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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『メイドインアビス』がすごすぎる!」
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岡田斗司夫プレミアムブロマガ「『メイドインアビス』がすごすぎる!」

2017-10-09 07:00

    岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2017/10/09

    おはよう! 岡田斗司夫です。

    今回は、2017/10/01配信「いせスマ、ヤマカン、けもフレ、ガンダム、総選挙……「今」を肴に大雑談祭!」の内容をご紹介します。
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    2017/10/01の内容一覧

    『メイドインアビス』がすごすぎる

     メイドインアビス、見てる人があんまりいなくて悲しいんですけども。

     まずね、『メイドインアビス』の何がすごいのかって、原作漫画がすごいんですよね。
     やっぱり、原作漫画がメチャクチャ面白いんですけども、だけど、アニメはこの原作を追い越しているんですよ。

    (中略)

     このアニメについても、視聴者のみなさんの中で、見ている人は半分もいないと思うので、説明すると、『メイドインアビス』という物語の舞台は「アビス」という直径1㎞くらいの穴なんですね。もう深さ何万メートルあるかわからないというくらいの穴が、地球の中心まで繋がっているわけです。
     たぶん、現代の文明が崩壊した後なのかもしれない時代に、地球に開いた、とても深い穴から、不思議なものがいろいろ発掘されるようになって、それを穴から発掘することで生活している人がいるんですね。
     主人公たちのいる幼稚園と小学校が一体化されているような施設では、アビスの近くで拾われた子供達が育てられています。「彼らは、穴の中に潜って、中から売れる物を取ってきて、その売上を学校に寄付することで、そこにいる全員が食っている」という、なかなかちょっと、現実的な、シビアな世界なんですね。

     ただ、そのアビスの中っていうのは、深く潜れば潜るほど、「上昇負荷」というのが掛かる。つまり、「上がってくる時に身体に悪いことが起こる」んですね。
     潜る深度が1000メートルくらいだったら、「シンドい」とか、「咳が出る」くらいのことで済むんですけども。そこから深くなればなるほど、上がってくる時に「目から血が出る」とか、「全身の穴という穴から出血する」とか、「人間の形を保てなくなる」とか、いろんな恐ろしいことが起こる。これを「アビスの呪い」っていうふうに言ってるんですね。
     そんな恐ろしい場所であるにも関わらず、その周りでは、やっぱり、いろいろ価値がある物が取れるので、人間たちがいっぱい暮らしているんですね。

     これは、『メイドインアビス』のエンディングの一部の絵なんですけども。やっぱりね、優れた映像っていうのは、横から入った光を見るだけで、それが朝か夕方かわかるんですよ。
     朝日と夕日っていうのは、見た目ではそっくりなんですけども、演出の描き方によって、それが「希望的なもの」(=朝日)なのか、「感傷的なもの」(=夕日)なのかがわかるんです。
     メイドインアビスのこのシーンでは、街の右側から光が入っていて、左半分はまだ真っ暗な闇に閉ざされているから、街の中に灯りがポツポツと残っているんだけども、右側では、光がどんどん当たってきて、希望に溢れた朝が来る。
     「これが、お話全体のテーマである」ということが、わかりやすく示されているんですよね。

    (中略)

     ここを肯定的に描かないと、その作品を見ている人間が救われないというところがあるんですね。
     だから、こういうのをしっかり描いている作品は、僕はすごく信頼できると思うんですよ。

     『メイドインアビス』の世界は、本当にすごいです。「美しいもの」と「恐ろしいもの」を、同じ絵で表しています。

     この作品について「見れない」とか、「あんまり見たくない」って言ってる人は、「あの「幼児的な絵柄」が嫌だ」っていう人が多いんですよね。
     さっき、主人公たちの年齢について、僕は「幼稚園児みたい」って言っちゃいましたが、正しくは幼稚園じゃないんです。……だけど、見た目からは園児としか思えないようなキャラクターばっかりが出てくるんですよ!(笑)
     「ああいう絵柄が嫌だ」って言う人も多いんですけども。

