崎駿が初期のうちに描いていたイメージボードがあります。 (パネルを見せる)
    【画像】油屋全体図
     さっき話したように、この壮大にカッコいい部分というのは、湯婆婆のペントハウスなんですけど。ここには「客室」と書いてあります。  これ、宮崎駿が初期に描いたもので、まだ、上の部分に湯婆婆のものすごく豪華な部分が乗ってないんですけど。下半分は、さっき言ったようにコンクリート造りなんですね。  大門から入って、お風呂場の部分が全て吹き抜けになっていて、その周りに客室がついていて、裏側に従業員の宿舎が張り付いているというような構造になっています。  1階に番台と風呂場があって、2階部分は全て吹き抜け。3階と4階は吹き抜けの周りに、客室がある感じですね。そして、5階以上が湯婆婆のペントハウス。
     この建物を、宮崎駿は擬洋風というふうに呼んでいます。  擬洋風というのは建築界の用語であって、どういう意味かと言うと、巨大なボイラーハウスが下にあることからもわかるように、これ、コンクリート建築なんですね。つまり、和風建築ではなくて、コンクリートの偽物なんです。  このように、西洋建築の技術を取り入れた和風建築のようなものを、建築業界では擬洋風というふうに言います。明治時代によく建てられた「和風建築の偽物」……と言うよりかは「洋風建築の偽物」と言うべきか。  だいたい、明治時代に、西洋建築の建て方をよく知らない大工達が、新しく入ってきた素材とか設計図とか材料で、見様見真似で洋風建築みたいなのを作ったんだけど、上にはデカい瓦とかを載せちゃう、と。そういうのを擬洋風と言うんですけども。  これね、宮崎駿の強烈なメッセージなんですね。
    ・・・
     何かと言うと、日本のアニメーションそのものを指して「擬洋風」と言っているんですよ。  つまり、ディズニーなんかの西洋が始めた芸術に、日本のセンスを乗っけただけなんですね。宮崎駿も、よく「日本のアニメーションのやっていることというのは、所詮は西洋が始めたものに自分なりのセンスを乗せているだけだ」って言ってるんですけども。  つまり、『もののけ姫』そのものなんですね。この建物自体が、自分の作品である『もののけ姫』を強烈に皮肉っているんですよ。  「いくら室町時代を描こうが、縄文時代を出そうが、針葉樹林文化論を出そうが、そういう神話を描こうが、所詮、自分の作ったアニメーションというのは擬洋風であって、西洋が作ったアニメーションの技法、西洋が作った映画の文法の上にのっとってやっちゃっている」ということなんですね。
     そして、この油屋というのは、かつて自分が作った『もののけ姫』そのものであると同時に、スタジオジブリそのものでもあるんですね。  「この中で、女の人ばかりが働いている」というのにも理由があります。当時のジブリというのは『もののけ姫』の時にトラブルがあって、大量にアニメーターが辞めたんです。その結果、残ったのは女性の新人ばっかりが多くなって、一時期は「ジブリのアニメーターって女の子ばっかりだ」って言われてたんですけど。そんなふうに、女の子がいっぱいいる体制だったんですね。  そんな、女性ばっかりのアニメーターを集めて何を作るのかと言うと、湯婆婆、すなわち鈴木敏夫プロデューサーは「ヒットさせろ!」と言うんです。  この巨大になってしまったアニメスタジオで、高畑勲が何も考えず湯水のように金と時間を使うから、どうにかして作品をヒットさせなきゃいけない。観客の欲望を満たすようなアニメーションを作らなきゃいけない。  つまり、「女の子を大量に集めて、偽の洋風建築の中で、観客の欲望を満たすようなものを作れ!」というメッセージが、すごく大きく入っているわけですね。
     「お客様は神様であって、そんな神様の機嫌を取るような面白いアニメというのをひたすら作り続ける。それが俺達の仕事だ! 俺達の仕事は、この油屋そのものじゃないか!」というメッセージなんです。  実は、この『千と千尋の神隠し』の裏テーマの1つが、当時、金儲けに走っていたジブリへの批判なんですね。アンチ鈴木敏夫作品でもあるんですよ。  このアンチ鈴木敏夫作品というのを誤魔化すために「油屋は風俗産業だ」という、キャッチーな、評論家受けするようなフレーズというのが生まれたわけなんですけども。
     宮崎駿は、油屋について、こんなイメージボードを描いているんです。 (パネルを見せる)
    【画像】油屋内部イメージボード
     神様が来て、中には番台があって湯婆婆が座ってて、「お背中を流しましょう」というふうに、神様を気持ちよくして帰っていただくという。いわゆる「垢を落とす」わけなんですけど。  これは、映画館に来る観客を意味しているわけですね。映画館に来る観客というのは、日常の澱みとか、嫌なこととかがいっぱい溜まっている。それを、映画館に来ることで、感動したり笑ったり涙を流したりして、さっぱりして帰って頂く、と。  「我々はそうやってお金を頂いている。だから、あくまでヒットさせなきゃいけない」。これは、宮崎駿が鈴木敏夫から言われてたことでもあるんです。それまでは、宮崎駿もこの言い分に納得してやってたんですけど。しかし、もう、この頃になると、流石にいろんなことが積もりに積もって。  特に『もののけ姫』が、空前のヒットを飛ばしたもんだから、まさか『千と千尋』がそれ以上にヒットするとは思わずに、宮崎駿も「あんなにヒットしたことによって、俺達は何かが狂ってしまった。今、何かがおかしいぞ」というメッセージを込めて作ったら、それ以上にヒットしちゃったという作品だったんです。
    記事全文は、アーカイブサイトでお読みいただけます。
    2019/11/10 #307 「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]」
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    ガンダム完全講義19:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part2
    ガンダム完全講義20:第10話「ガルマ散る」解説Part1
    ガンダム完全講義21:第10話「ガルマ散る」解説Part2
    ガンダム完全講義22:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part1
    ガンダム完全講義23:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part2
    ガンダム完全講義24:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part3
    ガンダム完全講義25:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part4
    ガンダム完全講義26:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part5
    ガンダム完全講義27:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part6
    ガンダム完全講義28:第12話「ジオンの脅威」解説Part1
    ガンダム完全講義29:第12話「ジオンの脅威」解説Part2
    ガンダム完全講義30:第12話「ジオンの脅威」解説Part3
    ガンダム完全講義31:第12話「ジオンの脅威」解説Part4
    ガンダム完全講義32:第12話「ジオンの脅威」解説Part5
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「【岡田斗司夫 最新情報】2019年11月24日号」

    2019-11-24 07:00  
    9999999pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/11/24
     今日は、岡田斗司夫のコンテンツ情報をお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜7時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜7時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
    【ニコ生】
    ご注意 11月から、ニコ生ゼミなどすべてのニコ生放送は、19時から放送開始となりました!
    『岡田斗司夫ゼミ (無印)』
    『岡田斗司夫ゼミ・プレミアム』
    今夜(19時~)のニコ生ゼミは、 2010年のイベント「『ガンダム』の富野由悠季監督の講演を聞く」という動画を放送します。 この講演、抽選制だったんだけど、僕ちゃんと申し込んで、当たったんですよ。
    で、講演を聞いた直後に、抽選に落ちた人を集めて「富野さんの講演はこんな内容だったよ!」と、僕が説明するイベントを開いたんです(笑)  そのイベントの録画があるので、それを公開しようと思います。
    他人の話を聞いた直後に、考えをまとめながら話すので、メチャクチャ頭を使ったイベントでした。 頭をフル回転しながら話している感じも含めて楽しんでいただければと思います。
    富野講演の前半部分を無料放送で、後半部分を限定に分けて放送します。 講演自体、10年くらい前の講演なので、プレミアムでは「その後の富野由悠季」をちょっとだけ話すつもりです。
    お楽しみに!
