マーベル・コミック原作のディズニーCGアニメーション映画『ベイマックス』。
ケアロボット「ベイマックス」の愛らしさが世界中を虜にしていますが、本作のフィルムメーカーのリサーチにも協力した人型ロボット研究の最先端にいる博士と教授の話によると、ベイマックスは近い将来に実現可能なのだとか。
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独立行政法人産業技術総合研究所 知能システム研究部門 副研究部門長 横井一仁さんと東京大学 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 教授 工学博士 中村仁彦さんのお言葉は以下より。一部ネタバレがありますので、ご注意ください。
やわらかボディも合理的?
――「ベイマックス」のような柔らかくて愛らしいロボットの実現はいつになりそうですか?
横井博士:プログラムがあって会話をする技術はすでにある程度確立されており、ああやって喋るロボットはすぐにでも実現できるのではないでしょうか。また、ベイマックスのようにゆっくりと動くロボットであれば、出資者さえ見つかればここ1年でも実現する可能性はあると思いますよ。今の技術でも可能ではないでしょうか。
ただ、劇中のような小さな箱に入るのは難しいかもしれませんね。最近「ソフトロボティクス」という研究が進んでいるので、その技術を使えばもしかすると可能かもしれませんが、やはり難しいチャレンジにはなりそうですね。ですから、直近で可能になるとすれば最初からあの大きさのロボットに仕上げるのが一番近道かと思います。
中村教授:空気で膨らむやわらかい体は、人の近くで働くロボットとして、とても良いアイデアだと思います。介護ロボットなどに受け入れられるデザインです。
人型ロボットの研究はこれからも続きますし、いずれは一般家庭用のロボットが実用化される時代がくると思います。その時はベイマックスのような安全で親しみの持てるロボットが出てくると思います。その時には、ロボットのコミュニケーション能力が進んでいると思います。もしかしたら、ベイマックスよりうまくコミュニケーションが出来ているかもしれませんね。
映画の後半で出てきたような、重いものを持ち上げたり、空を飛んだり、町の人間を全員スキャンするなどのスーパ・パワーを抜きに考えれば、ベイマックスは何年か先には実現可能と思います。
――映画をご覧になった感想を教えてください。
横井博士:面白かったです。戦隊ヒーローものだとは思っていなかったので驚きはありましたが、楽しめました。
中村教授:面白かったですよ。特に出だしのところは、科学や技術の今の様相を切り取った映像だと思います。現在、世界の大学が目指す「大学像」を、劇中でもとても上手に描いてくれていると思います。
――フィルムメーカーとは、どんなお話をされたのでしょうか。
横井博士:2011年10月、彼らとサンフランシスコで開催された国際会議で話をしました。当時、私は人型ロボットの研究をしていましたので、映画を撮影するにあたって、人型ロボットの当時の状況や研究内容について話をしました。『ベイマックス』の土台となる、人型ロボットの基礎知識のためのリサーチだったと思います。
(「Choreonoid」を用いたサイバネティックヒューマンHRP-4Cのダンスデモンストレーションを見せつつ)こういった自然な動きのできるロボットがいるという話をしました。映画のコンセプト作りの段階でのお話だったと思います。
中村教授:まずは私たちの研究内容について話しました。一言で言うと、人のモデルを作って、人型のロボットを動かすといったものになります。その中で、「人の動き、人の筋肉・神経の信号」を計算するという研究分野のことを話しました。 「人間が体で感じていること、動きのパターンと意味」を計算機が理解する技術です。実際のロボットや映像を見せたりしながら話しました。
――スキャン機能はどのようにお考えでしょうか?
中村教授:病院で手術室で使うオープンMRIという技術があります。磁石が進化してコイルも小型化し、携帯型のオープンMRIができれば実現する可能性はあるとおもいます。目で見てスキャンするというのではなく、手をかざしてスキャンするようになるかもしれません。
――アーマーをつけたベイマックスの実現はどう思われますか?
横井博士:赤いアーマーを付けたベイマックスは、日本の得意なデザインだなと感じましたね。鉄人28号のような丸みのあるスタイルやマジンガーZのようなロケットパンチは、やはり日本からの影響を感じましたね。こちらの実現はかなり先になりそうですが(笑)。
ただ、緑のアーマーのベイマックスのように、「空手」を覚えるというのは実現の可能性は高そうですね。映画のようなソフトを使って、人の動きをトレースすることは十分可能かと思います。あのスピードでの処理は、まだ難しいかもしれませんが、今もある技術に近い、説得力のあるシーンです。でも、ロボットは3Dの動きなので、データ変換にひとひねりは必要だと思います。現実的にも十分考えられるシステムですよ。最新の技術をうまくアニメに活かしていると思います。
ただ、マイクロボットはまだまだ難しいでしょうね。ヒロが兄を超える天才という設定を考えると、それも自然な流れかと思いますが。
あなたの後ろに、ベイマックスー! 一家に一台、ベイマックスー! も夢ではなさそう。
『ベイマックス』は大ヒット公開中。
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[『ベイマックス』公式サイト]
[産業技術総合研究所公式サイト]
[KAKEN]
[中村研究室]
(スタナー松井)
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