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  • 【岡田斗司夫のニコ生では言えない話】「ネット民の居場所を作りたい」「それは国づくりですね」第34号

    2013-05-27 07:00  
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     岡田斗司夫のニコ生では言えない話 第34号 2013/5/27
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    【今週のコンテンツ】「ネット民の居場所を作りたい」「それは国づくりですね」
    【今週の書き起こし】「ニコ生・岡田斗司夫×川上量生 初対談」中編
    【岡田斗司夫なう。】ドワンゴ会長が語る「超会議をやる本当の理由」
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    ◆【今週のコンテンツ】「ネット民の居場所を作りたい」「それは国づくりですね」
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    前回に引き続き、「ドワンゴ会長:川上量生氏と岡田斗司夫との初対談」お送りします。
    「川上さんは国を作ろうとしてる」
    軽いジャブを繰り返していた岡田が、いよいよストレートパンチを炸裂させます。
    川上氏が目指すニコニコ動画の行く末を、評価経済的な視点で予言する岡田。
    ネットの世界で楽しく生きることと、リアルの世界で生き残ることの「両立」。その理想形が岡田の言う「国作り」であり、現実の第一歩が「超会議」なのかもしれません。
    まずは、ハイライトをどうぞ!
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    <岡田>
     さっきのやつが前提なんですけどもね。
    俺、今日、聞きたかったのは、「川上さんは国を作ろうとしてるんじゃないかな?」って。
    この24時間ぐらいでそういうふうに考え出したんですけども。
     なぜか。今、僕らが思ってる“国家”ってありますよね。
    国家っていうのは税金をとって国民にサービスしてくれるわけです。
    これって言っちゃえば“参加費とかを取ったユーザーに対するサービス”と同じですよ。
    国民とユーザーって言うものは、言葉が違うだけであんまり差がなくなってきてる。
     現に僕らは日本国に税金を取られて、日本国の行政サービスを受けてるんだけども、同時にGoogleとかFacebookとか、ああいうふうなところに遠回しに金を取られて、彼らからのITサービスを受けてる。
    「なんか多国籍化してるよな」と。いつのまにか。
    <川上>
     うーん。たぶん、国家に変わる権力組織を目指してるという意味では、例えばGoogleとかFacebookは明らかに目指してるんだと思うんですよね。
    <岡田>
     いや、川上さんが権力組織を目指しているようには見えないんですよ。
     僕、 「川上さんが目指してるのは本当に国作りだな」 と思ったんですよね。
    このニコ生の仕掛けからして、“プレミアム”っていうお金を払う会員と、お金を払わない会員があるじゃないですか。
    お金を払わない会員っていうのは、実はお金を払ってくれてる会員のおかげで成立してるわけですよね。
     お金を払ってくれる会員がいて、その人たちがいわゆる“税金”を払ってくれるおかげで、行政サービスとして国家はお金を払ってない国民、”扶養家族”みたいなやつらに対しても、できるだけ等しい条件で見れるようにしてるわけですね。
     もちろんプレミアム会員しか見れないようなものもあるけれども。
    それよりはできるだけ広く薄く、いわゆる“ネットユーザー”という人らに対してのサービスを拡げてくと。
     これって、実は「日本国の中にもう1つ違う国を作ってるようなもんじゃないのかな?」と思ったんですよ。
     さっきおっしゃられた話っていうのは、僕は “優しい独裁者” 特有の考え方だと思ったんですよね。
     つまり、国民っていうのを信じて「国民の間で意見が出てきたら民主主義的に決めましょう!」っていうのではなく、「立ち上げ時期だからこれ!」と。
    この組織というのは独裁のほうがうまくいくに違いないと。
     それに関しても、ご自身ではネットユーザーというものの良いところも悪いところもわかってるつもりで、「おまえらの悪いようにはしないから、ちょいと任しといて」というふうな形で、独裁的にドワンゴという仕組みを作っていて。