    また、前回のニコ生岡田斗司夫ゼミ#308は 「ジブリ都市伝説の謎を解け!&大好評サイコパス人生相談」 でした。
    無料放送+有料放送
    無料放送+有料放送+プレミアム放送
    無料放送 00:00 雑談特集 03:44 Qジブリネタ 20:56 ターミネーターの話 24:28 Q人気ユーチューバーになるには 33:12 Qファザコンでアイドルファンの女が結婚するには 36:25 Q友達ともう一度仲良くなるには 42:56 Qフィクションしか楽しめない 48:23 告知『明日葉の庭』見に来てね 有料放送 51:23 今週のYouTubeニュース 59:55 恋愛イベントの補足 01:14:46 QN国党について 01:20:24 Qガイナックス放火未遂事件について 01:23:17 Q水害にあいました 01:24:31 Qるつぼ講演会での質問 01:26:13 Qオフ会楽しみです 01:29:18 Q視聴者からのレジュメ応募 01:33:15 Qゴシック建築の資料について プレミアム放送 01:42:03 井の頭公園 01:48:36 アメリカアマゾン 01:55:45 Q過去動画の見方 01:57:50 Q劇場版『不思議の海のナディア』について
    今週の岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話は 11月26日(火) 19:00~ 「機動戦士ガンダム完全講義〜第34回 
    『岡田斗司夫ゼミ (無印)』会員
    『岡田斗司夫ゼミ・プレミアム』会員
    ニコ生テキスト全文公開
     2019/11/10配信の岡田斗司夫ゼミテキスト全文をアーカイブサイトで公開中!

    2019/11/10 #307 「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]」

    本日のお題『千と千尋の神隠し』残り10の謎
    「俺たちの仕事はこの油屋!」という宮崎駿のメッセージ
    油屋のモデルと宮﨑駿の「私小説」
    『銀河鉄道の夜』から読み解くハクの謎
    ハクの正体を考えることで映画全体の辻褄が合う
    宣伝と次回告知
    休憩&「絵コンテは買うべき?」
    『千と千尋』の世界観と神道の関係
    「死の世界と往復」から妄想する釜爺の正体
    カオナシの正体と「ラストがわからなくなった宮崎駿」
    湯婆婆や銭婆は誰なのか?
    もし千尋が振り向いていたらどうなっていた?
    「名前も知らない誰かに励まされる」映画と『千と千尋』のラスト
    ゼミ、マンガ・アニメ夜話 電子書籍販売中!
    AmazonのKindleストアで、岡田斗司夫ゼミ、岡田斗司夫マンガ・アニメ夜話の電子書籍を販売中です(「岡田斗司夫アーカイブ」でもご覧いただけます)。
    ジブリ特集
    岡田斗司夫ゼミ#212:『天空の城ラピュタ』完全解説① 〜超科学とエロス
    岡田斗司夫ゼミ#213:『天空の城ラピュタ』完全解説② 〜幻の産業革命が起こった世界
    岡田斗司夫ゼミ#297:『天空の城ラピュタ』完全解説③ 〜スラッグ渓谷とポムじいの秘密
    岡田斗司夫ゼミ#296:『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病
    岡田斗司夫ゼミ#298:『崖の上のポニョ』はどうやって生まれたか 〜空想で現実を書き換える
    岡田斗司夫ゼミ#306:『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[前編]
    岡田斗司夫ゼミ#307:『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[後編]
    月着陸50周年特集
    岡田斗司夫ゼミ#269:恐怖と贖罪のホラー映画『ファースト・マン』完全解説
    岡田斗司夫ゼミ#258:アポロ計画と4人の大統領
    岡田斗司夫ゼミ#250:白い悪魔“フォン・ブラウン” 対 赤い彗星“コロリョフ” 未来をかけた宇宙開発戦争の裏側
    岡田斗司夫ゼミ#291:アポロ宇宙船(前編)〜地球が静止した1969年7月21日とアポロ11号の打ち上げ
    岡田斗司夫ゼミ#292:アポロ宇宙船(後編)〜月着陸と月面歩行
    岡田斗司夫ゼミ
    岡田斗司夫ゼミ#287:『アラジン』特集、原作からアニメ版・実写版まで徹底研究!
    岡田斗司夫ゼミ#288:映画『君の名は。』完全解説
    岡田斗司夫ゼミ#289:NASAとLINEの陰謀、スパイダーマンをもっと楽しむためのガイド
    岡田斗司夫ゼミ#290:『進撃の巨人』特集〜実在した巨人・考古学スキャンダルと、『巨人』世界の地理
    岡田斗司夫ゼミ#293:『なつぞら』特集と、『天気の子』解説、“禁断の科学”の話
    岡田斗司夫ゼミ#294:『千と千尋の神隠し』の不思議な話と、幽霊、UFO、怪奇現象の少し怖い話特集
    岡田斗司夫ゼミ#295:終戦記念『シン・ゴジラ』特集、「ゴジラと核兵器」
    岡田斗司夫ゼミ#299:『Dr.STONE』元ネタ『この世界が消えたあとの科学文明のつくりかた』徹底解説!
    岡田斗司夫ゼミ#300:雑談スペシャル&視聴者からの悩み相談
    岡田斗司夫ゼミ#301:『なつぞら』総決算+マンガ版『攻殻機動隊』解説 第3弾
    岡田斗司夫ゼミ#302:味を超越した“文化としてのハンバーガー論”
    岡田斗司夫ゼミ#303:映画『ジョーカー』特集&試験に出るバットマンの歴史
    岡田斗司夫ゼミ#304:朝日新聞「悩みのるつぼ」卒業記念講演
    岡田斗司夫ゼミ#305:思考実験教室~「論」を語る
    マンガ・アニメ夜話
    ガンダム完全講義1:虫プロの倒産とサンライズの誕生
    ガンダム完全講義2:ついに富野由悠季登場!
    ガンダム完全講義3:『マジンガーZ』、『ゲッターロボ』から始まる映像革命
    ガンダム完全講義4:第1話「ガンダム大地に立つ!!」解説
    ガンダム完全講義5:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part1
    ガンダム完全講義6:第2話「ガンダム破壊命令」解説Part2
    ガンダム完全講義7:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part1
    ガンダム完全講義8:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part2
    ガンダム完全講義9:第3話「敵の補給艦を叩け!」解説Part3
    ガンダム完全講義10:第4話「ルナツー脱出作戦」解説
    ガンダム完全講義11:第5話「大気圏突入」解説
    ガンダム完全講義12:第6話「ガルマ出撃す」解説Part1
    ガンダム完全講義13:第6話「ガルマ出撃す」解説Part2
    ガンダム完全講義14:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part1
    ガンダム完全講義15:第7話「コアファイター脱出せよ」解説Part2
    ガンダム完全講義16:第8話「戦場は荒野」解説Part1
    ガンダム完全講義17:第8話「戦場は荒野」解説Part2
    ガンダム完全講義18:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part1
    ガンダム完全講義19:第9話「翔べ!ガンダム」解説Part2
    ガンダム完全講義20:第10話「ガルマ散る」解説Part1
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    ガンダム完全講義23:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part2
    ガンダム完全講義24:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part3
    ガンダム完全講義25:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part4
    ガンダム完全講義26:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part5
    ガンダム完全講義27:第11話「イセリナ、恋のあと」解説Part6
    ガンダム完全講義28:第12話「ジオンの脅威」解説Part1
    ガンダム完全講義29:第12話「ジオンの脅威」解説Part2
    ガンダム完全講義30:第12話「ジオンの脅威」解説Part3
    ガンダム完全講義31:第12話「ジオンの脅威」解説Part4
    ガンダム完全講義32:第12話「ジオンの脅威」解説Part5
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『千と千尋の神隠し』不思議な世界への秀逸な導入と実はホワイトな湯婆婆の経営手腕・基礎研究編」

    2019-11-23 07:00  
    9999999pt
    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/11/23
