秋雨が続いている。思い返せば娘が生まれた直後もこんな風に降り続く雨を産院の窓越しに見つめていた。出産当日までの残暑を一気に冷やす霧のような雨だった。あれからもう２年が経つ。色々なことがあった。色々なことが始まったし、終わりもした。もう２年と思うこともあれば、まだ２年かと思うこともある。そして、たった２年でと驚かされるのが人間の成長だ。
　

 鳥たちが旋回している。３０羽ほどの群れが初秋の青空に美しい８の字を繰り返し描いている。僕の中指と人差し指を小さな手でギュッと握り締めた娘がそれを見上げている。　

　彼岸花が咲いている。棚田の畦に鮮やかな赤を咲かせている。彼岸花は彼岸に咲く。今日は９月２０日かと空を見上げ、前日に参列した通夜を思い返していた。
　

　今年の新米を食べに南房総へ行った。三浦半島からフェリーで海を渡れば房総半島は東京に出るよりも近い。
　

　

　

　ひたすら喋っている。ひたすら歌い、踊っている。２歳まで１ヶ月を切った。「２歳になったらつむちゃんも運転する(車のことだ)」「２歳になったらつむちゃんもビール飲む」。どうやら２歳になれば無敵になれると思い込んでいるらしい。
　

　踊らされずに生きたいなあ、と最近つくづく思う。ＳＮＳで誰かが拡散させた情報に多くの人々が踊らされているのを目にする機会が多いせいかもしれない。
　

　

　斜面に踏み出した右足が地を這う蔦に引っ掛かって転びそうになる。咄嗟に左足で踏ん張って支える。崖下に小石が落下していく。転倒しなかった僕の代わりに。背中におぶさった娘が何事もなかったかのように笑っている。