HIDEちゃん、お誕生日おめでとう。
 
 いつもたくさんのみんなに夢と幸せをありがとう。
 
 今年も誕生日の手紙を送るね。
 
 
 
 僕の記憶にあるHIDEの姿とか、僕とHIDEの二人だけのエピソードとかさ、いろいろな形で文章にしているけれど、僕なりによく知っているHIDEの姿を伝えたくて残したくてね、書いてる。
 
 ただ、さすがにこれだけ書いてるとさ、もう記憶にしまってある新しいエピソードなんかも、それほどなくてね、だから別にわざわざ探すこともないから、いつものようにHIDEちゃんにありがとうだけでも伝えようかな、って思っていたんだ。
 
 そうしたらさ、笑っちゃった。
 
 またひとつ気づいちゃって・・・。

 とても大きなことに。


 
 HIDEちゃんさ、僕がいつも「優しくて、はにかむ坊やのようなひでちゃん」っていう風に書くの、抵抗ある?
 
 だってさ、HIDEちゃんがラジオで僕のことを話してたのをこの前、聞かせてもらったらさ、やっぱりかっこいいロックスターがお世話になったプロデューサーの人について話す、みたいな感じだったから。
 
 でもあの頃、実際にはさあ、隣に座ってる僕が一人で色々話すのを、煙草咥えながら黙って聞いてて、時々浮かんだイメージを、そのまま言葉にして僕に話してくれたりしてたじゃんか。
 
 だから僕は、HIDEちゃんとは仲のいい友だちみたいだな、っていつも感じてたよ。
 
 でも、やっぱりロックスターだもんね、とびきりストイックな姿勢で生きてて、いつも観てる人の度肝を抜くこと思いついて、それを披露しては観る人を興奮の渦に巻き込むHIDEちゃんだったもんね。
 
 もちろん、ステージを見守ってる時は、僕も皆んなと同じように、HIDEちゃんのカッコよさに痺れてたよ。
 
 ただ、HIDEちゃんのピュアさがね、特別だったから・・・
 
 そのピュアさと、ファンや周りの人たちやメンバーへの優しさがさ、半端なかったから・・・

 僕はそんなHIDEちゃんの姿に、赤ちゃんみたいなものを強く感じ取っていたからね。
 
 それがすごく嬉しかったし。
 
 一緒に飲んでる時はよく感じてたよ、HIDEちゃんだけが特別に持ってる、その優しさをね。
 
 その優しさに胸を熱くしながら、HIDEちゃんが誰かのことを想って悔しそうにしている横顔を、僕はいつも黙って見つめていたんだから。
 
 
 
 それでね、今日HIDEちゃんに伝えたいな、って思ったのは、その優しさがどこからきていたのか、ってことなんだよね。
 
 考えてみれば当たり前のことで、いや、当たり前過ぎてこれまで気にしていなかったんだけどね。
 
 僕ね、改めて気づいたんだ。
 
 HIDEちゃんって、凄く・・・

 凄くね、

 強かったんだな、って。
 
 強くなきゃ人に優しくできない、っていうのはとても当たり前のことなんだけど。
 
 HIDEちゃんがすごく強い人だったんだ、ってさ、僕はついうっかり見過ごしていた気がするんだ。
 
 
 
 
 どんな逆境にもめげないYOSHIKIの強さや、誇りを胸に決して負けるような姿を見せないTAIJIの強さとか。
 
 不動でびくともしないPATAの強さや、誰にどう言われてもその言葉を素直に受け止めるTOSHIの強さとかね。
 
 それぞれの強さがあってさ、ついあまり気にしていなかったみたいなんだよね、僕は。
 
 でも考えてみればさ、そんなメンバーを黙って見守って、バンドのこだわりとファンの気持ちとの関係にも気を配って、他のメンバーのこだわりが周りの人たちに誤解を生まないように密かに動いたりしてたHIDEちゃんの強さがさ、本当にバンドを支えてたんだよね。
 
 当たり前過ぎて気づいてなかったみたいなんだ。
 
 30年も気づかなかったなんて、僕も本当にどうかしてる。
 
 でも、僕が気づかないくらいに、HIDEちゃんの強さは当たり前だったのかも知れない。
 
 ちょうど、呼吸ができなかったらアウトなのに空気の存在を意識してない・・・みたいにね。
 
 
 
 
 でも気づいてみると、納得のいくことが色々あるんだ。
 
 どんなに忙しくていろんな重圧にさらされていても、僕がHIDEちゃんの隣に並んで話をしながら心地良さを感じてたのは、きっとHIDEちゃんの強さに安心してたからなんだ。
 
 YOSHIKIもきっとそう。
 
 強いのが当たり前のYOSHIKIが安心して前進できてたのは、HIDEちゃんの強さに守られていたからなんだね。
 
 なんだ、そう考えてみれば、他のメンバーもそうじゃんか。
 
 スタッフも皆んなそう。

 そして何より、ファン・・・。
 
 HIDEちゃんの強さに守られながら、安心してXのファンでいられたんだね。
 
 HIDEちゃん、ありがとうね。
 
 
 
 HIDEちゃんが優しいのは、HIDEちゃんが強いから。
 
 当たり前過ぎて気づかなかったけど、僕はそれで良かったと思ってる。
 
 だって、もしもあの頃、僕がHIDEちゃんにそのことを伝えたとしたら、きっとHIDEちゃんは煙草の煙を吐き出しながら不機嫌そうにゆっくり首を傾けて、黙ってしまうに違いないから。
 
 強いのはロックスターだから当たり前。
 
 自分のことを見つめる暇があったら誰かのために動く。
 
 それがHIDEちゃんだからね、僕に強いって言われても何も変わらない。
 
 でも、もし僕が伝えたら、ひょっとするとHIDEちゃんにこう返されたかも知れないな。
 
 「津田だって強いよ」って。
 
 わかんない。
 
 どうなのかわかんないけど、まあいいや。
 
 だって大切なことは、お互いあまり言葉にしなかったもんね。
 
 だからさ、HIDEちゃん。
 
 あの頃伝えなかった代わりに、僕はこれからもHIDEちゃんの優しさを、たくさんの人たちに伝えていくからね。
 
 僕からのありがとうに、HIDEちゃんのことを想う皆んなの気持ちをきちんと重ねて、伝えていくからね。
 
 そしてこれからは、HIDEちゃんの強さも伝えていくことにするからね。
 
 
 
 HIDEちゃん。
 
 お誕生日おめでとう。
 
 たくさんの夢と光をありがとう。
 
 皆んなに、優しさと強さをありがとう。
 
 いつも見守ってくれて、ありがとう。
 
 永遠をありがとう。
 
 おめでとう、ヒデちゃん。


 2020年12月13日  津田直士



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過去、12月13日に配信されたhideへのメッセージはこちら

2019年 https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar1843855

2018年 https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar1708981

2017年 https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar1381494

2015年 https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar928291

2014年
(1) https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar686222

(2) https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar689878

(3) https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar696197

2013年 https://ch.nicovideo.jp/tsudanaoshi/blomaga/ar412360

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【 津田直士プロフィール 】音楽プロデューサー/作曲家 
Sony Music在籍時に「BLUE BLOOD」「Jealousy」「ART OF LIFE」
のCo ProducerとしてX JAPAN(当時はX)をプロデュース 
インディーズ時代から東京ドーム公演までをメンバーと共に駆け抜けた記憶
の一部は、映画『WE ARE X』の中、インタビューという形で語られている。
また、自署「すべての始まり」にはその記憶のすべてが描かれている。

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