     今日は、2019/11/03配信の岡田斗司夫ゼミ「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[前編]」から無料記事全文をお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜7時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜7時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
    『千と千尋』を読み解く14の謎
    【画像】スタジオから
     はい、こんばんは。岡田斗司夫ゼミです。  11月3日、今日から午後7時からスタートなんですけど、大丈夫でしょうか? 一応、3回くらい告知してたから大丈夫かなと思ったんですけど、まだまだ慣れてない人も多いと思います。そんな人は、後でアーカイブで見るのがよろしいでしょう。まあ、YouTubeでも後で見れるしね。  ということで、今日から7時に変更です。なので、明後日のガンダム講座も19時スタートだから、間違わないようにしてください。よろしくお願いします。
     今日は来週と2回にわたって『千と千尋の神隠し』を解説します。  テーマは、一応、「『千と千尋』を読み解く14の謎」というふうにしてみました。 (パネルを見せる)
    【画像】『千と千尋』を読み解く14の謎不思議な世界の謎
    湯婆婆の謎
    ストーリーの謎
    神隠しの謎
    油屋の謎
    メガヒットの謎
    ジブリの謎
    神様の謎
    海原電鉄の謎
    カオナシの謎
    銭婆の謎
    ハクの謎
    「振り向いてはいけない」の謎
    両親の謎
     まあ1番から14番まで並んでいるんですけども、これ、まだ増えるかもわかりません。  というか、14番まであるんですけど、本当にね、どれくらい話せるかわからないんですよ。一応、僕が本来やりたいペースで話しますけども。  では、さっそく1番目の謎から始めましょう。
    基本はホラーの『千と千尋の神隠し』
    【画像】スタジオから
     『千と千尋』を読み解く14の謎、最初は「不思議な世界の謎」です。  今回の解説は、基本的にジブリの公式のBlu-rayを参考にしています。
     DVDの再生を始めたら、一番最初、0分0秒にトトロのイラストが入ったジブリのテロップが出ます。 (パネルを見せる)
     これが10秒映ってから、その後、真っ黒な画面になって、この3秒間の黒みの後で、花とカードが移ります。 (パネルを見せる)
     「千尋、元気でね。また会おうね。理砂」と書いてあるカードと花束ですね。  そして、これを、まあ、やる気のない顔をした少女が、だらしない姿勢で見ている。 (パネルを見せる)
    【画像】やる気のない千尋 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     これで「この女の子が主人公の千尋だ」というのがわかるわけですね。  舞台は現代の日本。「10歳の少女・荻野千尋とその両親は、新しい街に車で引っ越してくる」というのが冒頭ですね。
    ・・・
     さて、「千尋たちが、この時、走っている場所はどこか?」ということなんですけども。  映画の中で、こんな標識が映るんですね。 (パネルを見せる)
    【画像】国道の標識 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     「国道21号線」と「中岡」と書いてあります。  中岡という地名が実在しているかどうかはわからないんですけど。「これは甲府なんじゃないか?」と言われています。 (パネルを見せる)
     国道20号線を左に曲がると甲府方面に行くので。  こういった研究は、ブログ「SUDAREの部屋」で、かなり綿密な調査がされています。
    SUDAREの部屋
     例えば、「最初に出てくるこの場所は、国道20号線近くの、この表札あたりじゃないか?」と。この辺には、劇中に映る「グリーンヒル」という看板によく似た施設の看板もあります。
    【画像】グリーンヒルの看板
     この作品辺りから「どこがモデルなのか?」みたいな、いわゆる聖地巡礼みたいなものが始まってきたんですよね。なので、ジブリも、わざと特定できないように、色々と工夫しているんですよ。  だけど、SUDAREさんは、そんな中でも、かなりの場所を特定してくれています。 (パネルを見せる)
    【画像】サイクルファーム © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     例えば、アニメの画面で、車のミラー越しに見えた「サイクルファーム」というお店と同じ店があるとか。
    【画像】とんかつみのや © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     あとは、一瞬だけ映る「とんかつみのや」という店と、全く同じ場所を見付けてきたりとか。  アニメに出てきたクリーニング店と、全く同じクリーニング店とか。こんなふうに、かなり特定されています。
     おそらく、八王子周辺の色々な場所の風景を再構成して作り上げているんですけど。ここら辺からわかる通り、『千と千尋』では、かなり、現実の風景をそのまま描くようにしています。  これが後に『ポニョ』の時に、宮崎駿が「こういうのが嫌になった」と言ってたことですね。  まあ、勝手ですよね。『千と千尋』の時は、現実の風景を丸々映すように言っておいて、後に『ポニョ』を作る時には「ああいうのはもう嫌だ!」とか「あんなことをやっても意味がない、ダメだ!」と言い出して。美術スタッフは本当に振り回されたそうなんですけど(笑)。
     千尋のお父さんの運転するアウディは、こんな場所を通りながら、「トチノキ」というニュータウンに向かって、分岐点を右に曲がっていきます。 (パネルを見せる)
    【画像】ニュータウンとタイトル © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     ここで、タイトルになります。『千と千尋の神隠し』と。  これ、カメラが上に上がっていくと、住宅街の屋根が見えるわけなんですけど。この坂を登って、本当はこっちのニュータウンの方に行きたかったわけですね。
     ここまでが1分40秒。  いろんな絵を見せながら、1分40秒でここまで来てるから、実は『千と千尋』って、すごくテンポの良い作品なんですよ。  テンポがいいわりに、最初40分間は、なかなか事件が起こらないんですけども。
    ・・・
     1分53秒。途中で、お父さんの車は、杉の老木と倒れた鳥居を抜けて、参道に入ります。 (パネルを見せる)
    【画像】老木と鳥居 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     上から下に、カメラがずーっとパンで降りて行くんですけど。この杉の木、途中で幹が折れているのがわかりますか? 上の方は枝が折れていて、かろうじて葉っぱだけが生えている状態です。  カメラがずーっと下に行くと、舗装した道路がここで切れていて、もう普通の山道になっているんですね。
    【画像】壊れた鳥居 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     そして、老木の脇に傾いた鳥居が立てかけられています。  この鳥居は、絵コンテにも「壊れた鳥居」と書いてあるんですね。たぶん、昔は、この先に行く道にかけてあったんでしょうね。それをもう、外してしまって、道端の木に立て掛けているという、なかなか罰当たりなことがされています。  おそらく、昔は、このアスファルトの道がなくなって山道になるこの場所から神域いわゆる神様の領域だったんですね。  これは、そのシンボルであった杉の巨木。メチャクチャ樹齢が多そうな木なんですけど。今や、これも枯れかけて朽ちつつあります。  しかし、何も知らない3人の乗ったアウディは、この神聖な土地に4輪駆動モードで入って行きます。
     ここで「こっちで合ってるのかな?」と、お父さんがエンジンを一旦ニュートラルにして、周りを見ます。  すると、千尋が、こんな不思議なものに気がつきます。 (パネルを見せる)
    【画像】杉の木の根本 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     これ、杉の木の根本ですね。立てかけられている鳥居の下の方に、石で作った小さい家がいっぱいあります。  この小さな家は神様の家ですね。石の祠です。それが、いっぱい捨てられているんですよ。この乱雑な置き方に、ちょっと注目して欲しいんですけど。
     ちょっとアップにした写真があります。 (パネルを見せる)
