第273号 2018.6.19発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしの人たち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…6月9日、神奈川県内を走行中の東海道新幹線のぞみの車内で、乗客3人が殺傷される事件が起きた。犯人の22歳男性は人間関係がうまく築けず疎外され、日頃から「俺なんて価値のない人間だ。自殺したい」と自暴自棄になっていたという。そうさせた社会が悪い、犯人も被害者であるかのような言説は大嫌いであるが、今回の事件に関しては、犯人について考えておかなければならないことがある。犯人は「発達障害」だったという報道があるのだ。もちろん、発達障害の人間は凶悪犯罪を起こす可能性が高いなどという事実はなく、そんな偏見があってはならない。だからこそ、偏見を取り除くためにも発達障害についての正確な知識を持ち、これと事件に関連があったのかなかったのかを明らかにする必要がある。
※「泉美木蘭のトンデモ見聞録」…芸術家と偏執性シリーズ、今回はアウトサイダー・アートとして発見され世界に衝撃を与えた人物、ヘンリー・ダーガーを紹介!81年間の生涯を孤独のままで過ごし、周囲の人間からは「狂人」「みすぼらしいじいさん」として見られ続けた彼だが、実はとてつもない才能の持ち主だった。ありとあらゆる場面に“権利”や“保護”が叫ばれる時代、果たして“表現=「生」”になっている人々の存在をどう考えるべきだろうか?
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!年配者の自動車事故や議員の定年など“引き際”についてどう考えるべき?文科相からの祝辞を「公権力とは距離を保つのが正しい振る舞い」として辞退した是枝監督をどう思う?新元号の公表が施行1ヶ月前となるのは大丈夫?今までで一番質素な料理と、一番贅沢な料理は何?今年のAKB総選挙をどう見た?受動喫煙対策が一気に整備されつつあるのは東京オリンピックの功績?…等々、よしりんの回答や如何に!?
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第281回「犯罪と親の責任 悪魔を誰が育てたか?」
2. しゃべらせてクリ!・第231回「御坊家総出で、すいま千円~!の巻〈前編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第85回「芸術家と偏執性~ヘンリー・ダーガー編」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記
第281回「犯罪と親の責任 悪魔を誰が育てたか?」 6月9日、神奈川県内を走行中の東海道新幹線のぞみの車内で、乗客3人が殺傷される事件が起きた。
犯人の22歳男性は日頃から「俺なんて価値のない人間だ。自殺したい」と話していて、「誰でもいい」から人を殺そうと、なたとナイフを買い込んで新幹線に乗り込んだ。
そして隣席の20代女性に無言でいきなり切りつけ、さらに通路を挟んで左隣の席にいた別の20代女性にも切りつけた。
それを二つ後ろの席に座っていた38歳の会社員・梅田耕太郎さんが制止してもみ合いになり、女性二人はその隙に逃げて軽傷で済んだ。
だが、梅田さんは殺害されてしまった。
警官が車内に突入した時、犯人は梅田さんに馬乗りになり、なおも無言で切りつけ続けていたといい、梅田さんは首に致命傷と見られる長く深い傷があった他、数十カ所もの傷があったという。
自分の命を犠牲にして、若い女性二人を含む多くの乗客を救った梅田耕太郎さんの名は、英雄として末永く顕彰しなければならない。
一方で、この卑劣な犯人は絶対に死刑にすべきだ。殺されたのが一人だけだから死刑を回避するなんてことはあってはいけない。この事件の裁判だったら、わしはどんなに忙しくても、裁判員を引き受けたっていい!
