第73号 2014.2.11発行
「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、よしりんの心を揺さぶった“娯楽の数々”を紹介する「カルチャークラブ」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、珍妙な商品が盛り沢山(!?)の『おぼっちゃまくん』キャラクターグッズを紹介する「茶魔ちゃま秘宝館」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)
【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…全提供スポンサーの降板にまで発展した、TVドラマ『明日、ママがいない』への抗議問題。果たしてこのドラマは、現実とは懸け離れた内容なのか?誤解や偏見、差別を与える内容なのか?養護施設の子どもや職員の人権を無視しているのか?「傷つく人がいる」という理由での表現規制は正当なのか?当事者からの報告を元に、この問題を考える!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」!アカデミー賞、どの作品に注目している?NHKは安倍政権寄りと言うけど、テレ朝だって公平中立じゃないのでは?思わず誰かに語りたくなった作品は?定年退職後の年寄りがSNS恋愛に嵌っている!?AKB48大組閣、スバリどう思う?よしりんの回答や如何に!?
※『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて、一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてくり!」。弟・妹引き連れた貧ぼっちゃまに、涙を禁じ得ないぽっくん。さぁ、しゃべらせてクリ!!
【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第74回「『明日、ママがいない』と児童養護施設の実態」
2. しゃべらせてクリ!・第34回「貧ぼっちゃまきょうだいの絆に涙ぶぁい! の巻〈前編〉」
3. よしりん漫画宝庫・第60回「『帰ってきた東大通!!』キャラへの愛着とファンサービス」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 読者から寄せられた感想・ご要望など
7. 編集後記
第74回「『明日、ママがいない』と児童養護施設の実態」 つい最近、1月30日も東京都葛飾区のマンションで、2歳児が父親(33)に虐待されて死亡した事件があった。2歳児の顔や背中には約30か所のあざが残っており、父親は日常的に虐待していたらしい。
母親(26)は何をしていたんだと思うが、DVの夫の機嫌を損ねまいと、見てみぬふりをしてたのだろう。こういう事件をニュースで知るたびに、胸がムカムカする。
子供が好きでも授かることが出来なかったわしのような大人もいれば、よりによって子を授かる資格のない大人のところに生まれてしまった子供がいる。神がいないことの証明だ。
子供を手離さなければならない悲しい状況の親ならやむを得ない。
虐待死させるくらいなら「赤ちゃんポスト」もやむを得ないし、あった方がいいとわしは考える。
親が子を施設に入れることも、やむを得ない境遇もあるだろう。
2011年度に新たに児童養護施設に入った5485人の入所理由は、親の虐待(33%)、親の放任怠慢(12%)、監護困難(6%)、親の入院(6%)等である。
馬鹿な親のせいで、施設に入れられた子供が圧倒的多数ではないか。
自分の快楽のためだけに無責任に子供を捨てる大人や、そのような社会を生み出してしまう大人たちに対して、怒りを表明する資格が、捨てられた子供にはあると思う。
子供にはその表現力はないから、子どもの代弁をする大人・作家がいれば、それは有り難いとわしなら考えるのだが。
テレビドラマ「明日、ママがいない」は、子どもに感情移入させて、大人たちを告発する構図だから、視聴者にも大人や社会に対する怒りが芽生える番組である。
子役の演技で泣かされるのが嫌なわしは、この番組を見たくなかったのだが、児童養護施設からの抗議などが殺到して、CMのスポンサーが全部降りてしまったと聞き、第一話から見てみることにした。
