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田中良紹:弥生の季節に馬脚を現した肝の小さな政治家たち
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田中良紹:弥生の季節に馬脚を現した肝の小さな政治家たち

2017-04-03 14:06
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弥生3月は草木が芽吹く季節であるから変化が起きやすい。乱のきっかけになることも多い。旧くは日本に戦乱の時代をもたらした応仁の乱が応仁元年3月に始まり、最近では6年前の3月に大震災が起きて日本人の意識を変え政治の混迷を深めさせている。そして今年の3月はよく似たタイプの政治家が揃って窮地に陥った。

強がりでわがまま、相手の主張に耳を傾けようとせず力でねじ伏せようとするが、失敗すると他人のせいにする。その一方で、国民の支持を気にするポピュリズム型でもある。そのよく似たタイプの政治家としてドナルド・トランプ、石原慎太郎、安倍晋三の3人がいる。

米国のトランプ大統領はこの3月に選挙公約で最優先課題とした「オバマケア見直し法案」を取り下げざるを得なくなった。24日に予定されていた議会の採決が否決の見通しになったからである。否決が現実となれば大統領は取り返しのつかないダメージを国民の目にさらすことになる。

しかし国民の目をごまかしても、法案の取り下げは政治家として醜態以外の何物でもない。その醜態をトランプは「ライアン下院議長が共和党をまとめきれなかったためだ」と他人のせいにした。

重要法案の採決となれば大統領は議員一人一人に電話をし直接説得するのが米国政治の常識である。それを下院議長のせいにするなど聞いたことがない。自らの無能をさらけるだけの対応に大統領と議会との溝は一層深まることになると思う。

問題はそれだけでない。「移民の入国禁止」を巡る大統領令は二度も司法界から「ノー」を突きつけられた。またロシアとの不適切な関係を問題視され、フリン国家安全保障担当大統領補佐官を辞めさせるしかなくなり、側近中の側近である娘婿のクシュナー上級顧問も上院情報委員会に証人喚問されることになった。

さらに3月中旬に行われた米独首脳会談では、大統領がメルケル首相に国防費の負担金として33兆円の請求書を渡したことから、マティス国防長官を激怒させたと言われる。外交的に非礼であるばかりでなく政治技術としてもあまりにも稚拙な振る舞いである。

選挙で国民に約束したことをただ押し通そうとするポピュリズム型政治に「ついていけない」と感じる閣僚やスタッフが増えていくのではないかと思う。そうしたトランプ大統領の振る舞いに私は政治家としての器量のなさ肝の小ささを感じる。

これまで様々な政治家を見てきたが、肝の小さな政治家ほど強がりを言い、力で相手をねじ伏せようとする。そしてうまくいかなくなるとすぐ他人のせいにし、自分のことは弁解ばかりする。世間から批判を浴びても不遇にあっても一切の弁解をしない人間にこそ私は政治家としての器量を感ずる。

ロッキード事件で有罪判決を受けた田中角栄元総理は日本中から批判を浴びたが、身の潔白を主張する一方で、自分を逮捕した検察や自分を叩きまくるメディアを批判せず、泣き言も弁解も言わずに裁判闘争と政治闘争を続けた。

その角栄氏を「でっち上げ事件の被害者」として、また政治の「天才」として称賛した石原慎太郎元東京都知事は、築地市場の豊洲移転問題で3月20日に都議会の百条委員会に喚問されたが、対応の仕方は角栄氏とはまるで真逆であった。

百条委員会の冒頭で「脳梗塞を患ったため文字も忘れてしまった」と予防線を張り「記憶にない」を繰り返す。そして交渉をすべて他人に任せていたとリーダーとしての責任を回避し、豊洲の安全性を調べるため自身が高めたハードルを根拠に豊洲移転を遅らせる小池知事の責任を追及するという全く辻褄の合わない言動に終始した。肝の小さいことはなはだしい。

衆議院議員時代の石原氏を評価する声は永田町にほとんどなかった。スタンドプレイをするだけで他人のために泥をかぶることもなく、右翼的な主張を勇ましく言うだけの政治家だったからである。しかし大衆にはそうした人物像を見抜く能力はない。大衆民主主義時代の客寄せとして自民党が利用しているだけの政治家であった。