    【画像】石の祠 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     アップにすると、この石の祠、明らかに捨てられて集められているのがわかるんですね。  おそらく、この石の祠は、昔はこの参道に沿って並べられて、ずっと祀られてたものなんです。それを取り払ってしまって、杉の根元に鳥居と一緒に放置してあるんです。  たぶん、ここを工事した大工さんの誰かが「鳥居と一緒に置いておくことで、せめて祟りがないように」というふうに、かつての神木だった杉の根元にまとめて置いたわけですね。  よく見ると、この石の祠、屋根とかが外れてしまっているのもあるんですけど、中に小さい食器が入っているのが見えます。  おそらく、これがお酒とかをお供えする器だったんでしょうけど。この中に1つだけ赤い色の器があるのがわかりますか? まあ、これが、なんかちょっと怖い感じがするんですね。この赤い色が、映画の画面でも目を引くように、ちょっとドキッとするような赤になっています。
     ここまでの話を聞いておわかりのように、この映画『千と千尋の神隠し』って、実はホラーなんですよ。  基本的にはホラーで、  後半のファンタジー要素はすごい楽しく作ってるし、ホラーな現場に入っていった後、千尋が千という名前になって働いたりするので、よくわからないんですけど、湯婆婆に出会うまでの最初の30分は、全体的にホラー映画として作られているんですね。  この辺りの描写、「本当は神聖な領域なんだけど、鳥居とかが取り外されてしまって、神様の家が捨てられている。そんな中に、何も考えずに4輪駆動の車でガタガタと入って行く」というのは、ハリウッドのホラー映画によくある「インディアンの呪われた土地に、何も知らずに一家が引っ越していく」というのと、似たノリで撮られているんですよね。
     千尋というのは、学校を転校して、この時は編入前の宙ぶらりんの状態なんですよ。石の祠が取り壊されて、家がなくなっている、宙ぶらりんの神様と同じ状態だから、この神域の不思議な世界に入ってこれたんですね。  こういうホラーの定番として、何か縁がないと入れないんですね。そういう意味では、神様たちもこの家族も「家がない」という宙ぶらりんの状態なんですよ。  ここら辺は、来週に解説しますけど、この両親も、引っ越しの途中なんですけど、実は家庭の危機、家族の危機という状態にあるんですね。この3人共、なんとなくバラバラの状態になっているので、この世界にスッと入れるようになっているんです。  この両親の家庭の危機というのは、すごくわかりにくいので、来週、丁寧に説明します。3人共、宙ぶらりんの状態なので、神様の土地に間違えて入ってしまったわけですね。
    トンネルを抜けるまでのスピーディーな展開
    【画像】スタジオから
     山道を走って行くと、途中で道がいきなり石畳になるんですね。 (パネルを見せる)
    【画像】石畳 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     石畳になって、車が、こう、ガタガタ、ガタガタ揺れます。  これね、山道なんですよ。山道の途中から石畳になるということは「昔の人が石畳を敷かなきゃいけないくらい大事な道」ということなんですね。  大昔の、江戸時代とかそれより前の時代に、山の中にこんなものを作っていたということは、よっぽど神聖な道だったということですね。城を建てる時でも、なかなか石畳なんて敷かないものですから、そういう神聖な土地に入ったサインなんです。  だけど、お父さんは気づかずに猛スピードで走ってしまうんですね。  絵コンテには「お母さんは婚約時代からこういうのに慣れている」と書いています。なので、お父さんの乱暴な運転を見ても、お母さんは平気な顔をしてるんですけど、千尋はそんなお父さんを見るのが初めてだったので、すごくビックリします。  すると、突然、目の前にトンネルが現れるんです。 (パネルを見せる)
    【画像】トンネルと石人 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     トンネルの前には石人というのがいます。石で彫った人間のような人形ですね。  石人というのは、九州北部の古墳跡から出土する石像です。ここから、この聖域自体がかなり古いものであるということがわかりますね。
     「なんだ?」と思って、この赤いトンネルの上を見ると、読めない字が書いてあるんです。 (パネルを見せる)
    【画像】看板 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     屋根があって、看板が出てるんだけど、なんて書いてあるか読めない。実は「湯(油)屋」と書いてるんですけど、コンテには「読めないように書いてください」と指示されているので、読めないように書いてあります。  ここから先にあるのは、バブル崩壊前に作られた、温泉を中心としたテーマパークなんですね。  でも、温泉は出ないんですよ。なので、油屋では、石炭を窯で焚いて、ボイラーでお湯を沸かしているわけですね。つまり、偽のスパリゾートなわけです。温泉が出ないのに「温泉郷だ」と言っている。  この、車が急停止するところまでで3分です。スピーディな展開です。まだ、最初のトトロのマークが出てきてから、3分23秒なんですね。  両親は、このトンネルの中に入って行きます。  お父さんの方はのんきに「なんだ、モルタル製か。けっこう新しい建物だよ?」と、正体を見破ったような感じになっています。お父さんは実は建築業で働いているから、こういう建物に詳しい、と。  お父さんは平気なんですけど、そのトンネルに向かって、後ろから風がビューッと吹き寄せられていく。トンネルの中に風が入って行くんですよね。  それを見て嫌な予感がした千尋は、中へ入るのをすごく嫌がります。「私、行かない!」と。
     4分18秒。「私、行かない!」と言っている千尋を置いて、お父さんとお母さんだけがトンネルに入って行くんですけど。千尋が石人を見ると。 (パネルを見せる)
    【画像】石人 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     これ、すごくわかりにくいんですけど、ものすごくゆっくりと、カメラが寄ってるんですよ。  画面の端の辺りを見たらわかるかな? ほんのちょっとレンズが寄っているんですね。背景だけが外側へ流れて行ってるんですけど。なかなかわかりにくいですね。  すごくゆっくりトラックアップして、カメラが寄っていくことで「千尋がこの石人に心を奪われて、嫌な予感がしている」と丁寧に伝えているシーンです。2秒くらいの、ちょっと長めなカットなんですけど、何をやっているのかよくわからないんですね。  実は、この石人「夜になるとカエルに変化して、口から水を吐く」という設定だったそうなんですけど、「そこまでやらなくても構わない」ということで、設定が取り消しになってしまいました。  しかし、後のシーンで、別の石人が夜になると口から水を吐くので、まあ「トンネルを抜けた場所に、いつの間にか川が出来てて帰れなくなる」というのは、こいつがカエルになったからだと考えてください。
     で、千尋は、嫌な予感がしながらも、両親を追いかけて入って行ってしまうんですけども。 (パネルを見せる)
    【画像】トンネル © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     これ、一番最初に父親と母親が入って行くシーンでのトンネルです。周りが赤くて、モルタルにペンキで塗られています。  それに対して、これは、もう、ほとんどラストシーン。この世界に帰って来るところなんですけど。同じトンネルでありながら、石人はすでにただの石の車止めになっていて、壁面も石が積み上げられたものに変わっている。周りも、木でいっぱいになっている。  映画の頭とお尻では違うトンネルになっているんですね。
     つまり、もう、この段階で「化かされている」って言うんですかね? もう3人は不思議な世界に入ってしまっているんですね。  「トンネルを抜けたら不思議な世界」ではなくて、実はもう、トンネルのところから変な世界だった、と。  じゃあ、その変な世界に切り替わったのはどこなのかと言うと、おそらく、あの石の祠を通り過ぎた辺りから、神様の世界に入ってしまったということなんですね。
     5分53秒。このトンネルを抜けたら、まあ、平原が広がっていて、ずーっと上り坂が続いている。これが後に海みたいになるんですけど。ただ、その平原みたいなところに誰もいない。  6分50秒。千尋が不安になって「お母さん、お母さん、嫌だよ、行きたくないよ」って言うんですけど、母親は「早く来なさい」と言うだけで、なぜか千尋とは1カットも目を合わせません。  父親と母親は、けっこうイチャイチャしているんですよ。お母さんがフラッとしたら、「大丈夫か?」と言ってお父さんが支えて、お互い笑い合ったりしているんですけど。千尋に対しては「早くしなさい」と言うだけなんですね。  この異常な冷たさ。両親共に、特に母親の方の冷たさには理由があるんですけど。ここら辺、かなり深くなります。  映画を見ている人の中には「両親は子供みたいな人で、まだ仲が良くて、だから冷たいんだ」って言う人もいるんですけど。いや、そんな意味のないことを宮崎駿がするはずがないんですよね。  ここについては、来週の後編で解説してみます。
    ものすごい密度の「ホラー描写」
    【画像】スタジオから
     7分38秒。トンネルを抜けて不思議な光景が目の前に広がります。 (パネルを見せる)
     早いですよね。7分38秒でここまで行くから、ハリウッド映画で言っても、なかなかのペースなんですよね。  この、気持ち悪い目の看板、ちょっとつげ義春の漫画っぽいですね。ここから下の方へカメラが降りて行って、お父さん、お母さん、続いて千尋が階段を上って行きます。  無人の歓楽街が広がっている。ここは、もう、幻想の世界と現実の世界の中間なんですけど。もともと神様の神聖な土地であった場所に、バブル崩壊のちょっと前、金余りの日本が、こういう変な建物をいっぱい作ってしまい、今ではそこにお化けが住むことになった、と。
