岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/06/08
おはよう! 岡田斗司夫です。
今回は、2018/05/13配信「あなたの隣人はなぜガンダムをあんなに見るのか?『パシフィック・リム』から「巨大ロボット学」を語る」の内容をご紹介します。
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2018/05/13の内容一覧
- 吉本坂46、投票告知
- 初めてのロボット学入門
- 宮崎駿ですら手を出した巨大ロボットモノ
- 『パシフィック・リム』はどうやって生まれたのか
- アメリカの幻想作家ラヴクラフト
- 『狂気の山脈』映画化プロジェクト
- 『パシフィック・リム』冒頭17分の素晴らしさ(前編)
- 本編スタート(3分45秒)
- 『パシフィック・リム』冒頭17分の素晴らしさ(後編)
- 巨大ロボットは我々にどう受け入れられてきたか?
- 『鉄人28号』から始まった日本の巨大ロボット文化
- ロボット界のキリスト『機動戦士ガンダム』
- ロボット・プロテスタント
- 『パシフィック・リム』に込められているメッセージを妄想する
『パシフィック・リム』冒頭17分の素晴らしさ(前編)
では、『パシフィック・リム』の良さを説明しようと思うんですけども。僕はこれを「冒頭17分のすごさ」だと思ってるんですね。
なので、どこが良いかは冒頭の17分を徹底的に見てみればわかるんじゃないかと思って、秒単位で解説したボードを作ってみました。
(パネルを見せる)
これに沿って解説していきましょう。題して「『パシフィック・リム』の冒頭17分を見てみよう!」ですね。
このズラッと並んだ表の中で、メインタイトルが表示されるのは1番下です。つまり、「パシフィック・リム」というタイトルが表示されるまでに16分50秒も掛かってるんですよ(笑)。
ここまでアバンタイトルが長い映画も珍しいですよね。普通、ここまでやるんだったら、『スパイダーマン/ホームカミング』みたいに「いっそのことタイトルは映画の最後に出す」とかにするんですけども。オープニングに20分近く掛ける映画って、俺あんまり知らないんですけど。
一番最初は、たっぷり40秒掛けてワーナー・ブラザースとレジェンダリー・ピクチャーズという、制作会社のタイトルが入ります。
次の8秒間では、「「カイジュウ」=日本語:巨大生物。「イェーガー」=ドイツ語:狩人」というテロップだけが入ります。
(パネルを見せる)
こんなのいちいち見なくてもいいんですけど、参考までに、画面はこんな感じですね。
40秒掛けてレジェンダリー・フィルムというタイトルを見せられて、その次に字幕を8秒見せられて、その次に真っ暗なんですよ。
この真っ暗な中で、30秒掛けてナレーションが入ります。
「エイリアンは宇宙から来ると思ってた。でも、俺は見る方向を間違えていた。ヤツらは海底から来たんだ。忘れもしない」みたいな台詞が30秒続いたと思ったら、今度はいきなり「ゴーン!」という音が入ります。ここからはナレーションなしなんですね。
この『パシフィック・リム』のアバンタイトルの素晴らしさは、「ナレーションがあるところとないところを巧みに使い分けている」というところなんですね。
しばらく「エイリアンは宇宙から来ると思ってた~」というナレーションが続いたかと思えば、真っ暗になり、海の底の裂け目が見え、その裂け目の中から何かが出てくるという時には、ナレーションが急になくなる。そして、いきなりサンフランシスコのゴールデンブリッジを、巨大な怪獣が破壊しながら突っ切ろうとする映像が始まるんですよ。
(パネルを見せる)
これは「アックスヘッド」という、最初に出てきた怪獣です。霧のサンフランシスコを歩いています。
これ、後ろの方がボヤけているのは何かというと、サンフランシスコの霧はそれだけすごいということなんですけども。
