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■佐倉みさき/8月4日/17時05分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
「うわ」 と、思わず声が出た。 目の前で、急にフォロワーが増え始めた。 いきなりひとつ、4コマを並べたものが送られてくる。 ※ @4koma_memories こういうのはどうですか? pic.twitter.com/E4j18gK5lU ※ 私はその4つのイラストを眺めてから、目を閉じてみる。 だが、スクリーンは...
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■佐倉みさき/8月4日/17時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
目を開くと心配そうな顔で、ノイマンがこちらを覗き込んでいた。「どうしたの? 大丈夫?」 私は思わず、反射的に応える。「あ、はい。寝てました」 感覚としては夢をみているようなものだったけれど、この返事はどうかと我ながら思う。「なにか悪い病気なんじゃないの?」「ずっと誘拐されているので、心労かもし...
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■佐倉みさき/8月4日/16時50分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
ブラックアウトした視界の中心に、ぽっかりと、四角い光が浮かんでいた。 その様は、簡単にたとえるなら、映画のスクリーンのようだった。 私は客席さえみえない、自分の手足もわからない小さな映画館にいて、ただまっしろなスクリーンだけをみている。そんな風だった。 白い画面の左下に、ぼんやり文字が浮かび上...
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■佐倉みさき/8月4日/16時45分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
2時間ほどあちこち歩きまわって、私たちはカフェに入る。 名古屋駅からそれほど離れていない場所にある、こぢんまりとしたカフェだ。 私は意外とこのマイナーな観光を楽しみつつあったのだけれど、ニールが「そろそろあのイラストと照らしあわせた方がいいんじゃねぇか?」とごねはじめたのだ。 私たちは4人用の...
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■佐倉みさき/8月4日/15時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
ニールはこの極めてマイナーな観光に、もう飽き飽きとしているようだった。彼の舌打ちを聞きつつ移動する。 途中、大通りに出たとき、とても立派な鳥居を見つけた。「あれは何ですか?」 私は気になって尋ねる。 ニールが答えた。「さあな。なんにせよ神社だろ。ここのは確か、徳川家康を祭ったとかいう」「豊臣秀...
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■佐倉みさき/8月4日/14時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
ベリーショートというほどではないけれど、短く、活発的になった髪に触れる。頭が軽い。 私自身、40枚のイラストから4コマ漫画を作るという行為に、興味を持ちつつあった。それはきっと、久瀬くんの過去を知ることに繋がるのだから。 昨日は名古屋に移動して、ホテルでぐっすりと眠った。その隣でノイマンは、ノー...
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■佐倉みさき/8月3日/18時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
「あの辺りでいいわ」 とノイマンが言った。 自分がどこにいるのかわからないけれど、なんてことのない街の一角だった。 ニールが近くのパーキングに車を入れる。ふたりが車を降りたので、私もそれに従った。「旅行って、ここですか?」 あまりに近い。旅行感はない。「いいえ、旅行に行くには準備がいるでしょ。鞄...
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■佐倉みさき/8月3日/17時45分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
後部座席に載せられていた。 運転席にいるのはニールだ。トランクに詰め込まれはしないだけましだが、数十センチ先に誘拐犯がいるのは、やはり息が詰まる。「旅行は好きか?」 シートベルトを念入りに確認していると、前を向いたままのニールに尋ねられた。 いきなりなにを言っているんだ、こいつは。 ニールは気...
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■久瀬太一/8月3日/17時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
八千代は躊躇いのない足取りでマンションに入る。オレもその後ろに続いた。「どうしてここがわかったんだ?」 彼はいつもの、こちらの内心を見透かしたような動作で肩をすくめる。「協会内には、何人か知り合いがいる。実のところ、君の彼女の誘拐にも知り合いのひとりが関わっている」「なら、今いる場所もわかるん...
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■久瀬太一/8月2日/24時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
ソルから知らされていた通りだ。 夜、オレはまた夢の中であのバスに乗った。 ――確かバスが走るのは、残りは8日、15日、24日。 意外に少ない。だがこれでずっと、予定が立てやすくなった。 オレはきぐるみの隣に座る。きぐるみは言った。「機嫌がよさそうじゃないか」「どうかな」 ま、悪くはない。 みさきのメ...
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■佐倉みさき/8月2日/20時35分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
放送が終わってからもしばらく、そのモニターをぼんやりと眺めていた。 ――あのメッセージは、本物だったのかな? 久瀬くんからのメッセージ。 わからない。けど、なんだか疑えなかった。 私は深呼吸をする。 がんばろう、と思う。 その時だった。 背後で、コツン、と音がした。 知っている音だ。背筋が震える...
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■久瀬太一/8月2日/19時50分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
次のメールをひらいて、それを読んで、泣きそうになる。 そこにはみさきからの伝言が書かれていた。 彼女は小さな子供の、つまらない嘘を相手にしている場合じゃないんだ。 ――こいつにはさ、奇跡の魔法がかかってるんだよ。 そんなわけないじゃん。 ――こいつを持ってると、絶対に悲しいことは起こらないんだ。そ...
