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記事 14件
  • 「8月31日」

    2022-08-31 07:00  
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     12年も海辺で暮らしていながらマリンスポーツとは無縁だった。サーフィンもしないし、SUPも数回ほど体験レッスンを受けた程度。30代の終わりに宮古島で乗ったジェットスキーの快感が忘れられず免許こそ取得したものの、地元の浜では「海の暴走族」と揶揄されていると知り、手を出し難くなってしまった。自宅の隣りが釣具店なのに釣りもしない。春夏秋の三シーズンはビーサンで浜辺を散歩したりビーチクリーン活動をしているものの、夏の海水浴シーズン以外、海に入ることはなかった。
     

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  • 「さよなら夏の日」

    2022-08-29 07:00  
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     太陽と蝉が渾身の力を振り絞って夏の残り火を燃やし尽くそうとしている。
     大楠山の深い森の中から聞こえてくる蝉の合唱には数日前から鈴虫のリハーサルが混ざり始めた。強い陽射しの中に秋の涼風が吹き抜けていく。
     冷蔵庫から取り出したばかりの缶ビールを手に浜に下りていく。去りゆく夏を惜しむように浜辺を歩く。打ち寄せる波の冷たさが足先から脳天に駆け上っていく。
     

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  • 「当たり前のことで、やらなかったら馬鹿だ」

    2022-08-26 07:00  
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     糞に集る蠅みたいだ。死体を貪るハイエナみたいだ。作為的なネットの切り取り記事に書き連ねられていく攻撃的なコメントを見ながらいつも思う。その行為自体が悪いと言っているわけじゃない。ぼくだって思わず書いてしまいそうになることもある。が、そのたびに糞に群がる蠅とか死体を貪るハイエナのビジュアルイメージが立ち上がってきて思い止まる。その繰り返しだ。多様な価値観や議論することの大切さ、表現の自由を侵害しようなんて思いは微塵もない。ただ、そういう風に見える、というだけの話だ。そもそもこの比喩に対して直情的にカッとなる人は蠅やハイエナの自然界における優れた分解者としての役割にまで思考が及んでいないだけかもしれない。
     

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  • 「魚が食卓から消える日」

    2022-08-24 07:00  
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     毎日、海を見ている。無性に魚が食べたくなる。
     

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  • 「サンマリノ共和国」

    2022-08-22 07:00  
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     秋風にはためく万国旗。園児ひとり一人が運動会に向けて描いた旗を手に誇らしげに笑っている写真が掲示されていた。
     

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  • 「ねがお」

    2022-08-19 07:00  
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     考えたら毎晩必ず子どもの寝顔を見てきた。夜、子どもが眠っているときはぼくか妻のどちらかが必ずその寝顔を見守ってきた。
     

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  • 「線香花火大会」

    2022-08-17 07:00  
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     3年振りに夏祭りで生ビールを飲んだ。鎌倉時代に和田義盛が建立した浄楽寺の参道に立ち並ぶ竹灯籠。仄かな明かりに沿って芦名や佐島、三浦で小商いを営む人たち―――イタリアンレストラン、農家レストラン、しらす屋さん、かき氷屋さんに古道具店さんなどが出店してのささやかな縁日だ。
     

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  • 「家族の棚」

    2022-08-15 07:00  
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     台風の接近で海辺の駐車場が閉鎖された。波打ち際を走り回っていた子どもたちも家の中に消えた。厚い雲が早送りみたいに流れていく。刻々とうねりが大きくなっていく海は千載一遇の波を掴まえようとしているサーファーだけになっていった。
     週末、ぼくは潮位の上がっていく海を見ながらベランダで木工ドリルで杉材に穴を開けていた。 
     

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  • 「どれだけ泣いてもいいから」

    2022-08-12 07:00  
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      ある朝、大きな破裂音でぼくは目覚めた。娘が激しく泣き始めていた。「どうしたの?」 心配して駆け寄る。足下で赤いゴムの皮が皺苦茶になっていた。「ふうせんがぁー」 昨晩、妻に膨らませて貰ったお気に入りの風船だった。天井に向かって何度もトスしていたら割れてしまったそうだ。
     

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  • 「どうやら土作りからやり直す時のようだ」

    2022-08-10 07:00  
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     地力の落ちた酸性の畑には雑草が蔓延る。硬くなった土でも根を伸ばし、岩盤を突き破るほどの勢いで茎を伸ばす生命力の強い雑草だ。痩せ細った土の少ない栄養を彼らが独占してしまう為、作物は育ちにくい。トマトやジャガイモは収量が落ちるし、もっとわかりやすいのは葉物だ。土が痩せているかどうかは小松菜の葉脈の見れば一目瞭然だ。肥沃な大地で育った小松菜の葉脈は張り巡らされた毛細血管のように細かく、痩せた大地で育った小松菜は葉脈そのものの数が少ない。人間の血流と同じだ。健康な人ほど毛細血管の隅々まで血が巡っている。
     

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