     まあ、千尋のお父さんは「バブル時代の名残」って言うんですけど。実はこういう巨大な変なテーマパークというのは、日本中に昔からあったんですね。  明治時代から、例えば、東京の浅草に富士山縦覧場というのがありました。 (パネルを見せる)
    【画像】富士山縦覧場
     これは、当時のパンフレットみたいなものなんですけど。明治20年に、浅草六区に、富士山を現実にセットとして作っちゃったんですね。高さ32メートルだから、かなり高い建物です。この頂上まで登れるというふうになっています。  写真もあります。もう、荒い写真しか残ってないんですけど。 (パネルを見せる)
    【画像】浅草富士
     手前に自転車に乗った人とか人間がいます。これが浅草富士と言われたやつですね。本当に、人間が歩いてグルグル回って登れるようになっていて、高さ32メートルだから、かなり高い建物なんですよ。  これが、明治23年に取り壊されて、後に凌雲閣という建物になりました。いわゆる浅草十二階というやつですね。まあ、ピサの斜塔の垂直に建っているみたいな建物なんですけど。  こういうのが作られたわけですね。当時の版画も残っています。 (パネルを見せる)
    【画像】浅草富士版画
     こういう建物が、浅草に建てられました。
     明治から大正のバブル期には、こういうのがエラい多かったみたいです。京王閣遊園とか、花月園遊園地とか、あとは兎月園とか。いろんな有名なものがありました。  あと、浅草の奥山風景というのは、神社仏閣のデパートと言われ、「そこに行けばあらゆる神様仏様にお参りが出来る」と言われていました。  小説では、江戸川乱歩が『パノラマ島奇談』を書いたり、『幽霊塔』を書いたりした時代です。これは『千と千尋』と似てるんですよね。「明治の末期から大正期にかけて、日本にちょっとしたバブル期が来た時に、神様をないがしろにするようなテーマパークを建てて、そこでちょっと変な事が起こる」というのが、江戸川乱歩などの話で書いてた話なんですけど。  この辺、詳しく知りたい人は、今日の放課後に資料を見せながら、ちょっと話をします。  つまり、何がいいたいのかと言うと『千と千尋の神隠し』というのは、実は破棄され、ゴーストの住み着いたテーマパークが舞台なんですよ。
    ・・・
     9分目。美味しそうな料理を見つけた千尋の両親は、無我夢中になって食べてしまう。千尋は嫌な予感がするので、それを食べずに両親の元を離れて、街の中を散策します。  このシーンですね。 (パネルを見せる)
    【画像】街と千尋 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     無人の繁華街がどこまでも広がっている。この提灯が後でいい感じになるんですけども。このカット、千尋が立っているのが画面の端っこというのが良いですよね。  あと、この影の位置に注意してください。建物の影が落ちている。これは、ほぼ真上というか、ほんのちょっと傾いた位置から日光が来てるんですけど。これが、後々の怖いことが起こる伏線になっているんですね。  もう、無駄がない。こういう無人の商店街を見せる時、わざと主人公を左端に置いて、影を反対側に落として、あくまでも明るくて、怖いことは何も起こってないのに「これから怖いことが起こるよ?」というのを画面の反対側で見せるという方法です。  ここから、どんどん怖い展開になっていきます。
     階段を上っていくと不思議な建物があります。 (パネルを見せる)
    【画像】油屋 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     立派な松が生えていて、灯籠があって、赤い欄干の太鼓橋があって、その向こうに「油屋」という巨大なお風呂屋さんが見えます。  太鼓橋があるのは、まあ実用性もあるんでしょうけど、何よりも異世界の入り口だからです。いわゆる神仙思想と言うんですかね? 中国には「仙人が住んでる場所には、必ず真中が盛り上がった太鼓橋が掛かっている」という法則があるんです。  なので、日本の昔のお金持ちが日本庭園を造る時、あれって「日本庭園」と言いながら、中国の仙人が住んでる神様の土地というのを作っているんですね。だから、必ず、橋のミニチュアを置く時には、こういう反り返った太鼓橋を置くんです。  そんな太鼓橋の巨大なものがあって、その向こうには絢爛豪華な建物が建ってるわけですね。
     11分15秒。千尋がこの太鼓橋を渡って、油屋の前に行こうとすると……本当は渡っちゃいけないんですよ。そこから先は神様の土地ですから。すると、白い服を着た少年ハクが現れて「戻れ! ここから先は行ってはいけない!」と言うんですね。 (パネルを見せる)
    【画像】ハク © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     これがそのハク少年なんですけど。「戻れ! 行ってはいけない!」と画面の正面に向かって、ちょっと近づきながら言うんですけど。この時、ハクの後ろの影が、急激に伸び始めます。  すごい勢いで夕日が沈んでるから、後ろの橋の影がギューンとすごい勢いで伸びているんです。そんな中、ハクが焦って言葉を掛けるんですけど、話しているうちに、横顔がどんどん赤くなっていって、夕焼けが迫って来て、影が横向きに伸びているのがわかるんですよね。  もうね、これは吸血鬼モノのホラー映画なんですよ。ここら辺は、メチャクチャ怖い表現ですよね。
     油屋が存在するこの神様の世界、仙人の世界では、この速度で時間が流れちゃうんですね。  現実のおよそ10倍の速度です。なんで10倍なのかというのは、まあ、後で説明しますけど。  実は、千尋にとって、この『千と千尋の神隠し』というのは、4日間の話なんですね。わずか3泊4日の話なんですけど、現実の世界では、その中で1ヶ月くらい経っているんです。1ヶ月以上かな?  この「10倍の時間」というのも、来週解説する後半のテーマに関わる大事なポイントだから、忘れないようにしておいてください。
    ・・・
     とにかく、すごい勢いで時間が流れ始めると、さっきの誰もいない街に赤い光が次々と灯って、黒い影が地面からヌーッとはえてくるわけですね。  千尋は、慌てて「お父さん、お母さん!」と言って、逃げ帰ろうとするんですけど、父親と母親は、いつの間にか、神様のお供えものを食べた罰でブタになっているわけですね。 (パネルを見せる)
    【画像】ブタになった両親 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     さらに、暗くなった街には黒い幽霊のようなものが現れます。 (パネルを見せる)
    【画像】黒い幽霊 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     この辺、上手いですよね。さっきまでの誰もいなかった街に、いつの間にか黒い影がぬーっと地面から生えてきて、不安そうに立っている千尋の周りで動き回る。  千尋が、もう両親を置いて逃げようと、一番最初の階段を下りて行くと、その階段のところからも、黒い影がどんどん歩いてきてしまうわけですね。  まあ、どんどんホラー映画になっていくわけです。
     しかし、さっき登って来た階段を下りたら、途中で水になっていることに気がつく。 (パネルを見せる)
     いつの間にか、さっきくぐったトンネルは遥か向こうにあって、そこには街の灯りが見えていて、途中は川というか、もう海みたいになっていて、帰れなくなっているんですね。  この辺、絶望的だけど美しい風景です。  宮崎駿は、こういう状況を見せるだけじゃないんですね。千尋が「もう、こんなの嘘だ、嘘だ! 消えろ、消えろ! 消えてなくなれ!」と言うと、自分の身体が透明になっていくんですよ。 (パネルを見せる)
     自分の身体が透明になっていくと同時に、絢爛豪華な渡し船が現れて、そこから化け物みたいなものが陸に上がってくるんですけど。それが見えるのが、自分の透けた手越しなんですね。  つまり、千尋が「うわっ! 私の身体が透けていって、消えてしまってる!」と恐怖の中で自分の透けた手を見つめていると、その向こうに光る船が現れているのが見える、という2つの状況。「今、何が起こっているのか?」ということと「千尋の身体に起こった変化」というのを、同時に1フレームで見せる、メチャクチャ上手いカットですね。  単なる説明っぽいカットにはせず、ちゃんとサスペンスとか次の展開が盛り込まれている。もう本当に、ここらへんのコンテは名人芸ですね。
     この船が岸に着くと、中から神様が降りてきます。 (パネルを見せる)
    【画像】船から降りる神様 © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     神様、特に日本の神様って見えないんですよ。姿がないんですね。  以前にも説明したと思うんですけど、なんで秋田のナマハゲは、あんなお面やミノを着けているのかというと、本来、神様というのは目に見えない存在なので、その周りをミノやお面で覆うことで、神様ということにするものだからです。  これは、ニューギニアとかあっちの方でも信じられているリーとかピーという精霊に近い。だから、『千と千尋の神隠し』の英語のタイトルは『Spirited Away』になってるんですね。この「Spirit」というのは、神様というよりは精霊に近いものなんですね。  そんな、姿が見えなくて、お面しかない神様なんですけど。ところが、それが千尋がいる岸の上におりてくると、身体がどんどん実体化して、本来、見えてはいけないはずの神様の姿が見えるようになるんですね。  この世界というのは、神様の世界と人間がいる現実世界の、ちょうど狭間にあるところなんです。
