ヒデちゃん、お誕生日おめでとう。

 いつもたくさんのみんなに夢と幸せをありがとう。

 今年も誕生日に手紙を送るね。
 
 
 
 
 おととい、ヒデちゃんの誕生日をみんなでお祝いするイベントに行ってきたよ。
 
 イベントが終わった後、アフターパーティーで久しぶりに弟の松本さんや、I.N.Aちゃんとも会って話ができた。

 二人ともとても元気で、また新しい未来を作っていて・・・偉いな、って思ったよ。
 
 それから東海林さんにも会えた。

 10年ぶりにお話ししたんだけれど、あの千葉マリンスタジアムのイベントが終わった後、ヒデちゃんと会うためにみんなが長い列に並んでいてさ、その時に楽屋でヒデちゃんが真由ちゃんとゆっくりお話ししてたのが見えて、幸せになった僕が泣きながら列を離れた時ね、僕のすぐ前に並んでいたのが東海林さんだった、っていうエピソードを伝えることができた。
 
 東海林さんも、遠くを見るような目つきで「すごく懐かしいわね・・・」っておっしゃってた。

 PATAちゃんとも会えたし、本当にいい時間だった。
 
 でね、その前、ステージではお馴染みのメンバー達がそれぞれ、おめでとうの気持ちを込めて素敵な演奏をしていたんだけど、僕、それを見ながらずっと「ロック」について考えていたんだ。
 
 ロックって言ったらさ、やっぱりヒデちゃんが最初に僕に心を開いてくれた、あの日のことが忘れられない。
 
 もう34年も前だね。
 
 ソニーミュージックと契約してすぐに始めた音楽合宿でさ、僕がヒデちゃんと二人きりになったあの日。
 
 ベッドに並んで腰掛けて話してたらさ、突然ヒデちゃんが「津田さんはロック、分かってない!」って怒鳴って、灰皿壁に投げつけて泣き出した、あの時。
 
 僕はヒデちゃんが僕に初めて心を開いてくれて凄く嬉しかったし、僕自身がほんとにロック分かってないって思ってたから、それをちゃんと話せて安心したんだ。
 
 でもさ、あの頃の僕は、音楽のことは何でも知ってるのにロックっていうサウンドだけあまり詳しくない僕だからこそ、Xのプロデュースができる、って確信してた。
 
 ロックに詳しくないからこそ、サウンドには関係なく、Xが世界で一番かっこいい、って思ってたからね。
 
 
  
 
 でもね、あの時からヒデちゃんと仲良くなって、メンバーと一緒にアレンジしたりレコーディングするうちに、いつの間にか僕もロックがよくわかるようになった。

 Xを離れてからも、ロックバンドの仕事をいくつかして、自分でもロックサウンドの曲、創ることが多くなってた。
 
 だから、おとといのステージでヒデちゃんの音源が爆音で流れてるのを改めて聴いてるとさ、そのギターの音がほんとに世界レベルで凄いんだ、ってよくわかる。
 
 でね、その凄い音を聴きながらロックサウンドについて色々と想いを巡らせていたの。
 
 最近は世界中の音楽シーンで、あの頃と比べるとロックギターのサウンドを聴く機会が少なくなってるから。
 
 リズムは808の音とサイドチェインで表現するヒップホップ的なビートが主流だし、10年前にスクリレックス辺りから広まっていったアプローチが、今はもうデフォになっててさ、激しい音っていうとエレクトロサウンドがメインだからね。
 
 僕、今は音楽家で作品創ってるから、世界中の今のサウンドを色々浴びているんだけどね、久しぶりに爆音でヒデちゃんのギターを聴いて、やっぱりロックっていいな・・・って改めて思ったんだ。

 もちろん今でもロックバンドはたくさんいるし、新しいアプローチのサウンドもまだまだ生まれてるから、ワクワクすることはあるんだけど、でもやっぱりロックのエネルギーが若い人たちを奮い立たせていた、あの頃の感じとは少し違ってきてる気がする。
  
 そんな風に「ロックの今」を考えてね。
 
 僕はYOSHIKIがSUGIZOやHYDE、そしてMIYAVIと始めた新しいバンド、THE LAST ROCKSTARSに、すごく期待をしてる。
 
 ロックの精神性っていうのかな、ロックの魂に溢れてるのは、4人の人生がそのまま表してるから当然だけど、サウンドもきっと「今のロック〜これからのロック」を炸裂して見せてくれるだろうから。

 4人のロックへの情熱に、見ていて胸が熱くなるんだよね。

 そしてその姿から、あの頃のヒデちゃんの想いもちゃんと感じる。
 
 何よりね、そうやって世界にロックを問いかける、YOSHIKIの心の中にヒデちゃんがいるのを強く感じるから、僕は安心してるし、それがほんとに嬉しい。
 
 それとね、YOSHIKIが最近オーディションで、若い才能に世界の扉を開くチャンスを与えている姿も、YOSHIKIと二人で新しい才能を見つけていた、あの頃のヒデちゃんの姿が重なるんだ。

 世界の舞台に立ってるYOSHIKIは、誰も知らない道を歩んでるからとても孤独で、だからきっと心の中で時々ヒデちゃんと会話してるんだろうな、って思う。

 やっぱりヒデちゃんは永遠で、見守ってくれているんだね。
 
 
 
 ありがとうね、ヒデちゃん。

 生まれてきてくれて。
 
 これからも皆んなを見守っていてね。
 
 ヒデちゃん、誕生日おめでとう。

 ありがとう。
 
 2022年12月13日  津田直士

 
 
 
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【 津田直士プロフィール 】音楽プロデューサー/作曲家 
Sony Music在籍時に「BLUE BLOOD」「Jealousy」「ART OF LIFE」
のCo ProducerとしてX JAPAN(当時はX)をプロデュース 
インディーズ時代から東京ドーム公演までをメンバーと共に駆け抜けた記憶
の一部は、映画『WE ARE X』の中、インタビューという形で語られている。
また、自署「すべての始まり」にはその記憶のすべてが描かれている。