そう見られていることが衆議院議員を辞める理由だったと思うが、都知事に転身を図る時に一瞬だけ変身を見せた。かつては激しく批判した美濃部元知事の環境政策を褒めちぎり、霞が関を批判するなどリベラルにも迎合する幅の広さを見せたのである。

しかし都知事就任後は再び元に戻る。そしてそれ以上に悪い政治の私物化が始まるのである。新銀行東京の設立もそうだが、何よりも国益を損ねたのは米国に言われるまま尖閣問題に火をつけ日中対立を激化させたことである。

冷戦後の米国の基本戦略はロシア、中国を敵と見るだけでなく、日本とドイツを押さえるためにロシア、中国を利用する。それを理解しているドイツは米国の側に付きながらもロシアとも密接に協議して米国の言いなりにはならないようにする。

しかし日本は尖閣問題で米国の思うままになり、中国との対立を激化させた。私には米中関係は昔の自民党と社会党と同じで対立しているように見せながら水面下では手を握っているように思うのだが、日本は中国と対立するため米国の言うことをすべて聞かざるを得ない状況に自らを追い込んだ。

石原元都知事は息子を総理にしたいがために米国の思惑に乗せられ、米国のシンクタンクで尖閣諸島の購入計画を発表する。そのせいか2012年の自民党総裁選挙は当初は石原伸晃幹事長が最有力の候補となる。しかし不注意な発言の連発で石原氏は自ら墓穴を掘り、代わって総裁選に勝利したのは安倍晋三氏であった。

派閥の反対を押し切って総裁選挙に出た安倍氏を支えたのは右派系団体「日本会議」と大阪に本拠を置くローカル政党「維新」である。松井大阪府知事と意気投合した安倍氏は自民党総裁選挙に敗れれば自民党を割って出て維新のトップに就任する約束をしていた。そこから現在問題になっている森友学園の小学校建設の話が絡まるのである。

森友問題は安倍総理と維新の接点から生まれ、また総理就任後の2014年に米国の政治任用制度(ポリティカル・アポインティ)を真似た内閣人事局を作り、官僚の人事権を官邸が掌握したことから、官僚が官邸の意向を「忖度」する傾向が顕著となり、そこに「スピリチュアル」な信仰に目覚めた昭恵夫人の森友支援が重なる。安倍夫妻と政府と大阪がぐるみで戦前回帰の小学校を創ろうとすることになる。

その仕組みの一端が暴露されると、安倍総理は尋常ではない口調で全面否定を貫く。その様はまさしく肝の小さな政治家が行うパターンを彷彿とさせ、証拠となる資料をすべて廃棄したことにするところにさらに問題の深刻さを感じさせた。

肝の太い人間は危機に陥るほど泰然として問題を処理する。だが肝の小さな人間にはその真似ができない。安倍総理は全否定を貫くことで自らを追い詰めることになった。現在は「しっぽ」の籠池氏の反撃に対し、捜査機関に命令して籠池氏を「悪人」に仕立て上げることに全力を挙げる。

しかし籠池氏を「悪人」に仕立てたとしても、昭恵夫人が口利きに関わり、しかもメールのやり取りから「カルトまがい」の信仰に取りつかれている事実を消すことはできない。安倍総理にとってこの3月は決定的である。トランプ、慎太郎の諸氏と並び致命的な醜態をさらした。さあ次はどうする。

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■田中良紹『国会探検』 過去記事一覧
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<田中良紹(たなか・よしつぐ)プロフィール>
 1945 年宮城県仙台市生まれ。1969年慶應義塾大学経済学部卒業。同 年(株)東京放送(TBS)入社。ドキュメンタリー・デイレクターとして「テレビ・ルポルタージュ」や「報道特集」を制作。また放送記者として裁判所、 警察庁、警視庁、労働省、官邸、自民党、外務省、郵政省などを担当。ロッキード事件、各種公安事件、さらに田中角栄元総理の密着取材などを行う。1990 年にアメリカの議会チャンネルC-SPANの配給権を取得して(株)シー・ネットを設立。

 TBSを退社後、1998年からCS放送で国会審議を中継する「国会TV」を開局するが、2001年に電波を止められ、ブロードバンドでの放送を開始する。2007年7月、ブログを「国会探検」と改名し再スタート。主な著書に「メディア裏支配─語られざる巨大メディアの暗闘史」(2005/講談社)「裏支配─いま明かされる田中角栄の真実」(2005/講談社)など。

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