     やろうとしていることは最終的に“ネットユーザーの場を守る”というふうにおっしゃいましたけども、 結果的にそれはユーザーの中の出せる人から広くお金を集める。で、お金を払えない人までの面倒も見て場を守ろうっていうことで。
     それは国を作るのと同じようなものじゃないのかなと思いました。
    <川上>
     たぶん、構造としてはそういうようなことあると思うんですけど。
     国を作るっていう意味がよくわかんないんですけども、僕が作ろうと思ってるのっていったら、やっぱり“ネットユーザーの居場所”ですよね。
    居場所と、あと “ネットで稼げる手段” を提供したいんですよ。
    <岡田>
     だから、やっぱ“国”ですよ。内需拡大ですよ(笑)
     今やってることは、日本国とかから円を稼いできて、ドワンゴに払ってもらってるわけですね。
    つまり、まだ今は“華僑”状態っていうのかな? 外貨稼いで本国に送ってもらってる状態なんだけども。
     できればこっから先はネット内でのやりとりで経済圏ていうのを作ろうと……
  • 【岡田斗司夫のニコ生では言えない話】ドワンゴ会長が語る「超会議をやる本当の理由」第33号

    2013-05-20 07:00  
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    イベントと言えばコミケ。そう反射的に思い浮かべてしまうのは、職業病でしょうか。つきあう友達が悪いのでしょうか。 こんにちは、のぞき見のミホコです。
    先日、ドワンゴ・スタッフS田さんが熱望していた「ドワンゴ会長川上量生氏と岡田斗司夫との初対談」が、実現しました。
    「さりげなく毒をふりまいたトークしてますね」 「フジテレビとか日テレみたいなことをやっていいのかな?」 岡田のツッコミで見えてくる、ニコニコ動画の生みの親の世界観。
    評価経済社会の勝ち組、川上量生の目から見た「ネットとリアル」「ネットとマスメディア」「ニコニコ超会議へ熱い思い」・・・
    笑ったり、威張ったり、焦ったり、丁々発止の対談の中から、ネットを住処にしている川上氏が守ろうとするものが垣間見えてきます。
    まずはハイライトをどうぞ!
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    <岡田> 「なぜ超会議をするんでしょう?」っていう質問が来るということは、これ「本当に必要なのか?」とかいう意味ですよね。
     あと、たぶん、ひょっとして意地の悪い人は、「俺が払ってるプレミアム料金のいくらかその超会議とやらに使われてるに違いない!」と。  「俺は五島列島とかに住んでてそんなとこに行けないのに、悔しい!」みたいのがあるんじゃないのかと。
    <川上>  そこら辺はいくつか……批判が集まる理由と僕らがやる理由っていうのはまた別なんだけど。  批判がある理由って、実際に超会議をすごい喜ぶ人たちと怒る人たちと2ついるんですよね。それで怒る人たちっていうのは “ネットに濃く住んでる人たち” なんですよ。
    <岡田>  濃く、ネットの深いところに住んでる、つまり “深海魚” みたいな人たちがちょっと怒ると。
    <川上>  リアルイベント自体をいやがる人たちっていうのがいて、そういう人たちは反対しますよね。
    <岡田>  その人たちがいやがる。深海魚の人たちにとっては、表とか、明るい世界っぽく見えるわけでしょう?
    <川上>  まあ、そうでしょうね。  「チャラチャラしやがって!」 みたいな、だと思うんですよね。 本社とか六本木のニコファーレだとか、たぶん、そういうふうに見てるんだと思うんですけどね。
     ただ僕らとしては意図っていうのは全く逆で。   こういうの、あっちこっちのITメディアのインタビューでも答えてるんだけども、今の世の中の流行りってTwitterと、あとFacebookですよね。   今、LINEとかも来てますけど。 基本これは“リアルな人たち”のツールなんですよ。
     リアルな人たちのツールっていうのは、現実の人間関係があって、ネットがそういうリアルな生活を豊かにする、そういうものだっていう。
    <岡田>  わかってきた。
    <川上>  そういう人たちが今のネットの主流で。  昔は、ネットって“住処”にしてた人たちだったじゃないですか。  「ネットが俺たちの世界だ!」と思ってた人たちばっかりだったんだけども。
     今は要するに、ネットが一般化することによって、リアルの世界にいながらネットも使うっていう人たちが強くなってきてるんですよ。  そういうサービスっていうのが世の中の主流になってきた。  それで、僕はその中で逆側をやりたかったんですよね。
    <岡田>  うん!
