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第53号 2013.9.10発行


「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、よしりんの心を揺さぶった“娯楽の数々”を紹介する「カルチャークラブ」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」、珍妙な商品が盛り沢山(!?)の『おぼっちゃまくん』キャラクターグッズを紹介する「茶魔ちゃま秘宝館」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが無限に想像をふくらませ、とことん自由に笑える「日本神話」の世界を語る「もくれんの『ザ・神様!』、秘書によるよしりん観察記「今週のよしりん」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)


【今週のお知らせ】
※2020年オリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決まった。今週の「ゴー宣」はお祭り騒ぎで浮かれきっている大衆に、冷や水をぶっかける!安全を保証?状況はコントロールされている?汚染水はブロックされている?健康問題はまったく心配ない!?オリンピック東京招致の「希望的同調圧力」に負けない批判精神は、小林よしのりにだけはある!!
※大好評の「よしりんウィキ直し!」。今回から、いよいよ『ゴーマニズム宣言』の項に突入!本文の添削に入る前から、早くも大荒れの模様!インターネットの「集合知」に未来はあるのか!?
※『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて、一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」!今回のお題はこちら!おぼっちゃまくん、電波ジャックして何を訴える!?

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【今週の目次】
1.ゴーマニズム宣言・第55回「PART1.汚染水問題はコントロールされていない!」
2.しゃべらせてクリ!・第15回「ぽっくん、メディア・ジャックぶぁい!の巻」
3.よしりんウィキ直し!・第5回「ゴーマニズム宣言『ノートページ』編」
4.Q&Aコーナー
5.新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6.読者から寄せられた感想・ご要望など
7.編集後記




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第55回「PART1.汚染水問題はコントロールされていない!」

 2020年オリンピック・パラリンピックの開催地が東京に決まった。
 スポーツが好きで、お祭りが好きで、取らぬ狸の皮算用が好きな人は、はしゃぎたまえ。
 プレゼンテーションとか言うらしいが、日本人のしゃべり方がグローバリズムに合わせて、表情もジェスチャーも異様に感情過多になってる姿が、気味が悪いと思うのは、わしだけだろうか? 
 高円宮久子さまは自然体でさすがだが。
 中でも「汚染水対策」に関する安倍晋三の口から出まかせには、あきれてしまった。あれで説得力があったなどと騙される国際社会も日本人も、相当な馬鹿である。

安倍「私が安全を保証します。状況はコントロールされています
わし(おいおい、コントロールされているのか?)

安倍「汚染水による影響は福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル範囲内で完全にブロックされています
わし(たった0・3平方キロメートル範囲内で、完全にブロックだと?よくも言ったものだ!

安倍「健康問題は今までも、現在も、将来も、まったく問題ありません
わし(まったくないものにするとは、なんという悪魔だ!

 原発事故に関する知識と、人間的な誠実さがひとかけらでもあったら、決して口にできないことを安倍は全世界に向け、笑顔で言ってのけたのである!
 安倍は「ヘッドラインだけではなく事実を見てほしい」と言った。要するにネトウヨの言う「マスゴミの言うことを信じるな」と同じ意味だが、全世界に向かって、公式の場で日本の首相が「日本のマスコミも、世界のマスコミも信じるな」と言ったのだから、こんな非常識な発言はない。

 だが日本のマスコミはこの侮辱にも抗議一つしない。本当に事実を見れば、安倍の言ったことこそ嘘八百であるにも関わらず。
 
 安倍が言ったように、「福島第一原発の港湾内の0.3平方キロメートル」は、確かに堤防や水中カーテンで仕切られている。
 だが、たとえ「0.3平方キロメートル」で「完全にブロック」されていたとしても、地上タンクから漏れた高濃度汚染水の全てが、その「0.3平方キロメートル」のエリア内に流出しているわけではない。
 汚染水漏れを起こした地上タンクからの排水路には水の流れた跡があり、高濃度の放射線が観測され、その排水路から水が流れた可能性があることは東電も認めている。

 そして、その排水路は「0.3平方キロメートルの港内」ではなく、外の海と直接つながっているのである!

 さらに堤防や水中カーテンで汚染水を「完全にブロック」などできるわけがなく、東電も「港湾内と外洋を水が行き来している」と認めている。
 福島沖の海底には40カ所の放射能のホットスポットが見つかっている。
 「0.3平方キロメートルの港内」では1キロあたりのセシウムが74万ベクレルのアイナメが見つかっているが、その港の外の20キロ先で捕れたアイナメからも2万5800ベクレルが検出されている。
また、東京湾でも原発20キロ圏内と同じレベルの汚染箇所が見つかっている。

 汚染水については「打つ手がない」というのが現実で、これほど大量の高濃度汚染水が長期間漏れ続けている事態は過去に例がないのだ。


 また、「健康問題は今までも、現在も、将来も、まったく問題ない」という発言も、そう言った後に安倍は「完全に問題のないものにするために、抜本解決に向けたプログラムを私が責任をもって決定し、すでに着手している」と続けている。
 つまり、今ごろ「完全に問題ないものにするための対策に着手した」に過ぎず、過去はもちろん現時点でもまだ「まったく問題ない」状態ではない。発言が完全に矛盾、破綻しているのだ。

 そもそも、安倍晋三は9月3日、IOC総会のたった4日前になってやっと原子力災害対策本部会議を開き、汚染水流出に対処するための基本方針と総合的対策を決定したのだ。
 安倍はこれまで汚染水問題をほったらかしにしておいて、開催地決定の直前にこの問題が浮上し、東京の招致に深刻な影響を与えそうになってから、泥縄式に「基本方針と総合的対策」を決め、「政府が全面的に責任を持つ」と見栄を切ったのである。


 もともと、誰も本気で被災地のことなんか考えていない。
 東京都の招致委員会は当初、開催理念の中心に「東日本大震災からの復興の象徴となる五輪」を掲げていたが、海外コンサルタントから「復興、復興と言うと、放射能問題など不安を思い起こさせ逆効果になる」と助言され、招致活動で「復興」をアピールしなくなり、今年1月の立候補ファイルでは「復興五輪」の文字が消えた。
 ところが、6月に公表されたIOCの評価報告書で電力供給の回復や津波対策が肯定的に記されたのを見て、再び「復興五輪」を持ち出したのだ。

 結局被災地のことなど、五輪招致に利用できるかできないか以外は何の関心もないのだ。
 だからこそ招致委員会理事長「旧皇族詐欺師の父親」こと竹田恒和も「東京は水、食物、空気についても非常に安全なレベル」「東京は福島から250キロも離れているから安全」と、東京が安全ならばよいという本音を漏らしたのである。