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記事 10件
  • ソローのパラドックス

    2024-09-27 10:22  
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    ロバート・ソロー。ノーベル経済学者。ソロー・モデルはシンプルな数理で経済成長を表現するもので、かつ説明力がそれなりに強いモデル。学部時代にすごく感動した思い出があります。そんな経済成長論の大家ソローが1970年代に、米国のIT投資と経済成長の数値を観察して述べたのが「IT投資と生産性の改善は一致しないどころか逆の効果をもたらしている」ということ。この傾向は現在でも見られ、なぜそうなるのかは論争が続いています。米国では、生産性パラドックスと呼ばれます。日本ではソロー人気からなのかな?印象的であるゆえにソローのパラドックスという言葉が使われます。ただ、私自身はといえば「なぜそうなるのか論理が見えていない」わけですから、パラドックス=論理的矛盾、逆説という言葉は適切な用語ではないように思います。シュレディンガーの猫とかアキレスと亀みたいな論理学上の誤謬とはだいぶ違うような。ともあれ、IT投資が社

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  • 新刊発売『行動経済学超入門』

    2024-09-19 14:54  

    明日、新刊発売です!
    『60分でわかる! 行動経済学 超入門』


    いつの間にか、世の中からは行動科学の学者として必要としてもらえることが増えてきました。
    とはいえこれは大変有難いことで、実際のところあまり知られていないですが私の主要業績は行動科学分野「商業性と社会性を両立したクラファン案件に人々は投資する」だったりするのです↓
    https://www.sciencedirect.com/.../pii/S0166497222000554


    良くも悪くも感情ベースに、共感性で動く時代だから。
    世の仕組みを知り、間違えないためにも、行動経済学を学んでほしいのです。


    ちなみに世の中では行動経済学で上手に人を操るタイプの本がよく出ていますが、そうした本を出す人を私は行動経済学の学者と認めません。経済とは、経世済民。世の仕組みを整え、民を救うための学問であって、人の自由意思に侵入し、罠には

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  • 経済安全保障

    2024-09-13 13:31  
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    当社のようなごく小さな会社でも、こんにち、経済安全保障とか、ディカップリングと呼ばれるものの影響は小さくなかったりする。たぶん、今後の企業経営の中で、国際政治というのは切り離せないものになっていくのだろうと思います。そのような形に経営理論を変える必要があるのか。経営の理論に、政治という要素を混ぜ込むという混色の濁りを、よしとするか、否とするか。悩ましい問題だと思います。

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  • 小原歯車工業

    2024-09-12 09:48  
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    歯車界隈で現在注目の企業の成長史を明らかにした千葉敦氏の法政大学イノベーションマネジメント誌への寄稿より。1990年、歯車界隈では珍しい標準品カタログ販売で高効率経営。
    しかし、業績悪化のなかで「追加工」を行うかたちに。
    それを高効率で果たすために工場の能力構築を行い、最終的に短納期の多品種少量生産に至る。
    それが今度は海外市場進出を可能にし、新たな事業機会を開いている。
    ニーズによって能力が磨かれ、磨かれた能力で新しい事業展開が可能になる。
    能力を事業戦略に積極活用していくことで成長のダイナミズムが生まれる。現場と経営のよいリンケージの事例。能力は高められ、それを活用して経営も積極的に動く。このダイナミズムが大切。

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  • 持続優位から一時的優位へ

    2024-09-08 17:00  
    日本における国際経営論の研究テーマとして「アジア企業との競争」あるいは「なぜアジア企業に後れをとったのか」というものがある。負けるはずもない、圧倒的優位と思われていた日本企業が、わずかに数年であっという間に逆転されていく。ほんの少し前までは、これを従来型の競争戦略論を用いて「コスト」や「差別化」などの観点で説明をしていた。中国企業よりコストでどうとか、日本企業は技術での差別化の方向性が間違っていたのだ、とか。だが、近年は論調がちょっと変わったらしい。従来理論で読み解こうとすることが、誤りであったのだ、と。コスト競争力や技術・ブランド等での差別化は、比較的穏やかな競争環境下で、事業環境が激変するということなど想定せずに、じっくり時間をかけて行っていく能力構築の競争である。だが、現代の競争は、激変する環境下で、優位の源泉すら変わっていく中での、スピードある意思決定と対応力、仕掛けによる揺さぶり