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■佐倉みさき/8月2日/19時45分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
ふいに、息が詰まる。 ――☀コレは伝言です、 と、コメントが流れた。 ――「あのキーホルダーは、嘘じゃない」 それを読んで、2秒か、3秒、遅れて、「あ」と言葉が漏れた。 強がってみても不安だったし、ノイマンが悪い人ではなかったとしてもここから解放されたかった。 一方で私は、彼に無理をしないでと言いたか...
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■佐倉みさき/8月2日/19時05分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
生放送がはじまったようだった。ふいに映像が切り替わる。カメラが低いアングルで、テーブルの上を映している。「それではメリー、始めましょう」 と男性の声がきこえた。 続いて女性の声。「ノイマンがまだのようですが?」 ノイマンがいない? 遅刻、だろうか? 彼女は時間に正確な印象があるけれど、思えばそ...
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■佐倉みさき/8月2日/18時57分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
ノートPCを色々いじってみたが、ノイマンの言うとおり、手がかりらしいものはなにもみつからなかった。何度か、警察に助けを求めようか迷った。でも結局止めておく。 誘拐犯を信用するなんて、正気じゃないとわかっていたけれど、ノイマンはやはり最初の誘拐犯やニールとは違うように感じていた。 そうこうしてい...
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■佐倉みさき/8月2日/18時30分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
以前から、この日ノイマンは聖夜協会の食事会に行くと言っていた。 でもまさか誘拐した人間を、ひとり部屋に置いて出かけるつもりとは思わなかった。「もちろん逃げ出そうと思えば、逃げ出せるわよ」 黒一色のカバンを肩にかけながら、ノイマンは言った。「でも貴女はこの部屋を出ない」「どうしてわかるんですか?...
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■久瀬太一/8月2日/17時45分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
オレは眉間に皴を寄せる。「話って、なんの?」「ありきたりな世間話だよ。君、聖夜協会のクリスマスパーティに参加したことは?」 どうして、そんなことを聞きたがるんだろう? わからない。が、やっぱりオレは嘘が苦手だと、昨夜反省したところだ。オレは事実を答える。「あります。幼いころに、何度か」「その会...
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■久瀬太一/8月2日/17時20分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
八千代が待ち合わせに指定したのは、ちょうど駅と駅の中間ほどの落ち着いた一画にある、品の良いカフェだった。店の前にはオープンテラスもあったけれど、夏の陽射しが強く、そこに座ろうという気にはなれなかった。 店内にはレコードの、レトロな音が流れていた。曲名はわからなかったが、心地のよい音楽だ。 オレ...
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■佐倉みさき/8月1日/23時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
私は清潔なシーツにくるまっていたけれど、リビングからはノイマンがキーボードを叩く音が聞えていて落ち着かない。 彼女の仕事の締め切りは明日だ。聖夜協会から請け負ったという仕事がどうなろうと知ったことではなかったけれど、やはり人が働いている横で眠るのは気がひける。この数日の私の仕事といえば、何度か...
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■久瀬太一/7月31日/19時20分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
母さんが死んだ年のクリスマスパーティが、たぶん最後だ。 それっきりオレは、あのパーティには行かなくなったはずだ。 あの夜、雪は降っていなかった。 外気はひりひりと肌に張りつくように冷たかった。反対にホテルのなかは、暖房がよく効いていて、頭がぼんやりとした。暇だったオレは、ホテルの中をあちこちを...
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■久瀬太一/7月30日/23時10分
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
この数日は、バスに乗る夢をみていない。 心のどこかで、あの超常現象に期待していた。あれがなければオレはただの大学生で、警察にもみつけられないみさきを、どうすれば助けられるのかイメージできない。 聖夜協会のパーティは毎年同じホテルで行われていたから、そこに連絡をいれてみた。もちろん客の個人情報は...
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■佐倉みさき/7月30日/9時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
誘拐犯のくせに私には健康的な生活を提供してくれるノイマンだけれど、彼女自身はそれほど健康的というわけでもないようだった。 目を覚まして、ベッドでうだうだして、それからリビングに出ておどろいた。ノイマンが目の下に、大きな隈を作っていた。 彼女は私が眠る前と同じ姿勢で、一心不乱にノートPCを叩いて...
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■佐倉みさき/7月29日/10時
コメ0 3D小説「bell」本編 125ヶ月前
その女性はノイマンと名乗った。 彼女の部屋での生活は、これまでとは雲泥の差だった。 久々にシャワーを浴びることができた。シャンプーなんか私が普段使っているものよりも高級品だった。まっ白なタオルと新品の着替えが用意されていて、1日に3度人間味のある料理を食べ、夜は清潔なシーツと膨らんだ枕で眠った...
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■久瀬太一/7月28日/12時
コメ0 3D小説「bell」本編 126ヶ月前
父への電話は、珍しくすんなりと繋がった。 挨拶もなにもなく、どこかにやけて聞こえる口調で、「どうだった?」と父は言った。「なにがだよ?」「佐倉さんとこの娘さんだよ。連絡あったか?」「ああ」「それで?」「ちえりとは会った。みさきはまだみつかっていない」 電話の向こうで、短い沈黙があった。 それか...
