私の出身地は石川県小松市である。この農村地域に向本折小学校があり、私の母校だ。10年程前であろうか、小学生に講演を頼まれた。終わって校長先生が色紙を持ってこられた。多分「切磋琢磨」「一心不乱」等の熟語を期待されたと思うが、私は「太郎と呼べば太郎は来る 花子は来ない」と書いた。
この言葉はPHP発行部『心を豊かにする100の言葉』での時実新子氏の記述からとった。時実新子氏は1929- 2007年の川柳作家である。 62年には、夫ある女の激しい恋情を詠った句集「有夫恋」がベストセラーとなる。《凶暴な愛が欲しいの煙突よ》《五月闇生みたい人の子を生まず》《背信の夜明けの闇のその重さ》 《こちらあなたの夫と死ぬる女です》等読み、芸能評論家の木津川計さんは「かくほどに奔放に剥き出しに情念や情欲を詠い上げた女流川柳家がいたであろうか。」と指摘している。
私は情念を柔らかく包んだ歌の方が好きだ。
「北風や 獅