
「性格を変えて遊ぼうぜ!」の続きです!(#1,#2,#3,#4)
このシリーズでは、ジャーナリストのオルガ・カザンが、最新のパーソナリティ研究をもとに行った「性格いじり」実験をベースに、いかにすれば自分の性格を変えていけるのかをまとめております。そこで前回は協調性について見てみたので、今回は誠実性の介入をチェックしてみましょうー。
未来の自分を脳内再生してズボラを直す
「やるべきことは分かっているのに、なぜか体が動かない」「5分だけSNSを見るつもりが、気づけば1時間」――みたいな問題にハマった経験は多くの方にあると思います。「先延ばしの沼」に沈んで抜け出せなくなるような瞬間っすね。
心理学でいう「誠実性」ってのは、計画性・自己抑制・責任感といった“やるべきことをやり抜く力”をまとめたパーソナリティのこと。ビッグファイブの中でも人生のアウトカムを左右しやすい特性のひとつとされてまして、このパーソナリティ特性が高い人は、仕事のパフォーマンスや健康状態が安定しやすく、収入も高くなる傾向が報告されているんですよ(R,R)。一方で、誠実性が低いと「締切ギリギリ」「片づけが苦手」「衝動買いが増える」などの問題が起きやすくなりますんで、人生の基礎体力としてぜひ鍛えておきたい要素と申せましょう。
しかし、勤勉性を上げるのは簡単ではありません。なぜなら「勤勉性を上げるための練習」そのものに勤勉さが必要、というパラドックスがあるからです。そこで有効なのが、未来の自分を映像的にイメージして、今を変えるエピソード未来思考です。
が、ご存じのとおり、このような問題が起きるのは、あなたの意志が弱いからでも、根性が足りないからでもありません。ここ十数年の心理学的な研究を見てみると、やるべきことができない問題の正体は「未来が十分に見えていないこと」だとされているんですよね(ここらへんは「YOUR TIME」で説明しましたな)。これがどういうメカニズムかと言いますと、
- 人間の脳は「現在バイアス」というクセを持っており、遠い未来よりも“今”の報酬を過大評価してしまうようにできている。
- さらに、未来の出来事を思い描くとき、前頭前野と海馬の連携がうまく働かないと、未来の自分を「他人のように」感じてしまう傾向もある。
- その結果、未来の損失や後悔がリアルに感じられず、モチベーションの燃料が弱くなる。
みたいな感じです。そのせいで、「今サボると未来の自分がどんな気持ちになるのか?」ってのを具体的に想像できなくなり、結果として“今だけ得をした気分”を優先してしまうってことですな。脳は“リアルに感じられるもの”しかモチベーションの燃料にしづらいため、未来がぼやけているほど目先の誘惑に流されやすくなるわけです。つまり、未来が見えないほど誠実性が下がってしまうのは、脳の構造的な仕様でもあるわけです。
ってことで、オルガ・カザンさんは、この問題を解決するために「未来を感じる力」を鍛える実験を実施。特に個人的にも実用度が高いと思っている「エピソード未来思考(Episodic Future Thinking)」を使った介入を繰り返してまして、これがなかなか面白いんですよ。
「エピソード未来思考」は脳科学的に合理的な方法
「エピソード未来思考」は、端的に言えば「未来に起きるネガティブとポジティブな事象を頭の中で再現する」技法のことであります。単に「将来こうしたいなー」と抽象的に考えるのではなく、五感を使って細部まで具体的に想像するのがポイントでして、たとえば以下のようにイメージします。
- 夜中の1時、スマホの光で目が乾いている。
- 背中が重く、心の中で「また今日もやらなかった」とつぶやいている。
- 明日に回したタスクを思い出し、ベッドの中でため息が出る。
このようにネガティブな想像をすることで「未来の痛み」を生々しく感じられるようになり、目の前の誘惑に対してより強いブレーキが働くようになるわけです。
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