    <川上>  リアルがネットに来てるんだったら、ネットからリアルに行くってのをやりたかったんですよ。
    <岡田>  「リアルでもう充実してる生活を送ってるリア充の人たちが、ネットっていうのをツール扱いしてどんどん入ってくるけども、元々俺たちはそこの世界に住んでたんだ」と。
    <川上>  だから僕、よくそれで例えてるのは、“アメリカのインディアン”に似てると。  要するにアメリカっていうのは……「ネットは新大陸だ!」とかって言って、インターネットが登場してビジネスマンたちが新大陸にわーっと押し寄せて来た。でも実はそれ以前から新大陸にはインディアンが住んでた。  原住民が住んでて、「ここは新大陸だ! わーい!」って言って楽しんでたんですよ。
     そしたらイギリスとか旧大陸からやってきた人たちがそこでビジネスを始めて、「俺たちがこのネットの支配者だ!」みたいな感じででかい顔してる。  それが、僕が思ってるインターネット以降のネットの世界なんですよね。
    <岡田>  繋がってきた。  じゃあ、六本木の本社とかニコファーレとかそういうやつも、全部リアルに対するやっぱ“政治活動”なんですよね。
    <川上>  いやだから……そうですよ、あれは インディアンの抵抗活動 (笑)
    <岡田>  つまり、主に“トキの声”を上げる方法でちょっと戦いを展開しようというのが超会議?
    <川上>  なんだけども、なんか、一応“政府”ともちょっと取引とかもやりつつ(笑)  微妙な感じでやってるってあたりですよね。
    <岡田>  じゃあ、そのインディアンたちをどうしようとしてるんですか、川上さんは。
    <川上>  うーん、いや、どうしようとは別に思ってないですよね。  ただ僕ね、やっぱり 「居場所を守ってあげたい」 と思ってるんですよ。
     だから、僕がニコ動を作ったときに……僕、今までいろんなビジネスやってたんだけど、基本自分が楽しいと思ったサービスを作ったことなかったんですよね。  “着メロ”とか、「何かみんな楽しそうにしてるな」とか思ってたんだけど。  でも、ニコ動は「ほんとにこれは楽しいな!」と思ったんですよ。  自分も楽しいし、「たぶん、ユーザー側に行ったらもっと楽しいんだろうな!」っていうふうに思って。
     5年前、ニコ動ができたての頃。もう憶えている人も大分減ってると思うんですけども、やっぱりあのときのニコ動は、誰が見ても「このサービスは 1年以内に潰れる 」と思ってたんですよ。  「 こんなサービスが許されるはずがない 」と(笑)
    <岡田>  確かに、否定しないな。  そうですね、はい。   本人が言うとすごい説得力ありますね (笑)
  • 【岡田斗司夫のニコ生では言えない話】昼は橘玲、夜は内田樹、岡田斗司夫の着まわしコーデ術!?第32号

    2013-05-13 07:00  
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    気づくと同じような服ばかり着ている無銘のマサフミです。
    前回に引き続き岡田斗司夫ゼミ3月号後半の模様をお届けします。
    岡田斗司夫は著書『ぼくたちの洗脳社会』『評価経済社会』において、これからは個人の中で複数の価値観をコーディネートするようになり、自分の感性に合うように価値観の種類や深さや時間を使い分けることが大切なことになると述べています。
    では、岡田斗司夫自身が橘玲さんと内田樹さんに影響を受けた際、どう価値観のコーディネートをしているのかを見ていきましょう。
    カジュアルにフォーマルに、特別なときに普段使いに。
    お気に召しましたら着まわしに便利な岡田斗司夫を一着いかがでしょうか。
    それではハイライトからどうぞ。
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    でね、僕の落とし所なんですけども。最近はこういうふうに決めてるんですけども。 橘玲さんの考え方っていうのは、たぶんより真実に近いんですね。より真実に近いんですけども元気が出ないんですよ。
     ただ、あの考え方を持ってると“間違えなくて済む”んですね。 橘さんすごいですよ。対談が始まった時に開口一番言ったのは「宝くじっていうのは元々愚か者にかかる税金って言われてますから」ってところから始めて。すごい!「宝くじなんて買うやつは馬鹿だから金を取られても仕方がないんですよ」っていうことをまずどーんと言うわけですよ(笑)
     こっから始められた。言い方がすごいよね「愚か者にかかる税金と言われてますが」って言うから「当然、岡田さんも知ってるでしょう」から始められたから「おわー……」って思って、「はいはいはいはいはい!橘節キターーーっ!!」って思うわけですよね。
     で、 橘さん的な考え方をちゃんと身につけてると、損しないし傷つかないしこの世の中の底が見えてるから安心は安心なんですよ。「この世の中は果てしない底があってどこまで落ちていくか……」ではなくて「はい、ここが底ですよ。その底のことを“リベラル・デモクラシー”と言います。その本質は“生贄”です」っていうふうに言っちゃうんですけども(笑)
      だから、昼間の雨の降ってない晴れた日は橘玲でいこうと思います! 昼間は。で、夜、もう6時過ぎたら俺は内田樹に切り替えます! 無理! 皆さんも1回、夜6時過ぎてから橘玲になってみなさい。ホントにね、寝るのが嫌になるから!
