村山談話・河野談話に未来はあるか?
第17回 歴史を変えた朝日新聞の陰謀記事
1991年(平成3)12月6日、慰安婦訴訟が提訴された日の記者会見で、
加藤紘一官房長官(当時)はこんな発言をした。
「政府関係機関が関与したという資料はなかなか見つかっておらず、
今のところ政府としてこの問題に対処することは非常に困難」
「政府関係機関」というのは「軍」も含む。
軍が関与した資料は見つからないと言っているのだ。
それから約1ヶ月後の1992年(平成4)1月11日、
朝日新聞は1面トップで大々的に、こんなスクープ記事を載せた。
「慰安所 軍関与示す資料 政府見解揺らぐ」
これを見れば、政府がないと言い張ってきた資料が発見され、
軍による強制連行が証明されて、政府見解がひっくり返ったと
誰もが思っただろう。
ところが、事実は全然違ったのである。
加藤長官の発言は従来の官僚答弁の繰り返しだが、
これには2つの重大なエラーがあった。
1点は前回も書いたように、「強制連行」の事実自体を否定していないこと。
2点目は、「政府は関与していない」という答弁は「強制連行」のみならず、
「慰安婦」や「慰安所」の存在そのものに関して、
政府はいかなる関与も一切していないという意味にも解釈できる
ということだった。
朝日新聞の1面スクープ記事で「発見」されたとしている資料は
1938年(昭和13)年に陸軍省が出した
「軍慰安所従業婦等募集に関する件」と題する通達である。
だがここに書かれていることは、慰安婦募集に当たって、
不適切な業者が勝手に「軍の諒解」などの名義を利用して
軍の威信を傷つけたり、中には誘拐まがいの方法を使って
警察に検挙されたりする者までいるから、
今後は軍において適切な業者を選定し、社会問題を起こさないようにせよ
という内容だった。
つまりこれは、「強制連行」のようなことが起こらないように
軍が「関与」せよという通達であり、
軍はいわば「善意の関与」をしていたという証拠
だったのである。
朝日新聞は、「強制連行を防止するための軍の関与」を、
「強制連行への軍の関与」であるかのように
180度ひっくり返して見せるという、
空前のトリックを用いたのだった!