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大島堅一氏:汚染水を海に捨ててはならないこれだけの理由
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大島堅一氏:汚染水を海に捨ててはならないこれだけの理由

2021-04-21 20:00
    マル激!メールマガジン 2021年4月21日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1045回)
    汚染水を海に捨ててはならないこれだけの理由
    ゲスト:大島堅一氏(龍谷大学政策学部教授)
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     三重水素とも呼ばれるトリチウム水の分子構造は水とほとんど変わらないため、人体にそれほど重大な影響は及ぼさないと政府はいう。しかし、分子生物学者はむしろそれは逆だという。ほとんど水と変わらないがゆえに、トリチウムは微量でも体内に長期間とどまり、その間人体を内部被ばくにさらし続ける危険性があるのだという。
     福島第一原子力発電所に放射性物質を含む汚染水が蓄積され続けている問題で、菅政権は4月13日、東京電力がこれを福島県沖の太平洋に放出する計画を承認した。
     福島第一原発では破壊された原子炉内の核燃料デブリを冷却するために海水が使われているが、冷却の過程で発生する汚染水からほとんどの放射性物質はALPS(Advanced Liquid Processing System=多核種除去設備)と呼ばれる装置などによって取り除かれている。しかし、水素の同位体で陽子1つに中性子2つを加えただけの、きわめて水素と分子構造が似ているトリチウム水はALPSを持ってしても水と分離することが難しいのだという。
     政府が承認した計画では、この汚染水の放射能レベルを飲料水と同じ水準まで希釈してから海に放出する予定で、2年後から放出を開始し、その後数十年かけてすべての汚染水を海に投棄するというもの。
     しかし地元の漁協や住民が一貫して海洋放出に反対の意を明らかにしているほか、近隣の中国や韓国などもこの計画を批判している。むしろ、日本人のわれわれがこれに強く反対しないのが不思議だ。
     菅政権は汚染水の海洋放出が引き起こす「風評被害」に対しては全力で対策を行うとしているが、この決定はそれ以前のところで大きな問題がある。汚染水を海洋投棄することの問題点は単なる風評被害にとどまるものではない。
    有識者会議はトリチウムの生体への影響としてマウスやラットで発がん性や催奇形性が確認されたデータの存在を認めながら、ヒトに対する疫学的データが存在しないことを理由に、トリチウムが人体に影響を及ぼすことを裏付けるエビデンスはないとの立場をとり、海洋投棄を正当化している。しかし実際には故ロザリー・バーテル博士などによってトリチウムの人体への影響はこれまでも繰り返し指摘されてきた。
     日本の放射性物質の海洋放出の基準は1リットルあたり6万ベクレルで、これはICRP(国際放射線防護委員会)の勧告に則ったものだ。しかし、分子生物学者の河田昌東氏はICRP勧告はトリチウムのOBT(Organically Bound Tritium=有機結合トリチウム)としての作用を明らかに過小評価していると指摘する。トリチウムは水とほとんど変わらない分子構造をしているため、体内の組織に取り込まれやすい。体内に取り込まれたトリチウムは取り込まれた組織の新陳代謝のスピードによって体内にとどまる時間は異なるが、長いものでは15年間も体内にとどまり、その間、人体を内部被ばくにさらし続ける場合がある。
     原子力市民委員会の代表として原発問題に取り組んできた経済学者の大島堅一龍谷大学教授は、放射性物質を環境へ放出すること自体も問題だが、そもそも今回の決定には社会的な合意形成のための手続きが踏まれていない点を問題視する。また、実際に海洋放出を行う東京電力や政府に対する不信感が払しょくされないなかで、日本国民のみならず国際的に大きな影響を与える可能性のある決定を強行することにも大きな問題があると指摘する。
     そもそも汚染水問題とは何なのか。本当に他の選択肢も十分に検討されたうえで、海洋放出が決定されているのか。実際に海洋放出が行われたとき、そのような問題が起こり得るのか、なぜ政府は社会的な合意形成を図ることができないのかなどについて、大島氏とジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・汚染水は「風評被害」ではない
    ・まったく議論されなかった有効な代替案
    ・政府が安全だという「トリチウム水」はなぜ危険なのか
    ・マスメディアはせめて「拡声器」の役割を果たせ
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    ■汚染水は「風評被害」ではない

    神保: 今回は通常と違い、土曜日の収録となっています。というのも、政府が汚染水の海洋放出を決定し、それ自体もさることながら、決め方があまりにもひどかった。原発問題が風化しているような印象も受け、やはりこれはきちんと見ておかなければならないだろうと。これはわれわれにも責任があり、司法委員会がアリバイ的に行った議論の内容をリアルタイムでモニターしていれば、簡単にこの結論にはならなかった可能性があります。ただ申し訳ないけれど、とてもすべては見切れなかった。

    宮台: そうですね。委員会の構成メンバーは役人が決めるので、事実上、利害相反がある人間がたくさんいる。最初から結論が決まっており、できるだけ国民に福島を思い出してほしくない、という意図が見え見えです。

    神保: そういうことも議論したいと思いますが、まずはそもそも海洋放水のどこに問題があるのか、ということを整理したいと思います。ゲストは龍谷大学政策学部教授の大島堅一さんです。
     大島さんは原発事故の直後、当時は立命館大学にお勤めでしたが、原発のコストをものすごく細かく計算され、それまで普通に通っていた「原発が安い」という主張が嘘であるとされました。 
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