     だけど、あの幼児絵でないと、無理なんですよ。
     『まどマギ』の話を、オッサンやオバサンでやっちゃダメでしょ? それはもう、「萌える/萌えない」の話じゃなくて、「あんな深刻な話を大人にやられたら、見ていてシンドくてしょうがないから」なんですよね。
     まどマギというのは、あの話をあの絵柄でやっているからこそ、なんとか視聴に耐えられる「商品」になってるんですけども、メイドインアビスもそれと同じで、幼児的な絵柄でやらないと、かなりヤバい内容なんですよね(笑)。

     この『メイドインアビス』が、他のアニメと何が違うかっていうと、「徹底的にソリッドな構造」っていうのかな? 削り落とした構造なんですね。
     「登場人物がたったの2人」という、かなりコアな描き方をしているんですよ。

    (中略)

     もちろん、他にもキャラクターは出てくるんですけども、基本はあくまでも、ロボット少年レグっていう主役と、リコという女の子の2人。おまけに、ほとんどがレグのモノローグで出来ているような番組だから、ストーリーを作るのがメチャクチャシンドいはずなんですよね。
     だから、必ずどっちかが活動的になって、もう片一方は「謎」的な部分を受け持たないといけなくなってくる。
     だって、もう、ゴンとキルアだけで『HUNTER×HUNTER』をやってるようなもんですからね。そりゃ、無茶でしょ? でも、その無茶をメイドインアビスはやっているんですよ。
     僕は、メイドインアビスのことを「裏・HUNTER×HUNTER」って呼んでるんですけども。HUNTER×HUNTERが「広い世界に旅に出よう! 僕達2人はいろんな人と出会って、友達になるよ!」って言ってるのに対して、メイドインアビスは「狭い狭い世界へ潜って行こう。もう二度と会えないし、友達はみんないなくなっていくよ……」っていうような話なので(笑)。

     そんな中、とにかく、描くのがすごく難しいことをやっています。

     例えば、さっき話した「深層の呪い」というのにかかって、リコっていう、もう本当に幼女にしかみえないロリな女の子が、左手に毒をもらっちゃうシーンがあるんですね。
     獣に襲われて、針が刺さって、毒をもらって、腕がガーッと腫れ出す。
     この時に、リコは、一緒に旅をしてるレグという少年に……この子も、もう本当に、ちっちゃい男の子にしか見えないんですけども、「私の左腕を切り取って」って言うんですよ。「このまま毒が上ってきたら、命が止まってしまうから、左腕を切り取って!」って訴えるんですね。
     そう言われたレグは、肘の関節の位置から切っちゃうと、この手が二度と動かなくなるので、もう少し先の位置で切ろうとする。だけど、関節と違って、腕の部分をそのまま切るのは難しいから、まず、切り取りやすいように、骨をボキッと折ってから。そのために、一緒に冒険している女の子の腕を折ろうとするんですよね。
     リコからは「構わずにやって!」っていうふうに言われて、もう泣き叫びながら折るんですけども。

     結局、腕のシーンはそこで終わったんです。
     でも、普通の作品では、こういうのって、だいたい最後には何事もなかったかのように治るものじゃないですか。『ジョジョ』とか、どんな漫画でも治るじゃないですか。

    (中略)

     この傷跡の残った腕を、メイドインアビスは「苦しみや悲しみ」として描いてないからなんですね。むしろ、「生命の素晴らしさ」として、描いているんですよ。「私には、まだ、動く親指がある。良かった。これでまた冒険が出来る。これからも冒険が続けられる」という、生命賛歌として描くんですよ。
     これがもう、そこらのジャンプ漫画とのレベルが違うところ! ……って言ったら、ジャンプ漫画に失礼なんですけども(笑)。
     普通、こういうダメージって、どうやっても「なかったこと」にしたくなるところなんですよ。それを、「まだ左手が動く!」、「まだ小指が動く!」っていうふうに見せるっていうのが、現実の障害者の人達に、どんなに力を与えているのかっていう話ですよね。
     こういう話の描き方が「すごい正直で、格好いいな!」って思うんですよ。

    (続きはアーカイブサイトでご覧ください)

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