自然⑤イタリア人学者

〈(伊勢神宮)大きな建物、柱、塔、モニュメントがあるのではないか。ところがそんなものなど、どこにもない。(人々は)一つの小さな、(先史時代のスタイルで建てられた)飾り気のない小屋に収斂される。〉(

〈自然と共生すること! 彼等は理解したんだ。自然は、人間の作るどんなものにもまして、万物の根本的な尊敬を呼び覚ますことを。〉

出典:フォスコ・マライーニ著『随筆日本―イタリア人の見た昭和の日本』(松籟社、二〇〇九年)

■解説

私たちは伊勢神宮や出雲大社を訪問する。広大な自然がある。神社自体の建築は目を見張るものでない。しかし、自然に入ること、そのものに意義があると考えると違った視野が広がる。フォスコ・マライーニは一九一二年生まれ。一九三八年来日。一九四一年に京都帝国大学の教員になる。戦後、フィレンツェ大学教育学部で日本語・日本文学科を創設した。マライーニは伊勢神宮を訪れて、