案の定、子役の演技に涙をこらえながらの視聴になり、大人と社会への憤りで血がたぎってしまった。やっぱりわしって単純である。
もっと取材してリアルに作れと抗議団体は言うが、もしNHKがドキュメンタリーで作れば、何の摩擦も起こらない多くの不遇の一つとして放送され、すぐに忘れられるだろう。
この世に不遇や不幸は五万とあるのだ。
優れた脚本家が題材にして、ディレクターや俳優、特に天才子役たちなどのプロが作品を作り上げ、多くの視聴者を獲得できる地上波で放送されるのはチャンスのはずなのに、当事者である施設が潰してしまうとは。
物語として創作され、子供たちに感情移入が出来てこそ、視聴者は施設の子供や、施設出身者に対する偏見を捨て、応援したくなる気持ちになるのだ。
逆に悪意が芽生えて、施設の子を「ポスト」と呼んでいじめる児童も出てくるかもしれない。それは元々持っていた「偏見」が顕在化した現象である。秘かに差別していた証拠である。
「秘かな差別」がいいか、「顕在化した差別」がいいかと言えば、わしは「顕在化した差別」の方がいいと思う。なぜなら戦うべき相手が明確になるからだ。
「秘かな差別」の方が性質が悪くて、結婚や就職など、人生の決定的場面で顕在化して、被差別者に重大な衝撃を与える。それが原因で自殺する者だっている。
部落差別などの取材をして描いたわしの『差別論』では、そういう事例を取り上げている。
「施設の子供が傷つくから」という理由で、タブーにしてしまうことが、社会の偏見を取り除くことになるのだろうか?
しょせんは戦わなければならない宿命の子供たちなのだ。普通の子供よりは、はるかに強靭な精神を身につける必要がある。「明日、ママがいない」はそういうことを描こうとしているのではないか?
わしがブログで「明日、ママ」はテーマのある良い作品だと書いたら、当事者からの投稿があった。
「明日、ママがいない」への感想を見ました。
私達、児童養護施設出身者の気持ちを共感して頂いてうれしいです。
職員や今入所している児童はこのドラマに反対の人が多いみたいですが、施設を退所した出身者はドラマを評価している人が多いそうです。
私が思うには、良い施設で育った人は施設の悪い面を知らないし、親に虐待された経験者が多いから反対、悪い施設で育った人は施設で酷い事をされた事からドラマ肯定という意味もあると思います。
職員は、「施設内虐待なんて何十年前の事だ!」と言いますが、今もあります。報道されていますし、「施設内虐待を許さない会」というのもあります。
児童間暴力を規律が良くなるからと、むしろ良しとしている職員もいます。
「そんなの例外だ!一部だ!」と言う職員もいますが、私達例外とされた人は支援も何もありません。また、発覚するのはごく一部で、私が毎日受けた暴力は一件も発覚していないはずです。
大事なのは、施設が虐待をし、今もトラウマをもって苦労している元こどもへの支援を言っている職員を見た事がありません。当事者意識がないと思います。
親から虐待を受けたこどもを、良い施設が保護し回復していくというドラマなら施設関係者は反対しないでしょうが、施設から虐待をされた人達は暗部を隠す事に傷つきます。
でもその事をツイッターで施設職員に言ってもたいした反応はしません。
虐待を受けても今は大人なんだから自分で頑張っていくしかないというなら、そもそも施設なんていらないです。そうした事を考えていないからああした抗議になるのでしょう。
また、施設間格差は大きく、例えば施設児童の大学・専門合わせた進学率は23%(一般人は77%)ですが、東京の施設だと約5割と高い数字です。
地方には戦後一例も進学者がいない施設もありますが、施設児童への進学支援は都会程あり、ますます格差は広がる事になります。(里親家庭も進学率は高い)
よしりんには日本の児童養護施設の貧弱さ、施設内虐待の被害者の支援のなさ等を是非分かってほしいと思います。
わしは「明日、ママ」の養護施設は、さすがに過剰に描いたものだと思っていたが、どうやら荒唐無稽ではないらしい。そのことにショックを受けた。
さらに当事者ではないが、こんな投稿もあった。
コメント
コメントを書く永遠の知識0!史上最高のタスキ掛け!悪天候に冷や冷や!どころか、腹がよじれた!おかしい!おもろい!
