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イケアのすべてを知る「ジュニおばあちゃん」に会ってきたよ
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イケアのすべてを知る「ジュニおばあちゃん」に会ってきたよ

2014-08-12 19:30

    いったい何者?

    7/30~8/5まで、渋谷ヒカリエで行われていた「Sweden day in Shibuya Hikarie」。そのイベントのために来日していたのが、スウェーデンにある「イケアミュージアム」の館長ジュニさん。30年以上イケアに勤め、この人以上にイケアの歴史を知っている人はいないそうです。



    現在、イケアでは創業70周年を記念して「IKEA ヴィンテージコレクション」という、50年代~70年代の復刻家具を販売しています。現代の先端技術で復刻された家具は、レトロなのにまったく古さを感じさせないデザイン。在庫には限りがあるため、すでにいくつかの家具は売り切れになるほどの人気ぶりです。

    「昔のイケアってどんなデザインだったんだろう?」

    日本人がイケアを知るようになったのは、2006年に日本進出第一号店の「イケア船橋」が誕生してから。最近のブランドというイメージがありますが、地元スウェーデンでは「70年以上」も続く老舗家具メーカーなんです。

    ジュニさんは、そんな日本人が知らない「イケアの歴史」を写真を使いながら丁寧に教えてくれました。



    1943年、当時17歳だった創業者のインクヴァル氏によって設立されます。イケアの名前の由来は、創業者のイングヴァル・カンプラードのイニシャル(I.K.)と、彼が育ったスウェーデン南部のエルムタリッドとアナグリッド村の頭文字(E.A.)から取られています。

    写真は家の庭に作られた「イケア第一号店」の様子。実際はお店ではなく、配送商品をストックする倉庫のようなものでした。よく見ると「E」の上にアクセントが付けられています。このアクセントは1961年までついていたそうですよ。



    上の2枚が50年代中期、そして3枚目は50年代の後期のイケアの家具。2枚目と3枚目の間で、家具のテイストがガラッと変わっています。イケアが「イケアらしく」なった分岐点ともいえます。

    スウェーデンは世界大戦の影響を受けなかった国のひとつ。だから産業がそのまま伸びて、みんな家を持つことが可能だった。だから家具が必要になり、その分野がこの時期に栄え始めたの。この頃は家の中での娯楽が多かったのも、インテリアが発達していった理由のひとつね。

    さらに、1956年にイケアはある発明をします。それがイケアの代名詞ともいわれる「フラットパック」による配送手段の確立です。


    1956年、このコーヒーテーブルがとても良く売れたのよ。ある日、配送用に何十台ものコーヒーテーブルを梱包していた従業員が『この脚さえなければもっと楽なのに!』といったそうなの。だったら取ってしまおうと話が進み『フラットパック』が誕生したというわけね。

    いまでさえ普通となったノックダウン式(組み立て式)の家具ですが、当時としてはかなり大胆な発想だったはず。その辺はどうだったのでしょうか?

    みんなハッピーだったわ。作業員の負担も減るし、送料は安くなるのでカスタマーも喜んだわ。でも、他の会社がフラットパックをストックホルムで真似をしたんだけど、その当時、大きな都市ではまったく流行らなかった。

    でも、当時イケアはエルムフルトという厳しい環境の場所でビジネスをしていたの。その土地の人々は消費にシビアだったから、テーブルの脚を取り付けるぐらいなんの苦労にも思わなかったわ。それで価格が安くなるならね。

    イケアが最も重要視することのひとつに「低価格」があります。その原点には、エルムフルトという土地が大きく関係していたといえるかもしれません。

    そして時代は60年代に入り、イケアは国内で知名度を上げていくようになっていきます。



    60年代には、家庭にテレビが普及し始めます。ソファもそれに合わせて柔らかく、後ろにもたれかかれるような角度になっています。



    60年代中期から後期にかけては、ミッドセンチュリーやヒッピーの文化がイケアの家具にも影響を及ぼしていきます。

    この頃の若者は『親とは違うもの』を好んで求めるようになってきた。そのため、家具のデザインも今までにはない、明るくて、パターンも大胆なものが増えてきたのよ。

    この時代ならではのハッピーな色づかいだけでなく、ソファもイージーチェアもかなり低くめの作りになっているのがわかります。



    70年代に入り、当時は新しかった「デニム生地」が家具に使われるようになりました。ソファもベッドに変化するなどの「マルチファンクション」が特徴となっています。



    70年代後期、スウェーデンでは都市化が進んで、人々は狭いスペースに住むようになり始めました。これまでの大きな家具だけでなく、一人暮らしや省スペースに対応した家具をイケアも発表し始めます。



    時代は80年代。ポップに、カラフルに。ソファのカバーは着せ替えが出来るように取り外し可能にもなりました。

    イケアは製品を作るにあたって「問題解決型」でデザインしているのが特徴ね。だから、その時代の消費者のニーズに合わせてイケアのデザインも変化しているのよ。

    そして、この頃からイケアは「子ども家具」の製造も始めます。これもイケアの信念「消費者のニーズに応える」というものからだったそうです。

    80年代中期から、科学が進歩して専門家たちが『子どもの成長にいい家具とは何か』ということを考え始めたの。イケアもそんな時代の流れにあわせ、子どものための家具を作るようになった。今ではイケアにとって『子どもたちが世界で一番大切な人々』というポリシーを持ってるわ。

    イケアが販売する子供用の商品は、かなり厳しいチェックをクリアした「本当に安全なもの」だけが販売されています。ぬいぐるみのニードルチェックも手作業で徹底的に行われているようです。



    そして時代は90年代に。この頃には世界中で「スカンジナビアデザイン」が流行。部屋の色調は白や、薄い木目など「ブロンド色」であかるく軽い印象に。これはスウェーデンの冬が長く、日照時間が短いことも影響しているとか。



    そして2000年以降のデザインへと移っていきます。収納は見えないように工夫されていたり、明るく軽い印象のスカンジナビアデザインだけではなく、素材や色で『コントラスト』を楽しむようになっています。

    このようにして、いま日本でもよく見かけるイケア家具のデザインに移り変わっていったというわけですね。


    イケアは時代と共に、お客様のニーズに真摯に応えてきた。だから70年以上もの間、多くの人に利用されていると思うの。そして、誰もが手に入れられる低価格で提供すること。イケアのデザインは時代で変化をしていくけど、イケアの信念はいつの時代も同じなのよ。

    そう語ってくれたジュニさん。その可愛らしいルックスから親しみを込めて「ジュニおばあちゃん」と呼びたくなってしまうほどです。

    『ジュニ』って名前はね、スウェーデン語で「6月」っていう意味なのよ。だから6月が一年で一番好きだわ。私にとってラッキーなことが多いの。でも、誕生日は違う「月」なんだけどね。

    と、これまた可愛いご返答。ほのぼのした雰囲気でなんだか田舎のおばあちゃんと話しているような気分になってしまいました。ここで紹介した、「IKEA ヴィンテージコレクション」の詳細はこちらの公式サイトからご覧ください。

    スウェーデンを旅行するなら、春から夏にかけてが格別にいいシーズンだとか。一度でいいから、訪れてみたい国ですね。

    [IKEA]

    Photographed by Tak

    RSSブログ情報:http://www.roomie.jp/2014/08/193331/
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