こういう事件が起きると、殺された梅田さんやその遺族、襲われた乗客の心情といったものを無視して、真っ先に犯人に同情する者がいる。
犯人が凶行に及んだのは、そうさせた社会が悪いのだと、まるで犯人も被害者であるかのようなことを言い始めるような言説は、わしは大嫌いである。
とはいうものの、今回の事件に関しては、犯人の小島一朗(本当は名前も出したくないくらいだが)についても言っておかなければならないことがある。
というのも、小島は「発達障害」だったという報道があるからだ。
事件と「発達障害」との関連が明らかになっていない時点で、その診断名や精神科の受診歴が報道されたことには、偏見を助長する恐れがあると懸念を示す声が上がっている。
もちろん、発達障害の人間は凶悪犯罪を起こす可能性が高いなどという事実はなく、そんな偏見があってはならない。
だからこそ、偏見を取り除くためにも発達障害についての正確な知識を持ち、これと事件に関連があったのか、なかったのかを明らかにする必要がある。
発達障害とは、脳の発達・機能が多くの人とは異なっていて、社会生活や日常生活に困難を生じる状態をいう。
映画『レインマン』のような、古典的な自閉症なら見てわかりやすいが、今では脳障害の幅はもっと広いことが知られるようになってきた。一見しただけでは障害を抱えているとは思えない人が起こすトラブルの原因が、実は脳の発達・機能の障害にあったというケースは、かなり多いのである。
発達障害は生まれつきのもので、遺伝的要因が大きく関係していることがわかっているが、まだ原因ははっきりと解明されてはいない。その特性は幼少時から存在し、生涯続く。大人になってから発症するということはなく、成長して治癒することもない。
発達障害にはASD(自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群)、ADHD(注意欠如多動性障害)、LD(学習障害、限局性学習症)などの種類があるが、その判断は微妙で、診断名が併存する場合も多く、同じ症状でも医師によって診断名が異なることも珍しくないらしい。
そして、小島は5歳の頃に「アスペルガー症候群」の疑いを指摘されていたという。
コメント
コメントを書くライジングの配信、ありがとうございます。
新幹線殺傷事件については、梅田さんの勇敢さと犯人の身勝手さが強く印象に残っていたので、取り上げていただきうれしかったです。
犯人に発達障害の疑いがあることは初めて知りました。
しかし犯行の原因は発達障害そのものではなく、親が愛情を持って育てていなかったからであること、ただし成人した以上法的責任は本人に帰すること、という冷静な分析に納得です。
こんな環境で育てられた犯人もかわいそうだ、とうっかり思ってしまいそうになります。
が、大人なら自身の行動に対する責任は自分で取らねばならない、育った環境は言い訳にならない、という先生の思いが、最後の言葉から強くにじみ出てきているように感じました。
もくれん師範が紹介されたヘンリー・ダーガーには、その生き方の凄まじさに圧倒されました。
承認欲求とは一切無縁、生まれてから死ぬまでずっと不遇で、周りから狂人とみなされても、「怨恨のような感情はない」と言える度量。お釈迦様かと思いました。
彼の人生は幸福とは言えないでしょうが、哀れむべき対象でもないと思います。
物や絆に乏しくても、彼の人生には彼自身がいれば十分だった。
自分の境遇と向き合い、辛い生活の中でも生きるよすがを見出し、生き切った様にはむしろ敬意を抱かされます。
子供の育て方とか、人との接し方とか、他者の人生のあり方とか。とにかく人と関わるときは固定観念に縛られず、その人と真正面に向き合っていかないといけないなと感じました。
『戦争論』発売20周年!
おめでとうございます!
今でも印象に残っているのは、南の島に雪が降ると痛快な戦争体験です。
発売前から「大東亜戦争の評価ではなく個と公がテーマ」と謳っていたのですね。
最近は手に取ることがなかったので、これを機に読み直したいと思います。
>>103
動画をご覧くださいまして、ありがとうございます。
>ちなみに「社会の先生」同士は歴史や政治の話しないです。
>政治観や歴史観が違うと関係性に影響が出るためと
>いうこともあると思います
つまんないですね・・・(^▽^;)
政治だけでなく歴史もですか。まあ、連動しているところはありますが・・・・
それでは教科書に書いてあることが絶対みたいに感じます。
個人の意見は尊重されないのでしょうか。
>「農業でさえ」と言われていましたが
>身分保障のある公務員でさえ難しいです。
なるほど!公務員というのはそうですよね!