     こんなふうに、どんどん上陸してくるんですけど。まあ、この時の千尋は、これが神様だとはわからずに、お化けだと思っています。
     千尋は恐怖にうずくまって動けない。そこに、さっきの美少年ハクがやって来て、この世界のものを食べさせてくれるんですね。「この世界のものを何か食べないと消えてしまう」ということで、ようやっと透明になりかけていた身体が元に戻る。  さらに、ハクはさっきの油屋の脇に千尋を連れて行って「ボイラー室にいる釜爺に会って、仕事をさせて欲しいと頼むんだ。仕事をしないものは湯屋を支配している湯婆婆という魔法使いに動物に変えられてしまう」と言われます。
    ・・・
     ここまでで16分です。この16分間、ものすごい密度で、描写は完全にホラーなんですね。  ホラーなんですけども、子供がギリギリ見られるホラーとして作っている。  でも、そんなホラーの中で欲しいシーン、例えば「やってはいけないことを両親がやってしまって、一生懸命、止めるんだけども聞いてくれない」とか「嫌な予感がするのに、そこに入ってしまう」とか。あとは「まるで吸血鬼モノのように、あり得ない速度で、さっきまで空高く輝いていた太陽が、あっという間に夕日になって沈んでいって、街が暗くなり、変なものが現れる」という、すごく面白いホラー映画の展開が、わずか16分で、ザーッと目白押しにやってくるんですよ。  本当にね、これ、ホラー映画としては、世界最高の面白さだと思うんですけど。『千と千尋』って、あんまりホラーとして評価されてないんですね。
     『千と千尋』の14個ある謎のうち最初の謎、この不思議な世界はなんだったのか?  実は、古代の神聖な場所の上に、バブル時代に驕り高ぶった人間がテーマパークを作ってしまった。さらに、そのテーマパークが破棄されたおかげで、いわゆるテーマパーク全部が幽霊屋敷になってしまったんですね。それが、この不思議な世界の正体なんですよ。  つまり、これって『シャイニング』なんですね。『シャイニング』などのお化け屋敷モノを、巨大なフレームに置き換えたもの。  だから、お化け屋敷モノだって、見ている人が気付かないんですね。そうじゃなくて不思議なファンタジーの世界だって思っているんですけど。導入部のあの面白さというのは、完全にホラー映画なんです。  だけど、途中から、お化けたちの気持ちになったり、お化けたちと一緒に働くという、不思議な展開になっていくわけですね。
     そんな世界に入ってしまい、逃げられなくなった女の子の話です。  両親はブタになってしまい、自分の身体もどんどん消えていく。「どうすればいい!?」と。  こんな、ものすごいホラー映画が、実はここから先、ちょっと面白いファンタジー映画に変化していくんですね。  実は、この「現実の世界からホラーの世界に入って行くんだけど、だんだんとファンタジーに変化していく」という展開には、元ネタがあります。その元ネタは、次のコーナーで話しましょう。
    「シータから湯婆婆まで」宮崎駿のヒロイン像とその成長
    【画像】スタジオから
     ということで、いやあコメントを読む暇もない。もう35分でしょ? まだ次のコーナーも無料枠だから、今日は大変なんだよ。  ちょっと水飲むね。えらいこっちゃ、大変だ。  まだ無料放送は続くよ、大丈夫。いや、大丈夫でもないんだけどね、本当は30分でやめたいんだけど。  では、「不思議な世界の謎」をやったので、次は「湯婆婆の謎」です。
     この無料枠で絶対に語りたかったのが、この湯婆婆の話なんですよ。世間で湯婆婆が誤解されているのが、もう、僕には残念過ぎて。  お客さんというのは、基本的に「セリフで判断する」んですよ。セリフで「この人は良い人、悪い人」って考える。だから、「湯婆婆はエゲツなくて、残酷で。それに対して、電車に乗って会いに行く湯婆婆のお姉さんの銭婆は優しい」というふうに考えちゃうんですね。  そりゃ、セリフだけ見てたら、まるで「湯婆婆はエゲツなくて、銭婆は良い人」みたいに見えるんですよ。千尋も「ありがとう、おばあちゃん!」とか言って抱きついたりするもんだから、てっきり良い人だと思っちゃうんですけど。  「とんでもない! 銭婆の方が100倍怖いよ!」っていう話は、まあ、来週します。
    ・・・
     湯婆婆の正体なんですけど、魔女です。つまり、もともとは人間なんですね。  顔がデカイし、鳥に変身するけども、まあまあ、それは魔法でありまして、油屋という銭湯で、たくさんの部下たち、カエルとかナメクジとか、女の人とかを働かせてます。
     この湯婆婆の経営する油屋、「実はホワイト企業だ」というふうに言われています。  Twitterでも「どんな人にも働く意欲があれば仕事を与え、新人に対しても優劣をつけず、手柄があればしっかり褒め、理不尽な客には上司として自ら撃退する。経営者として素晴らしい才能のある魔女」と言われています(笑)。
     「理不尽な客には上司として自ら撃退する」というのが、これですね。 (パネルを見せる)
    【画像】湯婆婆とドラゴンボール © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     コンテにも「ドラゴンボール」って書いてあるんですけど。湯婆婆が、カオナシにカメハメハを発射するシーンです。この辺が『千と千尋』の遊び心なんですけど。  こういうギャグシーンって、湯婆婆の周りには、結構、多いんですよ。「湯婆婆は、こんなふうにカメハメハを放った後に、全然効かなくて、カオナシから泥をかけられて全身泥まみれになる」というギャグシーンなんですけど。  でも、お客さんは、あんまり笑わないんですね。それは、もうね、ホラーとして作って「この人は怖い人」というふうに見えちゃってるから、面白くなりようがあんまりないんです。  そこら辺を、高畑勲は「『カリオストロの城』の頃に比べて『千と千尋』にはいっぱい動きはあるんだけど、客は誰一人笑わなかった」と、すごい嫌味を言うんですけども。  こんなふうに、結構、ギャグをやってるわけですね。「お客様とて許せぬ!」という名セリフを吐きながら。これ、なかなかいいセリフだと思うんですけども(笑)。
     その他にも「住み込み環境は完全整備。制服と着替えを支給して、食事あり。理由ある休みなら全然ありで、始業は札をひっくり返すだけ。タイムカードみたいに、始業何分前にやるべきというルールはない。就業中、一時抜けても怒られないし、従業員の機転による行動なら認める」という、まあ完全なホワイト企業として書かれています。
     面白いのは、分数の関係でカットされたんですけど、釜爺と千尋がエンガチョを切るシーンのセリフとして、本来は結構長いセリフがあったんですよ。  これは、本編でカットされちゃった、コンテに残っているセリフです。 (パネルを見せる)
    【画像】釜爺のセリフ © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
    釜爺:この判子は恐ろしい。魔女の奴隷の判子だ。 千尋:私、もう奴隷かと思ってた。みんな奴隷労働させられてると思ってた。 釜爺:ふん! 俺達はれっきとした労働者だ! 自分で決めて、ここで働いているんだよ! 風呂屋にいるのも出ていくのも自由さ! 本当の名前は魔女に秘密にしているからな!

     つまり、自由契約なんですね、実は。このセリフ、カットされちゃったのが、残念なんですけど。  実は、湯婆婆って「みんなを支配している」んではなくて「自由契約でみんなを囲っている」んですね。  これが、湯婆婆の美徳。いわゆる「自分はこういうふうにあらねばならない」というプライドなんですけど。
    ・・・
     しかし、この湯婆婆にも欠点があるんですね。  それは「他人を好きになり過ぎる」ことなんですよ。  湯婆婆というのは、実に人情があり過ぎて、他人を好きになり過ぎるので「愛するものを手放せない」んですね。  例えば、坊っていう、巨大な赤ちゃん。あれはわかりやすいんですよ。あれは溺愛しているってわかるんですけど。  ハクにしても、千尋にしても、実はわりと気に入っているんですね。セリフではエゲツないことを言うんですけど、気に入っている。  だから、千尋が最後の方で銭婆に会いに行ったことを知ると、すごい怒るんですね。「なにっ!? 千尋の両親、あのブタを食べさせろ! もう食べてしまえ!」と怒るです。  基本的に、愛情が深すぎるから、一度気に入った人が自分の元を離れると、すごく許せなくなるんですね。
     と、同時に、ハクが怪我したら「もうそいつは役に立たない。捨てておしまい」と言う。  これは「好きにはなるんだけど、それは役に立つからとか、自分にいいことをしたから気に入る」ということなんですね。  つまり、「その人が役に立たなくなってしまったり、自分の元を去ってしまったら、極端に憎んだり、極端にいらないというふうになってしまう」んですよ。  湯婆婆って、こんなふうに、すごく人間味が強すぎる人なんですよね。そんな、悪い顔なんですけど、憎めないという人なんです。
    ・・・