とりあえず、画面手前の空気感がすごいですよね。この画面のすごいところは「CGで描いた怪獣のリアリティを高めると言うよりは、その手前に配置された自動車などのリアリティや描き込みをすごくすることで、結果的に怪獣もすごくリアルに見えるようになる」というところです。
このカットの直後、手前の車の位置辺りに怪獣の左手の爪がガーンと降りてきて、橋が破壊されるんですけど。その時も、自動車がワーッと落ちる際の重力の感じとかが、メチャクチャリアルなんです。これによって、非現実的な怪獣のサイズ感が信じられるようになるんですよね。
この無言の戦闘シーンは、たったの30秒しかないんですよ。
この後、核兵器で倒された怪獣の描写と、続いて現れた2体目から4体目の怪獣が見せられて、「結局、6日間で3つの街を破壊し、3発の核兵器で仕留められた」という解説が入ります。
つまり、「核兵器を使えば怪獣というのは倒せるんだ。巨大ロボットというのは本当は必要ないんだ」ということを、この作品は冒頭で正直に語ってるんですよ。
ただし、核を使えば周辺の土地を汚染しちゃうし、人が住めなくなる。おまけに、「カイジュウ・ブルー」と呼ばれる、怪獣から出てくる体液の青い血も、生命を殺す毒性を持ってる。「なので、そうそう核兵器を使うわけにいかない」とも言ってくるんですね。
まあ、「核兵器を使うわけにいかないから、巨大ロボットだ!」と言うと、まだまだツッコミどころはあるんですけど(笑)。これについての話は、もう少しお待ちください。
一応、これは空母で運ばれている怪獣の死体なんですけど。
(パネルを見せる)
こういう映像を断片的に見せながら、主人公のローリーの声でのナレーションが入ることで、当時の記録フィルムみたいなものと語り手の意識とが、段々とシンクロしていきます。
ここまでで2分40秒。
冒頭の40秒かけた制作会社のタイトルと、次に用語に関する9秒間の字幕。ほとんど海底の割れ目しか見えてない中、30秒間で語られるナレーションの後は、ほんの30秒だけ怪獣が動くシーンが入る。その次に、30秒くらい掛けた戦闘シーンというのを、短い短いニュース映像の連続で見せています。
さて、続く2分40秒から3分14秒の間。やっぱりこれも40秒程度なんですけど、「巨大ロボットの開発が始まった!」という話が語られます。
カイジュウ・ブルーが地面に撒き散らされないように、出来るだけ海岸線辺りで戦って、しかも、核兵器を使わなくて済むように「プラズマ砲を距離10m以内で打ち込む」という戦略が生まれた。そのために、こういうロボットが必要になったんだ、と。
そして「ロボットの操作系と人間の脳とを神経で接続して、2人で操作する」という説明がここで入ります。
そこで出てくる絵がこれですね。
(パネルを見せる)
これ、日本のロボットアニメを見ている人には、そんなに難しくないんですけども。「マスタースレイブ操作」というヤツです。つまり、人間が手や指を動かすと、その動きの通りに、後ろにあるデカい巨大な機械の腕が動くというのを見せます。
僕らは、ロボットアニメというものをそこそこ見ている方なんですけども、このワンカットだけで操作法を納得させてしまうという、この映像はすごいですよね。
その次には、モノクロの記録映像風の画面になって、「脳の神経とロボットを繋がれた坊主頭の男の人が、鼻血をダラーッと出していて、瞼を剥かれると眼球に血がいっぱい溜まっている」というカットが入ります。
そして、「人間1人が神経接続すると、ロボットの操作には耐えられない。だから、2人の人間がやることになった、それが「ドリフト」だ」という説明がある。
この辺も、説明のシンプルさと絵のショッキングさ、これによって生まれるリアリティがすごいですよね。
デル・トロ監督は、もう開始3分くらいのところで、映画を見るために必要な知識のほとんどを説明しちゃってるんですね。
(続きはアーカイブサイトでご覧ください)
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