岡田斗司夫プレミアムブロマガ 2018/10/11
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今日は岡田斗司夫のゼミ室通信をお届けします。
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今日はDMMオンラインサロン【岡田斗司夫ゼミ室通信】から、9/22公開 特別講義をお届けします。
ダサメカかと思いきや、案外かっこいいマゼラ・トップ
案外かっこいいんですよ。マゼラ・トップが。
これまでねぇ、割とダサいメカの代表だったんですよ。
マゼラ・トップってこんな感じのメカです。
この戦車のいわゆる大砲部分です。
戦車本体に敵の弾が当たってやられても、この砲塔部分だけがはずれて、飛んで逃げることができるというメカです。
そのマゼラ・トップ、今回の描き方があまりにもかっこいいんですよ。
実はこれ、ジオンにとってのコア・ファイターなんです。
ちょっと説明してみます。
コア・ファイターというのは、ガンダムのお腹の中に入っている小さな戦闘機です。
連邦軍のモビルスーツと、ジオン軍のザクとの違いは、このコア・ファイターが中に入っているかどうかです。
コア・ファイターは、パイロットの生還率を高めるためのメカ、と言われています。
ザクを作った時、ジオン軍はこの戦争は一週間か二週間で終わるだろうと考えていました。
だから、最新の兵器に熟練のパイロットを乗せて、前線にガンガン送り込んだのです。その一度の攻撃でけりがつくと思ったからです。
ところが、予想に反して戦争は長期化し、1年くらい続いたころに連邦軍のガンダムが出てきました。
なので、ガンダムにはパイロット脱出用のコア・ファイターがついています。
長期化した戦争では、実はパイロットを使い捨てにできないからです。
パイロットの養成というのは、数年かかるんですね
モビルスーツなんて、一度開発しちゃえば、あとは工場さえ動かせば一日に百機、二百機くらい作れるんです。でも、パイロットを毎日百人、二百人と補給をすることはできない。
だから、戦争が長期化すればするほど、メカはいっぱいあるけど、パイロットは足りなくなってきます。
これはもう、現実の日本軍でもアメリカ軍でも、どんな戦争でもそうです。戦争では常識と言えます。
だから、戦闘で負けても、パイロットだけは生かして帰そうという目的で生まれたのがコア・ファイターです。
ロボットのお腹の部分に脱出カプセルをつけて、それに翼もつけてなんとか飛んで帰れるようにした。で、できれば攻撃性もということで、ミサイルや機銃もちょっと積んでいる飛行機です。
これはもちろん、ガンダムのストーリー上の設定です。
現実的な説明をすると、おもちゃ屋の要求に応えるための苦肉の策です。
例えばこれ、ガンタンクですけど、三つにはずれます。
ガンダムではAパーツ、Bパーツ、コア・ファイターって、呼んでるんですけど、そうじゃないんですよ。
ゲッターロボみたいに、ガンダム・クラッシャー、ガンダム✖✖✖、ガンダム〇〇〇、っていうそれぞれ戦えるメカが、合体したらもっと強いロボットなる。そういうメカを、おもちゃ屋さんとしては、売りたかったに決まってるんです。
ところが、富野由悠季は「そういうおもちゃ屋のためのロボットアニメはもうヤダ!」ということで、考えたわけです。
おもちゃ屋の要求は三機合体メカなんですけど、「はい、これでも三機合体だからいいでしょ!?」と無理押ししたのがコア・ファイターです。
脱出用カプセルに翼をつけて飛べるようにした。ミサイルや機銃をちょっとつけて、一応、攻撃性を加えた。これ、どう考えてもおもちゃ屋さんへの“せめてものサービス”です。
ところが、どう考えてもサービスで付けた設定が、ここへきて、どんどん、どんどん、ドラマを生み出しています。
例えばコア・ファイターがホワイトベースから発射されて、大陸間弾道飛行するという回があったりします。
『再開、母よ…』の回では、このコア・ファイターにアムロが乗って、母親に会いに行きます。
そうすると、飛行機で飛んでいっちゃったせいで、地元の人から連邦軍の偉い人みたいに思われるという小さなドラマを生んだりします。
前半部分のタイトルで、延々、空中合体の訓練シーンを見せることで、毎日毎日、ひたすら訓練の日々が続いていたというドラマを見せることもできました。
今回は、ガンダムが整備中なので、コア・ファイターで仕方なく出撃するという状況を作り、まずは敵の飛行機を一機撃墜して、その後、弾がなくなったのでガンダムに空中合体するという見せ場も作ることができたわけです。
合体してガンダムになっちゃった結果、機動性がやや落ちて、ホワイトベースに向かって走っていったザクを追いかけきれなくなるという状況も作っています。
ハモンはハモンで、カーゴからマゼラ・トップで飛び上がって、このように後ろから狙うという、まさかのコア・ファイター的な使い方をしてるんです。
ガンダムのお腹にコアファイターが格納される設定は、次のロボットものも、「三つのメカが合体して強いロボットになる設定にしてくれ」というおもちゃ屋さんからのオファーに対して、富野由悠季が
「もう、これでいいだろう!真ん中、飛行機だし、もうここらへんで勘弁してくれ」
と言ってデザインしたものです。
本当にリアルなものがやりたいから、いわゆる、おもちゃおもちゃしたのは作りたくない。
その結果の設定が、どんどんどんどん伸びていって、しまいにはジオン軍のやられメカにまで応用された。
そして、いつの間にか、こういうかっこいい状況を生み出すコア・ファイター的なものに変わった。
ということに、僕は感動しています。
兵器的なリアリティでは、言っちゃえばゼロなんですよ。
だって、大砲を発射したら、本当はその反動で自分が後ろ向きに飛んじゃうはずだから。
ただ、ガンダムというのは、リアリティをデザインで出すのではなく、使い方で出すんですよね。
すいません。ちょっとコア・ファイターに関して熱くなりすぎて(笑)。
『機動戦士ガンダム』第21話「激闘は憎しみ深く」より
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