「AKB48SHOW」見ました!ゆきりん・咲良たん・らぶたんの「口移しのチョコレート」最高!
特に咲良たんは、年頃の娘を見守る父親のような心境で見てしまいました。結婚もしてなければ、娘もいないのに。
もう彼女も「女」になったんですね・・・。
あと優子の「団酢田踊子」面白かったです。シリーズ化してほしい位の、強烈キャラでした。みおりんのはじけたダンスや、マネージャー役・酒井敏也の「剛力ダンス」も笑えました。そういえば、酒井敏也は「細雪リグレット」のPVにも出てましたね。「団酢田踊子」って、小林先生の漫画に出てきそうな名前ですよね。
インフルエンザ予防接種の密着では大泣きしていたひらりーを見て、かわいそうで僕も泣きそうになりました。僕も昨年受けたので「すぐ終わるから!」と何度言いそうになったか・・・。あと特派員のHKT・秋吉優花ですが、5・6年前の志田未来に顔がそっくりですね。びっくりしました。
先日の大雪の中、無事に帰宅と思ったら次は尿管結石を
患いながら大阪で講演と大変な日々を送られていますが、
その後お身体のお加減は如何でしょうか。
自分は養護施設のことは時々テレビで匿名者からの
寄付が報道されるときぐらいしか知らず、「明日、ママ」
をお涙頂戴モノのドラマだろうと決めつけていましたが、
今回のゴー宣と木蘭さんと投稿者からの文章を読んで、
考えが浅はかだったと思い知らされました。
「明日、ママ」は親からも養護施設からも虐待を受ける
頼るものがない子供を救うためのキッカケになるはずだった
と思いますが、それを当事者である養護施設の抗議で
潰されてしまったことが残念でなりません。と同時に、
現状を変えるには今は傷ついてもここでやり抜かないと
何も起こせないと改めて思いました。
>>27
宏美さんのお話に衝撃を受けて、今月亡くなった私の祖母が
入っていた介護施設の話を思い出しました。そこは周りは
畑だらけの車がないと行き来が不便な場所にあり、私の母は
時間を見つけては東京から泊まり込みで通ってました。
母がそこの職員さんから聞いた話によると、地元に施設がある
家族は祖父母を入れてしまうと、来れない距離ではないのに
まったく見舞いに来なくなるそうで、母のように遠方からくる人は
珍しいと言ってたそうです。唯でさえ、陸の孤島のような
状態なのに外部との交流がないとそれは一種の隔離施設も同然で、
これでは施設内で何があってもそれを察知するのは無理だと
思いました。
幸い、私の祖母は母が職員さんたちと熱心に交流したせいも
あってか献身的に介護していただき、葬式にも来ていただきました。
児童養護施設内虐待を防ぐには>>41の直明さんの会社が
行っているような外部との交流も一つの手ではないかと思いました。
雷神宮歌会テーマ児
○僕のそば に寝かしつけた 幼児(おさなご)の 寝顔は天使 いびきは悪魔
○スタートの 線に手をつく 児どもらが ゴール睨めば 睫毛上向く
「愚韓論」や「日本はなぜ誇りある美しい国と世界から羨ましがられるのか?」みたいなタイトルの新書が目立つ所に置かれ、「愛子さまが将来の天皇陛下ではいけませんか」が棚の中にひっそりと置いてある。これが今の日本なんだよなぁ。
韓国や中国を馬鹿にして、日本は素晴らしい国だーなんて言ってみても、今の日本が抱える問題は一つも解決しない。
この手の本が売れる今の日本って一体なんなんだろう。
先生のブログを読んで腹抱えて笑った後、そんな事をふと思った。
東京はじめ関東・東北の皆様、大雪被害お見舞い申し上げます。
それにしても安倍・政府・自民党は何をしてるんでしょうか?物流が寸断され流通が途絶えて庶民が空腹で苦しんでいるのに、非常事態宣言も出さずに政府幹部はぬくぬくとした中で、過酷な現場で除雪作業をしてる自衛隊員をあごで使ってる、とは。
