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第368号 2020.8.18発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…いよいよ明後日20日、『ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論』(扶桑社)が発売される。何とかして、コロナ禍の「狂った公」を治療したいと思う一念で制作した本である。『コロナ論』の一番の主眼は「経済」である。さらに人間の実存という哲学、法治国家、グローバリズム、死生観…それら全て網羅したものを、まず記録として描いた。常に3、4か月後を予測しながら描いた『コロナ論』…果たして現状はどうなっているか?
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…8月14日(金)の日本経済新聞に「無症状検査で感染抑制 英、経済再開でも陽性率低下」という記事があった。内容は、イギリスが検査対象を広げ、無症状の感染者を発見したことで、感染拡大を抑制したというものだ。この記事を持ち上げて、無症状者への検査拡大に情熱を燃やす人物がいる。東京都世田谷区の保坂展人区長だ。しかし、検査で感染を封じ込めたという科学的根拠はないのだ!「国民全員検査」を行ったルクセンブルクの現実を見よ!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!自分がもしコロナ陽性者になったらどうする?億万長者になったら実現したいことは何?MMTについてどう思う?専門家の偽情報に、一般庶民が騙されないようにするにはどうすべき?なぜ今回のコロナに限ってインフォデミックが起きた?4コマ漫画は難しい?余命を宣告されたらどう過ごす?先生にとって「仕事(漫画制作)」とは?クラスターフェスをどう見てる?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第385回「『コロナ論』発売!」
2. しゃべらせてクリ!・第325回「肺活量軍団出動!人工強風で突進ぶぁ~い!の巻〈後編〉」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第179回「検査で感染を封じ込めたという科学的根拠はありません」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




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第385回「『コロナ論』発売!」

 いよいよ明後日・8月20日、『ゴーマニズム宣言SPECIAL コロナ論』(扶桑社)が発売される。
 何とかして、コロナ禍の「狂った公」を治療したいと思う一念で制作した本である。

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 世の中を変える意気込みで描いた作品という点では、平成10年(1998)の『戦争論』にも通じるところがあるが、その作り方は『戦争論』と『コロナ論』とでは全く違っている。
 思えば『戦争論』の時は、今ではありえないくらい時間をかけた。帯に「構想2年、制作1年」と書いていたように、作画作業だけでも1年かかったのだが、その前のコンテの段階で何度も何度も描いては破棄、描いては破棄を繰り返していて、その間、スタッフはペン入れする原稿がないものだから、ポカQは表紙の人形を作り、広井は背景のジオラマを作っていた。
 それは『おぼっちゃまくん』で稼いだ資金があったからできる作業だった。もうそんなカネはない。
 出版スケジュールは延期に延期を重ね、いったいいつ完成するのかわからないままに制作が進んだ。実際に発売されたのは平成10年6月25日で、メディアが戦争特集を組み始める時期を前にした絶好のタイミングとなったのだが、それはほとんど偶然だった。

 それに対して『コロナ論』は「緊急出版」である。
『戦争論』のように練りに練り上げて描く余裕は全くない。とにかくスピード重視、早く描き上げて早く出版することを第一に考えた。
 毎日毎日メディアが間違ったことばかり言ってコロナの恐怖を煽りまくり、その間に着実に経済が破滅に向かっていくという状況が、現在進行形で展開している中で、なんとかこれに歯止めをかけ、世の中の空気を変えるためには、もっとスケールの大きい思想哲学を、一刻も早くコンパクトに世の中に提示しなければならない。
 限られた時間の中で、描き下ろしを7章83ページも描いたのだが、これは相当に無理をした。
 しかも雑誌連載原稿と違って、描き下ろしは原稿料が出ない。タダで描いてるんだから、全くの先行投資であり、本が売れてそれなりの印税が入って来なければ、大赤字になってしまう。
 営業自粛で、固定費・従業員の給料が大きすぎて、持続化給付金を20万円もらっても無理という飲食店の店主や、零細企業のタコ社長の苦労がよく分かる。
 玉川徹のような、一流企業のサラリーマン、給料不変・ボーナス確実の気楽な稼業の人間には、逆立ちしたって、飲食店の店主の苦闘など分かりはしないだろう。

 出版というメディアには、大きなハンディがある。原稿を書いてからそれが世に出るまでに、タイムラグがありすぎるのだ。
 漫画は絵を描くのに時間がかかるから、それが特に顕著になる。雑誌連載の場合でも、シナリオを書いてコンテにして、作画を仕上げて入稿し、編集・校正を経て、印刷・製本されて、発送されて、店頭に並ぶまで、1か月はかかってしまう。
 例えば今日羽鳥モーニングショーで玉川徹や岡田晴恵がインチキな発言をして、それを作品で暴いてやろうと思っても、その『ゴー宣』が載った「SPA!」を読者が手にするのは1か月先なのだ。
 書籍は雑誌よりもさらに、入稿してから世に出るまでの時間が長い。『コロナ論』が脱稿したのは7月10日だが、発売は8月20日。お盆休みを挟んでしまったせいもあるが、扶桑社に目一杯急いでもらっても、原稿が完成してから40日もかかるのだ。

『コロナ論』に収録した作品で一番早いものは、4月に描いている。わしは、本にまとまるのが3か月、4か月先になることを念頭に、日々状況が変化する中で、3、4か月後の予測をしながら描かなければならなかった。
 これほどウィルスの変異や、国民の感情の変化や、政治家の態度や、いわゆる専門家の発言や、マスコミの報道姿勢が読めない事態はないのに、3、4か月後を予測して描くことは極めてリスクが高い。
 だが、いま完成した本を改めて開くと、特に予測を外した箇所などない。最初からインフルエンザとの比較で考えていたが、正解だった。
 しかし世の中の専門家や知識人や発言者が、未だにインフルエンザとの比較をしないのは、どういうことなのか? 全く不思議だ。
 岡田晴恵や羽鳥コロナショーに出てくる奴らは、「2週間後には医療崩壊が起こる」だの、「2週間後には東京がニューヨークになる、地獄になる」だのと言って、たった2週間後の予想を外しまくっている。
 テレビで嘘の飛沫を飛び散らかしても、2週間後には大衆は忘れてしまうから、責任を感じなくていいのだろう。
 書籍は残る。何十年でも、ひょっとしたら何百年でも残るかもしれない。執筆するときの緊張感が半端ではないのだ。