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■佐倉みさき/7月28日/10時30分
コメ0 3D小説「bell」本編 126ヶ月前
長い夢をみた。 なんだか良い気持ちで、私は目を覚ます。 ベッドの上だ。清潔感のある白いシーツに寝転がっている。「よく寝る子ね」 声が聞こえた。呆れというよりは感心している風な口調だった。 目をこすって、そちらを向く。 長い黒髪が綺麗な女性が、ベッドわきの椅子に座ってこちらをみていた。「久瀬くん...
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■佐倉みさき/7月28日/10時15分
コメ1 3D小説「bell」本編 126ヶ月前
久瀬くんが私を引っ張る。 同い年とは思えない力強さにびっくりして、私は気づけば彼の後ろについて部屋を出ていた。「どこにいくの?」 と私は尋ねる。「もっと綺麗なところだよ」 と彼は答える。 私の手をひいたまま、久瀬くんは走る。廊下で数人の大人に声をかけられたけれど止まらない。パーティ会場にも目も...
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■佐倉みさき/7月28日/10時
コメ0 3D小説「bell」本編 126ヶ月前
夢をみていた。 幼いころの夢だ。 ※ 当時の私は、両親から勧められたピアノ教室に通っていた。 私はピアノが嫌いではなかった。 下手なりに技術が向上するのはカタルシスだったし、褒められると単純に嬉しかった。 でも、ピアニストになりたい、とは絶対に思わなかった。人前に出るのが苦手だ。綺麗...
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■佐倉みさき/7月27日/12時30分
コメ0 3D小説「bell」本編 126ヶ月前
眼鏡は、私の姿を見失ったようだ。 この追いかけっこが始まってから既にずいぶん時間が経過しているはずだが、まだ私が捕まっていないのだから、もし居場所がバレていたら、両腕を思い切り振れて息を大きく吸える眼鏡が、私に追いつけていないはずがない。 幸運だ。 でも、これだけでは足りない。 私はひたすらに...
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■佐倉みさき/7月27日/12時20分
コメ0 3D小説「bell」本編 126ヶ月前
駆け込む店も、助けを求める通行人もいなかった。 あるのは乗用車同士がギリギリすれ違えるくらいの、細くうねった道路と、途切れ途切れのガードレール。あとはひたすらに生い茂る木々だけだ。 ――山の、中? そんな。一体。 ここから、どうしたらいいんだ? もう一度トランクに舞い戻るわけにはいかないのだから...
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■佐倉みさき/7月27日/12時16分
コメ0 3D小説「bell」本編 126ヶ月前
奇跡が、起こった。 車内に電子音が鳴り響いていた。古典的な着信音だ。ドイルという人だろうか? まったく別人だろうか? 誰でもいい。なんでもいい。再び車が路肩に寄り、停まる。「なにをしていたんだドイル」 叫ぶような眼鏡の声が聞えた。 ――いましかない! この、神さまがくれたような好機に、私は意識を...
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■佐倉みさき/7月27日/12時15分
コメ0 3D小説「bell」本編 126ヶ月前
車は何度か信号で停まったようだった。そのたびに、私はケーブルを引こうと考えたけれど、躊躇っているあいだにまた走り出してしまった。どうして。やるしかないのに。緊張して、身体がすんなりと動いてくれない。 そうしているうちに、ずいぶん時間が経ったように思う。 私は車が、今までとは違う動きをしたのを感...
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■佐倉みさき/7月27日/12時
コメ0 3D小説「bell」本編 126ヶ月前
――よし。 指先に、求めていた感触があった。 やれる。このトランクを抜け出せる。 街中ならあの眼鏡も、簡単に銃をちらつかせたりはできないだろう。人目がある中で誘拐を続行することは難しいはずだ。今度はきちんとナンバープレートを確認してやる。 あとは、タイミングだ。 車が停まったとき。できるなら、眼...
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■佐倉みさき/7月27日/11時45分
コメ0 3D小説「bell」本編 126ヶ月前
ガレージにはありきたりな白いセダンが1台停まっていた。 私はそのナンバープレートを覗き込もうとしたけれど、それは叶わなかった。 眼鏡の青年が私をひょいと持ち上げて、トランクに突っ込んだのだ。全力でもがいてみてもどうにもならなかった。ばたん、と大きな音が聞えて、視界から光が消える。狭く、暑苦しい...
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■佐倉みさき/7月27日/11時30分
コメ0 3D小説「bell」本編 126ヶ月前
サングラスの目的がわからない。 部屋の中で転がり回っていた私に対して怒っても焦ってもいないようだったし、相変わらず監視は荒いままだった。単に興味がないのだろうか。なら誘拐なんてしないでほしい。 時間の感覚がなくなりつつあった。部屋はいつも通りだ。いつものように暗く、いつものように私は床に横たわ...