062be5005624c14055e9e46c6ce137d0dfe9fb95
第463号 2023.3.21発行

「小林よしのりライジング」
『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりが、Webマガジンを通して新たな表現に挑戦します。
毎週、気になった時事問題を取り上げる「ゴーマニズム宣言」、『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成してもらう読者参加の爆笑企画「しゃべらせてクリ!」、著名なる言論人の方々が出版なさった、きちんとした書籍を読みましょう!「御意見拝聴・よいしょでいこう!」、読者との「Q&Aコーナー」、作家・泉美木蘭さんが現代社会を鋭く分析「トンデモ見聞録」や小説「わたくしのひとたち」、漫画家キャリア30年以上で描いてきた膨大な作品群を一作品ごと紹介する「よしりん漫画宝庫」等々、盛り沢山でお送りします。(毎週火曜日発行)

【今週のお知らせ】
※「ゴーマニズム宣言」…前回は、男系固執派が「週刊女性」「女性セブン」の2誌で、「愛子さまが旧宮家の子息と交際している」という、根も葉もないデマ話を流布していることを取り上げた。明らかに男系派の「断末魔の叫び」だが、それから2週間、往生際の悪い絶叫はまだ続いている。これらの週刊誌記事で最も懸念されるのは、愛子さまの結婚相手が、「旧宮家」の子孫でなくとも、「旧華族」だの「天皇家のご親戚」だのの「名家」の出でなければならないということが、ほとんど無条件の前提にされてしまっていることだ。天皇や皇族方には門地による差別の意識など全くないにも拘らず、女性誌やその読者は、「門地による差別」が大好きなのだ!これは皇統の危機に繋がる、重大な問題である!!
※泉美木蘭の「トンデモ見聞録」…医療情報の評価を世界的に展開しているコクランから、今年1月末、「マスクをつけた場合とつけない場合を比較して、インフルエンザやコロナにかかる人の数にはほとんど差がない」とする論文が発表された。この論文がSNSを中心に世界中で広まり議論が再燃する中、コクラン・レビューの主執筆者であるジェファーソン博士のインタビュー記事によって、エビデンス界の世界最高権威とされてきたコクランが、エビデンスを放棄して「政府に都合の良い作文を書く組織」と化していた衝撃の事実が発覚。大炎上したコクランは該当の論文について「誤解を招きやすいものであった」と謝罪コメントを発表し、ジェファーソン潰しに乗り出す。さらに、この謝罪は『NYタイムズ』のコラムニストからの圧力によるものだったのだ!!
※よしりんが読者からの質問に直接回答「Q&Aコーナー」…これからのギャグ漫画はポリコレに押し潰されてしまう?自分の仕事を紹介するときに「~させていただいてます」と付けている人が増えてきたのは何故?LGBTの問題で少数の人間に対して多数派は何処まで我慢するべき?統一協会の報道が減り、最近は「エホバの証人」が話題に上っているのはどんな意図があるの?ガーシーに投票した人の層は、若者ではなくて40~50代の中年負け男組?鉄腕アトムで育った世代である先生は、ロボットの社会進出をどう見る?全国センバツ高校野球での“ペッパーミル”パフォーマンスをどう思う?…等々、よしりんの回答や如何に!?


【今週の目次】
1. ゴーマニズム宣言・第492回「〈門地〉が皇室より大好物な男系大衆」
2. しゃべらせてクリ!・第419回「よしりん御伽草子発売記念!かちかち山でしゃべクリ!の巻【後編】」
3. 泉美木蘭のトンデモ見聞録・第286回「“エビデンス界の世界最高権威” コクラン、マスクで終了。」
4. Q&Aコーナー
5. 新刊案内&メディア情報(連載、インタビューなど)
6. 編集後記




a5864054af004fce0e274b1055469e5efa91e98e

第492回「〈門地〉が皇室より大好物な男系大衆」

 前回は、男系固執派が「週刊女性」「女性セブン」の2誌で、「愛子さまが旧宮家の子息と交際している」という、根も葉もないデマ話を流布していることを取り上げた。
 明らかに男系派の「断末魔の叫び」だが、それから2週間、往生際の悪い絶叫はまだ続いている。

 女性誌2誌に続き、今度は「週刊新潮」3月16日号のトップに、一連の流れを汲む記事が載った。

 f1c6d7023f676c995101f55f5e725b6238c7d109

 とはいえ、内容はほとんど前出2誌の焼き直しで、目新しいものはほとんどない。週刊誌3誌に同じ人物が同じ話を吹き込んで回ったとしか思えないような印象だ。
 ただ、女性セブンでは相手を賀陽家の「次男」と特定しているのに対して、週刊新潮ではなぜか「賀陽家の兄弟」と交流しているという、より荒唐無稽な話になっている。兄弟二人とつきあっているのか!?