安倍に至っては大雪のさなかに高級料亭で天ぷらを食べて、ソチ五輪を夜中まで観戦して羽生結弦に電話してる始末です。首相官邸にも入らず危機意識のかけらもありません。
仮に東南海地震などの非常事態で、自民や安倍が全く役に立たないことが今回の大雪被害ではっきりしました。もちろん中国や北朝鮮などとの有事の際も、奴らは日本を捨てて国外逃亡しかできないでしょう。
ううん、今回の大雪で、大衆が目覚めてくれたらいいのですが…。
唐突に雷神宮歌会 お題 -通-
雪融けず 悲憤の声は 数あれど 国主知らぬと 食通を気取る
>>87 閑人 さん
>児童養護施設内虐待を防ぐには>>41の直明さんの会社が
>行っているような外部との交流も一つの手ではないかと思いました。
なるほど!!と思いました。
児童養護施設にせよ、介護施設にせよ、あるいは家庭内にせよ、
「外部との交流がない閉鎖空間」というのは、
人間が曲がってしまう可能性があるのではないかと考えさせられました。
そういう意味では、ネトウヨ等は「気の毒な状態の人達」と言えますね。
『環境』というのは人間にとって、圧倒的に大切だと認識致しました。
いや~、ライジングのコメント欄って、本当に勉強になりますね♪
今週はゴー宣で取り上げられた「当事者からの投稿」に衝撃を受けただけでなく、コメント欄に寄せられた「現場からの報告」にも大切なことを学ばせて頂きました。
Q&Aコーナーで述べられていた方がおられましたが、
「自分が思ってもいなかった観点からの意見が聞き、
自分の考えがより深められること」は本当に幸せなことだと感じました。
それもまた重要な『環境』だと思いました☆
>>90こいらさん
私も同じことを感じています。しかも今回の安倍政権は阪神大震災時の村山政権・東日本大震災時の菅政権より何もしていないのに、あの時政権を袋叩きしたマスコミ(読売・産経はもちろん朝日・毎日・東京といった左側も)&世論が何も言っておらず、ただ「孤立してる。高速は通行止め。ああどうしよう」と嘆いているだけというのが果たしてどうなんだろうと。
セブン&アイHDがヘリで東京からパン等の食糧を空輸して山梨県内のセブンイレブンやイトーヨーカドーに納入したみたいですけど、ああいうのって本来政府が率先してやらなきゃイカンことですよね。
>>92 閑人さんとカレー千衛兵さんのコメントを見て、確かにそういう面もあるかなぁと感じました。
その施設では、勉強を教えるボランティアを受け入れています。社会人や主婦の方がボランティアで、家庭教師のような感じで子供たちに定期的に勉強を教えています。
また、年に一度地域の人たちを招いて、施設主催のバザーを行っています。もちろんすべてにあてはまるわけではありませんが、このような施設外との交流があれば虐待などということは起きにくいのではと思います。
施設長とのお話の中で、高校を卒業して施設を出る子供たちの経済的な問題について聞いたことがあります。親を頼れないほとんどの子供は進学をあきらめ、就職をしたとしても当面の生活費にとても苦労する、ということでした。職員が個人的に経済的な支援をすることもある、と言っていました。
あるとき、その施設の出身で、すでに就職して社会人になっている青年と施設長が個人的に会って食事をしている、という場面に遭遇したことがあります。施設を出た後でも子供たちのことを案じ、実際に交流したり相談にのったりしているようです。
今回のゴー宣で取り上げられていた事例は本当にショッキングですが、あくまで一部にすぎないと信じたいです。私は幸運にも「良い施設」の人々に接することができましたので、多くはそうであると信じたいです。