     油屋で働いているカエルとか女の人というのは、もともと何だったのか?  これについては「元からカエルとかナメクジが、人間になった」という設定もあるし、「そうじゃなくて、全員人間で、湯婆婆のところで働けなくなったら、カエルとかナメクジになっちゃう」という設定もあって、矛盾してるんですよね。  宮崎さんも、アニメーターに聞かれる度に違うことを言うので、実はこの設定って、公式には統一されてないんですよ。  ただ、1つ言えるのは何かと言うと「湯婆婆は、カエルとかナメクジを使う」っていうことなんですね。  カエルとかナメクジというのは、昔の日本では、分類学上、1つの呼び名でくくったんですよ。  日本古来の博物学に本草学というのがあります。本草学では生き物を「人間」「獣」「鳥」「魚」って分けるんですけど、それ以外の全ての生き物を「虫」って言うんですね。  だから、蛇も虫なんですよ。マムシっていう蛇がいるのはなぜかと言うと、昔は蛇も虫に分類されていたからですね。トカゲでも、蜘蛛でも、昆虫でも、人間、獣、鳥、魚以外の小さい動物というのは、全て虫というジャンルになっています。  湯婆婆というのは「虫を愛でる人、虫を愛でる姫様」なんですね。つまり、ナウシカなんですよ、湯婆婆というのは。  ナウシカでありながら、仲間たちを対等に扱い、契約を重んじるわけですね。つまり、湯婆婆というのは、エボシ様でもあるんです。  『もののけ姫』のエボシ様が暴君化しちゃった存在なんですね。もともとはナウシカっぽかった人が、周りと戦ううちに、自分達でルールを決めて「それを守らなければいけない」と部下に強制し始める。  これも、全員に公平にやっているうちは良かったんですよ。若い頃は良かったんだけど。でも、段々と年をとって、若い頃には自分の中で抑えていた情熱みたいなものが暴走しちゃって、暴君になってしまった。そういう暴君になってしまったエボシ御前というのが湯婆婆なんです。  湯婆婆という人も、たぶん、もう少し若い頃は、もうちょっと判断もしっかりしていたし、人情家でもあったと思うんですけど。今は、自分が好きになっちゃった人とか、自分が好きになってしまった財宝というのに囚われて、以前の人間味というのが失われて、嫌われたり恐れられている。  まあ、ドーラ婆さんの未来の姿であると同時に、これ、おそらく「宮崎駿から見た鈴木敏夫」なんですね。あるいは、宮崎駿自身かもわからないです。  2人とも「気に入った人を徹底的に贔屓して、自分から離れて行った人にはすごく冷たくあしらう」ということで有名なんですけど。
     「『千と千尋』を読み解く14の謎、湯婆婆の謎」なんですけど。  宮崎駿のヒロインというのは、幼い頃はシータみたいな、すごい良い子として書くんですね。  それが、ナウシカみたいになってきて、自分の中の情熱を持つようになり、後にはエボシのように人の上に立つ立派なリーダーになるんですけど。  その後は、ドーラという自分の欲が出て来る存在になって。最後は湯婆婆という、自分の中の欲望と他人に対する愛情が、もうわからなくなって暴走していく姿になる。  これが、宮崎駿のヒロイン像なんですね。1つのサイクルなんですよ。  僕らは、ついつい、映画を見ている時は、幼い段階で固定化されて「シータはいつまでもシータのまま」とか「クラリスはいつまでもクラリスのまま」とか思っているんですけど。  宮崎駿は「自分の中でのキャラクターというのはいつもちゃんと成長している」と言ってるんですね。歳を取っている。だから、「『となりのトトロ』のサツキとメイも、もう僕の中では、30過ぎたオバサンになってて」という話をよく語っているんですけど。  こういうふうに、ちゃんとキャラクターが進化して行くというのが面白いところだと思います。
     湯婆婆というのは、正義感が強く、面倒見が良くて、約束は守る。  でも、その代わり、周りの人をつい好きになりすぎて信じられなくなり、1人になるのを怖がると、どんどん暴君化していく。  これが、宮崎駿のヒロインの進化論だと思います。
    参考文献
    オトフリート=プロイスラー、中村浩三訳『クラバート』偕成社、1980年
    柏葉幸子『霧のむこうのふしぎな町(新装版)』講談社、2004年
    押井守『誰も語らなかったジブリを語ろう』東京ニュース通信社、2017年
    宮沢賢治『新編 銀河鉄道の夜』(新潮文庫)新潮社、平成24年
    宮崎駿『スタジオジブリ絵コンテ全集13 千と千尋の神隠し』スタジオジブリ、2001年
    橋爪紳也『人生は博覧会 日本ランカイ屋列伝』晶文社、2001年
    江戸川乱歩、宮崎駿口絵『幽霊塔』岩波書店、2015年
    オトフリート=プロイスラー、大塚勇三訳『小さい魔女』学研プラス、1965年
    『ジブリの立体建造物展図録』スタジオジブリ、2014年
    スタジオジブリ責任編集『アニメーションを展示する 三鷹の森ジブリ美術館企画展示「千と千尋の神隠し」』徳間書店スタジオジブリ事業本部、2002年
    『宮崎駿「千と千尋の神隠し」の世界 ファンタジーの力』ユリイカ8月臨時増刊号、青土社、2001年
    ニュータイプ編『千尋と不思議の町 千と千尋の神隠し徹底攻略ガイド』角川書店、2001年
    『『千と千尋の神隠し』を読む40の目』キネ旬ムック、キネマ旬報社、2001年
    スタジオジブリ責任編集『The art of spirited away―千と千尋の神隠し』ジブリ・ジ・アート・シリーズ、スタジオジブリ、2001年
    叶精二『宮崎駿全書』フィルムアート社、2006年
    『「千と千尋の神隠し」千尋の大冒険』別冊COMIC BOX vol.6、ふゅーじょんぷろだくと、2001年
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    2019/11/03 #306 「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[前編]」
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    ジブリ特集
    岡田斗司夫ゼミ#212:『天空の城ラピュタ』完全解説① 〜超科学とエロス
    岡田斗司夫ゼミ#213:『天空の城ラピュタ』完全解説② 〜幻の産業革命が起こった世界
    岡田斗司夫ゼミ#297:『天空の城ラピュタ』完全解説③ 〜スラッグ渓谷とポムじいの秘密
    岡田斗司夫ゼミ#296:『崖の上のポニョ』を精神分析する〜宮崎駿という病
    岡田斗司夫ゼミ#298:『崖の上のポニョ』はどうやって生まれたか 〜空想で現実を書き換える
    岡田斗司夫ゼミ#306:『千と千尋』を読み解く13の謎[前編]
    月着陸50周年特集
    岡田斗司夫ゼミ#269:恐怖と贖罪のホラー映画『ファースト・マン』完全解説
    岡田斗司夫ゼミ#258:アポロ計画と4人の大統領
    岡田斗司夫ゼミ#250:白い悪魔“フォン・ブラウン” 対 赤い彗星“コロリョフ” 未来をかけた宇宙開発戦争の裏側
    岡田斗司夫ゼミ#291:アポロ宇宙船(前編)〜地球が静止した1969年7月21日とアポロ11号の打ち上げ
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  • 岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『千と千尋の神隠し』解説:シータから湯婆婆まで、宮崎駿ヒロインとその成長」

    2019-11-22 07:00  
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    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2019/11/22
     今日は、2019/11/03配信の岡田斗司夫ゼミ「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[前編]」からハイライトをお届けします。
     岡田斗司夫ゼミ・プレミアムでは、毎週火曜は夜7時から「アニメ・マンガ夜話」生放送+講義動画を配信します。毎週日曜は夜7時から「岡田斗司夫ゼミ」を生放送。ゼミ後の放課後雑談は「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」のみの配信になります。またプレミアム会員は、限定放送を含むニコ生ゼミの動画およびテキスト、Webコラムやインタビュー記事、過去のイベント動画などのコンテンツをアーカイブサイトで自由にご覧いただけます。  サイトにアクセスするためのパスワードは、メール末尾に記載しています。(※ご注意:アーカイブサイトにアクセスするためには、この「岡田斗司夫ゼミ・プレミアム」、「岡田斗司夫の個人教授」、DMMオンラインサロン「岡田斗司夫ゼミ室」のいずれかの会員である必要があります。チャンネルに入会せずに過去のメルマガを単品購入されてもアーカイブサイトはご利用いただけませんのでご注意ください)
     ということで、いやあコメントを読む暇もない。もう35分でしょ? まだ次のコーナーも無料枠だから、今日は大変なんだよ。  ちょっと水飲むね。えらいこっちゃ、大変だ。  まだ無料放送は続くよ、大丈夫。いや、大丈夫でもないんだけどね、本当は30分でやめたいんだけど。  では、「不思議な世界の謎」をやったので、次は「湯婆婆の謎」です。