そこまで全く考えていませんでした。
気づかせて下さってありがとうございます。
どんな現場でも個を確立するのは難しいですよね・・・。
自分一人で生きているわけではないから、周りとのバランスが必要なのは理解できますが、まず「自分の意見を言う」ということ自体がはばかられている気がします・・・
日本は「自分の意見を言う」というのがあまり認められていない雰囲気があるから、政治の話もしにくいのかもしれません。
この番組の議論は回を重ねるごとに深まっていきます!
次回をどうぞお楽しみに♪
配信、ありがとうございます。
あの新幹線での殺人事件は痛ましいものでした。
自分が何かされた関係者ならともかく、無関係の人間を無差別に切りかかるなど死罪を被って当然です。
「誰でもいい」から人を殺したかったのなら、なぜわざわざ新幹線に乗る必要があるのか。
ある意味、新幹線内は無防備で、警察などが配置されている訳でもなく、持ち物チェックも行われていない。
犯行の行いやすい場所だったのかもしれません。
共謀罪を強行した理由は、テロ対策なのに、未だに新幹線で持ち物チェックを導入していなかったのだからバカとしか言いようがない。
刃物を購入し、「意図的に」殺人を犯した行為は、精神状態がどうのこうの言う必要はなく、死罪あるのみです。
話がちょっと逸れてしまいますが、今の安倍内閣の政策も「意図的に」国民の負担を強いるものです。
国民の税金を、一体どれだけ勝手に海外にばら撒いた事か…。国民の労働をどれだけ無駄にした事か。
以前、俺は自衛隊がクーデターを起こす事を期待したし、安倍内閣が次々に問題を引き起こす前に、クーデターに協力を申し出、派手に警官とぶつかり合って逮捕されてやると思っていた時があったけど、もうやる気が失せてしまいました。
公文書偽造まで行われなお、国民は相変わらず、安倍内閣の支持者が未だに多いのだからどうしようもない。
本当はメディアの方が罪深いが…。国民が事実を知る機会を奪ってしまっている。
知る権利を保障されない国になってしまっている。
>>110
私だって生けるゾンビいやです~~っ
~~~~~(m--)m
スリラーのPVは好きですけど
ゞ(^o^ゝ)≡(/^_^)/"
こういう話は止まらなくなってしまいます。
(^_^;)
何人もの高齢者の方の最期を見てきましたけど、羨ましく思える方もいましたけど、そうじゃない方の方が多いです。
木蓮さんの芸術家と偏執性シリーズ、面白いです。
今回のヘンリー・ダーガーも面白かったです。
またまた考えさせられました。
次も楽しみにしています。
7月発売日の本も!
新幹線の事件の報道を見て、犯人への憤りを感じた後に考えた事は、梅田さんへの尊敬の念と、自分がその場に居たら梅田さんのような行動を取る事が出来ただろうか?という事です。
そうでありたいけど、逃げてしまうのかな、と考えました。
既に火曜日ですが、遅すぎる感想を書いておきます。
酷なようだが親のせい。
厳しいなあ。と、思いましたが、こう考えたら納得しました。
「子供の病気を指摘されていたのに、自己判断で医者に行かず、問題を感じながらも放置した。気が付けば重大な後遺症になっていた。」
イヤ、もう間違いなく親のせいですね。
「後遺症に自暴自棄になり、人を刺した。」
こうなると本人のせいでしょう。八つ当たりで赤の他人に危害を加えたのですから。正統な罰を受けるべきです。
梅田さんは、良い人から死んでいく、という言葉を思い出しました。心から、感謝を。
ダーガーは、幸福だったと思います。
墓碑銘に、芸術家、と書いてくれる人がいたのだから。
今日はライジングチューズデイですね。
どんな内容が楽しみです。
>>126
高齢者の最期、そうなんですね。
スリラー、めちゃくちゃ懐かしいですね。あの頃が、第1次ゾンビブームだったのかも…。
(^ー^)