マル激!メールマガジン
印鑰智哉氏:アマゾンが燃えている本当の理由を知っていますか
マル激!メールマガジン 2019年10月23日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第967回(2019年10月19日)
アマゾンが燃えている本当の理由を知っていますか
ゲスト:印鑰智哉氏(日本の種子を守る会アドバイザー)
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アマゾンがなぜ燃えているか、その本当の理由を一体どれだけの人が知っているだろう。
アマゾンの森林火災は以前から続いているが、今年に入りその規模に拍車が掛かったこともあり、一部ニュースで取り上げられるようになった。今年8月の時点でアマゾン流域の森林の焼失面積は1万8629平方キロメートルにのぼり、昨年の同時期から倍増している。
報道レベルではアマゾンの森林火災は焼き畑農業が原因だというのが定説になっているし、それが全く間違っているわけではない。しかし、食の安全や農業問題の市民運動に従事し、ブラジルの開発問題にも詳しい印鑰智哉氏によると、アマゾン流域の焼き畑はブラジルの現政権の開発政策と密接に絡み合っており、その一翼、いやかなり大きな責任の一端を日本も担っているのだと言う。
問題は牛肉と大豆にある。現在のブラジルの主要輸出品目となっている牛肉と大豆は、アマゾン流域を開墾した大規模なプランテーションで栽培されるようになっているが、それはブラジル南部の都市部の人口増を受けて、かつて放牧地が盛んだったセラード地方で大豆が栽培されるようになり、その分放牧地がアマゾン流域に押し出されるようになった結果だと印鑰氏は説明する。つまり、グローバルマーケットで需要のある大豆がセラードにせり出してきたために、放牧地が更に北側のアマゾンに押し出される形になった。しかし、そこは熱帯雨林のジャングルだ。そこで、アマゾン流域で放牧をするために、何者かが意図的に森を燃やしているというのだ。
しかも、数々の暴言で知られ、ブラジルのトランプの異名を取る現在のボルソナロ大統領は、本来は憲法で禁止されているアマゾン開発を公言して大統領に就いた人物だ。当然警察の取り締まりも甘い。
実は日本はアマゾン開発に古くから関わってきた。1974年に当時の田中角栄首相とブラジルのガイセル大統領との間でセラード開発事業が合意されたのを受けて、日本のJICAと二人三脚で商社が相次いでブラジルのセラード地方南部からアマゾン東部に及ぶ広大な地域を開発し、ビジネスを展開してきた。その対象品目は大豆からユーカリ、サトウキビ、コーヒー、鉄鋼、ボーキサイトなど多岐に渡る。
ボルソナロ政権の下でアマゾンの先住民の生活が脅かされたり、火災によってアマゾン流域の原生林が破壊されたりする現状を目の当たりして、EU諸国ではさまざまな懸念が表明され、一部は資金提供の中止や輸入停止などの措置が実行に移されてきている。しかし、この8月にブラジルを訪問した吉川農水相は、ブラジル農畜産相との会談で両国の食肉や農産物の貿易について様々な意見交換が行われたことは報道されているが、その会談で日本側がアマゾンの森林火災について懸念を表明したというような報道は一切見当たらなかった。
印鑰氏は、日本でアマゾン問題を詳しく取り上げるメディアがほとんどないため、日本人はEU諸国の人々と比べ、アマゾン森林破壊の一端を私たちの消費活動が担っているという意識が著しく低いと指摘する。
今回のマル激はアマゾンで森林火災が発生する歴史的、構造的な背景とそこに深く関わってきた日本企業のアマゾン開発、そしてわれわれの日々の消費生活とこの問題がどう関わっているのかなどについて、印鑰氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。
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今週の論点
・放牧と大豆耕作が広げるアマゾンの火災
・実は日本が大きくかかわってきた、ブラジルの開発
・懸念を表明し対策を取る世界と、真逆の対応をする日本
・日本に横たわるメディア、教育、市民運動の問題
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■放牧と大豆耕作が広げるアマゾンの火災
神保: 今回はアマゾン、ブラジルの話です。宮台さん、ブラジルというと、まず何を思い浮かべますか。
宮台: 80年代はボサノヴァが好きだったので、アントニオ・カルロス・ジョビンのアルバムばかり聴いていました。90年代に入ると今度はF1マニアになったので、そこからはブラジルといえばアイルトン・セナですね。そして2000年代に入ると、森、あるいはアマゾンがモチーフの映画が出てきました。最近だと、マル激でも扱った『彷徨える河』。また、来年は僕の大好きなタイ人監督、アピチャートポン・ウィーラセータクンの『メモリア』もあります。
また、僕はこの十数年間、人類学の新しい展開を追いかけていて、エドゥアルド・ヴィヴェイロス・デ・カストロという人類学者が、アマゾンのリサーチを通じて自身の世界観が変わったといいます。森の世界観、あるいは森の哲学と呼ばれるべきもので、ゼミでも何年もフォローしています。
神保: 僕が思い起こすのは、ジャイアント馬場のライバル、ボボ・ブラジルくらいでしたが、今回の森林火災はきちんと一回やりたいと思っていました。これは単に地球規模の環境問題ということではなくて、因果関係を見ると、実は日本と決して無関係ではないことがわかります。それも、市民であり、特にメディアの人間であるわれわれにも、実は非常に大きな責任があるということが、今回勉強させていただいてよくわかりました。
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