     この無料枠で絶対に語りたかったのが、この湯婆婆の話なんですよ。世間で湯婆婆が誤解されているのが、もう、僕には残念過ぎて。  お客さんというのは、基本的に「セリフで判断する」んですよ。セリフで「この人は良い人、悪い人」って考える。だから、「湯婆婆はエゲツなくて、残酷で。それに対して、電車に乗って会いに行く湯婆婆のお姉さんの銭婆は優しい」というふうに考えちゃうんですね。  そりゃ、セリフだけ見てたら、まるで「湯婆婆はエゲツなくて、銭婆は良い人」みたいに見えるんですよ。千尋も「ありがとう、おばあちゃん!」とか言って抱きついたりするもんだから、てっきり良い人だと思っちゃうんですけど。  「とんでもない! 銭婆の方が100倍怖いよ!」っていう話は、まあ、来週します。
    ・・・
     湯婆婆の正体なんですけど、魔女です。つまり、もともとは人間なんですね。  顔がデカイし、鳥に変身するけども、まあまあ、それは魔法でありまして、油屋という銭湯で、たくさんの部下たち、カエルとかナメクジとか、女の人とかを働かせてます。
     この湯婆婆の経営する油屋、「実はホワイト企業だ」というふうに言われています。  Twitterでも「どんな人にも働く意欲があれば仕事を与え、新人に対しても優劣をつけず、手柄があればしっかり褒め、理不尽な客には上司として自ら撃退する。経営者として素晴らしい才能のある魔女」と言われています(笑)。
     「理不尽な客には上司として自ら撃退する」というのが、これですね。 (パネルを見せる)
    【画像】湯婆婆とドラゴンボール © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
     コンテにも「ドラゴンボール」って書いてあるんですけど。湯婆婆が、カオナシにカメハメハを発射するシーンです。この辺が『千と千尋』の遊び心なんですけど。  こういうギャグシーンって、湯婆婆の周りには、結構、多いんですよ。「湯婆婆は、こんなふうにカメハメハを放った後に、全然効かなくて、カオナシから泥をかけられて全身泥まみれになる」というギャグシーンなんですけど。  でも、お客さんは、あんまり笑わないんですね。それは、もうね、ホラーとして作って「この人は怖い人」というふうに見えちゃってるから、面白くなりようがあんまりないんです。  そこら辺を、高畑勲は「『カリオストロの城』の頃に比べて『千と千尋』にはいっぱい動きはあるんだけど、客は誰一人笑わなかった」と、すごい嫌味を言うんですけども。  こんなふうに、結構、ギャグをやってるわけですね。「お客様とて許せぬ!」という名セリフを吐きながら。これ、なかなかいいセリフだと思うんですけども(笑)。
     その他にも「住み込み環境は完全整備。制服と着替えを支給して、食事あり。理由ある休みなら全然ありで、始業は札をひっくり返すだけ。タイムカードみたいに、始業何分前にやるべきというルールはない。就業中、一時抜けても怒られないし、従業員の機転による行動なら認める」という、まあ完全なホワイト企業として書かれています。
     面白いのは、分数の関係でカットされたんですけど、釜爺と千尋がエンガチョを切るシーンのセリフとして、本来は結構長いセリフがあったんですよ。  これは、本編でカットされちゃった、コンテに残っているセリフです。 (パネルを見せる)
    【画像】釜爺のセリフ © 2001 Studio Ghibli・NDDTM
    釜爺:この判子は恐ろしい。魔女の奴隷の判子だ。 千尋:私、もう奴隷かと思ってた。みんな奴隷労働させられてると思ってた。 釜爺:ふん! 俺達はれっきとした労働者だ! 自分で決めて、ここで働いているんだよ! 風呂屋にいるのも出ていくのも自由さ! 本当の名前は魔女に秘密にしているからな!

     つまり、自由契約なんですね、実は。このセリフ、カットされちゃったのが、残念なんですけど。  実は、湯婆婆って「みんなを支配している」んではなくて「自由契約でみんなを囲っている」んですね。  これが、湯婆婆の美徳。いわゆる「自分はこういうふうにあらねばならない」というプライドなんですけど。
    ・・・
     しかし、この湯婆婆にも欠点があるんですね。  それは「他人を好きになり過ぎる」ことなんですよ。  湯婆婆というのは、実に人情があり過ぎて、他人を好きになり過ぎるので「愛するものを手放せない」んですね。  例えば、坊っていう、巨大な赤ちゃん。あれはわかりやすいんですよ。あれは溺愛しているってわかるんですけど。  ハクにしても、千尋にしても、実はわりと気に入っているんですね。セリフではエゲツないことを言うんですけど、気に入っている。  だから、千尋が最後の方で銭婆に会いに行ったことを知ると、すごい怒るんですね。「なにっ!? 千尋の両親、あのブタを食べさせろ! もう食べてしまえ!」と怒るです。  基本的に、愛情が深すぎるから、一度気に入った人が自分の元を離れると、すごく許せなくなるんですね。
     と、同時に、ハクが怪我したら「もうそいつは役に立たない。捨てておしまい」と言う。  これは「好きにはなるんだけど、それは役に立つからとか、自分にいいことをしたから気に入る」ということなんですね。  つまり、「その人が役に立たなくなってしまったり、自分の元を去ってしまったら、極端に憎んだり、極端にいらないというふうになってしまう」んですよ。  湯婆婆って、こんなふうに、すごく人間味が強すぎる人なんですよね。そんな、悪い顔なんですけど、憎めないという人なんです。
    ・・・
     油屋で働いているカエルとか女の人というのは、もともと何だったのか?  これについては「元からカエルとかナメクジが、人間になった」という設定もあるし、「そうじゃなくて、全員人間で、湯婆婆のところで働けなくなったら、カエルとかナメクジになっちゃう」という設定もあって、矛盾してるんですよね。  宮崎さんも、アニメーターに聞かれる度に違うことを言うので、実はこの設定って、公式には統一されてないんですよ。  ただ、1つ言えるのは何かと言うと「湯婆婆は、カエルとかナメクジを使う」っていうことなんですね。  カエルとかナメクジというのは、昔の日本では、分類学上、1つの呼び名でくくったんですよ。  日本古来の博物学に本草学というのがあります。本草学では生き物を「人間」「獣」「鳥」「魚」って分けるんですけど、それ以外の全ての生き物を「虫」って言うんですね。  だから、蛇も虫なんですよ。マムシっていう蛇がいるのはなぜかと言うと、昔は蛇も虫に分類されていたからですね。トカゲでも、蜘蛛でも、昆虫でも、人間、獣、鳥、魚以外の小さい動物というのは、全て虫というジャンルになっています。  湯婆婆というのは「虫を愛でる人、虫を愛でる姫様」なんですね。つまり、ナウシカなんですよ、湯婆婆というのは。  ナウシカでありながら、仲間たちを対等に扱い、契約を重んじるわけですね。つまり、湯婆婆というのは、エボシ様でもあるんです。  『もののけ姫』のエボシ様が暴君化しちゃった存在なんですね。もともとはナウシカっぽかった人が、周りと戦ううちに、自分達でルールを決めて「それを守らなければいけない」と部下に強制し始める。  これも、全員に公平にやっているうちは良かったんですよ。若い頃は良かったんだけど。でも、段々と年をとって、若い頃には自分の中で抑えていた情熱みたいなものが暴走しちゃって、暴君になってしまった。そういう暴君になってしまったエボシ御前というのが湯婆婆なんです。  湯婆婆という人も、たぶん、もう少し若い頃は、もうちょっと判断もしっかりしていたし、人情家でもあったと思うんですけど。今は、自分が好きになっちゃった人とか、自分が好きになってしまった財宝というのに囚われて、以前の人間味というのが失われて、嫌われたり恐れられている。  まあ、ドーラ婆さんの未来の姿であると同時に、これ、おそらく「宮崎駿から見た鈴木敏夫」なんですね。あるいは、宮崎駿自身かもわからないです。  2人とも「気に入った人を徹底的に贔屓して、自分から離れて行った人にはすごく冷たくあしらう」ということで有名なんですけど。
     「『千と千尋』を読み解く14の謎、湯婆婆の謎」なんですけど。  宮崎駿のヒロインというのは、幼い頃はシータみたいな、すごい良い子として書くんですね。  それが、ナウシカみたいになってきて、自分の中の情熱を持つようになり、後にはエボシのように人の上に立つ立派なリーダーになるんですけど。  その後は、ドーラという自分の欲が出て来る存在になって。最後は湯婆婆という、自分の中の欲望と他人に対する愛情が、もうわからなくなって暴走していく姿になる。  これが、宮崎駿のヒロイン像なんですね。1つのサイクルなんですよ。  僕らは、ついつい、映画を見ている時は、幼い段階で固定化されて「シータはいつまでもシータのまま」とか「クラリスはいつまでもクラリスのまま」とか思っているんですけど。  宮崎駿は「自分の中でのキャラクターというのはいつもちゃんと成長している」と言ってるんですね。歳を取っている。だから、「『となりのトトロ』のサツキとメイも、もう僕の中では、30過ぎたオバサンになってて」という話をよく語っているんですけど。  こういうふうに、ちゃんとキャラクターが進化して行くというのが面白いところだと思います。
     湯婆婆というのは、正義感が強く、面倒見が良くて、約束は守る。  でも、その代わり、周りの人をつい好きになりすぎて信じられなくなり、1人になるのを怖がると、どんどん暴君化していく。  これが、宮崎駿のヒロインの進化論だと思います。
    記事全文は、アーカイブサイトでお読みいただけます。
    2019/11/03 #306 「『千と千尋の神隠し』を読み解く13の謎[前編]」
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