    『はらちゃん』を見ても泣けなくなりますから(笑) 「まあそんなこと言っても日テレのドラマだし、視聴率取るんだからこんなもんだろ」って、さっき僕が言った「恋愛の不可能性っていうのを成立させるためにはこういうドラマ作りもアリ」っていうのは橘玲的な考え方なんですね。でも、はらちゃんのことが心配で夜も寝れない僕っていうのも、それも本当の僕なんですよ。
      僕の心の中には橘玲さんと内田樹さんの両方がいて、たぶんそれは皆さんの中にも、例えば東浩紀がいて誰がいて、小林よしのりがいて誰がいてとか、人によったらひょっとしたら大阪維新の会の人がいたり石原慎太郎がいたり、意外な人がいるかもわかんないんですよ。
     でも、それは「100%こいつの言ってることがわかんない!」じゃなくて、誰かに腹が立ったりムカッとする時はやっぱり5%や10%そいつの言ってることがわかって、それがわかっちゃう自分が嫌だから誰かにイラついたりするんですよね。 だから僕も嫌いな人っていうのは理解できる人だけなんですよ。人間は理解できないものを嫌いになれない生き物なんですよね。こと人間に対しては。
     なので、なんでしょうね? 僕は本当にどっちにも心が行けるので、苦しいのは苦しいんですよ。で、皆さんもたぶん心の中に、この番組を見てるからには何%か“岡田斗司夫”が入ってて、その岡田斗司夫のおかげでちょっといいことがあったり、逆に嫌なことがあったりすると思うんですけども(笑)
     それの使い方は俺は「昼・夜」だと思いますね。昼に誰の考え方を持って来て夜に誰の考え方を持って来るか。
     僕自身の生き方は昼に“橘玲”を持って来て、現実というのをある程度冷たく見るんだけども。女の子と話す時にこれは封印するか、もしくはチラ見せ程度にしておいて。主に夜は内田樹でやったらさわやかに寝れるんですよね。夜まで橘玲持って来ちゃいけない。宵越し橘玲は禁止です! ホントに!(笑)
     っていうふうにしたら、この間から日が暮れたら内田樹ってしたら、僕は生きやすくなりました。
     で、変な言い方ですけども、これ自己正当化かもわかんないんですけども。
    “人間の器”って言葉があるじゃないですか。「器が大きい」とか「器が小さい」っていう。それは何かっていうと、信念がある人は器が小さいんですよ。で、信念がない人は器が大きいかっていうと、そうじゃないんですよ。信念がある人は器がちっちゃい。何でかっていうと、許せないことがいっぱいあるから。
     じゃあ、許せることがいっぱいある人は信念がないのか。そうじゃなくて“矛盾する信念”が強いんですね。矛盾する信念がありながらそれを維持できる“自分”っていうのがある。それは昼夜で切り替えてもいいですし、「本音と建前」って言ってもいいんですけど。
     たぶん人間「本音と建前」って言ってもそんな裏表の関係じゃないんですね。自分が気弱な時はこういうふうに考えちゃうとか、人に優しくしたい時はこういうふうに考えちゃうみたいな切り替えだと思うんですけども。
      僕は内田さんと橘さんの話を聞いて「そうか、俺が行く道っていうのは器を大きくするしかないんだな」と思いました。
     自分の中に矛盾する考え方、価値観というのがありながらどれか1つを信じて楽をするのではなくて、これをすべて維持する。それ以外にも、自分が嫌いな人の考え方であっても。「嫌い」っていうのはさっきも言ったように「理解できる」だから、それを保持したまましんどいけれどもできるだけ維持することしかできないんだな、というふうに思いましたので、皆さんも心の中にある岡田斗司夫をちょっと大事にしてやってください(笑)
  • 【岡田斗司夫のニコ生では言えない話】無料でも仕事を受けようなんて、ニートのくせに生意気だぞ第31号

    2013-05-06 07:00  
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    年齢が上限を超えてしまい、ニートの資格を失った無銘のマサフミです。
