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『The Last of Us』の大量感染は現実には起きない......ともいえない科学的検証
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『The Last of Us』の大量感染は現実には起きない......ともいえない科学的検証

2013-07-16 22:30
    『The Last Of Us』の大量感染は現実には起きない......ともいえない科学的検証


    寄生菌のパンデミックにより、人々はインフェクテッドになり人口が減少......。そんな『The Last of Us』の世界は、現実に起こり得るのでしょうか? 以前、もしもスーパーマンに殴られたらどうなるか? を科学的に検証した、YouTubeユーザーのVsauce3さんが、再びリアルに考えたようです。

    それでは、以下から動画と詳細をどうぞ。
     


    【大きな画像や動画はこちら】

     


    まず、全人口の60パーセント、つまり約42億5000万人もの人間が菌に感染、ゾンビ化してしまうことはありえるのでしょうか? ゲームや映画で繰り返し使われて来たテーマですが、今回は、寄生菌によってパンデミックが起こり『The Last of Us』の世界になり得るのか、ということを考えたいと思います。

    この疑問に答えるべく、Vsauce3さんは、95年前に起こったスペイン風邪のパンデミックを振り返っています。1918年に大流行したスペイン風邪は、およそ5000万~~1億人の死者(サイトにより発表されている数字に差があります)を出したと言われています。これは、第一次世界大戦で命を落とした約1700万人約3倍の数。当時の人口は全世界で18億5000万人と言われているので、全人口の3~5パーセントがスペイン風邪で死亡したということになります。これがたったの1年で起こりました

    インフルエンザはウィルスですが、『The Last Of Us』の場合は寄生菌です。そこで、「冬虫夏草」という昆虫に寄生するキノコについて考えて行きましょう。冬虫夏草の中でも有名なのは、アリの脳に寄生することでアリの動きをコントロールし、望む場所まで移動させた後、アリの頭から発芽、胞子を蒔いて繁殖するものです。幸いなことに、この寄生菌は昆虫に寄生するのであって、人間に被害を与えることはありません。

    しかし、近年の病気の感染源の60パーセントが動物ということを考えると、油断は出来ません。はしか、結核、天然痘は牛から人間に感染します。インフルエンザは鳥や豚から、エイズはチンパンジーから感染します。これらの病原菌は、人間には感染しないと言われていましたが、時間の経過と共に人間にも感染するようになったのです。

    では、冬虫夏草の場合はどうでしょうか。一般的に人間はアリを食べないので、アリから感染することは無いと考えられるでしょう。しかし、動物の中にはアリを食べるものも居ます。また、そのアリを食べた動物を食べる動物がいます。食物連鎖の頂点に立つ人間は、中間宿主を経て、間接的に冬虫夏草を口にしてしまうことがあるのです。

    そこで、Vsauce3さんは、ジャレド・ダイアモンド著の『GUN, GERMS, AND STEEL』に書かれている例を出しています。その本によると、発疹チフスは、ラットのノミとラットを媒介して、人間に感染するというプロセスをとっていましたが、後に、ラットのノミやラットの媒介を無くして、シラミから人間に感染するようになったというのです。

    では、この例のように万が一、冬虫夏草が人間に直接感染してしまうようになった場合、どれくらいの早さで広まるのでしょうか? 1918年に起こったスペイン風邪と近年のパンデミックの大きな違いは、私たちが昔よりも容易に国を行き来することが出来るようになったということが挙げられます。

    スペイン風邪が流行した当時は、ニューヨークからドイツまでボートで2週間かけて移動しましたが、今では8時間で行けてしまいます。GLEAMvizという国際的パンデミックをシミュレーションするソフトウェアで、感染拡大がどのように起こるかをシミュレーションした所、約60日で全世界に感染が広まるだろうという結果が出ました。Vsauce3さんは、「マダガスカルですら安全ではない」と驚きの声をあげています。

    US政府は、人々を脅かす脅威に対する策を講じており、インフルエンザのパンデミックが起こった時を想定し、何を最優先にするべきかを200ページ以上の冊子に記しています。その中には、パンデミックが起こったとしても、被害はアメリカ国内だけで200万人が最高だと書かれています。これは、アメリカ国民の1パーセント以下の数字です。また、パンデミックに対する連邦政府の対応のひとつに、「インフラストラクチャーを維持し、経済と社会の昨日へのインパクトを軽減する」というものがあります。

    しかし、考えてみてください。寄生やウィルスは、電気やインターネット、車等に害を及ぼすことはありません。問題は、それらを操る人間を攻撃することです。もしも、人口の60パーセントが感染したならば、医者や教師、郵便配達人、公共の乗り物の運転手と言った人たちも感染してしてしまうということです。となれば、残された人達は治療を受けることも出来ず、色んな情報が伝わることも無く、逃げる場所も無く追いつめられるかもしれません。そうなれば、『The Last of Us』の世界が現実になることも、あながち否定出来ないでしょう。

    Vsauce3さんは、冬虫夏草が『The Last Of Us』になりうる鍵を握っているかもしれないという仮説を出しましたが、コメント欄には、「人間の脳はアリよりも遥かに複雑なので、冬虫夏草によってゾンビ化するというのは飛躍し過ぎなのでは?」という意見もありました。

    しかし、『ジュラシック・パーク』のマルコム博士が言っているように、「生命は道を見つける」のです。発疹チフスがシラミから人間に感染するようになったことと同じく、冬虫夏草に限らず、極限状態になれば、人間をゾンビ化させる菌が出てくる可能性だって、無いと断言できるわけではないでしょう。


    Could We Be The last Of Us?[vsauce3 via Kotaku

    (中川真知子)

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    RSSブログ情報:http://www.kotaku.jp/2013/07/the_last_of_us_pandemic.html
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