 記事ではこの兄弟の父親・賀陽正憲氏について、「さる宮内庁関係者」が「正憲氏ご自身も『自分の家が皇室に復帰する可能性があることを肝に銘じて過ごしてきた』などと、周囲に漏らしているのです」と証言している。
 前回詳述したとおり、正憲氏は13年前の週刊新潮の取材に対して、息子と愛子さまの縁談について「立場が違いすぎ、恐れ多い」と全否定している。それがいつから、自分の家が皇室に入ることを「肝に銘じて過ごしてきた」のか?
 こんな重要なことはあやふやな伝聞ではなく、本人に直接確かめなければおかしい。正憲氏はこれまでメディアの取材には好意的に応えてきた人だし、たとえ取材を断られても、それはそれで「回答は得られなかった」と書けば何となく脈がありそうに匂わせることができるから、週刊誌はたとえダメモトでも、取材の申し込みだけは必ずするものなのだ。
 それなのに、なぜ今回は取材の申し込みすらしていないのか? 
 答えはひとつ。ガセネタだからだ。

 あと、「一昨年の眞子さんの結婚とは異なり、正真正銘の名家とご縁ができれば、いわゆる“悪い虫”など近づきようがない」という記述があるが、これは見逃せない。
 週刊新潮は、旧宮家系を「正真正銘の名家」と信じ切っているのである! 
 これが全くの一般国民の家であるとは、露ほどにも思っていないのである! そして、小室圭氏を「悪い虫」と言い切っているのである!
 これこそ、眞子さまをPTSDにまで追い込んだ小室さんバッシングの正体だ。どんなに眞子さまを一途に愛していようが、苦学してニューヨーク州弁護士になるほどの実力があろうが一切関係なく、マスコミ・大衆はただ「家柄」だけで小室圭氏を「悪い虫」扱いして、叩きまくったのだ!

 前出2誌と同様、週刊新潮でも情報提供者は全て匿名だが、ここで唯一、そんな怪しい話を支持する実名の人物が登場する。
 男系固執派の中心人物、麗澤大学教授の八木秀次だ。
 八木は、賀陽家の子息を子供のいない常陸宮家に養子入りさせ、その上で愛子さまと結婚させて、愛子さまが「常陸宮妃」として皇室に残れるようにするべきだと主張する。
 そして、「男児が生まれれば天皇家直系の男系男子となる。『皇位継承』『皇族数確保』という二つの観点からも、この上なく理想的なのです」と妄想を膨らませる。
 八木は「憲法学者」を名乗っているはずだが、旧宮家系男子を特別扱いして皇族の養子にするのは「門地による差別」で「憲法違反」になることを知らないか、または徹底的に隠蔽しているのだ。

 現行の皇室典範は皇室が養子を迎えることを禁じているが、八木は「特例法で一時的に養子をとれるようにすべきです」と言う。
 養子については皇室典範だけの問題だから、ご譲位を可能にしたように「特例法」でできるかもしれない。
 しかし、憲法の特例法なんかできない。
 この件に限って特別に「門地による差別」を容認し、特定の家柄の特定の国民だけ、国民に保障された基本的人権を全部剥奪して皇室に入れる憲法特例法なんてものを、都合よく作ることなどできるわけがない。
 憲法は国家の基本的なルールを規定している。
 国民は全て平等で、身分・階級はないというのが日本国のルールであり、その前提のもと第14条が存在する。
 それを理解していない八木秀次は、憲法を何も知らない憲法学者である。

 しかも、そもそも愛子さまを宮家の当主にしない(!?)なんてことを、国民感情が許すはずがない。
 男でさえあれば、600年も血筋が離れた大傍系で、突然宮家の養子になった国民でも当主になれるけれども、女だったらたとえ天皇直系のお子様でも、インスタントな皇族の妃にならない限り皇室に残れないなんて、そんな究極の男尊女卑に国民の賛成が得られるわけがない。
 憲法第1章で天皇の地位は「国民の総意に基づく」とある。皇族もこれに準ずるのは当然で、国民の総意に基づかない皇族など明らかに問題である。
 何をどうあがいたところで、旧宮家系国民男子案は、憲法の壁を超えられないのだ!

 こんなデタラメな記事が、いったいどこから湧いて出たのか?
 興味深いのは、八木秀次が以前、こんな発言をしていたことだ。