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第249号 2017.12.5発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…天皇陛下の退位が再来年4月30日、新天皇の即位が5月1日と決まった。問題は「5月1日」という即位の日程だ。当初、政府は「1月1日」とする方針を示したが、これは政府が宮内庁にも相談せず、天皇陛下のご意向など一切無視して勝手に決めたものである。当然宮内庁は反発し、年度替わりの節目でもある「4月1日即位」案を提示したが、官邸はそれにも乗ろうとしなかった。理由は「メンツ」、ただそれだけである。何から何まで陛下のご意思を無視し、侮辱する安倍晋三を許してはならない!
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…安倍首相の太鼓持ち・小川榮太郎が10月に出版した『徹底検証「森友・加計事件」朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(飛鳥新社)は産経新聞を中心に大々的に宣伝され、発売たちまち9万部に達しているという。ネトウヨが恥部を慰撫するだけの本ならまだ良いが、問題は、この本が自民党にとって「モリカケ追及逃れのバイブル」になっていることだ。
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!国内大手メーカーの不祥事が続出している原因は?「女子力」も女性差別な表現?恋多き小林先生にとって無駄な恋愛ってあった?まゆゆや黒木瞳がゾンビ化したら冷静にドタマかち割れる?日馬富士の引退をどう思う?昆虫食は日本にも波及する?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第255回「譲位を巡り、天皇を侮辱する安倍晋三」
2. しゃべらせてクリ!・第207回「カメたちがんばれ!ぽっくん体重増量中!の巻〈前編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第59回「トンデモ本出現! 自民党大量購入の『モリカケ逃れ』バイブル」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第255回「譲位を巡り、天皇を侮辱する安倍晋三」

 天皇陛下の退位が再来年4月30日、新天皇の即位が5月1日と決まった。
 日付が違うことで、「空位」の時間が生じるのではないかという懸念もあったが、これは退位が「4月30日が終わる瞬間」、即位が「5月1日が始まる瞬間」に行われる、つまり同時であるため問題はないらしい。
 だが問題は、「5月1日」という即位の日程だ。
 当初、政府は「1月1日」とする方針を示した。
 これは政府が宮内庁にも相談せず、天皇陛下のご意向など一切無視して勝手に決めたもので、宮内庁の西村泰彦次長は定例記者会見で「1月1日は皇室にとり極めて重要な日。譲位、即位に関する行事を設定するのは難しい」と難色を示した。
 宮内庁が退位を巡って公の場で言及するのは異例の事態であり、しかもこれを表明したのが、官邸が宮内庁をコントロールするために送り込んだ人材だったはずの西村というのも、実に皮肉な話だった。
 再来年の1月7日は、昭和天皇の崩御から30年の式年祭が行われる。今上陛下は父親である昭和天皇の三十年祭を自ら執り行いたい意向であることは明らかで、その1週間前に退位させるというのは非常識としか言いようがない。
 宮内庁もこの点には特にこだわりを見せ、年度替わりの節目でもある「4月1日即位」案を提示、官邸側に年末年始と3~4月の皇室行事を示し、どちらが皇位継承に伴う陛下と皇太子殿下の負担が少ないか説明したという。

 ところが、官邸は1月1日即位案を撤回したものの、宮内庁、つまりは天皇陛下のご要望である4月1日即位案にも乗ろうとしなかった。
 理由は「メンツ」、ただそれだけである。
 天皇退位特例法には、退位の期日を「政令」で決めるとしている。政令は閣議決定によって定められ、その主体は内閣であり、トップは首相ということになっている。官邸幹部は「最後は政治が決めるんだ」と言い放ったという。
 つまり完全に「国民主権」の意識で、政治のトップが天皇よりも上だと信じ切っているのである。
 しかも官邸は、もともとは天皇の退位すら認めず「摂政」で済まそうとしており、しぶしぶ退位を認めることになっても「一代限りの特例」にするつもりだった。それが事実上の恒久制度化まで妥協を強いられたため、ここでも「メンツを潰された」という恨みの念を抱いていた。
 さらには、4月1日即位案の一報を朝日新聞が報じたことから、安倍晋三が「朝日が報じたとおりにはさせない」と思ったのではないかという推測まである。

 官邸は秘かに「1月1日」「4月1日」以外の日程案を探り、9月には5案になっていたという。
 この作業は宮内庁には全く知らされずに行われた。そして、退位・即位の日程を決める皇室会議が12月1日に行われることが宮内庁に知らされたのが、わずか10日前の21日夜。しかも宮内庁の山本信一郎長官はこの日の報道で初めて「5月1日即位案」を知り、「まったく知らない。分からない」と記者団に硬い表情で繰り返した。
 5月1日案が表に出てから、皇室会議による決定までたったの10日。これでは報道各社の世論調査も間に合わず、4月1日と5月1日のどちらがいいかを国民に問うこともできない。もちろん、政府はこのタイミングも計算していたはずだ。
 そして12月1日の皇室会議には、どういうつもりかメンバーではない菅官房長官が本来宮内庁長官の据わる位置に陣取ってにらみを利かせており、そんな異常な状況の中で4月30日退位・5月1日即位という日程が決められてしまった。
 安倍政権の本音はこうだろう。
「天皇よりも政治の方が上なんだ! さんざん安倍政権に楯突きやがって、これ以上天皇の言うことなんか、聞いてたまるか! 何の意味もない5月1日即位という日程にしてやったぞ! ザマー見やがれ!!」

 何の意味もない5月1日即位という日程を正当化するために、予算案審議や統一地方選が終わった後で静かな環境で迎えられるだの、連休が増えるだのということまで報道されているが、そんなものは全く理由にならない。
 そもそもこの日程では、高森明勅氏が指摘しているように、新天皇即位の行事の集大成であり、最も重要である大嘗祭に新穀を献上する田んぼを選定する際に大きな支障が起こることが懸念されている。
 安倍晋三は、大嘗祭の重みを全く理解していないのだろう。
 というか、安倍は「大嘗祭」が読めるかどうかも分かったものではない。