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  • 松尾健治「組織衰退のメカニズム」

    2024-09-06 10:24  
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    嫉妬するほどのよい研究。鐘紡の歴史を紐解いて、組織が長年にわたって衰退し続ける原因は、その歴史の重さにあるとした。研究方法は質実剛健。研究成果はアカデミアとして言い過ぎのない適切な範囲で述べられ、そしてそれは実務的にたいへん有意義な成果となっている。・栄光の歴史が、重しとなって変化できない原因となる・失敗の歴史もまた、そこからの学習が変化を阻害するものとなる結論はシンプルにこれ。何にせよ学習が進む結果として、組織は変われなくなっていく。運命論的なものなのかもしれない。歴史は重い。だとすれば、歴史という文脈からフリーになることは、組織の存続にとってとても大切なことなのかもしれない。社会として一番早いソリューションは、歴史のない企業をどんどん生み出すことかもしれないけれども。

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  • 研究分野のレジリエンス

    2024-09-05 17:42  
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    なんちゅう研究をしている人がいるのだと、前向きに呆気にとられた。大阪公立大で学位を取られ、そして今大阪公立大で教鞭をとられる、林侑輝先生の日本経営学会誌の最新論稿(2024)である。タイトルをみてピンときた方が、どれだけいるだろうか。かくいう私も、しばらく読み流してしまっていた。だがこれは、学会への重大な告発である。レジリエンス。しなやかな強さ、健全性を維持する力。個人のレジリエンスといえば、困難にあっても精神的に克服できる、柔軟さを備えた心の強さのことである。組織のレジリエンスといえば、災害や、あるいは激烈な事業環境の変化に対して、柔軟に組織や事業のかたちを変えて存続できることを指す。研究分野の、レジリエンス。ある研究テーマが、その議論の質や問題意識を担保したまま、連綿と研究され続けていくのは大変に困難なことである。研究者にも生活がかかっている。自分の分野が下火になれば、研究者として生存

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  • 役割責任と結果責任

    2024-09-04 11:45  
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    津久井稲緒先生のCSRに関する論稿(2024,日本経営学会誌)を拝読しました。
    企業が社会に対して果たす責任は、役割責任(企業として社会にどう貢献するか)と結果責任(企業活動で生じた随伴的結果に対してどう対応をとるか)に区分されるということ、近年のCSV(Creating Shared Value)は役割責任に議論を限定してしまっていること、一方で過去のCSRは結果責任にばかり重きを置いていること、という整理がすっきりする。
    業績に加えて、この2つの責任に対しても経営管理を実施していくべきである、とするのが「複眼的管理」論の骨子となる。
    そこまでは、大きな方向性としては否定することはないだろう。
    問題は、それをどう実現するかだ。
    本当はそこのところを議論する必要があるのだけれども、論稿はここまで。
    ***
    企業が果たすべき社会的責任をどれだけ誠実に取り組んでいるか。
    その全てが株主価値とし

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  • 中上川彦次郎

    2024-09-03 13:30  
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    明治期に、三井財閥を立て直した人。なかみがわ、と読む。三井…というと江戸から現代に残る大企業・大財閥グループなイメージがありますが、実は幕末などにはほとんど資産を使い果たすような危機的状況に陥っていたりもして、安定的な経営体制になるのは中上川からさらにもう少し時代を下った頃だったりする。これは、経営学の中でも近年になって「見かた」が変わったことだったりします。かつて、長命企業というのは「安定して本業を維持し続けてきた会社」とみられてきましたが、近年では長命企業というのは「たびたび危機に見舞われる中で、本業を見直し、革新を続けてきたから存続できた」という見方が大勢を占めるようになっています。挑戦を辞めた企業は衰退するほかはないんですね。この点は本当に重要なことで、経営者もサラリーパーソンも「本業を守る」意識になりがちです。社歴の長い会社に入るほどにそうなりがち。さて、中上川彦次郎。三井財閥の

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  • キャリアアンカーの8分類

    2024-09-02 15:45  
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    リーダーシップや人材開発の第一人者、シャイン教授の大きな研究成果のひとつに、人が働く上での「軸」(キャリア・アンカー)は8つに分けられる、というものがある。厳密な統計的分析の結果導き出されたもので、その結果はしっかり受け止める必要がある。皆さんにとってはどれが一番大切だろうか?職業人として専門性を極めたい。組織人として人々を正しく動かしたい。自律・独立した働き方をしたい。保障・安定が欲しい。起業家的に、創造的に働きたい。社会に貢献したい。挑戦をしたい。生活とバランスをとって働きたい。自分の軸をはっきり認識することで、職業選択、キャリアの分かれ目で迷わなくて済む。さてあなたの軸はどれだろうか、というのがシャイン教授の投げかけである。私は全く知らなかったのだが、この8因子モデルが長年論争の対象となり、9因子だ、いや7因子だ、と議論されていたらしい。特に、挑戦、創造的、起業家的というあたりがくっ

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