    今回はニコ生ゼミ3月号から前半部分の模様をお届けします。
    無料で働くデザイナーを募集した大阪市天王寺区と、そのことに危機感を覚えたプロデザイナーの話題から、これからの仕事のありかたについてニコ生のコメントの皆様と一緒に考えていきましょう。
    誰にだってお金を払ってだってやる趣味や特技があります。ニートだって面白いこと楽しいこと好きなことならやりますよね。そしてどんなプロでも無料で働く人が大勢現れたら敵わない。
    面白くて楽しくて好きな仕事。そんな仕事はみんなニートのものになるんじゃないの?
    それではまずはハイライトからどうぞ。
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    で、天王寺区もたぶん思想があってやったわけではないと。これ、俺は全く知識なくて言ってるんですけども。
     これまでの区役所とかの仕組みから考えて、たぶんそんな大きい思想的なものがあったんではなくて 「これからは別に無料でやってもいいんじゃないのか?」とか「市民の方にボランティアでやってもらってもいいんじゃないのか? そのほうが、予算が使わないほうが、結局、天王寺区の区政としてもいいし。大阪の市の市政としてもいいし。」というふうなことで決まったんだと思うんですけども。
     それが大揉めに揉めて、結局プロのデザイナーの人たちが「プロの仕事を舐めるなっ!」というふうに言ってきたわけですよね。
     プロの仕事を舐めるな、というのは何かというと。天王寺区のこの募集というのは「プロでもアマチュアでもそんなの気にしないよ。タダで仕事してくれりゃあ誰でもいいよ!」って宣言したも同然なんですね。
     だから、プロの人にしてみれば「ちょっと待てよ」と。「俺たちのプロの仕事っていうのはそういうふうに見てたの?」と。「そうじゃなくて俺たちが金取るっていうのはそれだけのクオリティとか、納期とか、あとそのあとのアフターフォロー、リテイクに対する対応とかをちゃんとするということだろう」と。
     だから、「なのにタダだったら何でもいいかい!?」というふうに言ったわけですよ。
     で、これ、ホント言えば公聴会を開いて、できればニコ生か何かで討論会やったらとてつもなくおもしろい結論が出たと思うんですけども(笑)
    “とてつもないおもしろい結論”っていうのは「正直言えばその通りです!」と。「プロとかそんなの関係ありません。ただ単にタダがいいんです!」っていう正直な話が出ちゃったとい思うんですけども。
     さっきも言ったように、これのポイントは、たぶん、この募集自体が天王寺区の担当者1人腹で決まったことで、そいつには大して思想もないんですよね。だから三鷹市の水道局が「三鷹はエヴァでなければいけない!」って強く思ったんではなくて、ただ単に担当者の趣味でエヴァにしたのと全く同じで、天王寺区のやつは単に趣味で「安けりゃいいだろう?」と思ってタダにしちゃったわけですよね。
     そしたら、大揉めに揉めた。だから「揉めた」という理由だけで撤回しちゃったわけですよね。
    「タダで仕事するなんて慣習を定着されちゃたまらんな」
    「プロの無駄なあがきだよなぁ」(コメント)
     すごいね、もう2つ完全に対立した意見が出て来る。
    「タダで仕事というのを定着されちゃたまらん!」という人もいるんですけども、タダで仕事をするということを定着させたほうがあらゆるもののコストが下がるわけですよね。でも、あらゆるもののコストが下がれば僕たちの仕事とか雇用もいずれ失われていくわけですよね。
     だから、天王寺区の「デザイナー問題」っていうのは、逆に言えば、僕らの友達とか親戚が誰がいつ失業するのかわからない問題にもつながってるし、逆に言えば、今の僕らが金を払ってやってもらってることの何がこっから先タダでやってもらえるようになるのかわかんないっていう話にもなるわけです。
