産業新潮
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4月号連載記事
■その21 「現場重視」の日本型経営が競争力の秘密
●人間は狂ったサルか?
「人間は狂ったサルである」と表現されることがしばしばある。縄張り争いのために、敵(国)を攻撃して殲滅するだけでは無く、核兵器などというものまで生みだして、敵だけでは無く自国も含めた人類滅亡の危機を招く。
さらには、存在するかどうかもわからない「神」のために凄惨な殺し合いを行う。果ては、自分の信じる神を敬わないからと言って、生きたまま焼き殺したり、車で八つ裂きにしたりする。
このような人類を「正気」だというのは難しいであろう。
それでは、人類が狂っている原因は何か?
人間の知性や思考を、他の動物から際立たせている、極めてよく発達した大脳皮質にあるのだ。もちろん、大脳皮質が発達することによって、人間の高度な文化・文明が進展した(因果関係が逆の考え方もある)のは間違いが無いが、「天才と◎◎は紙一重」という言葉があるように、何事にも表と裏、作用と副作用がある。
例えば、宗教や特定思想に洗脳されて、場合によっては「殺人」まで犯すようになるのは、大脳皮質が発達した人間の特徴である。
●机上のクウロニストの弊害
勉強ができる受検秀才は、多分大脳皮質が発達しているのであろう。頭の中だけで理論を構築すること、つまり「机上の空論」にたけている。
このような人々を「机上のクウロニスト」と呼ぶことにしよう。
彼らは、その能力によって「素晴らしいプラン」を構築することができる。
しかし、プランはあくまでプランである。うまくいくかどうかはやってみなければわからない。
科学というものが、その厳しい現実を如実に示してくれる。どのような素晴らしい理論であっても、実験や観測によって検証されなければ、「事実」とはみなされない。ニュートンやアインシュタインの精緻な理論体系でさえ、目覚ましく発展する科学上の新発見・新研究によって、どんどん修正されていく。
つまり、科学というものは、理論を実験・観察によって確かめることによって発達してきたのだ。
「国富論」を著し、現代経済学の源流とも言えるアダム・スミスは、「オイスタークラブ」というランチ会をしばしば開き、天文学者を始めとする当時の第一線の自然科学者との意見交換を活発に行った。「国富論」もそのような自然科学的思想がベースになって書かれたといえる。
現在のビジネス・経済においても同様だ。机上のクウロニストがはびこるようであれば、経済・ビジネスの発展は望めない。
●机上のクウロニスト養成機関
ピーター・F・ドラッカーは、「学校を卒業したばかりで現場経験の無い若者を本社勤務にいきなり配属する風潮は、本人にも会社にも不幸である」と述べている。
また、「現場を経験して本社勤務になった後でも、『現場感覚』を忘れないよう定期的に現場の仕事に戻るべき」とも主張している。
さらに、MBAホルダーが、ろくに現場経験も無いのに、本部で重用されることにも批判的だ。
そもそも、MBAスク―ルを始めとする学校では、「すでに解決された事例」しか教えない。受検秀才は、「答えがすでにある問題」を解く能力が高いということである。
しかし、我々がビジネスで直面する課題の多くは「正解が一つでは無い」し、誰も解いたことが無いものが大部分だ。似たように見えても、社会・経済環境さらには、自社内の状況も刻一刻と変化するから、過去の正解が今も正解であるとは言えない。
ところが、机上のクウロニストは、自分の頭の中だけで、立派なプランを創り上げる。
頭の中であれば、どのような空想や妄想も自由であるが、それが現実に合うとは限らない。そして、大脳皮質が極度に発達した机上のクウロニストは、まるで宗教を信じるかのように自説に固執し「私の机上の空論がうまくいかないのは、やり方が悪いせいだ」と考えがちだ。
しかし、科学において、どのような優れた理論でも、実験・観察の結果修正されていくのと同じように、ビジネスプランも、「現場での実験・観察」によって修正されるべきなのだ。そもそも、ほぼすべてのビジネスプランというのは、理論にも至らない「仮説」にしか過ぎないのだから、「現場」に答えを聞くしか方法が無いということである。
<続く>
続きは「産業新潮」
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4月号をご参照ください。
(大原 浩)
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