1:冷戦以降の米国の世界戦略、その中での北朝鮮の位置
私達は、朝鮮半島への米国戦略、特に北朝鮮への戦略を考える時に、冷戦以降、どのように変化したかを考察する必要がある。
冷戦時、米国の戦略、軍備、兵員配備は度はソ連の脅威を前提に構築された。
ソ連の崩壊によって、米国には2つの選択があった。
一つは、ソ連と言う脅威の消滅により、国防費を大幅に軽減すること
今一つは、最強の軍事を維持し、それを背景に世界で米国の指導的立場を一段と強めること
結局、米国は後者を選択する。
しかし、明確な脅威が存在しなければ、米国世論は軍備費の削減を求める。
ここから、脅威を誰にするかの模索が行われ、イラン、イラク、北朝鮮のような不安定な国々が対象となる。
これらが体系的にできたのが1993年に形成された「ボトム・アップ・レビュー」である。
それは次を骨子とする。
・ 冷戦後の米国の政治
コメント
コメントを書く大変わかりやすい北朝鮮をめぐる関係諸国の思惑を伺うなかで考えてみた。不見識化もしれないが、頭の体操になる。
北朝鮮をめぐって核の排除では関係諸国の考え方に異なるところがない。問題は、北朝鮮が核を排除しない中での対応である。北朝鮮に理解ある国であるロシアと中国でもスタンスは異なっている。一番強く関係改善が求められている韓国は休戦状態が長年にわたり続いており苦悩がなくならないが、緊張感があらゆる面で有効に作用し、社会の活発化と進歩はすさまじく、日本の平和ボケと比較にならない国家躍動感を示しています。韓国に劣らず苦悩を続けているのが中国であり、北朝鮮をめぐる戦略では、韓国は、米国と中国のはざまで苦悩している。中国との接近は北朝鮮戦略上どうしても不可欠であり、米国も理解せざるを得ないのでしょう。
日本の大きな問題は拉致問題であり、北朝鮮の日本に対する大きな問題は戦後賠償であることはわかりきったことである。毎度のことでわかりきっていることであるが、解決に向かえば、日本近海の領土問題解決で必ず障害になるのが米国の対応であるように、拉致問題も小泉氏のように解決しようとすれば必ず妨害するのが米国である。問題は、時の安倍氏のように米国側に立つ日本人が多く出てくるのです。国家を背負った政治家が出てこない限り、外交面で発言できるのは経済面でも支援だけであり、国際社会、特にアジアでは、米国従属国家というより、米国奴隷国家とみられていくのでしょう。
戦後レジームの解決は、米国の干渉をいかに排除できるかにかかっており、今回のように、国民が戦後レジーム解消の流れを作っても全く対応しない政治家たちは、日本人の魂を失い米国人かしているといえるのではないか。
そもそも、「危険な国」と「危険ではない国」とにラベル貼りをすることが大間違いだと思う。
日本以外の全ての国は、自国の安全を守るために、たとえ心の中では「いやな国」と思っても、それを態度に出さず仲良さそうに付き合っている。どんな国でも、付き合えば何らかのメリットはあるし、露骨に敵対的な態度を示せば自国が危険になるためである。
それに対し日本政府は、「米国は正しい国」と盲信し、日本を取り巻くロシア、北朝鮮、韓国、中国は、みんな「悪い国」と烙印を押している。アベノミクスが失敗したのも、中国や韓国を挑発しているため、自分のクビを絞めているためだ。
五輪エンブレムが盗用疑惑で炎上したのも、安保法制、原発再稼働、沖縄米軍基地建設、TPPなどで、国民の意思と逆行する政策をごり押しする、安倍政権に対する不信感の現れではないだろうか。
日本政府は米国崇拝をやめて、自主的外交に立ち戻らねばならない。
> 今一つは、最強の軍事を維持し、それを背景に世界で米国の指導的立場を一段と強めること
結局、米国は後者を選択する。
いつか見たオリバー・ストーン監督の「国境の南」で、アルゼンチンの故ネストル・キルチネル大統領がブッシュと会談した時のことを語っていました-
「彼は、経済を再生する最善策は戦争だと言うのです。そして米国は、戦争によってより強大に成長したのだと。『米国の全ての経済成長は、様々な戦争によって促進されてきた』彼は、はっきりとそう言いました」
以下、週刊読書人(9/11号)伊高浩昭(ジャーナリスト)・柳原孝敦(東京大学准教授)対談「キューバ-米国国交回復は何を意味するか」より
伊高氏-
米国との国交正常化は...ホセ・マルティの頃から、そういう考え方はあった。米国が自分たちキューバに敬意を払い、対等の立場であればいつでも握手する心づもりはある。ところが米国は帝国主義だから、そんなことはできない。今だってできませんよ...ラテンアメリカは南北アメリカ大陸全体が自分たちの「大きな祖国」であり、それぞれが属している国が「小さな祖国」であるという思想は昔からあった...他者を支配したい米国はそこには決していかない。第一、考えが及ばない...注意すべきことは、オバマも、平和裏にキューバ社会主義を倒す「和平演変」策をとっていることです。
柳原氏-
米国というのはえげつない国で、反発すれば徹底的に潰される。それはゲバラが感得していた通りでしょうけれども、一方で追従すると骨の髄までしゃぶられる。米国に全面的に追従する方向に一気に舵を切りつつある国に住んでいる我々としては、キューバが米国と独特な関係を築いていけるかどうか、気になるところです。
伊高氏-
「大きな祖国アジア、小さな祖国日本」と言える日の到来を、その方向で努力しつつ、希求してゆくということです。
孫崎先生のご解説は実によく分かります。キッシンジャーの核戦略に関する戦争心理もよく分かります。
2か月ほど前、イスラエルの戦争評論家が米国のイランと結ぶ核協定は甘い。イランに騙されるのは必定。イラクに対してやったみたいに先制攻撃すべきだと主張していた。イランは米国を騙し結局は北朝鮮みたいに核保有国になってしまうと彼は懸念している。そして更に彼は中東で核保有国はイスラエル一国だということを固く保全することが米英イスラエルにとって最も大事なことではないかと言っている。
以上のような評論を読んでいると、プロの世界ではどうもイスラエルと北朝鮮は核保有国なんじゃないですか。だとすれば、日韓は共同して北朝鮮と枠組みを作ることが喫緊の課題ではないでしょうか。やんちゃで冒険的でヤクザな米国抜きで可及的速やかに枠組みを作るべきです。安倍の側近たちが北朝鮮を攻めて拉致被害者を救出するなんて戯言は絶対に許されません。枠組みを作った後で拉致問題を解決すべきだと私は考えて居ます。
「戦争中毒国家」のアメリカは、常に「国際協調」を乱す外敵を作っておかねばならない。それは「軍産複合体国家」アメリカの宿命となってしまった。
中国が台頭しロシアが復活した暁のアメリカ政府の狼狽えはいかばかりか。米国国民は怒り心頭で在ろう。
アベ政府も早晩崩れる筈の「軍産複合体国家」をアメリカの許容範囲の中でやろうとしている。麻薬と同じで中毒になる。
だから、北朝鮮を始め中国みたいな仮想敵を常に創造しようと躍起になっている。