    「オールニートワールド」(コメント)
     すべてがニートになってしまう世界(笑)
    「有料無料関係なく審査して選べば問題なさそう」(コメント)
     うーんと、それが困るは困るんですよ。
     これ、困ると言っちゃえば、それは結局「ギルドを作れ!」という話になっちゃうわけですよね。つまり、プロはプロでギルドを作って、「せっかく天王寺区とか市町村とか県とかに食い込んでるんだから、それの権利を放さないほうがいいよ!」っていう、権利を守る話になっちゃうんですけども。
     すべてを解放すると、それは……世界中から日本中から絵を集めたら、素人の方がいいに決まってるんですよ。言いにくい話ですけども。
     よっぽどか特殊なものは別だと思うんですよ。
     例えば曲を作るとか、それを歌うとかになってくると、まだプロの方が上かなと思うんですけども。
     でもほら、「いきなりそこらへんのおばちゃんに歌を歌わせたらすげえうまかった」っていうのがイギリスであったじゃないですか。
     ごめんね、俺知識ないからこういうザックリした説明になっちゃうんだけども(笑)
     たかだか1000人とか1万人対プロだったらプロが絶対勝つと思うんですけども。でも、100万人の素人対プロだったらプロに勝ち目ないんですよ。
     力道山っていうプロレスラーが昔いて、そいつ「世界一強い!」とか本人も言ってて、日本中も「力道山強い!」って言ってたんですけども。
     結局、死んじゃったのは……彼、死んじゃったんです。何で死んじゃったかっていうと、飲み屋でチンピラに喧嘩売られて、そのときにナイフで刺されて「平気だよ平気だよ」って言って治療が遅れて死んじゃったんですよね。で、これがやっぱり世界中の格闘家にショックを与えたんですよね。日本の格闘家も。
     っていうのは、いかに格闘家が地上最強とはいえ、年がら年中「お前強いんだろ? じゃあ俺がやってやるよ!」みたいな感じで素人に喧嘩売られると……素人に喧嘩売られても絶対勝つんですよ。プロの格闘家は。でもそれを四六時中、24時間あらゆるタイミングでやられたら絶対に負けるんですよ、いずれ。
     例えば“言論のプロ”みたいな人いるじゃないですか。「絶対に喧嘩に勝つ」みたいな人とかいるんですけども、そういうふうな人でも24時間1億人を相手にはできないんですよね。そんなことやったら負けちゃうんですよ。
     なので、大阪のそのデザイナーの件っていうのは、僕が思うに、これ一件目だからまだ大揉めに揉めてそれ廃案になったと。たぶんこれでしばらくは大阪市天王寺区みたいに「タダで仕事やってくれ」みたいなものは減るというか少なくなるかもわからないですけども。
     だけど、「言い方さえ気をつければ大丈夫だ!」とか「アマチュアにチャンスをあげるので今回プロの方はエントリーご遠慮願います!」みたいな言い方をしたらたぶんOKだ、っていうのが段々わかってくると思います。
      そうなると、どんどん僕らの世界では“仕事”っていうのが少なくなってきて、もしくは仕事はあるんだけども無料の仕事、無料なんだけども評価だけは得られる仕事というふうなものに近づいてきちゃうんだろうなあというふうに思いました。
    「いついかなる時でも誰の挑戦でも受ける」(コメント)
     そうですね、アントニオ猪木は「いついかなる時でも誰の挑戦でも受ける!」って言ったんですけども、「それはちゃんとファイトマネーを積んで、リングを用意して、何月何日って設定してね」っていうふうなことをちゃんと忘れなかったんですね。みんな本当に力道山の教訓があるもんだから(笑)
     どこでもかしこでも喧嘩してはいけないと。マス大山も『空手バカ一代』の中で言ってますからね、「そんな無茶やっちゃ駄目だ」っていうふうに(笑)。気をつけてください。